業務改善のアイデア事例【職種別】出ないときの対処法と進め方、成功ポイントも解説
業務改善は業務の生産性と効率を高めるために重要です。しかし、改善策がすぐに思いつかなかったり、どのように進めればよいかわからなかったりする場合もあるでしょう。
本記事では、職種別に業務改善のアイデアと事例、改善策が浮かばないときの対処法、進め方について解説します。
業務改善とは
業務改善とは、現在の業務の進め方や目的を見直し、無駄な作業をなくしたり課題を解決したりして、生産性を高めることです。
業務改善方法は、まずQCDの切り口で考えることがポイントです。
Quality | 品質 | 品質は保たれているか |
Cost | 費用 | 適正な価格設定か |
Delivery | 時間 | 時間を節約できないか |
顧客が求める品質を維持できているのか、適正価格で取り引きされているのか、時間がかかりすぎている作業がないかなど、随時評価しながら行います。
業務改善は働き方改革の推進や、減少の一途をたどる労働人口を背景に推進されています。テレワークなどの新しい働き方が浸透すると、さらに業務を円滑に進める方法を模索する必要があるでしょう。また、限られた人材で生産性を高めるために効率化を進める必要にも迫られています。
競争や変化の激しい現代で生き残るためにも、内部環境を見直して外部環境の変化に対応できるよう、企業は業務改善を進めなければなりません。
業務改善のアイデア事例【基本】
業務改善アイデアに関する基本の事例を紹介します。
- BPO・アウトソーシング
- マニュアル・テンプレートの作成
- 定型作業の自動化
- 業務の見える化
- ペーパーレス化(書類の電子化)
- ワークフローの見直し
- ITツールの活用
- データーベース化
- 会議の短縮
- リモートワーク・テレワーク
BPO・アウトソーシング
業務改善の方法の一つとして、BPO・アウトソーシングが挙げられます。日本語では「外部委託」と訳し、社内業務を外部で処理してもらうことです。
アウトソーシングとBPOの違いは、主に委託範囲が異なります。アウトソーシングが人手の足りない業務の一部を委託するのに対し、BPOは自社にノウハウやスキルがない一連の業務プロセスを委託するものです。
BPO・アウトソーシングにおける業務改善は、業務をただ外部に委託するのではなく「企業価値の維持向上を目指すために」外部リソースが使われることが多いでしょう。
マニュアル・テンプレートの作成
業務改善アイデアには、ルーティン業務などのマニュアル作成もあります。
ある程度流れが決まっている業務や複数人で担当する業務には、マニュアルやテンプレートを作成しておくと、無駄な作業を省略して効率的に進められるでしょう。
マニュアルやテンプレートを作成する中で、省略してもよい部分がわかったり、さらに効率化できる方法を思いついたりといった気づきがあるかもしれません。
定型作業の自動化
定型作業をシステムで自動化するのも業務改善に有用です。単純作業をシステムに任せることで、作業が簡略化し、人材不足の解消につながるでしょう。
システムで自動化できる業務には、たとえば以下の作業があります。
- 請求書の作成
- 電話やメール対応
- 在庫管理
- 発注業務 など
繰り返し実施する業務や計算が必要な業務は人為的ミスが起こりやすいため、システムで自動化することで、効率化だけでなく正確性も担保できるようになるでしょう。
業務の見える化
目に見えない業務の可視化も業務改善のアイデアとして必要です。業務全体を把握できていないと、効率的に業務が進まない場面もあるでしょう。
たとえば、部下の進捗を視覚的に把握できるようにすると、リマインドなどの作業が省け、時間や人的コストを削減できるでしょう。業務やプロジェクト全体が必要なときに見渡せる状態にあると、進め方や人材配置を見直しやすくなり、業務改善につながります。
ペーパーレス化(書類の電子化)
業務改善のアイデアといえばペーパーレス化が浮かぶ人もいるかもしれません。ペーパーレス化とは、紙の書類を最小限に少なくし電子に置き換えることです。たとえば、請求書の発行・管理や契約手続き、経費精算などが挙げられます。
ペーパーレス化によって各種書類を電子化すると、書類を探すのが速くなり、チームでの情報共有がスムーズになるでしょう。効率化だけでなく、機密情報の漏えい防止や、用紙代・印刷代・郵送費のコスト削減にもつながります。
ワークフローの見直し
業務改善のアイデアとしてワークフローの見直しも一案です。ワークフローとは、ある業務の開始から完了するまで、発生する作業や処理を含めた一連の流れです。
