退職日と社会保険料の関係|時期により損得が変わる? 退職前に確認したいこと

「月末に退職すると社会保険料が2か月分引かれるって本当?」「退職日はいつにすれば得?」退職を考え始めたとき、疑問を持つ方は少なくありません。
退職日しだいで、最後に支払う社会保険料が1か月分変わることがあります。たった1日で変わるので、悩みやすいのも自然です。
ただし、単純に「月中が得」「月末が損」とは言い切れません。退職後すぐに転職するか、しばらく空くか、健康保険をどう切り替えるかで手取りや負担は変わります。
本記事では、退職日と社会保険料の関係を整理し、状況に応じて退職日を決める方法を解説します。
▼人事労務担当者で、退職時の社会保険手続きについて確認するには以下の記事もご確認ください。
退職時の社会保険手続きガイド【会社側・退職者側】必要書類と雇用保険も解説
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退職日と社会保険料の関係とは?
退職日の選び方一つで、支払う社会保険料の金額は変わります。社会保険の「資格喪失日」が基準になるからです。
資格喪失日とは、健康保険・厚生年金保険の資格を失う日を指し、退職日の翌日です。
そして会社の給与から控除される社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料)は、原則として資格喪失日が属する月の前月分までになります。
保険料は原則毎月発生し、給与からの天引き(徴収)のタイミングは、企業の締め日・支給日の設定によって異なる点もおさえておきましょう。こうした扱いになる理由は、資格の有無でその月の加入状況を判定し、保険料の納付対象月を決めているためです。
たとえば、7月31日に退職する場合、資格喪失日は8月1日なので、7月分まで社会保険料が発生します。
一方で7月30日に退職する場合、資格喪失日は7月31日となり、6月分までで止まります。
たった1日の違いで、最後の1か月分の社会保険料負担が変わってくるのです。

退職日によって変わる社会保険の喪失日の例
退職日と社会保険の関係について、より具体的に月中退職と月末退職で何が起きるのかを、ケース別に見ていきましょう。
| 退職日 | 退職月の社会保険料の発生 |
|---|---|
| 月の途中 | しない |
| 月末 | する |
月の途中退職の例
月の途中で退職する場合、退職月の社会保険料は発生しません。社会保険の資格喪失日が退職日の同じ月内に入り、保険料が「前月分まで」で止まるためです。
例として、7月15日に退職するケースで、資格喪失日は7月16日です。社会保険料を納付する(給与から天引きされる)のは6月分までで、7月分は発生しません。
控除額は、標準報酬月額30万円、本人負担の保険料率を便宜上15%と仮定すると、以下のとおりです。
- 6月分の社会保険料(45,000円)は、7月の給与などから控除
- 7月分の社会保険料は発生しない
月末退職の例
月末に退職する場合、資格喪失日は翌月1日となるため、退職月分も社会保険料が発生します。
例として、7月31日に退職する場合、資格喪失日は8月1日です。よって社会保険料を納付するのは7月分までになります。
同じく、標準報酬月額30万円、本人負担の保険料率を便宜上15%と仮定すると、以下のとおりです。
- 6月分の社会保険料(45,000円)は、7月の給与などから控除
- 7月分の社会保険料(45,000円)も発生
ここで注意したいのは、従業員にとっては「2か月分の社会保険料が引かれた」と感じる場面が発生することです。給与の締め日・支給日の設定や給与計算の都合で、最後の給与から6月分と7月分をまとめて天引き(徴収)する場合があります。
事前に会社から通知があるはずなので、必要に応じて確認しておきましょう。
たとえば「25日締め当月末払い」で7月31日退職だと、7月末に支給される給与から6月分と7月分の社会保険料を、まとめて控除されることがあります。翌月の給与支払いがないなかで、確実に保険料を回収するための対応です。
一方で、月末締め翌月25日払いの場合は、8月25日に支給される最後の給与から7月分の社会保険料が控除されます。
曜日(休日・平日)によって違いはない
退職日が平日か休日かで、社会保険料の扱いは変わりません。社会保険料の計算で大事なのは曜日ではなく、資格喪失日です。属する月の前月までという原則に基づきます。
