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役員の社会保険加入は義務なのか|従業員との違いや加入条件などを徹底解説

企業は、要件を満たしている従業員に対して社会保険の加入手続きを進めなければなりません。一般従業員ではなく役員であっても、要件を満たしていれば加入が必要です。役員の場合は従業員よりも加入要件が複雑なため、担当者はあらかじめ確認をしておきましょう。

本記事では、役員の社会保険について、従業員との違いや加入要件、注意点などを解説します。

※本記事の内容は作成日現在のものであり、法令の改正等により、紹介内容が変更されている場合がございます。

役員の社会保険加入は義務なのか|従業員との違いや加入条件などを徹底解説
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    役員と従業員の社会保険に関する違い

    企業の従業員は、正社員や契約社員、パート・アルバイトといった短時間労働者などの雇用形態にかかわらず、一定の条件を満たす場合には社会保険へ加入する必要があります。

    具体的な条件は下記の通りです。

    • 常時雇用されている
    • 週の所定労働時間が常時雇用されている従業員の4分の3以上、かつ、1か月の所定労働日数が常時雇用されている従業員の4分の3以上

    また、上記の原則的な要件を満たさないパートやアルバイトであっても、下記の条件を満たしていれば社会保険に加入可能です。

    • 週の所定労働時間が20時間以上である
    • 月額賃金が8.8万円以上である
    • 2か月を超える雇用の見込みがある
    • 学生ではない
    • 従業員数101人以上の企業に勤務している

    一方、役員の場合は、賃金や労働時間などの明確な加入要件はありません。代表取締役などの会社の代表であるか、役員報酬の有無、非常勤役員か常勤役員かによって、加入が必要かどうかが決まります。

    参考:『適用事業所と被保険者』日本年金機構

    役員の社会保険加入は義務なのか

    役員は、報酬がない場合や、報酬が極端に低く労務内容に相応ではないと判断された場合は、社会保険への加入義務が発生しません。

    反対に、役員であっても、企業から報酬を得ている場合は基本的に社会保険への加入が必要です。例外として、報酬があったとしても非常勤役員なら原則として、社会保険に加入する必要はありません。

    社会保険における常勤役員と非常勤役員の判断基準

    常勤役員であるか非常勤役員であるかを自社で判断できない場合は、日本年金機構に個別相談をするとよいでしょう。社会保険の適用要件となる非常勤役員の判断基準は、日本年金機構が示す以下の6つの項目に当てはまるかどうかで判断します。

    • 自社への定期的な出勤があるか
    • 自社の職以外に多くの職を兼ねていないか
    • 役員会などへの出席はあるか
    • ほかの役員への連絡調整もしくは従業員に対して指揮監督しているか
    • 会社に意見を求められる立場ではないか
    • 役員報酬が仕事内容に相応し、実費相当額になっていないか

    上記の項目に照らし合わせても判断が難しい場合は、日本年金機構に相談をしてみましょう。

    役員の社会保険の適用要件

    役員の社会保険の適用要件について解説します。

    健康保険・厚生年金保険の適用要件

    健康保険と厚生年金保険は「適用事業所に使用される者」に適用される保険です。「使用される者」には、委任関係にある役員も含まれています。労務の対償として報酬を得ている役員であれば、使用される者にあたるため、加入の対象となるのです。

    労務の対償として報酬を得ているかどうかの判断基準は、労務の実態が経営の参画にかかわっており、その報酬が一定の頻度で支払われているかどうかです。

    介護保険の適用要件

    介護保険は、40歳以上65歳未満で健康保険(医療保険)に加入している人が対象です。役員であっても、健康保険の加入要件を満たしている場合は該当します。ただし、役員が海外に在住している場合は、介護保険への加入はできません。

    また、65歳以上の場合は、健康保険に加入しているかどうかに関係なく介護保険の対象です。

    労働保険(雇用保険・労災保険)

    雇用保険と労災保険は、企業において「労働者」である人が対象となるため、役員は基本的に対象外です。ただし、一定の条件を満たして労働者として扱われる「兼務役員」の場合は、例外として対象に含まれます。

    また、労災保険は、労働者とみなされない役員の場合でも中小事業主等として特別加入の手続きが可能です。中小事業主等としての特別加入に必要な要件は、下記の通りです。

    • 事業ごとに定められた使用労働者数の要件を満たす中小事業主等に該当すること
    • 雇用する労働者について、労災保険の保険関係が成立していること
    • 労働保険の事務処理を労働保険事務組合に委託していること

