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赴任とは? 意味や着任と転勤など類義語の違い、単身赴任・海外赴任の現状も紹介

赴任の意味は、辞令にしたがって、従業員がほかの勤務地に赴くことです。赴任に似ている言葉は多くありますが、それぞれ異なる意味を持つため、誤用には十分な注意が必要です。

本記事では、赴任の意味や使用例を紹介するとともに似ている言葉との違いを解説します。日本における単身赴任と海外赴任の現状にも触れているので、参考にしてください。

赴任とは? 意味や着任と転勤など類義語の違い、単身赴任・海外赴任の現状も紹介
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    赴任とは?

    赴任の意味とは、会社からの辞令にしたがって、従業員が別の勤務地に赴くことです。主に、別の地域の事業所(支社)へ行く場合に用いられます。

    会社内での異動を意味する言葉の中でも、赴任は別の勤務地に赴く状態に焦点を当てています。

    赴任と着任、転勤、出向の違い

    赴任の意味と混同されがちな言葉に「着任」「転勤」「出向」などがあります。いずれも従業員の行動に焦点を当てたものですが、それぞれ意味合いが異なるため、ビジネスシーンで誤って使用しないように注意が必要です。

    それぞれの意味や赴任との違いを詳しく解説します。

    赴任と着任の違い

    着任の意味は、新しい勤務先で与えられた仕事に就くことです。赴任は新しい勤務地への異動を意味し、着任は新しい勤務地での役職就任を指します。

    着任は継続的な状態をあらわし、特定の職位や責任に関連しています。

    赴任と転勤の違い

    転勤の意味は、新しい勤務地で働くことです。赴任と意味合いが似ていますが、それぞれ使用されるシーンが異なります。

    赴任所属部署は変わらず、別の勤務地へ行く場合
    転勤所属部署が変更になったうえで、別の勤務地に行く場合

    また、転勤は所属部署も変更になるため、赴任よりも長期的なものとみなされるのが一般的です。引っ越しを必要とする異動も多く、家族を帯同する場合にも用いられます。

    赴任と出向の違い

    出向とは、現在所属している企業に籍を置いたまま、グループ会社や子会社などの関連企業で就労することです。赴任や転勤が自社内での異動であるのに対し、出向は自社に関連する別会社へ出向くことをあらわします。

    ベテラン従業員は技術や経営を指導するため、若手従業員はスキルアップや経験を積むために出向を命じられることが多くあるでしょう。

    赴任の使い方【例文あり】

    赴任の具体的な使い方を例文とともに紹介します。

    • 赴任する
    • 赴任地
    • 単身赴任
    • 海外赴任

    赴任する

    「~に赴任する」というように動詞として使用する例文です。

    例文
    ・札幌支社に異動になり、来月の初旬に赴任する。
    ・年明けには大阪の事業所に赴任するため、急いで引越しの準備をしている。

    赴任地

    赴任地の意味は、新たな勤務先を指しています。

    例文
    ・Aさんの赴任地は沖縄だと聞いた。
    ・次の赴任地はおそらく東北地方になるだろう。

    単身赴任

    単身赴任の意味は、家族と離れて、単独で赴任地で勤務することです。

    例文
    ・妻と話し合った結果、子どもが転校せずに済むように単身赴任を選んだ。
    ・来月から単身赴任になる予定だが、2週間に一度は家族のもとに帰りたい。

    海外赴任

    海外赴任の意味は、国外の勤務地に行くことです。海外支社に行くときはもちろん、現地法人に赴く場合にも使用されます。

    例文
    ・念願かなって海外赴任が決まり、来年からアメリカ支社で働くことになった。
    ・部長から海外赴任の打診があったが、受けるかどうか決めかねている。

    赴任と似ている言葉の意味【例文あり】

    赴任と響きや意味が似ている言葉には、以下の5つが挙げられます。赴任の類義語の意味を、例文を交えながら紹介します。

    • 就任
    • 帰任
    • 駐在
    • 配属
    • 転属

    就任

    就任の意味は、組織内で一定のポジションに就くことです。基本的には、取締役や支店長など、高い役職に就く際に用いられます。

    係長や主任などのポジションへ就くことは、就任ではなく昇進・昇格などを使用するのが一般的です。明確な決まりはありません。

    赴任と就任のもっとも大きな違いは、役職変更の有無です。赴任はあくまでも勤務地が変わる際に用いられるため、役職が変わらないケースもあります。

    例文
    ・来年度から、現在の本部長が常務取締役に就任することが決まった。
    ・青森工場の工場長にはBさんが就任することになったらしい。

    帰任

    帰任の意味は、赴任とは反対で、以前の勤務地や業務に戻ることです。赴任先での役目を終えて、もともと所属していた職場に復帰する際に用いられます。

    例文
    ・現場を知るため群馬県の工場に赴任しているが、来月から本社に帰任する。
    ・育児休暇を取っていたCさんの代わりとして神戸店にいたが、大阪店に帰任する。

