カーブアウトとは? 実施手順やメリット、デメリットまで詳しく解説

カーブアウトとは? 実施手順やメリット、デメリットまで詳しく解説

「カーブアウト」は、企業が自社の一部事業を新会社として設立する経営手法で、企業の成長戦略の一つとされています。これにより、企業は特定の事業に経営資源を集中させ、その事業の競争力を強化し、事業の成長を促進することが可能となります。また、新会社が親会社から独立することで、新たな経営方針や戦略を自由に採用でき、自己の成長を追求することが可能となります。しかし、カーブアウトの実施は慎重に行うべきで、適切な戦略と計画が必要です。

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    カーブアウトとは

    カーブアウトの定義

    カーブアウトは、大企業や中堅企業が親会社の出資・支援やファンドなど外部組織から投資を受け、技術や人材など事業の一部を外部に切り出し、新会社として独立させて事業価値を高める経営手法のことです。

    具体的には、親会社が自社の事業の一部を新たな会社として設立し、新会社に対して出資や支援を行うことで、新会社の事業価値を高めることを目指します。この過程で、新会社は親会社から技術や人材、ノウハウなどを引き継ぎ、新たなビジネスを展開します。

     カーブアウトの目的と利点

    カーブアウトを行うことで、企業は特定の事業に経営資源を集中させることができます。これにより、事業の競争力を強化し、事業の成長を促進することが可能です。

    また、成長性が見込める事業が切り離された場合、新しい経営陣や戦略のもとで、以前よりも高い成長を実現する可能性が高まります。これは、新会社が親会社から独立することで、新たな経営方針や戦略を自由に採用できるようになるためです。

    さらに、カーブアウトによって新会社が設立されると、新会社は親会社から独立した存在となるため、自社のビジネスモデルや戦略を自由に設定し、自己の成長を追求することが可能です。これにより、新会社は自社の事業価値を最大化できるでしょう。

    カーブアウトの実施手順

    法的手順の検討

    カーブアウトを行う際には、まず法的手順の検討が必要です。具体的には、会社分割や事業譲渡のスキームを活用することが一般的です。これらのスキームを選択する際には、企業の経営状況や事業の特性、将来のビジョンなどを考慮に入れる必要があります。

    また、基本方針の策定や承継対象範囲の検討も重要な手順です。基本方針では、カーブアウトの目的や新会社の経営方針、事業戦略などを明確にします。承継対象範囲の検討では、どの部分を新会社に移管するかなど、移管にともなうコストやリスクを評価します。

     必要事項の検討

    適切なスキームの選択はもちろん、従業員への配慮や知的財産の取り扱いなどにも留意する必要があります。

    従業員への配慮とは、カーブアウトによる影響を最小限に抑えるための対策を立てることです。具体的には、新会社への移籍や退職にともなう手続きのサポート、新会社での待遇やキャリアパスの説明などが含まれます。

    知的財産の取り扱いとは、特許や商標、著作権などの権利をどのように新会社に移管するかを決定することです。これには、知的財産の価値評価や移管にともなうコストやリスクの評価などが必要となるでしょう。

    適時開示の検討

    カーブアウトを行う際には、適時開示の検討も必要です。

    企業が公開市場で株式を発行している場合、カーブアウトによる事業の変更は投資家にとって重要な情報であり、適切なタイミングで開示する必要があるからです。開示内容には、カーブアウトの目的や新会社の事業内容、影響範囲などが含まれます。

     会計管理情報の調整

    最後に、カーブアウトを行う際には、会計データの調整・カーブアウト財務諸表の作成が必要です。新会社の資産・負債・資本などの会計データを正確に把握し、新会社の財務状況を明確にする作業が含まれます。

    カーブアウトのメリット

    事業促進

    まず、カーブアウトによる最大のメリットとして、切り離した事業の促進が挙げられます。

    カーブアウトを行うことで、新たに独立した会社は親会社の制約から解放され、自由に事業を展開できるようになります。これにより、新会社は自社のビジョンに従って、より効率的かつ柔軟に事業を進められるでしょう。

