ベンダーとは【ビジネスでの意味をわかりやすく】サプライヤーとの違い、ITベンダーの選定ポイント

ベンダーとは【ビジネスでの意味をわかりやすく】サプライヤーとの違い、ITベンダーの選定ポイント

ベンダーとは、ユーザーに対して製品を販売する企業です。ベンダーの活用は企業の成長と運営において不可欠であり、経営戦略に大きな影響を及ぼす可能性もあります。

本記事では、ビジネスにおける「ベンダー」の意味や類似用語との違いなどを詳しく解説します。ITベンダー選定時の重要ポイントも紹介するので、ぜひ参考にしてください。

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    ベンダーの意味とは

    ベンダー(vendor)を簡単に表現するとユーザーに商品を販売する会社です。「販売する」という意味の英単語「Vend」に「~する人」という意味の接尾辞「-er」を合わせた言葉です。

    たとえば、家具・家電や衣服、日用品などを販売している会社が該当します。

    各業界におけるベンダーの意味と使い方

    ベンダーの広義の意味は「販売会社(業者)」ですが、具体的な使われ方は業界によって異なります。

    本記事では、IT業界・食品業界・自動車業界・建設業界・医療業界におけるベンダーの意味と使われ方を、例文を交えながら紹介します。

    1.IT業界におけるベンダー
    ソフトウェアやハードウェア、またはITサービスを提供する企業
    例文私たちの会社は、クラウドソリューションのために複数のITベンダーと協力しています。
    2.食品業界におけるベンダー
    原材料や加工食品、食品関連機器などを供給する企業や個人
    例文新しいスナック製品の開発にあたり、信頼できる食品ベンダーから高品質な原材料を仕入れています。
    3.自動車業界におけるベンダー
    自動車部品やアクセサリー、または関連サービスを提供する企業
    例文私たちの自動車製造ラインは、世界中の複数の部品ベンダーから供給を受けています。
    4.建設業界におけるベンダー
    建材や建設機械、技術サービスなどを提供する企業
    例文この大規模な建設プロジェクトでは、信頼性の高い建材ベンダーと緊密に連携しています。
    5.医療業界におけるベンダー
    医薬品や医療機器、医療技術などを提供する企業や組織
    例文当院は最新の医療機器を導入するため、複数の医療機器ベンダーと交渉中です。

    ベンダーとサプライヤーの違い

    サプライヤーとは「供給者」という意味を持つ言葉です。ビジネスシーンにおいては、主に製品の部品を供給する企業を指します。日本語では「仕入れ先」や「卸売業者」と同じ意味で使用されることも多いでしょう。

    ベンダーが消費者に向けて製品を提供するのに対し、サプライヤーは主に企業に対して製品の部品を供給します。

    食品業界を例にすると、店頭やオンラインショップで食品を販売している企業がベンダー、販売する食品の仕入れ先がサプライヤーと考えるとよいでしょう。

    ベンダーと同様に、サプライヤーに該当する企業は業界によって異なる点に注意が必要です。

    ベンダーに関連する用語

    ビジネスシーンでは、ベンダーに関連する用語が頻繁に飛び交います。誤用を防ぐためにも、それぞれの用語の意味をきちんと理解しておきましょう。

    • メーカー
    • ユーザー
    • オフショア

    メーカー

    メーカーとは、製品の製造・開発を担う企業です。「製造業」とも呼ばれ、製造しているものによって素材メーカー・部品加工メーカー・製品加工メーカーの3つに大別できます。

    メーカーが製品の製造を主軸としているのに対して、ベンダーは製品の販売に特化しています。商品を届ける流れは、メーカーが製造した製品をベンダーが仕入れ、ユーザーに販売するという流れです。