たとえば、7月31日が土曜日(休日)でも、退職日が7月31日なら資格喪失日は8月1日です。7月分までの社会保険料が発生します。
ただし実務上は、休日退職だと健康保険証の回収がしにくいことがあります。事前に返却してもらったり、難しければ退職後すみやかに郵送してもらったりして、対応しましょう。
退職日はいつが得? 社会保険から考えるメリット・デメリット
退職日は、社会保険料だけで見ると、給与の支払日によって二重支払いとなり「月中退職の方が軽く見える」かもしれません。
しかし、退職後の保険の切り替えで負担が出たり、手続きの手間が増えたりもします。ここでは、月末退職と月中退職それぞれのメリット・デメリットを比較します。
| 退職日 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| 月末退職 | ・社会保険の加入が1か月長く続く。健康保険で医療費負担が減り、厚生年金で将来の受給額を維持 | ・退職月分の社会保険料が発生する ・最後の給与から2か月分がまとめて控除されることがある |
| 月中退職 | ・退職月分の社会保険料が発生しない ・最後の給与で2か月分の社会保険料が控除されることがない | ・健康保険・年金の切り替えが早く必要になる ・月給制だと給与が日割りになりやすい ・国保・国民年金の負担が月途中から始まる場合がある |
以上のメリット・デメリットを踏まえると、月末退職と月中退職で「どちらが得か」は、退職後の予定で変わります。
退職日の決め方に関する注意点|いつがいい?
退職日を決めるときは、まず退職後の予定を軸に考えるのがおすすめです。社会保険料の仕組みから単純に「月中退職が得」と判断されがちですが、実際はそう単純ではありません。
| すぐに再就職する | 前の会社の退職日と新しい会社の入社日を連続させて、保険の空白期間をつくらないのが理想 |
| しばらく無職期間がある | 国民健康保険・国民年金・任意継続・家族の扶養のどれを選ぶかで、負担が変わる |
会社側の都合も無視できません。月末は給与・社保の事務が重なりがちで、担当者の業務が立て込みます。
企業としての手続き負担も踏まえ、引き継ぎの区切りとあわせて、現実的な落としどころを探しましょう
退職後に従業員がやるべき社会保険手続き
退職日の翌日から健康保険と厚生年金の資格を失うため、新たな保険への各種加入・申請手続きが必要です。遅れると、手続きには期限があり、無保険状態で受診時に困ったり、将来の年金額の試算において未納期間ができたりします。基本事項をおさえて、円滑に手続きを進めましょう。
健康保険を切り替える
退職後に加入する健康保険は、主に次の4つから選ぶ必要があります。
| 種類 | 手続き期限 | 手続き場所 | 必要書類 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| 任意継続 | 退職日の翌日から20日以内 | 健保組合/協会けんぽ | 健康保険任意継続被保険者資格取得申出書、退職証明書など | ・最長2年間継続可能 ・保険料は全額自己負担 ・扶養家族も継続して加入可能 |
| 転職先の健康保険 | 入社時 | 転職先の会社 | 健康保険被保険者資格取得届など | ・会社と折半で保険料負担 ・扶養家族も加入可能 ・会社が手続き |
| 国民健康保険 | 退職日の翌日から14日以内 | 住所地の市区町村 | 健康保険資格喪失証明書、本人確認書類など | ・前年の所得に基づいて保険料算出 ・扶養の概念がなく、世帯で算定 |
家族の扶養 | 扶養者の勤務先の規定による | 扶養者の勤務先 | 被扶養者異動届、所得証明書、住民票など | ・条件を満たせば保険料負担なし ・扶養者の会社が手続き |
任意継続を選ぶ場合は、退職前に2か月以上の被保険者期間が必要です。保険料は、退職時の標準報酬月額と、加入先の平均額などを比べて、低い方を基準にするのが一般的です。
参考:『【健康保険】令和7年度の任意継続被保険者の標準報酬月額の上限について』全国健康保険協会
退職後すぐに再就職する場合は、転職先での加入手続きが進むため、基本的に本人の手続きは不要です。転職先企業の案内にしたがいましょう。
一方で、家族の扶養に入る場合は、配偶者など扶養者の勤務先で手続きが行われます。収入条件(年間130万円未満)や扶養者との生計維持関係などの条件を満たす必要があります。