    上記の要件を満たしている場合は、特別加入を検討してもよいでしょう。

    参考:『労災保険の特別加入制度』一般社団法人 全国労働保険事務組合連合会

    兼務役員である場合の労働保険について

    役員としての立場と労働者としての立場を兼ねている兼務役員は、労働保険(労災保険と雇用保険)の加入対象です。

    労働保険に加入する兼務役員がいる場合は、会社の所在地を管轄するハローワークに対して兼務役員雇用実態証明書を提出する必要があります。労働者を兼ねているかどうかは、労働の実態があるかで判断しましょう。

    兼務役員の条件は下記の通りです。

    • 業務執行権や代表権がないこと
    • 役員報酬よりも労働による給与が高いこと
    • 業務内容や労働時間に拘束性があること
    • 就業規則の適用を受けていること

    上記の条件に該当している場合は、加入手続きを忘れないよう注意してください。

    役員に必要となる社会保険の手続き

    役員に必要となる社会保険の手続きについて解説します。

    外部から新たに役員を雇用する場合

    外部から新たに雇用する役員が加入条件を満たしている場合は、被保険者資格取得届を使用日から5日以内に提出しなければなりません。提出は、地域を管轄する年金事務所に行いましょう。

    参考:『適用事業所と被保険者』日本年金機構

    役員への昇進がある場合

    自社の従業員が役員に昇進する場合、健康保険と厚生年金保険にはすでに加入しているケースがほとんどです。そのため、健康保険と厚生年金保険に関する特別な手続きは基本的に不要です。ただし、雇用保険の資格は喪失するため、この点については手続きをしなければなりません。

    役員就任の前日を資格喪失日として、雇用保険被保険者資格喪失届を管轄のハローワークに提出しましょう。なお、労災保険は雇用保険と同時に手続きされるため、別途手続きをする必要はありません。

    標準報酬月額に2等級以上の差がある場合

    役員になったことで報酬が増え、3か月間の報酬の月額平均とこれまでの標準報酬月額との間に2等級以上の差が生まれた場合は、標準報酬月額の随時改定手続きが必要です。

    標準報酬月額の等級は、厚生年金保険料や健康保険料の算出に必要な数値です。社会保険料の計算をしやすくするために被保険者が得た報酬を区分するもので、健康保険では全50等級、厚生年金保険では全32等級に分けられています。2等級以上の差が生じた際には、月額変更届を管轄の年金事務所に提出しましょう。

    参考:『随時改定(月額変更届)』日本年金機構

    役員が2か所以上の会社に所属している場合の注意点

    役員がほかの会社でも役員をしたり、従業員として所属したりするケースも多く見られます。役員が複数の会社で働いている場合、二以上事業所勤務届を提出しましょう。

    社会保険は1か所の勤務先で加入するだけではなく、報酬や給与が発生しており加入条件を満たしているなら、それぞれの会社で加入が必要です。ただし、雇用保険は主たる報酬を受ける一つの会社でしか加入できません。

    保険料や給付の計算に必要となる標準報酬月額の算出には、社会保険に加入しているすべての会社から受け取る役員報酬や給与の合計額が反映されます。社会保険料の控除にも影響するため、手続きが必要である点に注意しましょう。

    一般従業員の場合は、2か所以上で社会保険の加入条件を満たすケースは多くありません。

    参考:『複数の事業所に雇用されるようになったときの手続き』日本年金機構

    二以上事業所勤務届の提出が必要

    複数の会社で社会保険への加入が必要になる役員は、手続きを一本化するためにも二以上事業所勤務届の提出が必要です。

    二以上事業所勤務届の提出にあたって、複数の会社のうち主となる会社を1か所選び、その管轄の年金事務所を選択します。各会社の事業所整理番号などが必要になるため、あらかじめ確認しておきましょう。

    また、あわせて健康保険被保険者証の添付も必要です。社会保険への加入が必要となる複数の会社に勤務するようになってから10日以内に提出してください。

    役員の社会保険に関する手続きを忘れないよう気をつけましょう

    一般従業員だけではなく、役員についても社会保険に関する手続きは必要です。新たに役員を雇用した場合、役員への昇進がある場合など、手続きを進めなければならないシチュエーションはいくつかあります。どのような手続きが必要なのか、あらかじめ把握しておきましょう。

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