まずは業務を洗い出し、無駄な工程や人員の過不足、各工程が複雑になりすぎていないかを客観的に見直します。従業員が実際に業務を遂行するうえで感じた課題や問題点を共有してもらい改善に役立てるとよいでしょう。
ITツールの活用
業務改善のアイデアには、ITツールを活用して業務効率化をはかるという事例もあります。業務改善ツールにはさまざまなサービスがあります。まずは多くの部署に共通して活用できる時間管理ツールやタスク管理ツールを検討するとよいでしょう。
時間管理ツールは、従業員の勤務時間や作業内容を可視化し、無駄な業務の選別やスケジュールの可視化ができます。
時間管理ツールは、個人やチームの作業時間などを管理して、無駄な業務を選別し、タスクの優先順位づけやスケジュールの調整に便利です。
タスク管理ツールは、To doリストの作成や業務の進捗状況の確認が簡単になるなど、プロジェクトの納期管理や上司のマネジメントに役立ちます。
データベース化
業務改善のアイデアとして、社内に散在する情報のデータベース化も有効です。各部署に散らばった情報を1つのデータベースに集約することで、社内全体の情報共有がスムーズになります。
たとえば、部署ごとに管理している案件をまとめたり、過去の評価歴を蓄積して異動の参考にしたりすることで、業務効率化につながるでしょう。
会議の短縮
無駄な業務を減らすことも、業務改善アイデアとして重要です。
特に日本企業は無駄な会議が多いといわれることがあります。会議の時間や頻度を減らせば、本題から外れた話題を省く意識が生まれ、素早い意思決定が行えるでしょう。
また、削減した分の時間をコア業務に割り当てられると、労働生産性の向上が期待できます。
リモートワーク・テレワーク
リモートワーク・テレワークは、業務改善アイデアとして多くの企業で採用されています。
通勤時間を削減することで、従業員の通勤ストレスをなくし、ワークライフバランスも維持できるため、生産性を上げる効果が期待できます。営業職の商談であってもオンラインツールを活用することで、移動時間をほかの業務に充てられ、効率的な働き方が実現します。
また、リモートワークは従業員が比較的自分のペースで仕事を進めることができます。個々の生産性が向上し、企業全体のパフォーマンスの向上にもつながる業務改善アイデアの一種です。
業務改善のアイデアの例【職種別】
続いて、職業別に業務改善アイデア・事例を紹介します。
- 営業
- 事務
- 医療・看護・介護
- 工場
- 人事労務
営業
営業職で役に立つ業務改善アイデアは主に以下の通りです。
業務改善アイデアの例 | できること |
---|---|
営業支援ツールの導入 | データ分析や見込み顧客へのアプローチが自動でできる |
オンライン商談の活用 | 場所を選ばずに商談ができる |
顧客リストの見える化 | 対応する顧客の優先順位をつけられる |
事務
事務で役に立つ業務改善アイデアは主に以下の通りです。
業務改善アイデアの例 | できること |
---|---|
データや物品の整理整頓 | 格納場所を明確にし、探す時間を省く |
パソコン設定の見直し | ショートカットやブックマークを活用する |
契約書や報告書の電子化 | Web上で書類を管理できる |
医療・看護・介護
医療・看護・介護で役に立つ業務改善アイデアは主に以下の通りです。
業務改善アイデアの例 | できること |
カルテ・ケアプランの電子化 | 手書きで行っていた書類を電子化にする |
業務分担・配置の見直し | 作業負担を見直すことで無駄をなくす |
ICT導入 | 通信技術を活用して生産性向上を行う |
工場
工場で働く現場職員に役立つ業務改善アイデアは主に以下の通りです。
業務改善アイデアの例 | できること |
作業工程の見直し | 作業工程を見直すことで業務効率化をはかる |
工場内の環境整備 | 5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)によって働きやすくする |
進捗管理ツールの導入 | 進捗によって人員配置や時間配分を調整できる |
人事労務
人事労務担当者が取り入れると業務改善につながるアイデアは主に以下の通りです。
業務改善アイデアの例 | できること |
年末調整・給与計算の電子化 | Webで完結するため、正確性の担保と効率化ができる |
人材データの一元化と活用 | 必要な情報をすぐに確認でき、人材育成にも活かせる |
人材配置の見直し | 適性に合った配置でパフォーマンスを最大化する |
業務改善のアイデアが出ないときの対処法(進め方)