    駐在

    駐在の意味は、ある場所に長期間とどまることです。ビジネスシーンでは、主に与えられた任務を遂行するため、駐在員が派遣される場所に長く滞在することを指します。

    「海外駐在」「駐在大使」のように海外での滞在に使用される場合が多いですが、基本的には国内外問わず、特定の場所に滞在する意味で用いられます。

    赴任が今までと別の勤務地に行くことに対し、駐在は別の勤務地に長くとどまることを意味し、時系列は「赴任→駐在」です。

    例文
    ・赴任先であるアメリカに駐在し、日本法人と現地法人の橋渡しをした。
    ・プロジェクトを無事に終えるまでは、この事業所に駐在しなければならないだろう。

    配属

    配属の意味は、企業が従業員の働く部署や部門を決定する際に用いられます。

    配属が部署・部門単位の配置であるのに対し、異なる国・地域にある事業所へ行くことが赴任です。配属は新しく入社した従業員に、赴任は今まで別の事業所で勤務していた従業員に対して多く用いられています。

    例文
    ・新入社員の配属先が決まり、営業部にも2人の新人がやってきた。
    ・採用面接で伝えていた通り、広報部への配属が決まった。

    転属

    転属の意味は、昇格や降格をともわない、同じ会社内での部署異動に使用します。赴任の意味は勤務地の変更であり、転属は部署が対象です。

    例文
    ・Dさんは人事部から経理部に転属になったらしい。
    ・来月から営業部に転属することになった。

    日本における単身赴任の現状

    日本では大企業を中心に、複数の支社・支店を持つ多くの企業が転勤制度を採用しています。さまざまな場所で経験を積むことは、従業員のキャリアに好影響を与える一方で、本人の希望とは関係なく、転勤を命じる企業もあります。

    基本的に転勤を断れない従業員は多く「子どもを転校させたくない」「配偶者のキャリアを途切れさせてしまう」などの理由から、単身赴任を選択せざるを得ない人もいるでしょう。

    労働政策研究・研修機構(JILPT)が公表している資料によると、1987年から5年おきの調査で2017年までの30年間は、単身赴任の割合が男女問わず上昇傾向にありました。しかし、2022年は減少に転じています。

    転勤制度は労働者に対する負担が大きく、人材の流出にもつながりかねません。転勤の辞令を機に退職を考える若い世代もいるといいます。

    とくに2019年頃から推進されている働き方改革以降は、ワークライフバランスの考え方が広まり、転勤制度の見直しをはかる企業が増えてきました。転勤制度を廃止する大手企業もあり、今後は「転勤」そのものが縮小していく可能性もあります。

    参照:『6 出向者、単身赴任者等 |ユースフル労働統計 2023』労働政策研究・研修機構(JILPT)

    日本と世界での転勤制度の違い

    世界各国と比較すると、日本の転勤制度は特殊な部類に入ると考えられます。

    日本では辞令による転勤を、従業員が断わったり変更や取消を求めたりすることは、原則としてできません。対して海外では、経営層を除いて、本人の希望に沿って転勤させるのが一般的です。

    日本で辞令による転勤が多い背景には、日本的な雇用環境の特徴とされる終身雇用制度が影響しています。かつての日本では、1つの会社で定年まで勤める終身雇用が一般的でした。しかし、少子高齢化が進んで労働力人口が減少している中、企業は社内の人材を転勤させることで、人員を調整せざるを得なくなったのです。

    また、日本では転勤がキャリアアップの一環として捉えられており、業界によっては「転勤=(イコール)出世コース」と見なされる場合もあります。

    転勤命令には従わないといけない?

    日本では基本的に、従業員が会社からの転勤命令を断ることはできません。

    多くの場合、転勤に関する取り決めは就業規則に明記されています。就業規則に「転勤を命じることがある」と記載されている場合は、了承したうえで会社と雇用契約を締結していることになるため、拒否は難しいでしょう。

    しかし、就業規則に転勤に関する内容が明記されていない場合や、育児や介護などにより転勤が困難な場合など、正当な理由があれば、転勤命令の拒否が認められる可能性もあります。

    日本における海外赴任の現状

    外務省の調査によると、世界進出している日系企業は2017年時点で75,531拠点にのぼり、過去最高を記録しました。進出先はアメリカや中国が多く、人件費の安いASEANの後発加盟国や中東にも人気が集まっています。

    しかし、外国人労働者の受け入れ制限やリモート勤務の普及により、海外赴任は減少傾向にあるといわれています。

    参照:『海外在留邦人数調査統計』外務省

    「赴任」の意味を理解し、正しく使用しましょう

    赴任とは、現在の職場とは別の勤務先に赴くことです。「転勤」や「出向」など似ている使われ方をする言葉が複数あり、それぞれ意味が異なるため、正しく使用することが大切です。

    日本では一般的な転勤制度は、海外の制度と比較すると、断る余地があまりないという点で特殊です。ただし、近年は従業員の負担を減らすために転勤制度の見直しがはかられ、海外赴任も減少傾向にあるようです。

    適材適所の赴任を検討するには?

    日本各地や海外に拠点がある企業では、人材情報がバラバラに管理されているために、計画性のない人事異動になっていることがあります。

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