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社会保険の被扶養者(異動)届の書き方・提出方法|必要なケースや扶養条件、注意点も解説

社会保険の被扶養者(異動)届の書き方・提出方法|必要なケースや扶養条件、注意点も解説

社会保険への加入者である従業員に、生計を維持する家族がいる場合、その家族は一定の条件を満たせば被扶養者として認定されます。被扶養者としての認定には、扶養者を雇用する企業が手続きを行う必要があります。そこで作成が必要とされるのが、被扶養者(異動)届です。

本記事では、被扶養者(異動)届についての概要や記載項目、手続きの方法、そして注意点について解説します。人事労務関連の手続きを担当する方は、ぜひ参考にしてください。

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    被保険者と被扶養者の定義

    はじめに、被保険者と被扶養者の定義について解説します。

    被保険者とは保険に加入している当人

    「被保険者」とは「社会保険に加入している人」を指します。

    企業に雇用されている人は、例外を除き健康保険や厚生年金保険などの社会保険に加入しています。社会保険の被保険者は、給与から天引きされる形で保険料を納め、これによってさまざまな保障を受けられます。

    被扶養者とは被保険者によって扶養されている人

    「被扶養者」とは「被保険者によって養われている人」を指します。

    被扶養者は、特定の条件を満たすと、被保険者の社会保険に加入できます。被扶養者が被保険者が加入する社会保険に入るための条件について説明します。

    社会保険の被扶養者の認定条件

    被保険者の扶養に入るためには、全国保険協会が定めた被扶養者の認定要件を満たす必要があります。被扶養者の認定要件には「被扶養者の範囲」と「収入の基準」の2つの基準が定められており、これら2つの要件を満たす人のみが被扶養者として認定されます。

    被扶養者の認定範囲

    全国保険協会が定める「被扶養者の範囲」は以下の通りです。

    日本国内に住所を有している(例外あり)
    主として被保険者に生計を維持されている
    以下の1または2を満たす
    1.被保険者との続柄が以下のいずれかである者
    ・配偶者(事実婚も含む)
    ・子や孫・兄弟姉妹
    ・直系尊属(父母、祖父母、曽祖父母)
    2.被保険者と同居しており、続柄が以下のいずれかである者
    ・1以外の3親等内親族(伯叔⽗⺟や甥姪、その配偶者など)
    ・内縁関係の配偶者の⽗⺟や⼦(配偶者の死後、引き続き同居する場合を含む)

    出典:『被扶養者とは?』全国健康保険協会

    被扶養者の収入要件

    被扶養者の収入要件は、被保険者と一緒に住まいが同じか否かによって異なります。被保険者と一緒に住んでいるときの被扶養者になる条件は、認定対象者の年収が130万円未満(60歳以上や障害者の場合は180万円未満)であるとともに、被保険者の年収の半分未満であることです。

    ただし、認定対象者の年収が130万円未満(60歳以上や障害者の場合は180万円未満)で、被保険者の年収を上回らず、生計を維持できると認められると被扶養者と認められる場合があります。

    被保険者と別居している場合、認定対象者の年収が130万円未満(60歳以上や、障害厚生年金を受けられる程度の障害である場合は180万円未満)で、被保険者からの援助収入よりも少ない場合、被扶養者です。

    参照:『従業員(健康保険・厚生年金保険の被保険者)が家族を被扶養者にするとき、被扶養者に異動があったときの手続き』日本年金機構

    2022年に社会保険の適用範囲が拡大

    2022年10月に国民年金法等の改正・施行にともなって、社会保険の加入適用範囲が拡大しました。具体的な改正のポイントは「事業所の従業員数」と「勤務期間(見込み)」です。この法改正により、新たに社会保険の適用範囲に含まれる被扶養者は、扶養の範囲外となりました。

    参照:『社会保険適用拡大 特設サイト』厚生労働省 

    社会保険の被扶養者(異動)届とは

    被扶養者(異動)届とは、正式名称は健康保険被扶養者(異動)届といい、被扶養者の追加や削除、情報の変更や訂正などがあったときに届け出る書類です。

    参照:『従業員(健康保険・厚生年金保険の被保険者)が家族を被扶養者にするとき、被扶養者に異動があったときの手続き』日本年金機構

    社会保険の被扶養者(異動)届の記入項目と書き方

    社会保険の被扶養者(異動)届の記入項目と記入方法について解説します。

    事業主記入欄

    「事業主記入欄」は、企業側での記入が必要な項目です。このセクションには、事業所の名前や所在地、事業主の氏名、連絡先など、企業に関する情報を所定の箇所に記入します。また、被扶養者が所得の条件を満たすかを確認し、事業主確認欄の「確認」の部分を円で囲む必要があります。

