休職中従業員の年末調整書類の書き方|源泉徴収票の記載方法や注意点も解説
年末調整は、雇用者が行う義務の一つです。しかし、自社に休職者(休業者)がいる場合、年末調整が必要なのかわからないという方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、休職者(休業者)の年末調整について調べている方に向けて、その要否や書き方を解説し、源泉徴収票の記載方法や注意点もご紹介します。ぜひ参考にしてみてください。
休職中の従業員も年末調整は原則必要
年末調整は、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を年末調整の実施日までに提出している従業員全員が対象です。そのため、原則として、休職中の従業員も年末調整は必要です。
例外的に年末調整が必要ない休職中の従業員
休職中の従業員に対して、年末調整を行う必要がない場合もあります。例外的な8つのケースを紹介しましょう。
- 給与額が年2,000万円を超える
- 年内に転職し前職の源泉徴収票を提出していない
- 自社の給与が従たるものである
- 災害減免法の適用を受けている
- 控除申告書を提出していない
- 給与ではなく報酬を支払っている
- 継続して同一の職場で雇用されていない
- 非居住者
給与額が年2,000万円を超える
給与額が年2,000万円を超える従業員は、年末調整の対象から外れます。給与所得の源泉徴収票は発行可能なので、従業員自身で確定申告を行ってもらいましょう。
年内に転職し前職の源泉徴収票を提出していない
年内に自社に転職し、前職の源泉徴収票を提出していない従業員も対象外です。年末調整では、前の会社から支払われた給与や徴収した税金などの額の確認が必要です。
そのため、前職の給与や徴収した税金が確認できない場合は、年末調整を実施できません。従業員自身で確定申告をしてもらうことになります。
自社の給与が従たるものである
2か所以上の職場から報酬を受けており、自社の給与が主たるものでないなら、年末調整の必要はありません。従たる給与については、従業員自身で確定申告を行い、国税を精算します。
災害減免法の適用を受けている
災害によって住宅や家財に損害を受けたときは、「災害減免法」の適用により、所得税が軽減免除されます。従業員が災害減免法によって、源泉所得税や復興特別所得税の徴収猶予か還付を受けているのであれば、年末調整は行いません。確定申告で所得税や復興特別所得税を精算します。
控除申告書を提出していない
「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出していない場合、年末調整は実施できません。控除申告書の提出がないときは、所得税や復興特別所得税の還付あるいは追加徴収を確定申告で行う必要があります。
給与ではなく報酬を支払っている
「給与」ではなく、「報酬」を支払っているケースにおいても、年末調整は行いません。給与は、従業員が雇用契約を結んだうえで受け取る労働の対価です。
一方、報酬とは、請負や委任の労働への対価を指します。業務委託などで委託先に支払っている報酬に関しては、年末調整は実施しません。報酬は、受託側での確定申告が必要です。
継続して同一の職場で雇用されていない
2か月以上の継続雇用をしていない、かつ日雇賃金を支給している従業員に対しては、年末調整は行いません。源泉徴収票を発行し、従業員自身に確定申告をしてもらうことになります。
非居住者
日本に住所がない、または1年以上日本に住んでいない場合、「非居住者」に該当します。非居住者は、年末調整の対象外です。そのため、国外で国内源泉所得が支払われる場合は、原則として源泉徴収票を発行する必要がありません。
無給休職中の従業員の年末調整の方法と源泉徴収の書き方
従業員が休職中でも、源泉徴収票の発行と年末調整は必要です。休職していても、社会保険料の控除や住民税の支払いが発生するからです。
なお、無給の場合の源泉徴収票には、支払金額と源泉徴収税額を「0円」とし、社会保険料の金額だけ記載します。また、摘要には「休職中につき無給」と記載しておきましょう。
病気やけがで休暇中の場合は傷病手当金が給付される
「傷病手当金」は、従業員とその家族の生活を保障するための制度です。病気やけがで療養している間は、健康保険組合から傷病手当金が支給されます。
傷病手当金は、業務外で発生した病気やけがの療養を目的とした休業に対して支給されるものです。また、支給条件があり、休んだ日から連続する3日間を含み、4日以上仕事に就けず、休業期間中に給与の支払いがない場合が該当します。
傷病手当金は年末調整の対象にならない
傷病手当金は非課税所得です。年末調整の対象ではないため、源泉徴収票の支払金額には含めないよう注意しましょう。ただし、病傷休暇中でも住民税や社会保険料の徴収は必要です。これらは源泉徴収票に反映しておくことが重要です。
そのほかの理由で休職中の従業員の源泉徴収票の書き方
源泉徴収票は、休職・休業の理由によってそれぞれ書き方が異なります。病気やけが以外が理由の場合での、源泉徴収票の書き方を紹介します。
- 労災による休業の場合
- 育休中の場合
- 留学にともなう休職の場合
労災による休業の場合
労災による休業の場合、「休業手当」や「休業補償」を支払う際に注意が必要です。
労働基準法第26条に規定される休業手当は、給与所得として課税対象となります。そのため、給与として源泉徴収票に反映し、所得税を徴収する必要があります。一方、労働基準法第76条に規定される休業補償は、非課税所得です。源泉徴収票への反映は必要ありません。
育休中の場合
育休中の場合も、源泉徴収票に保険料や住宅ローン控除の反映が必要です。ただし、「出産手当金」「出産育児一時金」「育児休業給付金」といった育休に関する手当や給付金は、所得税がかからないため、年末調整にも関係しません。
留学にともなう休職の場合
留学による休職の場合、従業員が「居住者」として該当するかどうかで源泉徴収票の記載方法が異なります。たとえば、留学の期間が1年未満であれば、従業員は居住者扱いになり、住民税や社会保険料の支払い義務が生じます。
そのため、無給であっても源泉徴収票に住民税や社会保険料の反映が必要です。一方、留学期間が1年を超える場合では、非居住者扱いとなり、源泉徴収は不要です。
休職中の従業員の年末調整の注意点
休職中の従業員の年末調整の注意点を2つ紹介します。
- 保険や控除の有無を休職者に確認する
- 休職の理由が会社と従業員のどちらの都合か気をつける
保険や控除の有無を休職者に確認する
保険料や住民税は、休職中でも免除されません。
また、休職者が配偶者控除や医療費控除などの適用を受けている可能性があります。そのため、源泉徴収票を発行したり、年末調整を実施したりする際は、事前に保険や控除の有無を休職者に確認しておくことが重要です。
休職の理由が会社と従業員のどちらの都合か気をつける
従業員が長期で仕事を休むときは、傷病・留学といった従業員自身の都合による休職や、労災など会社都合の休業、出産など従業員都合による休業があります。休む理由が自己都合か会社都合かによって、手当金や公的保障の有無が異なるため、注意が必要です。
まとめ
年末調整は、休職(休業)中の従業員に対しても原則必要です。
ただし、給与額が2,000万円を超えていたり、前職の源泉徴収票が未提出だったり、2か所以上で働いていて自社が本職ではなかったりするなどの場合は必要ありません。例外的なケースはそのほかにもいくつかあるので確認しておきましょう。
病気やけがで休んでいるときは傷病手当金が支給されますが、年末調整の対象にはならず、源泉徴収票の支払金額にも含めません。源泉徴収票への反映は、休職・休業の理由によってそれぞれ異なるため、注意する必要があります。
また、休んでいる従業員の年末調整を行う際は、保険や控除の有無や、休職の理由が会社と従業員のどちらの都合か、といった確認をすることが重要です。
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