ストレスチェック高ストレス者への会社側の対応とは? 判定基準や放置リスク、割合、面談などを解説

ストレスチェック高ストレス者への会社側の対応とは? 判定基準や放置リスク、割合、面談などを解説

ストレスチェックは、労働安全衛生法の改正を受け、2015年より一定規模の事業場で義務化されています。ストレスチェックで高ストレス者と判定される人は、多くの事業場で一定の割合で存在するといわれています。

ではストレスチェックで高ストレス者が出た場合、会社はどのように対応したらいいでしょうか。社内で高ストレス者が出た場合、必要に応じて労働環境の見直しをしなければなりません。

本記事では、ストレスチェックにおける高ストレス者の判定基準、対応フローと面談の進め方、さらには労務リスクの回避策までを徹底解説します。

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    ストレスチェックとは|高ストレス者の判定基準を解説

    そもそもストレスチェックとは、従業員の心理的な負担を把握するために実施されるストレス検査です。

    労働安全衛生法第66条の10に基づいて、2015年12月より「常時50人以上の労働者を使用している事業場で1年ごとに1回の実施」が義務づけられました。50人未満の労働者を雇用する事業所におけるストレスチェックの実施は努力義務とされています。

    しかし厚生労働省は、2024年10月に50人未満の事業所を含む全事業所でのストレスチェックの実施を義務づける方針を固めました。企業はいつでも対応できるよう実施の準備を整えておくことが必要です。

    ストレスチェックでストレスの度合いが高いと判定された人のことを「高ストレス者」と呼びます。

    参照:『労働安全衛生法』e-Gov法令検索
    参照:『ストレスチェック制度の効果的な実施と活用に向けて』厚生労働省
    参照:『第7回ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する検討会議事録』厚生労働省

    ストレスチェックの2つの判定基準

    ストレスチェックにおいて高ストレス者はどのように判定されるのでしょうか。判定基準には、以下の2種類があります。

    1事業者が衛生委員会での調査審議や実施者の意見をもとに決める基準
    2厚生労働省の『職業性ストレスチェック簡易調査票』に基づく基準

    1つめの事業者基準は、企業独自で質問票を策定する場合に採用されています。

    2つめの『職業性ストレスチェック簡易調査票』は、質問が3項目に分かれ、回答結果を数値化してストレスの強度を測る判定方法です。

    • 項目1.仕事のストレス要因
    • 項目2.心身のストレス反応
    • 項目3.周囲のサポート

    ストレスチェックで高ストレス者と判定されるのは、以下の基準を超える人です。

    • 心身のストレス反応の数値が高い
    • 心身のストレス反応の評価点数の合計が一定以上、かつ仕事のストレス要因や周囲のサポートの評価点数の合計が顕著に高い

    参照:『職業性ストレス簡易調査票(57項目)』厚生労働省
    参照:『数値基準に基づいて「高ストレス者」を選定する方法』厚生労働省

    高ストレス者の現状と割合

    厚生労働省の調査結果によると、ストレスチェックで高ストレス者と判定された従業員は、5〜20%の割合で存在します。

    さらに、高ストレス者と判定された従業員のうち、医師による面接指導を申し出る人は5%未満という事業場が76.8%にのぼります。

    高ストレス者は多くの事業場で一定の割合で存在するものの、そのうち7割を超える人が医師の面接指導を受けていないのが現状です。

    参照:『ストレスチェック制度の効果的な実施と活用に向けて』厚生労働省

    高ストレス者を放置するリスク|企業側・従業員側で解説

    労働安全衛生法第66条ではストレスチェックの実施が義務づけられているものの、たとえ実施しなかったとしても罰則は科せられません。しかし、高ストレス者を放置してしまうと、企業側と従業員側のどちらにもリスクが生じます。

    高ストレス者を放置するリスクを詳しく解説します。

    企業側のリスク従業員側のリスク
    ・職場全体の生産性が低下する・休職・退職の志願者が増加する・安全配慮義務違反として訴訟を起こされるおそれがある・心身に不調があらわれて日常生活に支障がある
    ・精神疾患を発症する・集中力、意欲、業務効率が低下する

