年末調整でiDeCo(イデコ)の所得控除はどれくらい?手順や確定申告も解説

年末調整において、iDeCoに加入してる方はどのような書類や手続きが必要なのでしょうか。最近はiDeCo加入者も増え、控除の記載箇所や必要書類について問い合わせを受ける担当者もいるでしょう。
とくに新入社員や加入したばかりの人は記載方法がわからず、提出忘れや証明書の紛失といったミスが発生しているかもしれません。
本記事では、年末調整とiDeCoについて控除金額の目安や記載手順、書類の出し忘れについて解説します。企業の年末調整担当者は、従業員から相談されたときのために、理解を深めておきましょう。

目次

iDeCoとは
iDeCoとは、個人型確定拠出年金のことです。加入者自身が毎月掛金を積み立て、資産をみずから運用し、老後に年金として受け取る私的年金制度です。
企業の担当者としては「どんな制度かはもう知っている」と感じるかもしれません。
しかし、年末調整にもかかわるため、社員に聞かれたときに短く、わかりやすく説明できるようにしておくとよいでしょう。
iDeCoの代表的な3つの特徴について解説していきます。
- 毎月の積立金を60歳以降に受け取れる
- iDeCoは税控除を受けられる
- 公的年金に上乗せして受け取れる
毎月の積立金を60歳以降に受け取れる
iDeCoは、毎月の掛金を、積み立てて60歳以降に受け取れる仕組みの年金制度です。厚生年金や国民年金などの公的年金とは別に、自分で積み立てる私的年金と考えるとわかりやすいでしょう。
加入できる年齢は原則60歳までです。しかし、国民年金に任意加入している場合など条件を満たせば、65歳まで加入できます。
原則60歳を迎えるまでは、積み立てた掛金や運用益は途中で引き出しできません。
運用成績次第で将来の受取額が変わるのも大きな特徴です。運用は自己責任のため、損をするのではないかと不安に思われる方もいますが、将来の年金不安から利用する人が増えています。
iDeCoは税控除を受けられる
iDeCo最大のメリットは税制の優遇です。
まず掛金は「小規模企業共済等掛金控除」として、全額が所得控除の対象となります。会社員は年末調整、個人事業主は確定申告で手続きをすることで、住民税や所得税を安くできます。
さらに通常の金融商品では運用益に約20%の税金がかかりますが、iDeCoでは運用益にも税金がかかりません。
iDeCoの利用で受けられる優遇措置をまとめると、以下の3種類があります。
種類 | 内容 |
---|---|
掛金の拠出時 | 加入者の掛金は、全額所得税控除の対象(小規模企業共済等掛金控除) |
掛金の運用時 | 掛金の運用益は非課税 |
給付時 | ・一定額まで非課税 ・受け取り方によって、扱いが異なる |
【受け取り方】 年金受給:公的年金等 控除一時金:退職所得控除 |
「払うとき」「増やすとき」「受け取るとき」すべてにおいて、将来にわたって税制上の優遇を受けられるのがiDeCoの大きなメリットです。
公的年金に上乗せして受け取れる
iDeCoで運用した資産は、公的年金に上乗せして老後に受け取れます。受け取りは60歳から75歳までの間に可能で、次の3つの方法から選べます。
種類 | 内容 |
---|---|
一時金 | 60歳以上75歳までの間に受け取る |
年金 | 受給開始時を選べる ・60歳以上75歳までの間 ・有期年金(5年以上20年以下) ※終身年金で受け取れる金融機関もある |
一時金と年金の組み合わせ | iDeCo資産の一部を一時金、残りを年金受給として受け取る ※利用可否は金融機関による |
受け取り方法は金融機関によって異なる点に注意しましょう。
参照:『iDeCo(イデコ)の加入資格・掛金・受取方法等|iDeCoってなに?』iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)【公式】
iDeCoは年末調整で控除を受けられる
iDeCoに加入している会社員は、年末調整で所得控除を受けられます。年末調整の書類の所定欄に必要事項を記載して申告することで、所得税と住民税の負担を減らすことができます。
iDeCoの掛金は全額控除される
iDeCoの掛金は、小規模企業共済等掛金控除として全額所得控除されます。iDeCoの掛金が多ければ多いほど、節税効果が高まるということです。
iDeCo加入の会社員が所得控除を受けるには、年末調整で必要書類を記入して申告する必要があります。
iDeCoは住民税も抑えられる
iDeCoの控除は、所得税だけでなく住民税にも適用されます。住民税は、均等割(定額)と所得割(所得に応じた税額)で決まり、iDeCoの小規模企業共済等掛金控除は、所得割に反映されます。
iDeCoは年末調整が不要なケースもある
iDeCoの掛金支払い方法を事業主払込にしている場合、年末調整の手続きは必要ありません。給与から掛金が差し引かれるため、企業側が控除処理を行うためです。一方で、iDeCoを個人払込にしている会社員は、年末調整で手続きをする必要があります。