    たとえば、親会社の事業方針や経営資源の制約により、十分に活用できていなかった事業があったとします。このような事業をカーブアウトにより新会社として独立させることで、その事業は新たな視点や戦略を持って再構築され、ポテンシャルを最大限に引き出すことができるのです。

     外部からの融資や知識の取得

    カーブアウトにより新会社は外部からの融資を受けやすくなるというメリットがあります。新会社は、親会社とは異なるビジネスモデルや事業戦略を持つことが多く、新たな投資家やパートナーを引きつける可能性を高めます。

    また、新会社は外部から新たな知識や技術を取り入れることもできます。これにより、新会社は最新の技術や市場のトレンドを取り入れ、競争力を強化できるでしょう。さらに、新たなパートナーシップを通じて、新会社は新たなビジネスチャンスを探求できます。

     親会社の成長促進

    最後に、カーブアウトは親会社の成長を促進するというメリットもあります。カーブアウトを行うことで、親会社は軸となる事業に集中して取り組めます。これにより、親会社は自社の強みを最大限に活用し、より高いパフォーマンスを達成することができるでしょう。

    また、カーブアウトにより親会社から切り離された事業が成功を収めると、それは親会社のブランド価値を高めることにもつながります。これにより、親会社は新たな投資家やパートナーを引きつけ、さらなる成長を遂げることができます。

    カーブアウトのデメリット

    事業の複雑化

    カーブアウトを行うと、親会社と新会社との間で事業の連携や調整が必要です。これは、新会社が親会社から独立して事業を行うため、それぞれの会社が持つ業務範囲や役割を明確にする必要があるためです。

    たとえば、新会社が親会社から引き継いだ事業をどのように運営するか、親会社が新会社に対してどの程度の支援を行うかなど、具体的な事業運営に関する方針を決定する必要があります。これらの調整を行うことで、事業の運営を複雑化させるかもしれません。

    また新会社が親会社から独立することで、一体となっていた事業が分断されるため、全体としての事業運営の効率が低下する可能性もあります。これらの問題を解決するためには、親会社と新会社が密接に連携し、事業運営の方針を共有することが重要です。

     認可の取得に手間がかかること

    カーブアウトを行うと、新会社が事業を行うために必要な許認可を取得する必要があり、行政手続きの手間や時間がかかる場合があります。

    特に、規制が厳しい業界では、新会社が事業を開始するまでに数か月から数年の時間がかかることもあるようです。これは、新会社の事業開始を遅らせるだけでなく、事業開始までに発生する経費も負担しなければなりません。

    また、許認可の取得が難しい場合、新会社の事業展開が制限される可能性もあります。カーブアウトの計画段階で、許認可の取得に必要な手続きや時間を十分に考慮しておきましょう。

    離職率の上昇

    カーブアウトを行うと、従業員の間で不安や混乱が生じる可能性があります。新会社への移籍や職務内容の変更など、従業員の働き方が大きく変わるためです。

    特に、新会社への移籍を余儀なくされた従業員は、新会社の経営状況や将来性に不安を感じることがあります。このような不安が原因で、従業員が退職を選択する可能性もゼロではありません。

    また、カーブアウトにより職務内容が変更された従業員は、新たな職務に適応するための研修や教育が不十分であると感じることがあります。カーブアウトの計画段階で従業員への説明や教育を十分に行うとよいでしょう。

    カーブアウトを検討する際の注意点

    スキームの選択

    カーブアウトの手法には、会社分割と事業譲渡の2種類があります。

    会社分割では、親会社が売却部分を分割し、分割部分の株式を譲渡します。これにより、新会社は親会社から独立したかたちで事業を継続することが可能です。一方、事業譲渡では、親会社の事業を新会社に譲渡します。新会社は親会社の事業をそのまま引き継ぎます。

