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顧問とは?役割や意味、相談役との違いを解説!

顧問とは?役割や意味、相談役との違いを解説!

顧問とは、特定分野の知見やノウハウ、経験や人脈を活かして助言やサポートを行う立場の人物です。顧問が持つ専門性の高い知見やノウハウを借りると、企業は経営課題の解決や戦略の決定に役立ちます。

しかし「顧問とは具体的にどのような定義の存在なのかわからない」「顧問を依頼する前に、まずは一般的な待遇を知りたい」と考えている人もいるでしょう。

そこで本記事は、顧問が持つ役割やメリット・デメリットを含めてわかりやすく解説しながら、混同しやすい役職との違い、顧問の種類や待遇面についてもご紹介します。

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    顧問とは? 

    顧問とは、企業の経営課題などを解決するために、専門的な知識やノウハウ、経験や人脈を活かして経営層や企業幹部の指導を行う存在です。英語では「advisor」といいます。英語表記の名刺に記載する場合は「senior corporate advisor」や「chief board advisor」などと表現されることもあるでしょう。

    顧問の役割

    顧問は、特定の業界や分野で培った経験から、会社経営について課題をもとにアドバイスや指導、特定任務のサポートを行いながら経営課題を解決したり、企業価値を向上させたりする役割があります。しかし顧問の設置自体は法律で定められているわけではないため、任意であり、企業によって設置の有無も異なります。

    また、顧問は日本独自の役職で、会社法で定められていないため、経営の意思決定権を持ちません。ただし、取締役や役員と兼任で顧問に就任する場合は、それぞれ取締役や役員として登記され、経営の意思決定権も持ちます。

    特に中小企業では、特定分野の専門性の高い人材がいないため、企業をより成長させるために顧問契約を結ぶ企業も多いでしょう。助言やアドバイスだけでなく、具体的な課題解決のためのサポートを受ける企業も少なくありません。

    顧問を依頼する内容は

    • 企業価値を高めたい
    • 気軽に経営戦略の相談がしたい
    • トラブルが起きたときに迅速に解決したい
    • 特定分野における専門家の助言やサポートがほしい

    などが挙げられます。

    相談役との違い

    相談役は、会社経営について強い影響をもたらす問題に対して、知見や経験からアドバイスを行うための役職です。会社法上の扱いでは、経営に対する意思決定権は持ちませんが、経営陣への影響力を発揮する必要があるというのが特徴です。そのため、元取締役など企業内で過去に重役を担っていた人物が相談役に就任するケースが多いでしょう。

    参与との違い

    参与とは、上位等級を示す職能資格であるため、会社によって定義は異なりますが、執行役員や部長級に匹敵し、その役割を担うのが一般的でしょう。たとえば執行役員や部長という役職を離任する場合、降格させるのではなく、参与として、これまでと同等の処遇で同様に役割を担う場合です。

    顧問には2種類ある

    会社の顧問には2種類あり、内部顧問と外部顧問に分類されます。それぞれの内容を解説します。

    内部顧問

    内部顧問とは、もともと社内にいた人材が顧問を務めることをいいます。たとえば、取締役を退任したあとに、顧問に就任したり、すでに役員以上の人物が顧問を兼任したりするパターンがあるでしょう。社内事情に精通した人材が就任すると、企業そのものや現場を理解したうえで、経営に関するアドバイスができるというメリットがあります。

    外部顧問

    外部顧問とは、弁護士や税理士、経営コンサルタントなど外部の専門家が顧問として活動することをいいます。外部顧問は、専門的な知見と経験から、その分野に関する助言を行う役割を担っています。社内の人材ではないため、第三者目線で客観的な助言をもらえるというメリットがあります。

    外部顧問が求められている理由

    顧問の中でも、近年では外部顧問がより重視されています。外部顧問が求められている理由や背景にはどのようなものがあるのか解説します。

    第三者目線で客観的な助言をしてくれるから

    外部顧問が重視されるのは、客観的な視点で助言をしてもらえて、企業の成長につながるためです。

    従来、会社の出身者で内部顧問を設置する方が一般的でした。しかし内部顧問を設置しても、社内事情を深く知っているが故に、斬新な意見や助言ができなかったり、企業の役職者に有利な助言になってしまったりするケースが少なくありません。