ここまで基本の業務改善アイデアや職種別に活用できるアイデアを紹介してきました。続いて、業務改善アイデアが出ないときの対処法を紹介します。
- 業務の洗い出し
- QCDの観点で課題の抽出
- フレームワークの活用
- 優先順位づけ
- 他社事例を参考
1.業務の洗い出し
始めに現状の問題点を洗い出します。受け持っている業務や、工数を洗い出して整理します。どの業務に時間や労力がかかっているかを視覚的に捉えることで、業務改善アイデアにつながるポイントが見えてくるでしょう。
2.QCDの観点で課題の抽出
洗い出した業務の中からQCDの観点で課題を見つけます。「Quality(品質)」「Cost(費用)」「Delivery(時間)」のどれに該当する課題があるのかを抽出しましょう。
管理者と現場の従業員では、課題に感じている部分が異なるため、多様な階層の人からヒアリングして多角的な視点で課題を明確にするといいでしょう。
3.フレームワークの活用
次に業務改善のアイデア出しに活用できるフレームワークを実施します。有名なのがECRS(イクルス)です。
ECRSは以下の頭文字を取ったフレームワークです。
例 | |
---|---|
Eliminate(排除する) | 不要な業務やフローを削除、省略する |
Combine(結合する) | 議題が似た会議を1つに集約する |
Rearrange(交換する) | 設備や人員の配置や業務の順序を変える |
Simplity(簡素化する) | 請求書業務にシステムを導入する |
抽出した課題をもとに業務をECRSに当てはめて、複数の仕事を結合させたり、業務内容を簡素化したりすることで業務改善につながります。
4.優先順位づけ
2と3で洗い出した課題の中で、優先度の高いものと低いものを整理します。業務改善によって得られる効果と難易度を考慮して分けるとよいでしょう。得られる効果が高く難易度の低い業務から優先して改善すると、効率的に業務改善を進められます。
5.他社事例を参考
業務改善アイデアが思いつかない場合は他社の事例を取り入れるのも一案です。他社の成功事例やベストプラクティスを参考にすると、新たな視点や解決策が見つかる可能性があります。たとえば、セミナーや専門誌、オンラインカンファレンスなどに参加することで、自社に適用できるヒントが得られるでしょう。
業務改善のアイデアが出ないときに考えたいこと
フレームワークを活用しても整理できなかったり、他社の成功事例が少なかったりする場合は、業務改善アイデア創出のヒントとして以下の考え方を取り入れてみるとよいでしょう。
- やめる
- 最優先は何かを考える
- 頼る
- 簡略化する
- 集中する
- 人材の配置から見直す
- 働き方から見直す
やめる
どうしても業務改善アイデアが浮かばないときは、改善したいと思っている業務をやめるのも一案です。業務自体をやめてしまえば、改善方法を考える必要がありません。ただし、やめてもさほど問題にならない業務であるか否かは十分に精査したうえで決めましょう。
最優先は何かを考える
業務を「やめる」にも関係しますが、業務改善には優先順位をつけることも必要です。業務の見直しの際に、どの業務がもっとも全体の売り上げや業績に影響するのかを考えます。たとえば、課題を抱える業務をリストアップし、優先度「高」「中」「低」など段階に分けて評価して「高」から取り組みます。業績に直結する業務にリソースを配分し効率化に繋がると、組織全体の業務改善にも好影響があるでしょう。
頼る
どのように業務を改善すればよいかわからないときは、ツールに頼ってみましょう。アウトソーシングや自動化システムの導入など、自社の課題を改善できそうな方法を取り入れて効率化を目指します。
ツールの導入には時間や労力がかかり、運用が難しく定着しない場合もあるため、提供サービス元のサポート体制が整っているかも確認しましょう。
簡略化する
業務改善のアイデアが出ないときは、業務を簡略化して工数削減を考えます。業務フローが複雑化している場合は、業務内容を紐解いて、分担したり削減したりします。このように複雑化した作業の工数を減らせば、ミスやトラブルの防止にもつながるでしょう。
集中化する
共通点のある業務をまとめて集中化するという視点も、業務改善には必要です。各部署で分散している管理や雑務を1つの部門に集約すると業務効率を高められます。人事管理などで共通のプロセスがあれば、一元化することで重複作業を削減しましょう。
ただし、集約する部署の負担を増やすことにもなるため、新たな業務量を正しく見積もり、現在の人員で対処できるか慎重に検討する必要があります。人員配置の見直しを含めて、無理なく業務を回せる体制を整えます。