    被保険者欄

    ここから先の項目は、被保険者(従業員)が主体となって記入する部分です。被保険者は、自身の名前や生年月日、基礎年金番号、年収などを指定された箇所に入力します。収入(年収)の欄には、今後1年間における年収を見込んだ額を記入します。

    配偶者である被扶養者欄

    「配偶者である被扶養者欄」は、配偶者を被扶養者として登録する際に記入する部分です。配偶者の名前や生年月日、個人番号、被扶養者になった日付(入籍日や配偶者が退職した日など)などを所定の箇所に記入します。雇用主は被扶養者と被保険者の婚姻関係の事実を確認したうえで、問題がなければ備考欄に「続柄確認済み」にチェックマークを付ける必要があります。

    その他の被扶養者欄

    子どもや親などの家族を被扶養者に登録するときは「その他の被扶養者欄」への記入が必要です。被扶養者の名前や生年月日、個人番号、続柄などを所定の箇所に記載します。また住所欄には、同居しているか別居しているかを選択し、住民票が登録されている住所を記入します。

    参照:『家族を被扶養者にするとき、被扶養者となっている家族に異動があったとき、被扶養者の届出事項に変更があったとき』日本年金機構

    そのほかの必要書類

    被扶養者(異動)届とは別に、添付書類が必要です。添付が必要な書類についてそれぞれ解説します。

    被保険者との続柄の証明書類

    被扶養者の身分(続柄)関係を証明する書類も添付しなければなりません。

    基本的には戸籍謄本もしくは戸籍抄本を添付しますが、被保険者が世帯主であり、被保険者と被扶養者が同居しているなら、住民票の写しも可能です。被保険者との同居が認定要件に含まれるなら、同居を証明できる書類も必要です。

    ただし、被保険者・被扶養者の個人番号が届出書に記入されており、雇用主が被扶養者との続柄と届出書に記載の続柄が同じであることを、戸籍謄本もしくは戸籍抄本、または住民票によって確認します。備考欄の「続柄確認済み」にチェックマークを入れている場合は、この証明書の添付を省略できます。

    収入要件の証明書類

    被扶養者が収入要件に問題がないことを証明する書類も添付しなければなりません。企業に雇用されている場合、給与明細や源泉徴収票が証明書として認められます。

    自営業者は直近の確定申告書、退職者は退職証明書や離職票、年金受給者は年金の改定通知書などが証明書とみなされます。被扶養者によって異なるため確認しましょう。

    ただし、被扶養者の年齢が16歳未満であり、かつ被扶養者が所得税法上の控除対象の配偶者または扶養親族であることを事業主が確認し、事業主確認欄の「確認」を丸印で囲んでいるなら、この証明書類を添付する必要はありません。

    必要に応じて提出する書類

    同居していない家族を被扶養者にする場合は、通帳の写しなど、仕送りの事実を確認できる書類が必要です。事実婚の配偶者を被扶養者とする場合は、両人の戸籍謄本もしくは戸籍抄本、世帯全員の住民票が必要です。

    参照:『従業員(健康保険・厚生年金保険の被保険者)が家族を被扶養者にするとき、被扶養者に異動があったときの手続き』日本年金機構

    社会保険の扶養手続きの方法

    社会保険の扶養手続きの方法について解説します。

    提出先は年金事務所または事務センター

    被扶養者(異動)届は被保険者(従業員)が主体となって作成しますが、手続き自体は企業が行う必要があります。必要書類がそろったら、所轄の年金事務所や年金機構の事務センターに提出しましょう。

    提出方法は郵便・窓口・電子申請のいずれか

    年金事務所や健康保険組合の事務所では、郵送のほか窓口持参でも書類を提出できます。また「e-Gov」を利用して電子申請もできます。「e-Gov」では、24時間365日いつでも手続きができ、スムーズに提出手続きを行えるため、うまく活用するとよいでしょう。