国民健康保険は前年所得で決まるため、退職直後は「思ったより高い」と感じるケースも少なくありません。状況によっては減免の対象になることもあるので、自治体窓口で相談しておくと安心です。
年金保険を切り替える
退職後の年金保険も、状況に応じて以下の3つから選ぶことになります。
| 種類 | 手続き期限 | 手続き場所 | 必要書類 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| 国民年金(第1号被保険者) | 退職日から14日以内 | 住所地の市区町村 | 基礎年金番号がわかるもの、退職日を証明する書類、本人確認書類など | ・保険料は年度で改定、全額自己負担 ・付加年金に加入可能 |
| 転職先の厚生年金(第2号被保険者) | 入社時 | 転職先の会社 | 年金手帳もしくは基礎年金番号通知書またはマイナンバーカード など | ・会社と折半 ・手続きは会社側 |
| 家族の扶養(第3号被保険者) | 扶養者の勤務先の規定による | 扶養者の勤務先 | 被扶養者異動届、所得証明書など | ・条件を満たせば保険料負担なし ・扶養者の会社が手続き |
手続きが遅れると未納期間になり、将来の年金受給額に影響します。難しければ、免除・猶予制度も視野に入れましょう。
退職後すぐに再就職する場合は、転職先の会社が厚生年金の加入手続きを行うため、自分で手続きする必要はありません。
家族の扶養(第3号被保険者)になる場合は、健康保険と同様に、収入条件などを満たす必要があります。

退職前に社会保険関係で確認しておきたいこと
退職時には社会保険に関するさまざまな手続きが発生します。対応を怠ると、のちのちトラブルになる可能性があるため、ポイントを確認しておきましょう。
保険証回収後の通院
退職したあとは、会社に健康保険証を必ず返却しなければなりません。そして新しい保険の切替が終わるまで、医療機関への受診時は、全額自己負担になるため注意が必要です。
費用は後日、健康保険の給付として「療養費」の請求手続きを行い、払い戻しを受けられます。しかし一時的に負担が増えることを理解しておきましょう。
なお、制度移行により、健康保険証は2024年12月2日以降は新規発行されていません。2025年12月1日よりマイナンバーカードへ完全一本化されています。
旧保険証は2025年12月2日以降使えないため、2025年12月2日以降に資格喪失となった場合は、会社が回収する必要はなくなりました。
参考:『よくある質問:マイナンバーカードの健康保険証利用について』デジタル庁
最終の給与支払日
月末退職だと、最後の給与で2か月分の社会保険料が並ぶことがあります。驚く人も少なくありません。
控除のタイミングは会社の締め・支給サイクルで変わるので、退職前に「最後の給与で何月分を控除するか」を確認しておきましょう。
退職金の受け取り
退職金の支給時期は就業規則によって異なりますが、一般的には退職後1〜2か月程度で支払われるケースも多くあります。
退職金は通常、社会保険料の計算対象外です。一方で注意したいのが、「退職金の前払い」として在職中に支給される場合は、給与と同様に扱われ、社会保険料がかかり目減りした印象を受ける点です。
損をしないためにも、気になる場合は、社内規程と支給名目をあらかじめ確認しましょう。
転職先への提出書類
転職先の入社手続きでは、雇用保険被保険者証(または番号)、源泉徴収票、基礎年金番号がわかるものなどが必要です。
必要書類は会社の案内とあわせて早めに確認し、困る場合は、窓口や担当者に相談して進めましょう。
とくに源泉徴収票は年末調整にかかわるので、前職から受け取り漏れがないよう注意したいところです。
紛失した場合は、前職で再発行を依頼すれば対応してくれます。
まとめ
退職日の選び方は社会保険料の負担に影響します。
月中退職では、会社の社会保険は退職月分の負担が発生しない一方、月末退職では退職月分も対象になります。とはいえ、単純に「月中退職が得」とは言い切れません。
退職後すぐに再就職するか、無職期間があるか、任意継続・国民健康保険・家族の扶養のどれを選ぶかで、手取りや手続きは変わります。
退職日を決める際は、社会保険料の負担だけでなく、退職後の切り替え手続きとその後の生活設計、会社側の締め・支給サイクルも踏まえて決めることが大切です。
退職金の支給名目と時期、転職先への提出書類(源泉徴収票など)も抜かりなく確認しておきましょう。
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