このように、共通点のある業務をまとめて集中化することで、無駄な作業を削減し、全体の業務効率を向上させることができます。ただし、集約する部門の負担を適切に管理し、効率的な運営ができるようにするための対策を講じることが不可欠です。
人材の配置から見直す
業務改善のアイデアが出ないときは、業務だけを見るのではなく、従業員の人材配置を見直すという視点も大切です。
従業員が持っている能力や経験によっては、現在の部署が適していない可能性があります。本人の適性を踏まえて適材適所の人材配置を行うことでパフォーマンスが向上し、全体の生産性が高まるでしょう。
人材配置の見直しには、従業員のスキルや経歴などの情報を一元管理し、配置シミュレーション機能もあるタレントマネジメントシステムが便利です。
働き方から見直す
現在の働き方を見直すことも業務改善アイデアが出ないときにはおすすめです。そもそも従業員が働きやすい環境にあるのかを考えてみましょう。
たとえば、テレワークは、従業員は周囲の会話や雑音、通勤にかかるストレスがないため業務に集中しやすく、企業は交通費などコスト削減ができるため、従業員と企業双方に改善のメリットがあります。
業務改善のアイデア事例を実際に成功させるポイント
ここまで考案してきた業務改善アイデアの実行に移す際は、成功と失敗を分けるポイントを意識して取り組むとよいでしょう。
- 全社的に取り組む
- 改善点を明確にする
- 改善策の影響を考慮する
全社的に取り組む
業務改善は全社的な取り組みとして実行します。さまざまな従業員の知識やスキルを活用することで、よりよいアイデアが生まれやすくなるためです。
また、業務改善には、他部署の協力が必要な場合もあるでしょう。全従業員で取り組むことで、各部署の理解を得やすくなり、部署間の連携が強化され、改善の効果が大きくなります。
改善点を明確にする
業務改善アイデアを実行する際は、改善点を明確にします。すべての業務を一度に効率化しようとすると、膨大な時間がかかります。効率化に取り組む業務を精査し、優先順位をつけることが重要です。
無駄な業務を削減したいのか、業務の質を向上させたいのか、目的を明確にした取り組みにより、効率的に業務改善が実行できます。
改善策の影響を考慮する
業務改善アイデアの実行がすべての人によい影響を与えるとは限りません。改善策が一部の従業員の効率を下げることもあるかもしれません。そのため、影響を事前に評価し、関係者への影響を最小限に抑える対策を講じる必要があります。少しずつ段階的に導入し、PDCAを回しながら長期的な視野で進めることがポイントです。
業務改善の企業事例
最後に、業務改善を実現した2つの企業事例を紹介するので、自社の取り組みの参考にしてください。
人事評価工数を1/4短縮
茨城トヨペット株式会社は、タレントマネジメントシステムの導入により、人事評価工数の短縮を実現しました。
以前は人材情報の拠点ごとに散らばっており、評価の運用工数がかかっていたことが課題でした。
One人事[タレントマネジメント]の導入により、年間800時間かけていた工数を200時間まで削減する試算となっています。人材情報の見える化を実施して、個々の活躍を支援するマネジメントにも取り組んでいます。
人事評価をシステム管理へ移行
株式会社アール・アンド・エー・シーでは、煩雑な評価運用を、システム導入により業務改善に取り組みました。
以前は1人の人事担当者がスプレッドシートで管理していましたが、従業員の増加にともない管理が煩雑になり、閲覧権限の設定などにも手を焼いていました。。
One人事[タレントマネジメント]の導入により管理を効率化した結果、果、節約できた時間を多様化する従業員のニーズに寄り添える制度の整備に充てる予定で社内全体の業務改善につなげています。
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業務改善に向けて(まとめ)
業務改善とは、現在の業務の進め方や目的を見直し、無駄な作業をなくしたり課題を解決して、生産性を高めることです。業務改善は、人材不足や業務効率化に対応するための施策として、多くの企業で実施されています。
業務改善のアイデアにはさまざまな事例があり、まずは基本的なものを取り入れ、アイデアが出ない場合は他社事例を参考にしたり、フレームワークを活用したりするとよいでしょう。思いきって業務を「やめる」人やツールに「頼る」という視点も大切です。必要に応じて適材適所の人材配置も検討しましょう。
業務改善のアイデアを実行することで、他部署や業績に影響を及ぼすこともあるため、注意点を踏まえて、優先順位をつけて取り組むことをおすすめします。