    外部顧問は第三者視点で客観的な見方ができるため、会社の社内事情に関係なく、適切で効果的な助言を得られる可能性が高いと考えられています。

    本来は、内部顧問だから効果がない、外部顧問だから効果があるとは言い切れないため、顧問となる人物を見極めることが大切です。客観的な視点を持てるか否かがポイントといえるでしょう。

    内部顧問は、忖度が起こる場合があるから

    外部顧問が重視される理由は、内部顧問による影響力が危惧されているためです。内部顧問は、もともと企業内で取締役など役員を経験した人物が就く場合が多く、経営に関する意思決定権はないものの、大きな影響力を保持しやすいでしょう。

    たとえば、もともと取締役だった人物が退任して顧問となり、当時役員だった人物が取締役になった場合、以前の上下関係が影響し、顧問の意見を無視できないようなことも少なくないはずです。

    このような状況を防ぐため、内部顧問よりも外部顧問を選び、経営の意思決定に忖度(そんたく)がない状態にする狙いがあるといえるでしょう。

    顧問の立場

    顧問は会社法で定められた役職ではなく、企業側も顧問を設置するかどうかは任意とされています。そのため、会社は顧問を設置する有無や具体的な待遇、内容も自由に設定できます。顧問を設置したいという場合は、定款で待遇や契約期間のルール(上限)などを定めておくとよいでしょう。

    取締役のまま顧問になるケース

    顧問になるケースとして、たとえば代表取締役だった人物が取締役の地位を持ちながら顧問も兼任するパターンが挙げられます。この場合のように、代表取締役を退任したあと、取締役として顧問を兼任する場合は、登記上は「取締役」、会社法上でも役員と扱われます。

    取締役を退任して顧問にケース

    取締役を退任したあと、顧問になる場合、登記はされず、会社法上の役員という扱いにもなりません。顧問自体は会社法上の役職にはならないため、契約関係を結ぶのが一般的です。

    顧問を雇うメリット

    企業が顧問を雇うメリットにはどのような点があるのでしょうか。具体的なメリットをご紹介します。

    専門的かつ客観的な助言が得られる

    外部顧問は、専門分野における知見や経験、人脈などが豊富な場合が多く、特定分野における不足を補い、課題の解決を目指して助言をしてくれる存在です。

    顧問から助言をもらうと、会社として一から学習して取り組む必要がなく、効率的に特定分野の課題を解決できるでしょう。

    また、外部顧問による客観的な視点で、社内に染みついた文化や風土と切り離した助言や解決策を提示してくれる可能性があります。

    専門分野の知見や人脈を活用できる

    顧問が助言やアイデアを示してくれると、従来社内にはなかった専門分野の知見が得られます。また、人脈を活用すると、これまで接点のなかった企業と関係を持てたり、取引先が増えたりするなど、数字に直結するメリットもあるでしょう。

    幹部が経営に専念できる

    顧問がいると、専門分野に関する情報やノウハウなどを効率的に取り入れられるため、経営層が専門外について一から学習したり、情報収集に奔走したりしなくても済みます。

    また、問題やトラブルが生じた際もすぐに顧問に相談できるため、問題の早期解決がしやすくなるでしょう。このように、効率的に専門分野の視点を取り入れ、問題の早期解決ができるため、企業の幹部が経営活動に専念できることも大きなメリットです。

    社会的信用や企業価値向上につながる

    顧問を設置していると、弁護士や税理士などの専門家が監修していることが外部に伝わるため、企業への信用性が高まります。弁護士や税理士が顧問として設置されていると、法令遵守を徹底している企業という印象を抱いてもらいやすくなるでしょう。信用が向上すると、資金調達や取引先企業との関係にもよい影響があるはずです。

    顧問を雇うデメリット

    顧問を雇うデメリットにはどのような点があるのでしょうか。企業にとってよい影響をもたらしてくれる顧問ですが、デメリットがあるのも事実です。あらかじめデメリットを把握しておくと、リスク回避にもつながるため、確認してみましょう。

    成果がわかりにくく契約期間が長くなる

    顧問契約を結ぶ場合、顧問を雇った成果を測定できるまでには時間がかかるため、長期契約になりやすく、そもそも評価制度がないため、契約解除がしにくいという問題があるでしょう。

