年末調整の収入金額とは?所得金額との違いや計算方法、書類の書き方も解

年末調整の収入金額とは?所得金額との違いや計算方法、書類の書き方も解

年末調整の書類に収入金額を記入する欄を見て、どの金額を記入すればよいのかわからないと困っていませんか。

年末調整の収入金額は、一般的に「総支給額(控除前の金額)」を指し、給与明細や源泉徴収票のどこを見ればよいか、迷うポイントです。年末調整では「所得金額と何が違うのか」「交通費や住宅手当を含めるのか」といった細かい疑問が浮かぶケースもあります。

本記事では、年末調整の収入金額と所得金額の違いをわかりやすく整理し、含まれる手当や注意点も詳しく解説します。年末調整の収入金額にかかわる書類の書き方も紹介しますので、企業の年末調整担当者はぜひ参考にしてください。
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目次アイコン目次

    年末調整の収入金額とは

    年末調整で記入する収入金額とは、会社員が受け取る給与や賞与などの全額を指します。

    しかし、給与明細や源泉徴収票には、「総支給額」とは書かれていないことが多く、

    どの数字を書けばいいのかわかりにくいと感じている方も少なくありません。

    さらに、給与明細には「総支給額」と「差引支給額(手取り)」の両方が載っているため、初めて記入する人は混乱してしまうでしょう。

    そこで年末調整における収入金額について解説していきます。

    収入金額とは総支給額のこと

    年末調整における収入金額とは、税金や社会保険料などを控除される(源泉徴収)前の金額を指します。一般的に呼び方は、「総支給額」です。年末調整では、給与所得控除をする際に、収入金額を用いて計算します。年末調整における収入金額は、源泉徴収票の「支払金額」に該当する金額です。

    収入金額に含まれる内容

    収入金額には次のような支給項目が含まれます。

    • 基本給
    • 各種手当(役職手当、住宅手当など)
    • 賞与(ボーナス)
    • 経済的利益(会社から受け取った物品や権利などの金銭以外の利益で課税対象となるもの)

    収入金額は給与や賞与など物理的な金銭による収入だけではありません。たとえば、企業から物や権利などを取得したり利益を受けたりした分の価額も含まれます。非課税の通勤手当や出張旅費などは含まれないケースが多い点にも注意が必要です。

    参照:『No.2200 収入金額とその計算』国税庁

    年末調整の所得金額とは

    年末調整で記入する所得金額は、従業員の給与や賞与から一定の控除額を差し引いたあとの金額を指します。

    「所得金額」という言葉も、給与明細には記載されておらず、さらに「収入金額」との違いが混同されやすいポイントです。

    所得金額とは、どのような意味を持つお金なのかを簡単に確認しておきましょう。

    所得金額とは給与所得控除を引いた金額

    年末調整における所得金額とは、給与所得のことです。給与や賞与の合計(収入金額)から、給与所得控除や所得金額調整控除を差し引いた金額を指します。年末調整における所得金額は、源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」に該当する金額です。

    参照:『No.1400 給与所得』国税庁

    給与所得控除とは

    給与所得控除は、給与収入から自動的に差し引かれる「経費」のようなものです。会社員は、事業主のように仕事の経費を細かく申告できません。その代わり1年間の給与収入額に応じて、一定の税率を乗じた金額が給与所得控除として差し引かれる仕組みとなっています。

    参照:『No.1410 給与所得控除』国税庁

    所得金額調整控除とは

    所得金額調整控除とは、条件を満たす会社員が当年の収入金額から、一定額を差し引きできる控除です。所得金額調整控除には、以下の2種類があります。

    • 子ども・特別障害者等を有する者等の所得金額調整控除
    • 給与所得と年金所得の双方を有する者に対する所得金額調整控除

    年末調整で控除手続きができるのは、「子ども・特別障害者等を有する者等の所得金額調整控除」のみです。

    参照:『No.1411 所得金額調整控除』国税庁

    特定支出控除も差し引ける

    給与所得者は、条件を満たしていれば特定支出控除も受けられます。

    特定支出控除とは、仕事に関連した特定の経費(特定支出)が、当年の給与所得控除額の半分を超える場合に適用される控除です。特定支出控除として認められる支出は、以下のとおりです。

