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私用とは【意味・使い方】所用との違い、仕事を休む理由になる? トラブル防止法も解説

私用とは【意味・使い方】所用との違い、仕事を休む理由になる? トラブル防止法も解説

私用とは、個人的な用事を指し、日常生活の中でよく使われる言葉です。しかし、「所用」との違いについては混乱することもあるでしょう。ビジネスでは私用で休まなければならない場面もあります。

本記事では、私用の意味と使い方、「所用」との違いを踏まえて解説します。また、私用を理由に仕事を休むことが適切かどうかや、私用で休む場合のトラブルを未然に防ぐ方法についても紹介します。私用の意味をより深く理解することで、仕事でのコミュニケーションにお役立てください。

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    私用の意味とは

    私用とは、個人の都合や業務時間以外の私的な目的の用事です。仕事とは関係のないプライベートの予定を指すのが一般的です。

    たとえば、従業員が業務時間中に役所に行かなければならない用事があったベ場合、それはプライベートなので「私用」にあたります。

    ビジネスシーンにおいて私用は、以下のような使い方で用いられます。

    • 「私用のため、明日の午後休暇を取得します」
    • 「私用で外出する必要があるため、15時から17時まで不在です」

    所用との違いは何?

    私用と似ている言葉に「所用」があります。

    所用とは個人的か公的(仕事)かにかかわらず、すべての何らかの用事を指します。つまり、取引先との打ち合わせによる離席や不在、個人的な都合による休みも含みます。

    公私問わず広範囲の用事を指す「所用」の一部に「私用」があるとイメージするとわかりやすいでしょう。

    私事との違いは何?

    私事(わたくしごと)も、私用と区別が難しい言葉です。私用と私事の違いは範囲です。

    私事はビジネスシーンにおいて以下のように使用されています。

    「私事ではございますが、今月いっぱいで退職させていただきたくお願い申し上げます」

    個人的な用事を指す「私用」より、「私事」はもう一歩踏み込んで「個人的な事情」という意味を含みます。

    上記の例では、退職理由として育児や介護など家庭の事情が考えられますが、それはあくまでも「事情」であり、一時的な「用事」ではありません。私事は私的な都合による事情を説明するときに使われる点で、私用とは異なる場面で使われています。

    私用の使い方と例文

    続いて、ビジネスシーンにおける私用の使い方を例文を用いながら解説します。

    休暇の申請

    例文
    「私用のため、来週の月曜日と火曜日を休暇として取得したいと思います。承認をお願いいたします」

    業務時間中の外出

    例文
    「私用のため、明日の午後3時から4時まで外出させていただきます。その間、私の業務は〇〇(代わりのメンバーの名前)にお願いしています」

     ミーティングやイベントの欠席

    例文
    「私用が入ってしまったため、来週の金曜日のミーティングを欠席させていただきます。事前に資料を提供しますので、ご確認をお願いいたします。」

    メールの例文

    例文
    件名: 〇月×日【私用による有給休暇申請】
    お疲れさまです。□□(自分の名前)です。業務時間外に失礼いたします。
    急で恐れ入りますが、△月△日 月曜日は私用により有給休暇を申請させていただきたくお願い申し上げます。

    じつは、2〜3日前から子どもが熱を出しており、週末に39℃まで上がってしまいました。週明けに病院へ連れて行こうと考えています。
    つきましては、急で恐れ入りますが、△月△日 月曜日は有給休暇を申請させていただきます。経過によって、追加でもう数日お休みをいただくかもしれません。
    週明けあらためて連絡いたしますので、経過と業務分担について、相談させていただけますと幸いです。何卒よろしくお願いいたします。
    □□(自分の名前)
    ———

    私用は仕事を休む理由になる?

    一般的に私用は仕事を休む理由として認められます。仕事を休む理由として、よくある私用の例を紹介します。

    • 通院・病気
    • 子どもの学校行事など家庭の事情
    • 冠婚葬祭
    • 銀行や公的手続き
    • 旅行やレジャー

    通院・病気

    「仕事に穴を開けられない」という責任感は大切ですが、自分の健康を犠牲にすることは避けるたいところです。体調が悪いときは無理せず病院へ行き、静養しましょう。ほかのメンバーに風邪を移さないためにも、適切に私用で休むことが求められます。

    また、自身の治療目的だけでなく、家族の定期健診に付き添ったりお見舞いに行きたい場合も私用を理由に仕事を休む人もいます。

    家庭の事情

    子どもの学校行事への参加や家族が体調を崩した際の送迎や付き添い、看病も私用の一つです。家庭の事情で会社を休むことは、多くの場合、私用として仕事を休む正当な理由と認められます。