    なお、自社で製造から販売までを一貫して行っている企業もあります。

    ユーザー

    ユーザーとは、製品を購入する顧客や消費者です。商流の最終地点に位置するため、エンドユーザーと呼ばれることもあります。

    ベンダーが販売する製品を購入する立場であり、しばしばユーザーは、ベンダーの対義語として扱われます。

    オフショア

    オフショアとは「海外」という意味を持つ言葉です。ビジネスシーンでは、主に物価や人件費が安価な地域の企業へ業務の一部を委託することを指します。

    たとえばIT業界では、コスト削減を目的として海外企業に開発を委託することを「オフショア開発」と呼びます。この場合、開発を委託される海外企業は、ベンダーに該当すると考えてよいでしょう。

    IT業界におけるベンダーの種類

    IT業界ではベンダーという言葉が用いられる場面が多く、取り扱う製品や特徴に応じていくつかの種類に分けられます。また、ITベンダーは製品の販売だけでなく、開発を自社で行っている企業が多く見られます。

    ここからは、IT業界におけるベンダーの種類を詳しく解説していきましょう。

    • システムベンダー
    • ハードウェアベンダー
    • ソフトウェアベンダー
    • シングルベンダー
    • マルチベンダー
    • システムインテグレーター

    システムベンダー

    システムベンダーは、業務システムやセキュリティシステムなど、ユーザーのニーズに合わせたシステムを販売する企業です。システムの構築や運用などを一貫して請け負うケースが多く、ユーザーがシステムを安定的に利用できるようにサポートする役割も担います。

    ハードウェアベンダー

    ハードウェアベンダーは、パソコンやスマートフォンなど「もの」として存在する製品を取り扱う企業です。デバイスだけでなく、企業に設置するサーバーを販売する企業も含まれます。

    ソフトウェアベンダー

    ソフトウェアベンダーは、ウイルス対策ソフトや文章作成ソフトなどのソフトウェアを販売する企業です。便利なソフトウェアを導入すると、業務効率改善や生産性向上に役立てられます。

    シングルベンダー

    シングルベンダーは、1つの企業の製品のみを販売する企業です。同じ企業がつくった製品のみを取り扱うため、取引先と長期的な関係を構築しやすいというメリットがあります。

    また同じ企業の製品なので、製品同士を組み合わせたときに不具合が生じにくいのもメリットです。

    マルチベンダー

    マルチベンダーは、複数の企業の製品を販売する企業です。幅広い取引先の製品を取りそろえているため、顧客のニーズに応じた提案がしやすいというメリットがあります。

    システムインテグレーター

    システムインテグレーターは、システムの企画・設計から運用・保守まで、システム導入にかかわるすべての工程を一括して請け負う企業です。

    「System Integrator(システムインテグレーター)」を略して「SIer(エスアイヤー)」と呼ぶことも多く、複数のベンダーのソフトウェアやハードウェアなどを組み合わせて、顧客のニーズに沿って最適なシステムを構築します。

    IT業界で使われるベンダーの専門用語

    IT業界では、ベンダーという言葉を含む用語が多く用いられます。続いて、ベンダーに関連するIT用語について詳しく解説しましょう。

    • ベンダーコントロール
    • ベンダーマネジメント
    • ベンダー資格
    • ベンダーロックイン
    • ベンダーセントラル

    ベンダーコントロール

    ベンダーコントロールとは、ITベンダーに対してシステムの開発・販売に関する手続きや交渉を行うことです。社内SEが担当するケースが多く、自社とベンダーとの間を取り持つ役割を担います。

    ベンダーマネジメント

    ベンダーマネジメントとは、プロジェクトを成功へ導くためにベンダーを管理することです。業務内容はベンダーコントロールに似ていますが、ベンダーコントロールには自社のニーズが満たされているか成果物をチェックする業務も含まれます。

    ベンダー資格

    ベンダー資格とは、ITベンダーが開発・販売する製品への知識や技術力を証明する資格制度です。

    世界的ITベンダーの製品は多くの企業で導入されており、各社のベンダー資格を取得することは社内評価や転職などにプラスに働く場合があります。AmazonのAWS認定資格や、MicrosoftのMicrosoft認定資格などが著名です。