    配偶者が扶養に入る場合は厚生年金の手続きも必要

    国民年金の加入者のうち、厚生年金や共済組合に加入している第2号被保険者に扶養されている20歳以上60歳未満の配偶者(年収が130万円未満の人)は、第3号被保険者に該当します。条件に当てはまるなら「国民年金第3号被保険者関係届」も提出しなければならないため、注意しましょう。なお、被扶養者(異動)届と第3号被保険者関係届が一体化している書式なら、同時に手続きを進められます。

    参照:『従業員(健康保険・厚生年金保険の被保険者)が家族を被扶養者にするとき、被扶養者に異動があったときの手続き』日本年金機構

    社会保険の被扶養者(異動)届を提出する主なケース

    社会保険の被扶養者(異動)届を提出する主なケースについて解説します。

    1.新しく雇用した従業員が家族を扶養している

    新しく雇用した従業員に被扶養者がいる場合は、通常の社会保険の資格取得届に加えて、被扶養者(異動)届を提出する必要があります。入社の際に必要な書類や確認事項が増えるため、漏れがないよう注意しましょう。

    2.従業員に子どもが生まれた

    従業員に子どもが生まれたときは、子どもを扶養に追加するための手続きが必要です。全国健康保険協会や健康保険組合から出産育児一時金の受給には要件があるため事前に確認しましょう。

    3.従業員が家族と同居を開始した

    被扶養者の範囲に該当する親族と新たに同居する場合、収入によっては被扶養者に追加しなければなりません。同居なら3親等内親族(伯叔⽗⺟、甥姪とその配偶者など)も含まれ、適用範囲が広いため、よく確認しましょう。

    4.配偶者の収入が増減した

    配偶者の収入が増えると、配偶者みずから健康保険に加入する必要がありますが、配偶者の収入が減って扶養に入るケースもあります。配偶者の勤め先や働き方によって、社会保険に加入できないなら国民健康保険への加入が必要です。

    5.子どもが就職した

    扶養している子どもが就職すると、子ども自身が被保険者となるため、被扶養者から削除する手続きが必要です。先に被扶養者から削除するのではなく、まず就職先で健康保険に加入してから削除する手続きを行います。

    6.配偶者と離婚した

    被扶養者だった配偶者と離婚し、被扶養者の条件に当てはまらなくなると、削除の手続きを行う必要があります。「被扶養者の条件に当てはまらなくなった場合」とは、主として被保険者に生計を維持されている状態でなくなったケースなどです。子どもがいるなら、どちらが親権を持ち、生計維持者か否かで手続き方法が異なります。

    7.被扶養者の情報にミスがあった

    被扶養者の氏名や生年月日などが誤って登録されていたなど、被扶養者の情報にミスがあると社会保険の被扶養者(異動)届を提出する必要があります。頻繁には発生しませんが、被扶養者の氏名が変わったときも同様です。

    社会保険の扶養手続きに関する注意点

    社会保険の扶養手続きにおいて、企業の手続きの担当者が注意すべきポイントを2つご紹介します。

    扶養を外れるタイミングを把握する

    社会保険の扶養手続きは、被扶養者になる事実が発生した日から5日以内に行う必要があるため、注意が必要です。「被扶養者になる事実が発生した日」とは、入籍した日や子どもが誕生した日などです。

    収入要件により被扶養者を削除するケースでは「給与収入が年間130万円を超えた時点」ではなく「見込み収入が年間130万円を超えた時点」で手続きを行わなければなりません。

    目安として、月額が108,333円を継続して超えるときは扶養から外れる手続きが必要です。手続き漏れが発生しないよう、あらかじめ従業員に周知しましょう。

    社会保険の適用拡大に注意する

    社会保険の適用範囲は、今後も拡大される見通しです。適用範囲の拡大により、これまでは扶養の範囲内で働いていた家族も、みずから社会保険の被保険者となる可能性があります。企業の社会保険担当者は、定期的に情報をアップデートし、制度に対する理解を深め、従業員への周知に努めましょう。

    まとめ

    社会保険の扶養条件は、家族構成や所得条件など従業員の事情によってそれぞれ異なります。また、子どもの誕生や就職などにより、扶養状況が変わることもあるため、社会保険の担当者はその都度条件を確認し、正しく手続きを行う必要があります。人事労務システムにクラウドサービスを活用し、従業員の扶養環境などを適切に管理しましょう。

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