    どちらのスキームを選択するかは、事業の特性や目的によります。たとえば、事業の規模や成熟度、将来性などを考慮して選択することが求められるでしょう。

     許認可の承継

    カーブアウトを行うと、新会社が事業を行うために必要な許認可を取得する必要があり、時間と手間がかかる場合があります。特に、規制が厳しい業界では、許認可の取得が事業の成功を左右することもあります。そのため、許認可の取得には十分な時間とリソースを確保することが重要です。

      契約の承継

    カーブアウトを行うと、新会社が事業を行うために必要な契約を承継する必要があります。そのため、親会社と新会社との間で契約の内容を詳細に検討し、必要な契約を新会社が承継しなければなりません。

    たとえば、取引先との契約や賃貸契約、ライセンス契約などが該当します。これらの契約の承継には、契約相手方の同意が必要な場合もあるため、事前に十分な調整を行うことが重要です。

    知的財産の取り扱い

    カーブアウトを行うと、新会社が事業を行うために必要な知的財産を承継することがあります。親会社と新会社との間で知的財産の内容を詳細に検討する必要があるでしょう。

    たとえば、特許や商標、著作権などが該当します。また、知的財産の承継には、知的財産権の移転登録などの手続きが必要です。

    従業員との関係

    カーブアウトを行うと、新会社が事業を行うために必要な従業員を承継します。親会社と新会社との間で従業員の内容を詳細に検討し、必要な従業員を新会社が承継できるようにする必要があります。

    たとえば、従業員の雇用条件や待遇、労働環境などを考慮して、従業員が新会社で働くことを受け入れるようにすることが求められるでしょう。

    株主総会などの手続き

    カーブアウトを行うと、新会社が事業を行うために必要な株主総会などの手続きを行います。

    たとえば、新会社の設立に関する株主総会の開催や、新会社の株式の扱いに関する決議などが該当します。これらの手続きには、株主の理解と協力が必要なため、事前に十分な説明と調整を行うことが重要といえるでしょう。

    カーブアウトを成功させるためのポイント

    弁護士のサポートを受ける

    カーブアウトは、企業の一部を切り離すという複雑なプロセスをともないます。そのため、法律的な問題が発生する可能性があります。たとえば、切り離す部門の選定や新会社の設立、従業員の移籍など、さまざまな法律的な問題がかかわってきます。

    弁護士は、企業法務の専門家であり、カーブアウトに関する法律的な問題の解決や企業の法律的なリスクを最小限に抑えるためのサポートを提供します。そのため、カーブアウトを成功させるためには、弁護士のサポートを受けることをおすすめします。

    専門家に相談しながら進める

    カーブアウトは、企業の成長戦略の一つであり、成功は企業の将来に大きな影響を与えます。そのため、カーブアウトを進める際には、専門家に相談しながら進めることが重要です。

    専門家に相談することで、カーブアウトのプロセスをスムーズに進めることができます。また、専門家は、カーブアウトの成功に必要な戦略や計画を提供し、企業が適切な決定を下すためのサポートをしてくれるでしょう。

    また専門家に相談することで、企業はカーブアウトのリスクを最小限に抑えられるでしょう。専門家は、カーブアウトのリスクを評価・管理するための戦略を提供します。そのため、専門家に相談しながらカーブアウトを進めることは、成功させるための重要なポイントといえるでしょう。

    まとめ

    カーブアウトは、企業が自社の一部事業を切り出し、新たな会社として独立させる経営手法です。企業の成長戦略の一つとして注目されており、企業の成長や競争力強化に寄与する可能性があります。

    カーブアウトのメリットとしては、事業の促進や外部からの融資や知識の取得、親会社の成長促進などがあります。一方デメリットとしては、事業の複雑化や認可の取得に手間がかかること、離職率の上昇などが挙げられるでしょう。

    カーブアウトを検討する際には、スキームの選択や許認可の承継、契約の承継、知的財産の取り扱い、従業員との関係、株主総会などの手続きに注意しましょう。