    冠婚葬祭

    冠婚葬祭も私用の一つです。出勤日にお葬式や結婚式に出席、参列する場合、会社を休まなければなりません。多くの企業が「慶弔休暇」を制度として設けており、冠婚葬祭を休暇の理由に認めています。

    ただし、慶弔休暇は法律に定められた法定休暇ではなく、企業が独自で定める休暇です。慶弔休暇のような特別休暇制度がない企業でも、冠婚葬祭を理由に有給休暇を取得することは可能です。冠婚葬祭のような私用を理由として、適切な手続きを踏めば、問題なく休めると考えてよいでしょう。

    銀行や公的手続き

    結婚などで名字が変わった場合の口座の名義変更手続きや、引っ越しによる住所変更手続きも、私用として会社を休む理由になります。銀行や市役所・区役所でなければできない手続きは、通常は平日にしか行えないため、私用での休暇が必要です。

    旅行やレジャー

    旅行やレジャーも私用に含まれます。適切な手続きを踏めば、私用として休暇中に何をするかは個人の自由です。社会的な道義に反しない限り、プライベートの予定を入れるために休暇を取ることは問題ありません。

    私用は有給休暇や遅刻の理由にもなる

    私用を理由として有給休暇を取得することも可能です。従業員が有給休暇を取得するときは、具体的な理由を会社に報告する必要はありません。

    また、遅刻の理由としても「私用」は認められます。個人的な事情で遅れる場合、具体的な詳細を伝えずに「私用のため遅れます」と申告することで認められるのが一般的です。たとえば、子供の送り迎え、家庭の緊急事態、朝の健康状態などが遅刻理由の私用に該当します。

    当日の遅刻や早退では認められない場合も

    現実的には、すべての会社が私用による休暇に対して理解があるとは限りません。繁忙期などで人手が足りないときなどは、当日の遅刻や早退、休暇が認められないこともあるでしょう。

    休暇や遅刻・早退を申請するときは、自社の申請ルールに沿って行います。当日連絡に難色を示した場合は、直属の上司やチームメンバーに具体的な理由を伝えるとよいかもしれません。たとえば、「家族の健康問題で遅れます」や「公的な手続きを行う必要があります」などと説明すると、理解を得やすくなるでしょう。私用という言葉で一括りにすると、不誠実な印象を与える恐れもあります。

    社外向けの理由には使わない

    取引先に対して休みを伝える場合は、「私用」を使うのは避けた方がよいでしょう。

    私用により従業員が離席していることを伝える場合は

    • 「〇〇は、所用で席を外しております」
    • 「〇〇は、ただいま外出しております」

    と伝え、伝言を承るまたはかけ直しを提案するとよいでしょう。

    終日不在を伝える場合は

    • 「私事で恐縮ですが、△日はお休みをいただいております」

    と私用という言葉は使わずに伝えるとよいでしょう。

    ビジネスで使われる私用の種類

    私用は「個人的な用事」だけではなく、ビジネスシーンでは「公私を分けるための言葉」としても使われます。ビジネスでつかわる「私用」を用いた言葉の意味を紹介します。

    • 私用携帯
    • 私用メール
    • 私用端末
    • 私的ネットワーク

    私用携帯

    私用携帯とは、仕事以外で使っている携帯電話です。公私混同を避けるため、プライベートで使う携帯電話を「私用携帯」、仕事で使う電話を「社用携帯」と分けます。業務時間中に私用携帯を使うのは、多くの企業で原則として禁止されています。

    私用メール

    私用メールとは、個人的な目的や非業務関連のコミュニケーションのために使用されるメールを指します。私用メールは、友人や家族との連絡、オンラインショッピング、趣味や興味に関する情報の受け取りなど、ビジネスとは関係ないさまざまな目的で使用されます。

    私用メールでのやり取りは、業務の内容や会社の情報が第三者に漏れるリスクを避けるため、業務に関連しない内容に限定すべきです。仕事のメールは、私用メールではなく社用アドレスを使うのが一般的です。

    私用端末

    私用端末とは、個人がプライベートで使用する携帯電話やパソコンのことを指します。多くの企業では、私用端末を業務で使うことを推奨しておらず、雇用契約書や社内規約で制限や禁止が定められていることが一般的です。

    私用ネットワーク

    私的ネットワークとは、個人が自宅や外出先で利用するインターネット接続環境のことを指します。多くの企業は、セキュリティ上の理由から、私用ネットワークへの社用端末の接続を制限しています。しかし、会社の方針やリモートワークの取り組みによっては、特定の条件下での接続が許可されることもあります。

    私用にまつわるトラブル

    私用を理由とした休暇は問題ありませんが、私用による休暇や業務中の私用端末の利用は以下のようなトラブルを招く可能性があります。いずれもリスクをともなうため、十分に注意しましょう。