    人材を見つけるのが難しい場合がある

    外部顧問の場合、経歴や実績などの客観的な情報は確認できても、実際に自社に寄り添いながら力量を発揮してくれるかという点は事前に見極められないかもしれません。

    さらに、分野によっては専門性の高い人材が少なく、顧問をオファーする競争が激しい場合もあり、人材を確保できる保証はありません。競争が激しいと、条件が厳しくなるケースもあるでしょう。

    顧問が複数人になると混乱が生じる場合もある

    外部顧問を設置する場合、必要な専門性別に顧問を依頼します。そのため、顧問の数が複数人になることも少なくありません。コストがかかるだけでなく、専門性を一気に取り入れようとすると、混乱が生じる場合もあるでしょう。

    顧問の待遇(報酬など)

    顧問を雇う場合の待遇は、どのような内容を想定しておけばよいのでしょうか。顧問契約の内容は会社ごとに異なるため、ルールや規程はありませんが、一般的な目安として、契約形態や勤務形態、報酬の目安について確認してみましょう。

    契約形態

    顧問の契約形態は、委任契約が一般的です。労働の対価として報酬を支払う雇用契約ではなく、依頼した業務を遂行する対価として報酬を支払う契約です。

    また、雇用契約を結ぶ場合は社会保険の加入が認められますが、委任契約の場合は社会保険の資格は取得できません。このように、契約形態によって、社会保険の加入可否にも違いがあります。

    勤務形態

    顧問の勤務形態には、常勤と非常勤があります。常勤顧問は、企業の従業員と同じように決められた時間に勤務する顧問を指し、会社にも定期的に出社し、アドバイスや助言をします。常勤顧問の場合は、雇用契約と委任契約のどちらの契約形態もあります。

    非常勤顧問は、必要なタイミングや状況に応じて労働する顧問を指します。非常勤顧問は、専属ではなく複数企業の顧問として掛け持ちをしている場合が多くあります。会社への出社も必須ではなく、月に数回だけ出社するというケースも少なくありません。非常勤顧問の場合は委任契約が一般的で、内容に応じて顧問料が異なります。

    報酬目安

    顧問の報酬目安は、一般的には役員待遇とされていますが、常勤なのか非常勤なのか、内部顧問なのか外部顧問なのかによっても異なります。

    産労総合研究所の調査では、内部顧問の平均年間報酬について、常勤の場合は675万円、非常勤の場合は498万円と報告されています。内部顧問の場合は、前例(過去の報酬額)を基準にして決めることが多いのも特徴です。

    外部顧問に関しては、依頼する分野やテーマによって報酬相場が異なり、弁護士の場合は月5万円程度、税理士は企業の年商に応じて変わるのが一般的です。基本的には委任契約の場合、依頼された内容を遂行すれば報酬が支払われるのが特徴です。また、営業関連の顧問として成果報酬型の契約を結ぶと、成果によって大幅に報酬が変わるでしょう。

    参照:『役員報酬の実態に関するアンケート調査』産労総合研究所

    契約期間

    顧問の契約期間について、内部顧問の場合は取締役会で決定されますが、外部顧問の場合は一般的には1年間で、双方どちらかによる申し出がない場合は自動更新される仕組みが多いでしょう。また、トラブルや問題解決のために短期間の契約で外部顧問契約を行う場合もあります。

    顧問の助言を活かすことがポイント

    委任顧問を雇う場合、成果や内容に関係なく報酬を支払います。そのため、顧問の助言やサポート、人脈などをどれほど引き出したり活用したりできるかが重要になるでしょう。顧問を契約したからといって、大きな成果がすぐに出るわけではありません。顧問を雇っただけで満足してしまうと、コストの無駄使いになってしまうでしょう。

    まとめ

    企業が顧問を設置すると、企業価値の向上や専門的な知見を得られるなど複数のメリットがあります。しかし、顧問契約は契約期間が長期にわたることも少なくないためコストがかかり、分野に応じた複数の顧問を設置すると混乱が生じてしまうデメリットがあるのも事実です。

    顧問には内部顧問と外部顧問があり、さらに契約内容によって待遇面の違いもあるため、顧問契約を結ぶ際は、企業と顧問の間で内容や条件をすり合わせ、認識に相違のないように進めるといいでしょう。