    項目内容
    通勤費一般の通勤者として必要と認められる通勤のための支出
    職務上の旅費職場を離れて仕事をするために必要な旅行のための支出
    転居費転勤に伴い、通常必要と認められる転居のための支出
    研修費仕事に必要な技術や知識を得る目的で研修を受けるための支出
    資格取得費仕事に直接的に必要な資格を取得するための支出
    帰宅旅費単身赴任などで、勤務地や居所から本来の自宅に帰る旅行のために必要な支出
    勤務必要経費仕事をするために必要な以下の支出(上限65万円)
    ・図書費
    ・衣服費
    ・交際費など

    条件を満たす支出金額が適用基準を超えた会社員は、特定支出控除を受けられます。ただし特定支出控除は、年末調整ではなく確定申告で手続きしなければなりません。

    参照:『No.1415 給与所得者の特定支出控除』国税庁

    年末調整における収入金額と所得金額の違い

    年末調整における収入金額は、源泉徴収される前の金額を指します。一方の所得金額は、収入金額から会社員が受けられる所得控除などを差し引いた金額です。

    収入金額もらった給与や賞与の合計(控除前の金額)
    所得金額収入金額から各種控除を引いた後の金額(税金の計算に使う金額)

    収入金額と所得金額の違いは、必要経費を差し引く前の金額か、差し引いたあとの金額かと考えるとわかりやすいでしょう。どちらも年末調整において重要です。

    収入金額は、年末調整における計算の根拠として使われる金額でもあります。企業の人事労務担当者は、従業員一人ひとりの収入金額を正しく把握し、ミスのないように注意しなければなりません。

    また給与明細でよく見る「総支給額」は収入金額にあたり、所得金額は明細には記載されていません。

    年末調整における所得金額の計算方法

    年末調整で扱う所得金額は、収入金額から控除額を差し引いて計算します。所得金額は、所得税や住民税を決める基礎になるため、正しく計算することが重要です。計算の手順をわかりやすく解説していきます。

    収入金額から給与所得控除を差し引く

    まず当年の収入金額から給与所得控除を差し引きます。給与所得控除の金額は、収入金額に応じて以下のように決まります。

    給与などの年収控除額
    ~1,625,000円550,000円
    1,625,001円~1,800,000円収入金額×40%-100,000円
    1,800,001円~3,600,000円収入金額×30%+80,000円
    3,600,001円~6,600,000円収入金額×20%+440,000円
    6,600,001円~8,500,000円収入金額×10%+1,100,000円
    8,500,001円~1,950,000円(上限)

    給与所得控除は誰でも自動的に適用され、仕事に必要な経費の代わりとして引かれる金額です。計算するときは、正しい収入金額を把握して、該当の計算式に当てはめましょう。

    収入金額から所得金額調整控除を差し引く

    次に、収入金額から所得金額調整控除額を差し引きます。所得金額調整控除は、収入金額が850万円を超える給与所得者が対象で、以下の条件に当てはまる人にのみ適用します。

    適用対象者
    ・本人が特別障害者に該当する人
    ・年齢が23歳未満の扶養親族を有する人
    ・特別障害者である同一生計配偶者または扶養親族を有する人
    所得金額調整控除額
    控除額=(給与などの収入金額 – 850万円) × 10%

    ※収入金額が1,000万円を超えている場合は、給与などの収入金額を1,000万円として計算

    ※控除額における1円未満の端数は切り上げ

    たとえば、年収1,000万円の給与所得者は次のように計算します。

    所得金額調整控除額(1,000万円ー850万円)×10%=15万円

    年収1,000万円の給与所得者が、所得金額調整控除をした際の控除額は15万円です。このときの給与所得金額は、以下のとおり790万円です。

    給与所得額1,000万円-195万円-15万円=790万円

    年収から該当する所得控除と所得金額調整控除を差し引き、正しい給与所得額を計算しましょう。

    参照:『No.1411 所得金額調整控除』国税庁

    給与所得控除後の給与所得から特定支出控除を差し引く

    仕事に関連した支出が一定基準を満たす従業員は、給与所得控除後の給与所得から特定支出控除を差し引きます。

    特定支出控除は年末調整では扱わず、確定申告で従業員みずからが手続きする点を周知しておきましょう。

    年末調整で収入金額にかかわる基礎控除申告書の書き方

    年末調整で基礎控除を受けるためには、基礎控除申告書を提出しなければなりません。基礎控除申告書には、収入金額や給与所得などを記入する欄があります。以下では基礎控除申告書の書き方について概要を解説していきます。