    • 私用休暇中の病気やケガ
    • データの漏えいによるコンプライアンス違反

    私用休暇中の病気やケガ

    従業員が私用による休暇中に病気やケガを負った場合、「私傷病休職」が適用されることになります。

    私傷病休職とは、業務外の病気やケガによる療養のために労働を免除することで、労災保険の対象外です。企業により制度設計は異なり、制度が整っていないこともあります。

    また、健康保険に加入している従業員は、傷病手当金制度を利用できます。傷病手当金とは病気やケガで4日以上仕事を休む場合に、給与が支払われない期間の生活を保障する制度です。傷病手当金の手続きは、本人の申請により会社経由で行われることもあるため、担当者は理解しておきましょう。

    データの漏えいによるコンプライアンス違反

    私用端末を業務中に使用していると、機密データが第三者に漏えいするリスクがあります。私用端末や私用インターネットでは、セキュリティ対策が不十分であり、マルウェアやウイルスの侵入リスクが高いためです。紛失や盗難による情報漏えいのリスクも否定できません。

    私用にまつわるトラブル防止法

    従業員による私用にまつわるトラブルを防止する方法を紹介します。

    • 私傷病休職制度を整備する
    • 私用端末の利用に関する規定を設ける
    • セキュリティ対策を強化する

    私傷病休職制度を整備する

    企業が従業員の私用による休暇中に病気やケガを負った場合のトラブルを防ぐためには、私傷病休職制度の整備が必要です。制度を整えることで、従業員が安心して療養に専念でき、会社側も法的トラブルを避けられるでしょう。休職期間や復帰の条件、雇用契約終了の条件などを就業規則に明記します。

    私用端末の利用に関する規定を設ける

    リモートワークを認めている企業では、私用端末の利用に関する明確な規定を設けることが大切です。私用端末を業務に使用する際には、機密情報の取り扱いに関するルールやセキュリティ対策を明記し、従業員が理解しやすい形式で周知しましょう。

    具体的には、私用端末に機密データを保存しない、業務専用のセキュリティソフトをインストールする、定期的なパスワード変更を義務づけるなどが挙げられます。

    セキュリティ対策を強化する

    私用端末の利用を認める企業では、セキュリティ対策の強化が欠かせません。端末の機能制限やデスクトップ仮想化をすることで、情報漏えいのリスクを抑えることができます。端末にデータを残さないような設定にすれば、紛失や盗難のリスクも防げるでしょう。

    また、従業員に対するセキュリティ教育を実施し、私用端末の利用にともなうリスクと対策について周知徹底することも大切です。研修により、従業員のセキュリティ意識を高め、企業全体の情報セキュリティを強化できます。

    私用を使う際の注意点

    最後に、私用という言葉や私用による休暇を認める場合の注意点を解説します。

    • 「私用」は目上にも使える
    • 私用による有給休暇の詳細理由を聞いてはいけない
    • 私用による休暇・中抜けの規定を設ける

    「私用」は目上にも使える

    私用という言葉は、目上の上司や顧客にも使えます。ただし、重要な打ち合わせを不在にする理由や欠席の理由として、よい印象を持たれない可能性があります。

    私用は個人的・プライベートな用事を強調するときに使われます。そのため、私用による休暇の場合、具体的な事情を伝えた方が周囲から理解を得られやすいでしょう。

    私用による有給休暇の詳細理由を聞いてはいけない

    従業員が有給休暇を取得するときは、会社が理由を尋ねることは原則として認められていません。有給休暇は法的に認められた従業員の権利であり、理由を聞くことは、場合によってハラスメントと解釈される可能性があります。

    具体的な理由を尋ねると、従業員に休暇の取得が制限された印象を与えるかもしれません。企業としては、従業員から休暇の申請があった場合、理由を問わずに受け入れる姿勢が必要です。

    私用による休暇・中抜けの規定を設ける

    私用による休暇や中抜けに関する明確な規定を設ける必要があります。たとえば、遅刻や欠勤についての事前届出の必要性や、会社の承認が必要な場合の手続きについて明記します。病気や体調不良による早退や、公的手続きのための中抜けも同様です。

    規定を整備することで、不要なトラブルを回避できるとともに、従業員が安心して私用のために休暇を取得できるでしょう。

    まとめ

    私用とは個人的な用事を指し、仕事とは関係のないプライベートな予定を意味します。ビジネスシーンでは私用を理由に休暇を取得することが認められますが、会社がその理由を尋ねることはパワーハラスメントとみなされる場合があります。

    リモートワークの普及など働き方が柔軟になったことで、私用と公的な職務との明確な区別が求められるようになってきたといえます。休暇のルールや私傷病休職制度など、会社として必要な規定を整備し、私用に関するトラブルを防ぎましょう。