    企業側の放置リスク

    ストレスチェックの高ストレス者を放置すると、従業員のメンタルヘルスが悪化し、集中力や判断力の低下につながります。1人の従業員の不調が周囲の士気を下げ、結果として企業全体の生産性低下を招くかもしれません。

    強いストレスを感じる期間が長くなるほど、従業員のモチベーションはますます低下し、休職や退職が増えるでしょう。

    企業は「安全配慮義務違反」で責任を問われるリスクもあり、労働契約法や労働安全衛生法に基づいて、職種や労務内容、労務提供場所に対して適切な措置が必要です。

    安全配慮義務を果たさない場合は、労働災害の発生の有無に関係なく刑事責任が科される可能性があります。

    ストレスチェックの高ストレス者を放置することで、健康被害や労働災害、民事訴訟にまで発展しないように事業者として適切な対策をとりましょう。

    参照:『労働契約法』e-Gov法令検索
    参照:『労働安全衛生法』e-Gov法令検索
    参照:『労働災害の発生と企業の責任について』厚生労働省

    従業員側の放置リスク

    従業員が高ストレスの状態で働き続けると、うつ病や強迫性障害などの精神疾患を発症するリスクが高まります。うつ状態になると、意欲と集中力が落ちて業務効率が低下するだけでなく、食欲不振といった症状もあらわれ、日常生活に支障をきたします。

    企業は、高ストレス状態にある従業員を早期に発見し、適切に対応することが重要です。

    ストレスチェック高ストレス者が出た際の流れ・会社側の対応

    ストレスチェックを実施し、高ストレス者が出た際の具体的な対応を詳しく解説します。

    ストレスチェックで高ストレス者が出た場合、企業には適切な対応をとる必要があります。適切に対処することで、法的責任を果たせるとともに、従業員の健康と健全な職場環境を両立できるでしょう。

    以下では、ストレスチェック実施後の企業が取るべき具体的な対応フローをわかりやすく解説します。

    対応ステップ詳細
    結果通知検査実施者または実施事務労働者から本人に通知
    面接指導本人の申し出から1か月以内に実施
    面接指導の結果報告書の提出・保管管轄の労働基準監督署に提出、5年保存
    就業制限または休業措置医師の助言もとに働き方の見直し
    面接指導を希望しない場合のフォロー理由を聞いて、外部専門家の案内も視野に

    流れを理解して対応の漏れやミスを回避し、従業員と会社の双方にとって働きやすい職場を目指しましょう。

    1.ストレスチェックの結果を通知する

    ストレスチェックの個人結果が出たら、検査の実施者またはその補助をする実施事務従事者から従業員本人に対して直接通知されます。個人結果は、従業員本人の同意なく企業に提出されることはありません。

    2.本人の申し出により面接指導を実施する

    高ストレス者と判定された従業員が希望したら、申し出から1か月以内を目安に医師による面接指導を受けてもらいます。

    医師による面接指導は、あくまでも従業員本人からの申し出がないと実施できません。従業員が面接指導を希望しない場合は、面接指導の必要性を説明し、受けるようにすすめましょう。

    3.面接指導の結果報告書を提出・保管する

    医師による面接指導を実施したら、企業はストレスチェックや面接指導の結果を報告書にまとめて、管轄の労働基準監督署に提出しなければなりません。明確な提出期限は定められていませんが、ストレスチェックは年に一度の実施が義務づけられているため、年に1回定期的に提出する時期を設定しておくとよいでしょう。

    万が一報告しなかった場合は、労働安全衛生法違反となり、50万円以下の罰金が科せられるおそれがあるため注意が必要です。

    ストレスチェックの結果は、実施者もしくは実施事務従事者によって保管されます。また、従業員の同意があって実施者から企業に提出された結果の記録は、企業が5年間保管しなければなりません。ストレスチェックや面接指導の結果は従業員の個人情報なので、適切な方法で保管することが大切です。

    報告書の取りまとめとあわせて、職場環境の整備や本人への指導・助言、フォローアップも実施します。

    参照:『心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書』厚生労働省
    参照:『労働安全衛生法』e-Gov法令検索

