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キャリアアップ助成金6種類の特徴|申請方法や支給金額などを解説

キャリアアップ助成金6種類の特徴|申請方法や支給金額などを解説

非正規雇用の従業員がキャリアアップできるように企業側が支援したくても、コストの面で課題を感じている方もいるのではないでしょうか。そこでおすすめしたいのが『キャリアアップ助成金』を利用する方法です。

本記事では、キャリアアップ助成金の概要や申請方法、利用する際の注意点を詳しく解説します。助成金を活用して、非正規雇用の従業員の待遇を改善し、企業価値を高めたいという方は参考にしてみてください。

目次アイコン 目次

    キャリアアップ助成金の基本的な概要

    労働者のキャリア形成を支援することを目的とした、キャリアアップ助成金について、基礎的な知識をご紹介します。

    キャリアアップ助成金とは従業員のキャリアアップをサポートする制度

    厚生労働省が管轄するキャリアアップ助成金は、雇用期間に定めのある従業員のキャリアアップを促進し、労働者の処遇を改善することを目的とした助成金制度です。企業が実施する雇用形態の転換やスキルアップ、昇給などの取り組みに対して助成金が支払われます。雇用形態の転換とは、有期雇用や非正規雇用の従業員を正社員に切り替えることです。

    キャリアアップ助成金には現在「6つのコース」がある

    2023年4月時点、キャリアアップ助成金には6つのコースが存在します。

    分類コース名概要
    正社員への移行支援1.正社員化コース有期雇用労働者等を正社員化
    2.障害者正社員化コース障害のある有期雇用労働者等を正規雇用労働者等に転換
    処遇の改善支援3.賃金規定等改定コース有期雇用労働者等の基本給の賃金規定等を3%以上増額
    4.賃金規定等共通化コース有期雇用労働者と正規雇用労働者において、共通する賃金規定などを新たに規定し、適用
    5.賞与・退職金制度導入コース有期雇用労働者等を対象に賞与や退職金制度を導入し支給、または積立てを実施
    6.短時間労働者労働時間延長コース有期雇用労働者等の週所定労働時間を延長し、社会保険を適用

    参照: 『キャリアアップ助成金のご案内』厚生労働省

    キャリアアップ計画の内容によって、申請すべき助成金コースは大きく異なります。コースごとに要件や条件が異なるため、それぞれのコースの特徴をふまえ、自社の環境や目的に合ったコースを選択しましょう。

    キャリアアップ助成金の目的について

    キャリアアップ助成金の目的を理解して、助成金制度を上手に活用していきましょう。

    キャリアアップ助成金は主に「非正規雇用の労働者」のキャリアアップを支援する制度

    キャリアアップ助成金は、パートタイムや派遣社員など正規雇用でない従業員のキャリアアップを促進する制度です。キャリアアップ助成金の対象となる労働者は、次の4つに分類されます。

    • 有期契約労働者
    • 無期契約労働者
    • 派遣労働者
    • 短時間労働者

    現在、日本企業の多くは深刻な労働人口不足に悩まされています。正規雇用できる人材が不足するなかで、非正規雇用の人材を確保することはとても重要なポイントです。非正規雇用の人材を採用後に正社員に転換したり、賃金を増やしたりするのが、キャリアアップ助成金の目的といえます。非正規社員の正社員化や賃金増額による待遇の改善をはかることで、従業員の定着率も高まるでしょう。

    キャリアアップ助成金の種類と特徴

    2023年4月時点のキャリアアップ助成金の種類と、それぞれのコースの特徴をご紹介します。

    キャリアアップ助成金の種類1.正社員化コース

    正社員化コースとは、就業規則や労働協約などに規定した制度に基づき、有期雇用労働者などを正社員化した場合に助成金が支給される制度です。具体的に、正社員化コースは以下のような取り組みに注力します。

    • 有期雇用労働者を正社員に切り替える
    • 無期雇用労働者を正社員に切り替える

    すでに現場で活躍している従業員を正社員へ転換することで、生産性を高め、優秀な人材を確保できるでしょう。

    キャリアアップ助成金の種類2.障害者正社員化コース

    障害者正社員化コースは、障害者の雇用を促進するとともに職場定着をはかることで助成金が支給される制度です。障害者正社員化コースでは、具体的に以下の切り替えを行います。

    有期から正規へ労働契約期間に定めのある従業員を正社員に切り替える(多様な正社員を含む)
    有期から無期へ労働契約期間に定めのある従業員を期間に定めのない従業員に切り替える
    無期から正規へ労働契約期間に定めのない従業員を正社員に切り替える