年末調整とは
iDeCoの概要と年末調整の関係がおさえられたところで、年末調整について一度おさらいしておきます。
年末調整とは、従業員の正しい所得税額を算出し、源泉徴収税額との差額を精算する手続きです。
企業は、従業員に毎月支給する給与などから一定の所得税を源泉徴収し、本人の代わりに納税しています。源泉徴収は概算で計算されるため、本来納付しなければならない所得税との差がどうしても生じています。
年間の差額を割り出し、払いすぎた税金は還付、不足していれば追加徴収するのが年末調整の役割です。
年末調整においてiDeCoを控除する際の計算
次に気になるのは、iDeCoの控除額が実際にどれくらいになるのかという点ではないでしょうか。以下では、控除額の計算方法や具体的な金額例を、iDeCoホームページの「控除のシミュレーション」や国税庁の情報を参考に紹介していきます。
課税所得の計算方法
所得税や住民税は、課税所得にそれぞれの税率をかけて計算します。
課税所得=給与所得(給与収入-給与所得控除)ー所得控除 |
所得控除額は、扶養する家族や生命保険、iDeCoなどさまざまな控除があるため、従業員によって異なります。
たとえばiDeCoの掛金を毎月2万円払っている場合は、年間の支払いは24万円です。iDeCoの掛金は全額控除されるため、24万円全額が所得控除として計上されます。
iDeCoの控除額計算例
実際にどれくらいの節税になるか、数字を当てはめて計算してみましょう。
年収 | 600万円 |
---|---|
iDeCo掛金 | 毎月2万円(年間24万円) |
各種控除 | 給与所得控除(収入金額×20%+44万円) |
基礎控除(所得税48万円、住民税43万円) | |
社会保険料控除(年収の14.39%) ※加入する健康保険、介護保険の加入の有無(40歳以上で加入)があるため、料率は個人により変動 |
以上のケースにおける課税所得と税額は、以下のように計算されます。
iDeCo加入時 | iDeCo未加入時 | |
---|---|---|
課税所得(所得税) | 2,776,600円 | 3,016,600円 |
課税所得(住民税) | 2,826,600円 | 3,066,600円 |
所得税額 | 180,160円 | 204,160円 |
住民税額 | 282,660円 | 306,660円 |
1年間の節税額を計算すると、以下のとおりです。
所得税の節税額 | 24,000円 |
---|---|
住民税の節税額 | 24,000円 |
以上のように、年末調整でiDeCoの控除を適用することで、所得税と住民税の両方を軽減できます。
参照:『No.1410 給与所得控除』国税庁
参照:『No.1199 基礎控除』国税庁
参照:『【公式】かんたん税制優遇シミュレーション』iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)【公式】
年末調整でiDeCoの所得控除を申請する方法
続いて、従業員が年末調整でiDeCoの所得控除を申請する手順を確認していきます。
年末調整でiDeCoの所得控除を申請するには、従業員が必要書類を提出し、企業側が手続きを進めます。担当者も、従業員が対応する流れを理解し、質問にもスムーズに答えられるようにしておきましょう。
「小規模企業共済等掛金払込証明書」が届く
まず、国民年金基金連合会から、小規模企業共済等掛金払込証明書が届きます。書類は、書類に記入する掛金などが記載されており、原本を添付して提出しなければなりません。
書類を紛失してしまうと、再発行などの手続きで時間がかかってしまうこともあります。企業の担当者は、従業員に対して書類の保管を周知しておきましょう。
「給与所得者の保険料控除申告書」に必要事項を記入する
給与所得者の保険料控除申告書は、iDeCoに積み立てた金額を記入する書類です。従業員がiDeCoで積み立てた金額を記入する際は、小規模企業共済等掛金払込証明書を確認し、正しく記入する必要があります。
給与所得者の保険料控除申告書は、企業が従業員に配付するものです。企業側は、書類の配付漏れがないよう注意しましょう。
従業員が書類を企業側に提出する
すべての書類がそろったら、従業員が企業側に書類を提出します。書類の提出は、企業が設定する年末調整の期限内に完了させます。従業員が期間内に書類を提出できないと、本人が確定申告をしなければなりません。企業側は、年末調整書類の提出期限を厳守するよう伝えておきましょう。
年末調整の書類配布から記入、提出の管理は、どうしても手間がかかりますよね。ミスや提出忘れのチェックも人事労務担当者の負担になりがちです。
最近では、年末調整をシステムで自動化・ペーパーレス化する企業が増えてきました。年末調整に対応した人事労務システムを使えば、最短3分で申請が完結できます。