    4.就業制限または休業措置を実施する

    医師による面接指導の結果が出たら、担当医師からまずは就業形態が現状のままでよいかをヒアリングし、適切な措置を検討します。

    状態によっては、時間外労働や休日出勤、出張回数を調整するなど具体的な就業制限の設定が必要です。なかには、休暇や休業を取得させる措置をとらなければならない場合もあります。

    就業制限や休業措置によってストレスの状態が改善したら、対象従業員や医師と相談しながら、通常通りの勤務体制に戻すかを検討しましょう。

    5.面接指導を希望しない場合もフォローする

    高ストレス者が面接指導を希望しない場合は、なぜ希望しないのかを丁寧にヒアリングしたうえで、医師による面接指導の重要性を伝えます。強いストレス状態を放置してしまうと、うつ病のような精神疾患を発症するリスクがあると伝えることも大切です。

    ただし、面接指導はあくまでも従業員から申し出があった場合のみに実施するため、強要してはなりません。必要に応じて、外部機関のカウンセリングやかかりつけ医の受診をすすめましょう。

    参考:『ストレスチェック制度導入ガイド』厚生労働省

    高ストレス者を出さないために企業ができること

    高ストレス者が出る背景には、業務の過剰な負担や職場環境の問題が影響していることが少なくありません。 無理なく安心して働ける環境を整えることは、労務リスクを回避するためにも企業にとって重要な責務です。

    従業員のメンタルヘルスを守るだけでなく、職場全体の生産性やチームワークの向上にもつながります。

    そこで高ストレス者を出さないために、企業が現場で実践できる具体的な3つの対策を解説します。

    • 社外に相談窓口を設置する
    • 職場環境や労働条件を改善する
    • ストレスチェックや面談を定期的に実施する

    ストレスチェックは高ストレス者を発見するツールにとどめず、 職場全体のストレス状態を把握し、予防するための判断としても活用しましょう。

    社外に相談窓口を設置する

    従業員が「自分は高ストレス者かもしれない」と感じても、ストレスの原因が業務内容や社内の人間関係である場合は、面接指導を申し出にくいケースもあります。

    相談するハードルを少しでも下げるためにも、社外に専用の相談窓口を設置します。自社の担当者ではなく外部機関が担当すると、気軽に相談できるかもしれません。

    職場環境や労働条件を改善する

    ストレスチェックでストレスの実態を把握したら、職場環境や労働条件を見直して改善に取り組みます。

    ストレスチェック後の集団分析は努力義務ですが、

    職場環境に問題がないか確認することが大切です。ストレスの原因を探り、どのように解決すべきかを検討することで、高ストレス者予備軍にも適切に対処できるでしょう。

    参考:『ストレスチェックの実施が義務になります』厚生労働省

    ストレスチェックや面談を定期的に実施する

    高ストレス者を出さないための対策として、ストレスチェックや面談の定期的な実施が挙げられます。

    従業員が「高ストレス者であると申告すると、職場で不当な扱いを受けるのではないか」と懸念して、相談できないケースも少なくありません。高ストレス者が安心して申し出られるよう、企業として相談を受け入れる体制を整備することが大切です。

    ストレスチェック後の面談を受けやすくするためにも、対面だけではなくオンラインでの対応も検討しましょう。

    高ストレス者を放置せずに対応を(まとめ)

    ストレスチェックは、従業員の高ストレス状態を数値化し、早期に対応するための重要な仕組みです。50名以上の従業員を雇用する事業場ではすでに義務づけられていますが、今後は全事業所にも適用される予定です。

    職場で高ストレス者の判定が出たら、法令に基づいて医師による面接指導や社内外の相談窓口の案内などサポート体制を整える必要があります。

    また、面接指導を希望しない従業員や高ストレス者予備軍の存在にも目を向け、職場環境や労働条件の改善に取り組むことが重要です。

    高ストレス者の放置は、個人のメンタルブレイクや全体の生産性低下、さらには労務リスクにつながります。 

    ストレスチェックの機会を活用し、従業員が安心して働ける環境づくりに努めましょう。

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    ストレスチェックで高ストレス者を出さないためにも、日頃より従業員のコンディションを把握できる仕組みづくりが重要です。

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