年末調整を正しく行うためのチェックリスト|控除や集計、法定調書の作成におけるポイントを解説

年末調整を正しく行うためのチェックリスト|控除や集計、法定調書の作成におけるポイントを解説

年末調整は作業内容が煩雑なうえ、年に一度しか行わないため、「進め方を忘れてしまった」「抜け漏れがないか不安」と感じる担当者も多いのではないでしょうか。

年末調整書類の回収漏れや控除の適用ミスがあると、労務トラブルにつながるため、ポイントをまとめたチェックリストを活用するのがおすすめです。

そこで本記事では、年末調整を正しく・効率よく進めるためのチェックリストを、各工程ごとに整理して紹介します。「今年こそ安心して年末調整を終えたい」という方は、ぜひご活用ください。

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目次アイコン目次

    年末調整の基本的な流れをおさらい

    年末調整のチェックリストを使ううえで、まず大切なのは「年末調整がどのような流れで進むのか」を把握しておくことです。

    作業の順序や関係する書類をあらかじめ整理しておけば、途中で手戻りが発生するのを防げます。

    まずは、年末調整の大まかな流れを、3つの工程に分けて確認しましょう。

    1.従業員に申告書を提出してもらう

    年末調整では、従業員の申告内容に基づき手続きを進めていきます。

    そのため、まずは従業員に申告書を配布し、必要情報を記入してもらってから回収しましょう。

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    2.年末調整の計算をする

    次に、源泉徴収税額と正しい所得税額の差額を算出します。

    1年間に支給した給与の総額から給与所得控除を差し引き、さらにそれぞれの従業員が該当する控除を適用しましょう。年間の所得金額を算出し、所得税率を乗じることで年調所得税額を導き出します。

    そして、毎月の給与から源泉徴収した金額との差額を計算し、必要に応じて追加徴収または還付をします。

    3.法定調書を作成・提出する

    年末調整では、次の法定調書を作成し、所轄の税務署や市区町村に提出しなければなりません。

    • 支払調書(該当者がいる場合)
    • 法定調書合計表
    • 源泉徴収票
    • 給与支払報告書

    提出期限は、年末調整を行った年の翌年1月31日です。

    ▼年末調整業務の進め方に不安がある方は、次の資料もぜひご活用ください。

    【一覧】年末調整を正しく行うためのチェックリスト

    年末調整の各過程のチェックポイントをまとめた簡易的版は以下のとおりです。

    事前準備□ 年末調整の対象者を確認したか
    □ 必要な書類がすべてそろっているか
    各種控除の適用□ 各種控除の適用要件を満たしているか
    □ 正しい区分を適用しているか
    □ 必要な書類が添付されているか
    集計・税額計算□ 賞与や未払給与などを含めたか
    □ 中途入社の従業員について、前職の給与や源泉徴収税額などを集計したか
    □ 所得税徴収高計算書を正しく作成したか
    法定調書の作成・提出□ 記載内容に誤りはないか
    □ 提出先に誤りはないか
    □ 期限までにすべての書類を提出したか

    詳細は、以下に続く各過程の内容を確認していきましょう。

    年末調整の事前準備におけるチェックリスト

    はじめに、実務を始める前におさえておきたい「事前準備のチェックポイント」を紹介します。最初のつまずきを防ぐためにも、ぜひ一つずつ確認してみてください。

    年末調整の対象者を確認したか

    年末調整は、基本的にすべての従業員が対象です。正社員やパート・アルバイトなどの雇用形態にかかわらず、1年を通じて勤務している人や、年の途中で入社しその年の12月31日まで勤務している従業員を対象とします。

    また、年の途中で退職した従業員のうち、以下のいずれかにあてはまる場合も年末調整を行います。

    • 死亡により退職した
    • 心身の障害のため退職し、障害の程度や退職時期から見て本年中の再就職は困難と思われる
    • 12月中に給与を支給されたあとに退職した
    • 退職したパート従業員のうち、本年中に支給される給与総額が103万円以下で源泉徴収がされていた(本年中に転職先などから給与支給を受けると見込まれる場合を除く)
    • 海外転勤などにより非居住者となった