    ベンダーロックイン

    ベンダーロックインとは、特定のベンダーの製品やサービスなどでITシステムが構築されており、ほかのベンダーが入り込む余地がない状況です。

    同じ企業の製品やサービスで統一されているため、不具合は生じにくいものの、価格が高騰しても、ほかの安いベンダーに乗り換えできないといったデメリットがあります。

    ベンダーセントラル

    ベンダーセントラルとは、Amazonが提供する商品販売プラットフォームです。メーカーは自社の製品をAmazonに納品することで、広告・販売や梱包などの工程を一任できます。

    日本のITベンダー4選

    日本の代表的なITベンダーを4社紹介します。

    • 富士通株式会社
    • 日本電気株式会社 (NEC)
    • 株式会社日立製作所
    • 株式会社NTTデータ

    富士通株式会社

    富士通株式会社は、国内ITベンダーのなかで売上シェアNo.1を誇る歴史ある企業です。

    パソコンやスマートフォンなどのハードウェアの製造・販売を手がけるほか、デジタルマーケティングやクラウドなどの多彩なサービスを展開しています。

    日本電気株式会社 (NEC)

    日本電気株式会社は、国内有数の電気機器メーカーとして知られる企業です。パソコンや通信機器をはじめ、ネットワークの構築に必要なハードウェアやソフトウェア、システムなどを幅広く提供しています。

    また、近年はAIや生体認証を活用したビジネスモデルも展開し、IoTの活用支援などコンサルティングサービスも行っています。

    株式会社日立製作所

    株式会社日立製作所は、家電から鉄道までさまざまな事業を展開している企業です。家電とITを組み合わせたIoTや、そのビッグデータ解析によるソリューションを提供しています。

    問い合わせ窓口を一本化して総合的なサポートを行っており、顧客への対応力が高いことでも知られています。

    株式会社NTTデータ

    株式会社NTTデータは、NTTグループに属し、通信などの社会インフラを活かしたデータ通信やシステム構築を行っている企業です。主に官公庁や地方自治体、金融機関を対象に事業を展開しています。

    ITベンダーの選定ポイント

    ITベンダーを選定する際は、以下のポイントを確認するとよいでしょう。

    • 価格
    • 品質と技術
    • 自社が実現したいこととのマッチング
    • 人材リソース

    価格

    価格はITベンダーを選定するうえで重要な項目の一つです。他社と比べて費用があまりにかけ離れている企業は避けましょう。安さばかりに目を奪われてしまうと、いざ製品を導入した際に要望が十分満たされない恐れがあります。

    「必要な機器や機能が含まれているか」といったポイントを確認し、見積もりの妥当性を判断しましょう。

    品質と技術

    他社の導入事例を確認し、製品の品質や技術面をチェックします。実績を重ねてきたITベンダーであれば、自社が依頼した際にも一定の品質を見込めるでしょう。

    ベンダーとしてのスキルが低いと、せっかくコストをかけても自社の課題を解決できない恐れがあるため、技術面もきちんと吟味することが大切です。

    自社が実現したいこととのマッチング

    ITベンダーには得意不得意があるため、自社の要望や課題にマッチする企業を選ぶことも重要です。自社が実現したいシステムや、解決したい課題に適したスキルや実績を持つITベンダーを選びましょう。

    人材リソース

    プロジェクトを円滑に進行するためには、ITベンダー側の作業人員やスケジュールなどのリソースを確認しておく必要があります。プロジェクトに適したスキルや経験を持つ人材が配置されていることも重要です。

    業務経歴書や人員計画書の作成を求めて、人材リソースをあらかじめ把握しておきましょう。

    ITベンダーの選定に失敗しないために(まとめ)

    ベンダーとは、ユーザーに対して製品を販売する企業です。ベンダーに該当する企業は業界によって異なり、IT業界ではソフトウェアやハードウェア、システムなどを開発・販売する企業が当てはまります。

    ITベンダーにはいくつかの種類があり、自社のニーズに沿って適切な企業を選ぶことが大切です。

    ITベンダーの選定に失敗すると「自社の要望が満たされていない」「システムが使いにくい」などのトラブルが発生するリスクが高まります。失敗を防ぐためにも、ITベンダーを選ぶ際は価格や品質・技術などを総合的に判断しましょう。