iDeCoにおける年末調整書類の書き方
続いて、iDeCoの年末調整における必要書類と、書き方を担当者目線で整理します。実際に年末調整書類のどこに何をどのように書けばよいのか気になる方もいるでしょう。従業員の記入ミスや提出漏れを防ぐためにも、確認していきます。
iDeCoの年末調整で必要な書類
年末調整でiDeCo掛金の所得控除を申請する場合、必要な書類は以下の2点です。
- 小規模企業共済等掛金払込証明書
- 給与所得者の保険料控除申告書
「小規模企業共済等掛金払込証明書」は、例年10月下旬頃から11月にかけて、国民年金基金連合会から発送されます。発送が遅れる可能性もある点に注意しましょう。
iDeCoの年末調整における必要書類の書き方
iDeCo加入者は、「小規模企業共済等掛金払込証明書」に記載された掛金合計金額を、「給与所得者の保険料控除申告書」の右下「確定拠出年金法に規定する個人型年金加入者掛金」欄に転記します。
難しい計算は不要で、1年間に積み立てた金額をそのまま記入すれば問題ありません。最後に、証明書の原本を控除申請書類に添付して提出してもらいます。証明書を紛失した場合は再発行手続きが必要です。時間がかかるため早めの提出確認をおすすめします。
参照::『《記載例》令和6年分給与所得者の保険料控除申告書の記載例』国税庁
iDeCoを確定申告するケース
年末調整でiDeCoの掛金控除が間に合わなかった従業員や、個人事業主は確定申告で控除を申請します。
会社員は通常、年末調整で控除を申請しますが、提出期限に間に合わなかったケースでは確定申告が必要です。
企業の担当者は、該当社員からの相談にも対応できるよう、必要書類と記入方法を簡単に把握しておくとよいでしょう。
iDeCoの確定申告で必要な書類
確定申告でiDeCo掛金控除を申請する際、必要な書類は次の3点です。
- 確定申告書
- 源泉徴収票
- 小規模企業共済等掛金払込証明書
書類は、例年2月16日から3月15日頃までの確定申告期間に税務署へ提出します。最近はe-Tax(電子申請)を利用する人も増えています。
iDeCoの確定申告における必要書類の書き方
iDeCo加入者は、証明書に記載されている掛金合計額を次の欄に書き写します。
- 確定申告書第一表の「⑭小規模企業共済等掛金控除」欄
- 確定申告書第二表の「⑭小規模企業共済等掛金控除」欄
確定申告でも念のため、小規模企業共済等掛金の内容について、記載ミスや金額間違いがないか確認しましょう。記入が終わったら、源泉徴収票と証明書(原本)を添付して提出します。

年末調整でiDeCo控除を申請する際のポイント
年末調整ではiDeCoの控除申請に限ったことではありませんが、申請不備や記入ミスに注意が必要です。とくに書類の管理や提出期限については、担当者が従業員に周知しておく必要があります。最後に2つの注意点を確認しましょう。
書類を大切に保管する
iDeCoの控除に必要な「小規模企業共済等掛金払込証明書」は、年末調整が始まる前に国民年金基金連合会から順次発送されます。提出するまで大切に保管してもらいましょう。
証明書を紛失すると、再発行に時間がかかり、年末調整に間に合わないリスクがあります。紛失した場合は、従業員から国民年金基金連合会に再発行を依頼するよう案内します。
年末調整は企業によってやり方が違う
年末調整の手続きや提出期限は、企業ごとにやり方が異なります。従業員には自社の期限や手順を早めに伝え、遅延を防ぎましょう。毎年のスケジュールに合わせた書類配布と提出状況の管理も重要です。
手作業で進捗を追いかけるのは大変です。年末調整に対応した人事労務システムを使えば、進捗状況や記入ミスの差し戻しも簡単に管理できます。提出状況がひと目で確認でき、担当者の負担を大きく減らせるでしょう。

まとめ
iDeCoを活用していると、年末調整によって所得控除を受けられます。iDeCoに加入している会社員は、年末調整で掛金控除を申請することで、所得税や住民税の負担が軽減されます。
ただし、iDeCoの掛金を事業主払込で支払っている場合は、給与から天引きされているため、申請は必要ありません。
企業の担当者は、年末調整の際に、従業員から相談を受ける可能性もあります。正しく説明できるよう、iDeCoにおける年末調整への理解を深めておきましょう。
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