    基礎控除とは

    基礎控除とは、15種類ある所得控除のひとつで、多くの納税者に適用される控除です。給与所得に対する令和7年の基礎控除額は以下のとおりです。

    合計所得金額基礎控除額
    132万円以下95万円
    132万円超~336万円以下88万円
    336万円超~489万円以下68万円
    489万円超~655万円以下63万円
    655万円超~2,350万円以下58万円
    2,350万円超〜2,400万円以下48万円
    2,400万円超~2,450万円以下32万円
    2,450万円超~2,500万円以下16万円
    2,500万円超0円

    基礎控除は2,500万円以下の人を対象としています。また、所得金額によって段階的に設定されている点にも注意して、間違いのないようにしましょう。

    参照:『No.1199 基礎控除』国税庁

    基礎控除申告書とは

    基礎控除申告書とは、年末調整で基礎控除を受けるために提出しなければならない書類です。「基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書」の左側にある部分が該当します。

    年末調整では、会社員が基礎控除を受けるために、この左側部分に必要事項を記入する必要があります。

    基礎控除申告書の書き方手順

    基礎控除申告書の書き方を手順に沿って紹介します。企業の担当者は申告書の正しい書き方を把握し、記入漏れや計算ミスのないよう従業員へ周知しましょう。

    ▼申告書の書き方をより詳しく知るには、以下の記事もご確認ください。

    給与所得の収入金額を記入

    基礎控除申告書の「給与所得の収入金額」を記入します。給与所得の収入金額欄は、給与明細を確認しながら1年間の合計金額を記入しましょう。書類を書いている時点で、12月分の給与や賞与額が確定していなければ、概算額を記入します。

    給与所得の所得金額を記入

    基礎控除申告書の「給与所得の所得金額」を記入します。給与所得の所得金額には、収入金額から給与所得控除を差し引いた金額で記入しましょう。

    給与所得控除額は、収入金額に応じて金額が設定されています。基礎控除申告書の裏面にも記載されています。

    所得金額調整控除を受ける従業員は、給与所得金額から所得金額調整控除額を差し引いた金額で記入しましょう。

    参照:『No.1410 給与所得控除』国税庁

    給与所得以外の所得の合計額を記入

    基礎控除申告書の「給与所得以外の所得の合計額」を記入します。給与所得以外に、そのほかの所得があれば、計算して記入しましょう。そのほかの所得には、以下の所得などが該当します。

    • 事業所得
    • 雑所得
    • 配当所得
    • 不動産所得
    • 退職所得
    • 山林所得
    • 一時所得
    • 利子所得
    • 配当所得
    • 譲渡所得など

    給与以外の所得がなければ「0」を記入します。

    合計所得金額の見積額を記入する

    基礎控除申告書の「あなたの本年中の合計所得金額の見積額」を記入します。「給与所得の所得金額」と「給与所得以外の所得の合計額」を合算した金額を記入しましょう。

    参照:『《記載例》令和6年分基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書兼年末調整に係る定額減税のための申告書兼所得金額調整控除申告書』国税庁

    基礎控除申告書の修正

    基礎控除申告書を含む年末調整書類は、対象年の翌年1月31日までに税務署へ提出しなければなりません。修正箇所があるときは、期限内に対応しましょう。

    修正方法は、該当箇所に二重線を引き、正しい内容を記入して訂正します。

    期限を過ぎてしまうと、従業員みずからが確定申告しなければなりません。企業の担当者は、早めの準備を呼びかけましょう。

    まとめ

    年末調整における収入金額とは、給与や賞与などの総支給額を指します。年末調整の収入金額と混同しやすい給与所得金額とは、会社員の給与収入金額から給与所得控除や特定支出控除などを差し引いた金額です。

    年末調整では、基礎控除を受けるために、収入金額や所得金額の違いを理解したうえで計算しなければなりません。企業の年末調整担当者は、従業員に正しく説明できるようにしておきましょう。

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