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社会保険における月末退職は翌月初日が喪失日? 途中入社の対応方法も解説

社会保険における月末退職は翌月初日が喪失日? 途中入社の対応方法も解説

従業員の社会保険に関する対応は、月末退職や途中入社などのケースごとに異なる場合があります。社会保険にかかわる手続きの担当者は、これらの対応方法について正確に把握しておく必要があります。

本記事では、従業員が月末に退職した場合と、月の途中に入社および退職した場合における、社会保険に関する対応方法について詳しく解説します。社会保険の手続きにかかわる人事・総務担当者はぜひ参考にしてください。


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    社会保険の意味や仕組みについて

    社会保険とは、疾病や介護、失業のリスクに備えるための保険制度です。社会保険は、広義の意味で、次の5つの保険で構成されています。

    狭義の社会保険健康保険
    厚生年金保険
    介護保険
    労働保険雇用保険
    労災保険

    上記のうち、会社員や公務員が加入対象である「健康保険」「厚生年金保険」「介護保険」の3つは、狭義の社会保険と呼ばれます。狭義の社会保険に含まれない「労災保険」と「雇用保険」は「労働保険」と呼ばれます。

    本記事では、狭義の意味での社会保険の対応方法について解説します。

    社会保険の資格喪失日について知っておきたい前提知識

    はじめに、従業員の退職の際に必要な手続きについて、知っておきたい前提知識をご紹介します。

    社会保険の資格喪失日は退職した日の翌日

    社会保険の資格喪失日は「退職日の翌日」です。たとえば、退職日が7月31日の場合、社会保険の資格喪失日は8月1日です。退職と同時に社会保険の資格も喪失されるように思われますが、社会保険の資格喪失日と退職日は同じではないことに留意しましょう。

    社会保険料は月割で計算する

    社会保険料は、日割りで計算することはなく、1か月単位で発生します。月の途中で入社した従業員の場合でも、入社した月から1か月分の社会保険料を徴収する必要があります。

    あまり例を見ないケースですが、1か月のうち1日しか加入していない場合でも、1か月分の社会保険料が発生します。そのため、たとえば7月30日に退職した従業員と、7月31日に退職した従業員では、保険料の額に差が生まれます。

    参考:『月の途中で入社したときや、退職したときは、厚生年金保険の保険料はどのようになりますか。』日本年金機構

    従業員が月末退職した際の社会保険の対応

    社会保険の資格喪失日は、原則として退職した日の翌日です。そのため、退職日が月の末日である場合、資格喪失日はその翌月1日です。この場合においても、資格喪失日の属する月の前月分までの社会保険料を徴収する必要があります。

    たとえば、9月30日に退職した従業員の場合、10月1日が資格喪失日であるため、8月分と9月分の社会保険料が、退職月の給与から徴収されます。

    仮に、9月29日に退職した場合は、9月30日が資格喪失日に該当するため、その前月である8月分までの社会保険料を支払う必要があります。

    参考:『月の途中で入社したときや、退職したときは、厚生年金保険の保険料はどのようになりますか。』日本年金機構

    従業員が月末以外で退職した際の社会保険の対応

    社会保険は、資格喪失日が属する月の前月分までを徴収する必要があります。そのため、退職日が月の末日以外の場合、退職日が属する月の社会保険料を徴収する必要はありません。たとえば、9月20日に退職した従業員の場合、資格喪失日は9月21日であり、8月分までの社会保険料が発生します。

    参考:『月の途中で入社したときや、退職したときは、厚生年金保険の保険料はどのようになりますか。』日本年金機構

    従業員が途中入社した際の社会保険の対応

    社会保険は、入社した日が加入日とみなされます。そのため、月の途中から入社した従業員の場合でも、入社した月から1か月分の保険料を納める必要があります。

    たとえば、6月10日に入社した従業員は、6月分の社会保険料を7月に支給される給与から控除されます。また、社会保険は日割り計算をしないため、1か月分の社会保険料を徴収する必要があります。