    障害者の雇用を促進するだけでなく、障害者と一般的な正社員間での待遇格差の是正、さらには長期的な雇用の確保などさまざまな目的があります。

    キャリアアップ助成金の種類3.賃金規定等改定コース

    賃金規定等改定コースは、労働条件の改善や労働者の待遇向上を目的に企業が賃金規定などを見直し、改定するための助成金が支給される制度です。

    具体的には、有期雇用労働者などの基本給賃金規定を3%以上増額し、その規定を適用させることで助成金が支給されます。対象となる非正規雇用の従業員数や賃金引き上げ額に応じて助成額が算定され、1年度における1事業所あたりの支給申請上限は100名までです。

    キャリアアップ助成金の種類4.賃金規定等共通化コース

    賃金規定等共通化コースは、労働条件の共通化をはかるために特定の条件を満たした企業が受給できる制度です。非正規雇用労働者と正社員の共通の職務に応じた賃金規定を新たに作成、適用した場合に助成されます。

    賃金規定等共通化コースを適用すれば、すべての従業員がよりよい労働条件のもとで働けます。また、雇用の安定化をはかることも狙いの一つです。

    キャリアアップ助成金の種類5.賞与・退職金制度導入コース

    賞与・退職金制度導入コースは、企業が労働者に対して賞与や退職金の支給を含む労働条件を導入することで助成金が給付される制度です。賞与・退職金制度導入コースで具体的に見直される制度として、次の2つがあります。

    • 賞与制度
    • 退職金制度

    企業が労働者に対して賞与や退職金などの報酬を提供することを奨励し、労働者のモチベーション向上や雇用の安定化をはかるのが目的です。

    キャリアアップ助成金の種類6.短時間労働者労働時間延長コース

    短時間労働者労働時間延長コースとは、従業員が短時間労働の契約をしている場合に、一定の条件下で労働時間を延長することで助成金が給付される制度です。助成の対象となるのは、次の2つのケースです。

    • 週所定労働時間を3時間以上延長し、新たに社会保険の適用対象とした場合
    • 労働者の手取り収入が減少しないように週所定労働時間を伸ばし、新たに社会保険の適用対象とした場合

    それぞれのケースによって助成額や条件が異なります。短時間労働者労働時間延長コースを導入すれば、社会保険の適用対象となることで保障が手厚くなり、労働者のモチベーションも向上するでしょう。

    キャリアアップ助成金で支給される金額の目安

    キャリアアップ助成金で支給される助成金額をご紹介します。あくまでも目安として参考にしてみてください。

    キャリアアップ助成金の支給額はコースや対象人数に応じて変動

    キャリアアップ助成金の支給額は、6種類のコースや対象人数によって大きく異なります。

    ▽1.正社員化コース
    【支給額】※()は生産性の向上が認められる場合

    中小企業の場合大企業の場合
    有期雇用から正規雇用へ57万円(72万円)42万7,500円(54万円)
    無期雇用から正規雇用へ28万5,000円(36万円)21万3,750円(27万円)

    参照: 『キャリアアップ助成金のご案内』厚生労働省

    ▽2.障害者正社員化コース

    支給対象者条件支給金額
    重度身体障害者重度知的障害者精神障害者有期雇用から正規雇用120万円
    有期雇用から無期雇用60万円
    無期雇用から正規雇用60万円
    重度以外の身体障害者重度以外の知的障害者発達障害者難病患者高次脳機能障害と診断された者有期雇用から正規雇用90万円
    有期雇用から無期雇用45万円
    無期雇用から正規雇用45万円