    一方、次のいずれかにあてはまる従業員については、年末調整をする必要はありません。

    • 主たる給与が年2,000万円を超えている
    • 『災害被害者に対する租税の減免、徴収猶予等に関する法律』により、所得税などの徴収猶予または還付を受けた
    • 年の途中で退職し、年末調整の対象となる人のいずれの条件にも該当しない
    • 複数の事業所に勤めており、ほかの勤務先で年末調整を受ける
    • 非居住者
    • 継続して同一の雇用主に雇用されない日雇労働者

    必要な書類がすべてそろっているか

    従業員からの提出書類がすべてそろっていることを確認しましょう。従業員の状況により異なりますが、具体的には次のような書類が必要です。

    給与所得者の扶養控除等(異動)申告書扶養控除、障害者控除、勤労学生控除、寡婦控除、ひとり親控除を受けるための書類 ※控除の有無にかかわらず、年末調整を受けるすべての従業員が提出する
    給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書基礎控除、配偶者控除・配偶者特別控除、所得金額調整控除を受けるための書類
    給与所得者の保険料控除申告書生命保険料控除、地震保険料控除、社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除を受けるための書類
    住宅借入金等特別控除申告書住宅ローン控除を受けるための書類

    年末調整の各種控除におけるチェックリスト

    事前準備が整ったら、控除の確認へ進みます。年末調整では、控除の適用ミスが誤った税額計算につながるため、とくに注意が必要な工程です。

    以下では、扶養控除・配偶者控除・保険料控除など、各種控除を適用する際のチェックポイントを整理しています。書類を回収したあと、処理を進める際の確認作業としてご活用ください。

    扶養控除等

    扶養控除は、合計所得金額が58万円以下(令和7年から)の一定の要件を満たした扶養親族がいる場合に適用される控除です。

    年末調整でチェックしたいポイントは、次のとおりです。

    すべての年末調整の対象者から給与所得者の扶養控除等(異動)申告書を受け取ったか
    本年中に源泉控除対象配偶者や扶養親族に異動があった従業員は、異動申告をしているか
    本年中に死亡した源泉控除対象配偶者や扶養親族が、控除の要件に該当するか否かを正しく判定しているか
    源泉控除対象配偶者の所得金額合計は95万円以下、扶養親族の所得金額合計は58万円以下の範囲に収まっているか
    扶養親族等について区分認定が正しく行われているか
    国外居住親族について、扶養控除等が適用されるかどうかを確認したか
    扶養親族等に該当する場合は、親族関係書類や送金関係書類を受け取っているか

    対象となる親族について、所得金額の要件を満たしていることを確認する必要があります。

    障害者控除・ひとり親控除・寡婦控除・勤労学生控除

    障害者控除は、従業員本人や配偶者、扶養親族に障害がある場合に受けられる控除です。

    ひとり親控除と寡婦控除は、一定の要件を満たすシングルファザー・シングルマザーや寡婦に適用される控除。勤労学生控除は、学生かつ一定の要件を満たす従業員に適用される控除です。

    年末調整でチェックしたいポイントは、次のとおりです。

    障害者に該当する人の情報が正しく記載されているか
    障害者について、区分認定が正しく行われているか
    ひとり親・寡婦・勤労学生に該当するか否かを正しく判定しているか

    配偶者控除・配偶者特別控除

    配偶者控除とは、合計所得金額が58万円以下(令和7年から)の配偶者を扶養している場合に適用される控除です。一方、配偶者特別控除とは、配偶者控除を受けられないときでも、配偶者の合計所得金額に応じて一定の控除を受けられる制度です。

    年末調整でチェックしたいポイントは、次のとおりです。

    所得者本人の合計所得金額が1,000万円以内に収まっているか
    配偶者控除の対象になる配偶者の合計所得金額が58万円(令和7年から)以内に収まっているか
    配偶者特別控除の対象になる配偶者の合計所得金額が48万円(令和7年から)超133万円以下か
    配偶者控除と配偶者特別控除を重複させていないか

    配偶者だけでなく、従業員本人にも収入要件があるので注意しましょう。

    基礎控除

    年間の合計所得金額が2,500万円以下であれば、すべての従業員が受けられる控除です。控除額は、令和6年まで合計所得金額が2,400万円以下なら一律48万円でした。