    参考:『月の途中で入社したときや、退職したときは、厚生年金保険の保険料はどのようになりますか。』日本年金機構

    従業員が入社した当月に退職した際の社会保険の対応

    1日でも会社に在籍すれば1か月分の社会保険料が発生します。従業員が入社したその月に退職した場合、いわゆる資格取得と資格喪失が同月内に発生する「同月得喪」の場合でも、1か月分の社会保険料を徴収する必要があります。ただし、入社月の末日に退職した場合、資格喪失日はその翌月1日であるため、同月得喪には該当しません。

    また、資格を喪失した月と同月に厚生年金保険の資格および国民年金(第2号被保険者を除く)資格の取得があった場合、先に喪失した厚生年金保険料の納付は不要であるため、後から従業員に還付する必要があります。

    参考:『月の途中で入社したときや、退職したときは、厚生年金保険の保険料はどのようになりますか。』日本年金機構

    月末退職・途中入社における社会保険料の控除例まとめ

    具体的な事例をもとに、月末退職・途中入社の際の社会保険料の控除について解説します。

    2022年4月1日入社、2023年3月31日退社(月末締め翌月15日払い)

    2022年4月1日に入社した従業員の社会保険料は、4月分から発生します。2023年3月31日に退社した場合は、4月1日が資格喪失日であるため、3月分までの社会保険料を退職月の給与から控除する必要があります。

    2022年4月15日入社、2023年4月1日退社(月末締め翌月15日払い)

    2022年4月15日に入社した従業員の場合、月の途中での入社であっても、4月分から社会保険料が発生します。2023年4月1日に退社した場合は、資格喪失日は4月2日であるため、前月の3月分までの保険料が退職月の給与から控除されます。

    従業員が退職・入社した際に必要な社会保険手続き

    従業員の退職および入社時に必要な社会保険手続きについて解説します。社会保険手続きの担当者は、いつまでに・何の手続きが必要なのかを改めて確認し、スムーズな手続きが行えるよう備えましょう。

    退職時

    従業員が退職した場合には、資格喪失日から5日以内に「被保険者資格喪失届」と「保険者証」を年金事務所に提出する必要があります。従業員が健康保険の任意継続を希望する場合は、従業員本人が手続きを行う必要があるため、必要に応じて事前に案内しておくとよいでしょう。

    参考:『従業員が退職、死亡したとき』日本年金機構

    入社時

    従業員の入社時には、従業員を雇用してから5日以内に「被保険者資格取得届」を日本年金機構に提出する必要があります。なお、従業員の加入条件については正しく把握しておく必要があるため、本記事の最後に解説します。

    参考:『就職したとき(健康保険・厚生年金保険の資格取得)の手続き』日本年金機構 

    従業員の入社前に把握しておきたい社会保険の加入基準

    期間を定めず雇用される正社員は、通常社会保険に加入しています。しかし、アルバイトやパートなどの短時間労働者の場合には、企業規模によって社会保険の加入条件が異なります。

    通常の短時間労働者

    通常の短時間労働者の場合、週の所定労働時間および1か月の所定労働日数が、その事業所における通常の労働者(正社員)の4分の3以上であることが社会保険の加入基準です。通常の労働者とは、期間に定めがなく雇用されている従業員(正社員)を指します。

    参考:『適用事業所と被保険者』日本年金機構

    特定4分の3未満短時間労働者

    101人規模以上の企業(特定適用事業所)で働く短時間労働者の場合は、週の所定労働時間・1か月の所定労働日数が通常の労働者の4分の3未満であっても、以下の要件を満たすと加入対象です。

    加入条件
    ・週の労働時間が20時間以上であること
    ・賃金が月額8.8万円以上であること
    ・2か月を超える雇用の見込みがあること
    ・学生ではないこと
    ・厚生年金保険の被保険者数が101人以上の企業などで働いていること

    参考:『適用事業所と被保険者』日本年金機構

    まとめ

    社会保険の手続きは、従業員の入社や退社のタイミングによって異なり、タイミングによっては保険料に大きな差が出る場合があるため、手続きのポイントをしっかりと押さえておくことが重要です。自社の社会保険の手続きが適切に行われているかどうか、この機会にあらためて確認をしてみてはいかがでしょうか。

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