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社会保険には遡って加入できるのか|加入要件や注意点を解説

社会保険には遡って加入できるのか|加入要件や注意点を解説

事業所と従業員は、要件を満たせば社会保険への加入が必須となります。また、加入が漏れていた場合でも、遡って加入できます。本記事では、社会保険の加入要件や遡って加入する際の注意点などについてご紹介します。社会保険の加入について詳しく知りたい方は、ぜひ参考にしてください。


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    社会保険の加入要件

    社会保険とは「健康保険」「厚生年金保険」「労災保険」「雇用保険」という国の保険制度です。労働者や事業所それぞれで加入要件が決められています。社会保険の加入要件を会社、正社員、パート・アルバイトの3つに分けてご紹介します。

    会社の加入要件

    社会保険のうち、健康保険と厚生年金は事業所単位で適用されます。また、事業所には、社会保険への加入が必須の「強制適用事業所」と、従業員の半分以上が同意した場合に加入できる「任意適用事業所」の2つがあります。

    強制適用事業所と任意適用事業所の要件は下記の通りです。

    強制適用事業所農林漁業、サービス業など適用事業以外の事業を行い、常時5人以上の従業員を使用する事業所常時従業員を使用する、国や地方公共団体または法人の事業所
    任意適用事業所強制適用事業所以外の事業所で、厚生労働大臣の認可を受けた事業所

    通常の加入要件

    強制適用事業所に勤務する正社員は、基本的に全員社会保険に加入する必要があります。また、パートやアルバイトなどの短時間労働者であっても、1週間の所定労働時間および1月の所定労働日数が通常の労働者(正社員)の4分の3以上の場合は、社会保険に加入しなくてはいけません。

    一定のパート・アルバイトの加入要件

    一定規模以上の企業に勤めるパート、アルバイトの場合には、4分の3要件を満たさない場合でも下記5つの条件にすべて当てはまる場合は、社会保険への加入が必須です。

    • 従業員が101人以上の企業に勤めている
    • 1週間の所定労働時間が20時間以上
    • 賃金が月額8.8万円以上
    • 雇用期間が2か月以上見込まれる
    • 学生以外

    法改正によって、2022年10月からは、従業員が101人以上の企業に属していることが条件の対象となったため、注意する必要があります。

    従業員が未加入だった場合

    短時間のパートからフルタイムのアルバイトにした場合や、社会保険の加入要件が変更されたときなど、社会保険への加入を漏らしてしまうことがあります。

    従業員の社会保険は遡って加入できるため、従業員が未加入だった場合は、加入要件を満たした時期まで遡って加入できます。ただし、保険料の時効が2年のため、請求のあった日から2年までが対象です。

    遡る時期の指定はできない

    会社や従業員は、遡る時期を指定することはできません。法律上の条件を満たしたときが加入時期です。たとえば、2019年4月から社会保険未加入であっても、2023年4月に発覚した場合は2021年4月までしか遡って加入できない点に注意が必要です。

    一括での納付をしなければならない

    社会保険に遡って加入する際は、社会保険料を一括で支払う必要があります。まずは会社が一括して納付し、その後、従業員に負担分の請求をするのが一般的です。また、同意のない天引きや賞与からの一括清算はできないので注意しましょう。

    会社が未加入だった場合

    社会保険に会社自体が未加入だった場合について解説します。

    会社は加入申請をした月から社会保険が適用される

    会社自体が未加入の状態が続いている場合、原則として加入申請をした月から社会保険が適用されます。この適用措置は、保険料負担額への配慮から行われ「自主加入」の扱いとなります。

    未加入が続くと指導が入る

    社会保険未加入の状態が続くと、日本年金機構から指導が入ります。加入を勧奨しても自主的に加入しない事業所には「加入指導」が入り、加入指導後も手続きをしないと「立入検査」が行われます。また、立入検査後に加入手続きをした場合は、過去2年分の遡及が適用されます。