    令和7年からは合計所得金額に応じて、基礎控除額は以下のとおりです。

    合計所得金額基礎控除額
    132万円以下95万円
    132万円超~336万円以下88万円
    336万円超~489万円以下68万円
    489万円超~655万円以下63万円
    655万円超~2,350万円以下58万円
    2,350万円超〜2,400万円以下48万円
    2,400万円超~2,450万円以下32万円
    2,450万円超~2,500万円以下16万円
    2,500万円超0円

    参照:『令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について』国税庁

    年末調整でチェックしたいポイントは、次のとおりです。

    合計所得金額に応じて、正しい基礎控除額を適用したか

    所得金額調整控除

    年収が850万円を超える従業員のうち、一定の要件を満たす人が受けられる控除です。

    年末調整でチェックしたいポイントは、次のとおりです。

    所得金額調整控除の適用条件に当てはまることを確認したか

    生命保険料控除

    生命保険や介護医療保険、個人年金保険に加入している場合に適用される控除です。

    年末調整でチェックしたいポイントは、次のとおりです。

    保険料を支払ったのは従業員本人であるか
    保険金などの受取人が本人もしくは配偶者や親族になっているか
    控除証明書が添付されているか

    申告書に加えて、保険会社から送られてきた控除証明書を提出してもらう必要があります。

    地震保険料控除

    地震保険料や一定の長期損害保険料に加入している場合に適用される控除です。

    年末調整でチェックしたいポイントは、次のとおりです。

    従業員本人または生計を一にする親族が所有する住宅や、生活に必要な家財が対象となっているか
    控除証明書が添付されているか

    補償の対象となっている住宅や家財について、忘れずに確認しましょう。

    社会保険料控除

    従業員本人が社会保険料を支払った場合に受けられる控除です。

    年末調整でチェックしたいポイントは、次のとおりです。

    対象となる社会保険料のみ記載されているか
    従業員本人または生計を一にする親族の社会保険料であり、支払い者が従業員本人か
    控除証明書が添付されているか

    住宅借入金等特別控除

    住宅ローンを利用してマイホームを購入した従業員が受けられる控除です。初年度は確定申告が必要ですが、2年目以降は年末調整で取り扱います。

    年末調整でチェックしたいポイントは、次のとおりです。

    従業員の名義で購入されているか
    従業員の名義で借り入れをしているか
    住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書が添付されているか
    所得要件を満たしていることを確認したか

    年末調整の集計・税額計算におけるチェックリスト

    控除の確認が済んだら、次は1年間の給与や控除内容をもとに、所得税の過不足を計算する工程へ進みます。集計・計算作業で誤りがあると、還付・徴収の金額がずれてしまい、従業員対応にやり直しが発生することもあるため、気が抜けません。