    参照: 『キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース)のご案内』厚生労働省

    ▽3.賃金規定等共通化コース

    企業規模支給額
    中小企業60万円
    大企業45万円

    参照: 『キャリアアップ助成金のご案内(令和5年度版)』厚生労働省

    ▽4.賃金規定等改定コース

    賃金改定率3%以上5%未満賃金改定率5%以上
    中小企業5万円6万5,000円
    大企業3万3,000円4万3,000円

    参照:『キャリアアップ助成金のご案内(令和5年度版)』厚生労働省

    ▽5.賞与・退職金制度導入コース

    賞与または退職金制度の導入賞与および退職金制度を同時に導入
    中小企業40万円56万8,000円
    大企業30万円42万6,000円

    参照:『キャリアアップ助成金のご案内(令和5年度版)』厚生労働省

    ▽6.短時間労働者労働時間延長コース

    1.週所定労働時間を3時間以上延長し、新たに社会保険を適用した場合

    3時間以上延長
    中小企業23万7,000円
    大企業17万8,000円

    参照:『キャリアアップ助成金のご案内(令和5年度版)』厚生労働省 

    2.従業員の手取り収入が減少しないように週所定労働時間を延長し、新たに社会保険を適用した場合

    1時間以上2時間未満延長2時間以上3時間未満延長
    中小企業5万8,000円11万7,000円
    大企業4万3,000円8万8,000円

    参照:『キャリアアップ助成金のご案内(令和5年度版)厚生労働省 

    それぞれのコースの条件や助成金額を確認したうえで、申請に必要な準備を進めましょう。

    キャリアアップ助成金の申請方法

    キャリアアップ助成金を申請する際の流れや、具体的な申請方法をご紹介します。

    正社員化の支援に関するコースの申請方法

    正社員化の支援に関するコースの申請は、キャリアアップ計画を作成・提出したうえで、次の手順で進めていきましょう。

    ▽正社員化の支援に関するコースの申請手順

    1. 就業規則などの改定を実施する
    2. 改定した就業規則に基づいて非正規社員を正社員化する
    3. 正社員化をしたあとに、6か月間賃金を支払う

    上記の手続きを済ませ、6か月の賃金を支払った日の翌日から2か月以内に支給申請を行ってください。正社員化したあとの6か月間は賃金がその前より3%以上増額していることが受給の条件ですので、注意しましょう。

    処遇改善の支援に関するコースの申請方法

    キャリアアップ助成金の処遇改善の支援に関するコースを申請する場合、キャリアアップ計画を作成・提出したうえで、次の手順で申請手続きをしましょう。

    ▽処遇改善の支援に関するコースの申請手順

    1. 就業規則の改定など計画した取り組みを実施する
    2. 取り組み後、6か月間賃金を支払う

    6か月間の賃金を支払った日の翌日から2か月以内に支給申請を行ってください。

    キャリアアップ助成金を活用する際の注意点

    キャリアアップ助成金を活用する際に注意すべき3つのポイントをご紹介します。

    キャリアアップ助成金の申請時には計画書の作成が必須

    キャリアアップ助成金を申請する際には、キャリアアップの計画書の作成と提出が必要です。この計画書には、従業員の自己啓発の目的や内容、費用の見積もり、受講予定の講座やプログラムの詳細などが含まれます。計画書は審査する際の重要な要素になるので、申請書と一緒に提出しましょう。

    計画書の作成には時間と労力がかかります。あとからは差し替えや訂正ができないため、社内でよく話し合い、内容に漏れがないか事前に確認してください。

    要件を満たしてもキャリアアップ助成金を受給できないケースがある

    キャリアアップ助成金の受給要件を満たしていても、必ずしも受給できるわけではありません。次のいずれかの条件に該当する事業者は、助成金を受給できませんので注意しましょう。

    ▽キャリアアップ助成金を受給できないケース

    • 支給申請した年度の前年度より前のいずれかの保険年度の労働保険料を納入していない事業主
    • 支給申請日の前日から過去1年間に、労働関係法令の違反を行った事業主
    • 性風俗関連営業、接待を伴う飲食等営業またはこれらの営業の一部を受託する営業を行う事業主
    • 暴力団と関わりのある事業主
    • 暴力主義的破壊活動を行ったまたは行う恐れがある団体等に属している事業主
    • 支給申請日、または支給決定日の時点で倒産している事業主
    • 支給決定時に、雇用保険適用事業所の事業主でない事業主
    引用:『キャリアアップ助成金のご案内(令和5年度版)』厚生労働省 

    申請に時間がかかる可能性も考慮する

    キャリアアップ助成金の申請には審査や手続きが必要なため、助成金を受給するまでに時間がかかる可能性があります。申請から受給まで数週間から数か月以上かかることもあるので、申請の際には余裕を持って手続きしましょう。

    また、必要書類には正確な情報を記入して提出することも重要です。あらかじめ助成金の申請方法を確認しておき、計画的に手続きを進めるのがポイントです。申請方法に不明点がある場合には、支援サービスを活用することをおすすめします。

    適用条件を理解してキャリアアップ助成金を活用(まとめ)

    キャリアアップ助成金を活用する際には、申請方法や支給金額を正確に把握し、適切な申請手続きを行うことが大切です。また、申請には一定の時間がかかることや、受給できないケースがあることも理解しておきましょう。申請前に適用条件や要件を確認したうえで、助成金制度を効果的に利用してください。

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