    悪質な未加入の場合は罰則の適用も

    社会保険の加入義務があるにもかかわらず未加入の状態が続くと、罰則が適用されます。健康保険法第208条に基づき、6か月以下の懲役もしくは50万円以下の罰金が科されるので注意が必要です。罰則を避けるためにも、自発的な加入が求められます。

    社会保険加入に必要な書類

    社会保険の加入に必要な書類を会社と従業員に分けてご紹介します。

    会社での加入に必要な書類

    社会保険加入にあたって、会社が必要な書類は下記の通りです。

    健康保険・厚生年金保険
    新規適用届
    事業所を設立して適用を受ける場合
    健康保険・厚生年金保険
    任意適用申請書・同意書
    強制適用とならない事業所が適用を受ける場合
    健康保険・厚生年金保険
    被保険者資格取得届
    従業員が加入する場合
    健康保険 被扶養者(異動)届家族を被扶養者にする場合
    健康保険・厚生年金保険
    保険料口座振替納付申出書
    保険料を口座振替によって納付する場合

    また、添付書類は下記の通りです。

    法人登記簿謄本
    (商業登記簿謄本)
    法人事業所のみ。遡って90日以内に交付された原本
    事業主の世帯全員の住民票
    (個人番号の記載がないもの)
    個人事業所のみ。遡って90日以内に交付された原本
    代表者の公租公課の領収書個人事業所のみ。原則1年分

    書類をそろえたら、管轄の年金事務所で手続きを行いましょう。

    参考:『健康保険・厚生年金保険 新規加入に必要な書類一覧』日本年金機構

    従業員の加入に必要な書類

    従業員の社会保険加入に必要な書類は下記の通りです。

    • 「被保険者資格取得届」
    • 基礎年金番号の分かる通知書(基礎年金番号通知書・年金手帳・マイナンバーカードなど)

    加入要件を満たしているか否かの判断がつかないときは、年金事務所に問い合わせるとよいでしょう。

    参考:『就職したとき(健康保険・厚生年金保険の資格取得)の手続き』日本年金機構

    社会保険未加入のリスク

    社会保険に加入していない場合、どのようなリスクがあるか解説します。

    法的措置を科される

    社会保険未加入の状態が続くと、法的措置を受ける可能性があります。具体的には、下記のような罰金の支払いや懲役刑、追徴金などです。

    • 健康保険法第208条により、6か月以下の懲役、もしくは50万円以下の罰金
    • 過去2年間に遡った追徴金
    • 期日までの未払いによる延滞金
    • 従業員負担分の保険料

    ハローワークに求人を出せなくなる

    社会保険に未加入の場合、ハローワークに求人を出すことができません。ハローワークへの求人が出せないと、人材の採用が難しくなるでしょう。ただし、社会保険への加入を条件として掲載許可が下りるケースもあります。

    損害賠償を請求される

    社会保険に加入していないと、退職した従業員は厚生年金を受け取れません。加入していれば受け取れるはずだったため、損害賠償を請求される可能性があるでしょう。過去の判例でも、労働契約上の債務不履行として損害賠償請求が認められています。

    国民年金の遡り加入は従業員自身で手続きが必要

    国民年金についても、遡って加入できますが、その場合は従業員自身での手続きが必要です。市区町村の行政窓口や管轄の年金事務所で手続きができます。また、対象期間は、保険料の納付期限から2年を経過していない期間までです。

    まとめ

    社会保険の加入要件は、企業規模によってそれぞれ異なります。強制適用事業所の勤務する正社員は基本的に全員加入し、パート・アルバイトでも条件に該当すれば加入する必要があります。

    特に、法改正によって、2022年10月から従業員が101人以上の企業の場合には、通常よりも加入範囲が広くなっていることに注意が必要です。

    また、社会保険には、遡って加入できます。ただし、遡る時期の指定はできず、一括での納付をしなくてはいけません。会社自体が未加入の場合は、加入申請をした月から社会保険が適用されますが、未加入の状態が続くと指導や立入検査が入り、悪質なケースでは法的措置が科せられます。

    ハローワークに求人が出せなくなったり、損害賠償を請求されたりするリスクもあるため、必ず確認しておくことが重要です。

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