    以下では、集計ミスや反映漏れを防ぐためのチェックポイントを紹介します。

    賞与や未払給与などを含めたか

    通常支給される給与だけでなく、ボーナスも年末調整の対象です。

    また、年末調整をする際に未払いの給与などが残っている場合は、金額も含めて計算する必要があります。

    参照:『No.2526 給与が一部未払の場合の源泉徴収』国税庁

    中途入社の従業員について、前職の給与や徴収税額などを集計したか

    年の中途で入社した従業員については、前職で支払われた給与の有無に注意が必要です。

    同じ年内に前職での給与支給があった場合は、支給額や源泉徴収税額、社会保険料なども集計しなければなりません。

    参照:『No.2674 中途就職者の年末調整』国税庁

    所得税徴収高計算書を正しく作成したか

    年末調整後に所得税の過不足を精算した場合は、内容を年末調整をした月分の所得税徴収高計算書(納付書)に正しく記載します。徴収税額は忘れずに納付しましょう。

    参照:『5 税額の納付と所得税徴収高計算書(納付書)の記載』

    法定調書の作成におけるチェックリスト

    集計と税額計算が完了したら、次は税務署や市区町村に提出する「法定調書」の作成へと進みます。記載内容に誤りがあると、再提出になるため、正確さが求められます。

    以下では、4種類の法定調書を作成・提出する際のチェックポイントをまとめています。

    提出漏れや記載ミスを防ぐためにも、ひとつずつ確認していきましょう。

    支払調書

    支払調書とは、源泉徴収の義務がある企業が、個人や法人に支払った報酬や源泉徴収税額の合計をまとめた書類です。

    年末調整でチェックしたいポイントは、次のとおりです。

    支払い先や支払い金額などの情報が正しく記載されているか
    支払い先が個人の場合、マイナンバーが記載されているか

    支払調書は、年末調整を行った翌年の1月31日までに、税務署に提出する必要があります。

    法定調書合計表

    法定調書合計表とは、各種法定調書を集計した表のことです。

    年末調整でチェックしたいポイントは、次のとおりです。

    各種法定調書の合計金額を記載したか

    法定調書合計表は、そのほかの法定調書に添えて、年末調整を実施した翌年の1月31日までに税務署に提出します。

    源泉徴収票

    源泉徴収票とは、従業員に1年間に支払った給与総額や給与から徴収した税金、社会保険料などが記載された書類です。

    年末調整でチェックしたいポイントは、次のとおりです。

    税務署に源泉徴収票を提出するべき受給者を確認したか
    従業員に源泉徴収票を交付したか

    年末調整が完了したら、従業員に交付した源泉徴収票と同じものを、翌年の1月31日までに税務署にも提出します。

    給与支払報告書

    給与支払報告書とは、住民税額の算定に用いられる書類です。年末調整を実施した翌年の1月31日までに、従業員が居住する市区町村に提出します。

    年末調整でチェックしたいポイントは、次のとおりです。

    個人別明細書と総括表を正しく作成したか
    提出先の市区町村に誤りはないか

    給与支払報告書には、従業員ごとの情報をまとめた「個人別明細書」と、企業全体での個人別明細書をまとめた「総括表」があります。

    従業員用のチェックリストを配布するのもおすすめ

    年末調整では従業員にさまざまな書類を提出してもらう必要がありますが、記載項目が多く内容も難しいので、書き方がわからず困ってしまう人も少なくありません。

    要点や記入方法などをまとめたチェックリストを配布すれば、記入漏れやミスを減らせるだけでなく、従業員からの問い合わせ対応の手間も軽減できます。

    まとめ|年末調整の効率化に向けてチェックリストの活用も

    年末調整は、1年間の人事労務の集大成となる一大業務です。取り扱う書類も多く、内容も複雑なため、抜け漏れが発生しないようチェックリストを活用することをおすすめします。

    とくに、各種控除における取り扱いを誤ると、間違った税額を徴収してしまうことになるため注意が必要です。本記事で紹介した内容を参考にしつつ、それぞれの会社の業務フローにあわせたチェックリストを作成してみましょう。

    年末調整を効率化|One人事[労務]

    年末調整の手続きは、とても煩雑で工数のかかる業務です。担当者の負担も大きく、人的ミスが発生しやすいのが現状ですよね。ミスなくスムーズに進めるには、チェックリストの作成のほか、業務の電子化も検討してみてはいかがでしょうか。

    One人事[労務]は、書類の回収から申請までの過程を半自動化し、効率的な年末調整を支援する労務管理システムです。回収書類は画面上で一覧表示され、申告内容も書類ごとに一括でチェックが可能。紙のチェックリストを用意しなくても、対応漏れの防止に役立ちます。

    One人事[給与]との連携により還付金の計算もスムーズに進められます。

    One人事[労務]の機能や操作性は、こちらの資料でもご確認いただけます。さらに詳細を知りたい場合は、当サイトよりお気軽にご相談ください。専門スタッフが課題をお聞きしたうえでご案内いたします。

    また、当サイトでは労務管理の効率化に役立つ資料を無料でダウンロードしていただけます。労務管理をシンプルにしたい企業の担当者は、お気軽にお申し込みください。

    One人事」とは?
    人事労務をワンストップで支えるクラウドサービス。分散する人材情報を集約し、転記ミスや最新データの紛失など労務リスクを軽減することで、経営者や担当者が「本来やりたい業務」に集中できるようにサポートいたします。