委嘱の意味と読み方をわかりやすく【委嘱状テンプレートあり】嘱託や委任など類義語との違いも解説
委嘱とは「特定の仕事を一時的に任せる」という意味の言葉です。よく似た言葉の「委託」とは、業務の専門性の有無において違いがあります。ほかにも「嘱託」「指名」などさまざまな類語があるため、それぞれの違いを明確に把握できていない人もいるのではないでしょうか。
本記事では、委嘱の意味や読み方、類語との違いを解説します。すぐに使える委嘱状のテンプレートも紹介するので、人事担当者の方はぜひ参考にしてください。
委嘱の意味と読み方
委嘱とは「いしょく」と読み、ある仕事を外部に依頼して一時的に任せることです。
一般的な委託(アウトソーシング)とは異なり、委嘱は専門性の高い業務を依頼するときに使用します。自社リソースでは対応困難な業務が発生したとき、その領域に関する専門知識を持つ人材に、臨時的に仕事を依頼するのです。
また、企業だけでなく、行政や音楽・デザインなどクリエイティブな領域の専門家に対しても使用されることがあります。学術調査から商品パッケージのデザインまで、専門性を有する人材が必要なシーンで使用される言葉です。
委嘱の使い方【例文あり】
委嘱の意味を具体的に理解するために、使い方や例文を紹介します。
領域 | 例文 |
---|---|
会計(ビジネス) | 自社の監査役を公認会計士に委嘱する |
研修(ビジネス) | ビジネス研修の外部講師をビジネスコンサルタントに委嘱する |
クリエイティブ | リブランディングにともない、自社のサイトデザイン制作をWebデザイナーに委嘱する |
行政 | 社会保障審議会の委員を都道府県知事に委嘱する |
受嘱は委嘱を受けること
受嘱とは、委嘱を受けることです。よく似た言葉に「受託」がありますが、委嘱と委託の場合と同様、依頼される業務や役割に専門性を求められるかどうかという違いがあります。
委嘱は業務を依頼する側が使用するのに対し、受嘱は依頼を受ける側が使用する言葉です。たとえば、委嘱の使い方で紹介した例文を専門家目線にすると、以下のように書き換えられます。
- 企業の監査役を受嘱した
- ビジネス研修の外部講師を受嘱した
- 企業のサイトデザイン制作を受嘱した
- 社会保障審議会の委員を受嘱した
解嘱は委嘱者を解任すること
解嘱とは、業務を委嘱していた相手を解任することです。
解雇や解職との違いは、解任する業務や役割に専門性が求められることです。また、一般的に、解雇や解職はマイナスなイメージをまといます。
解雇は「社内規定に違反したため」といった理由により、雇用主が従業員を一方的に退職させるという意味があります。また、解職には責任を追及して職務や役職を辞めさせるという意味があり、いずれも受け手にとっては不名誉なことです。
一方、委嘱はもともと臨時的なものであるため、解雇や解職のようにマイナスな意味は含まれません。依頼した業務が完了すれば、自然に解嘱とされます。
そのため、委嘱していた相手に対して、解職や解雇などの言葉を用いることは失礼にあたります。相手に誤解を与えてしまう恐れもあるため、上記の違いを理解して適切に使い分けるようにしましょう。
企業で使われる委嘱と似た言葉との違い
ビジネスシーンでは、以下のような委嘱とよく似た言葉が使われることがあります。
- 委託
- 嘱託
- 就任
- 指名
- 担当
それぞれの意味を正しく使い分けるために、用語の意味や委嘱との違いを解説しましょう。
委嘱と委託の違い
委託とは、業務や役割を外部の人に依頼することです。委託はさまざまな業務に用いられるのに対し、委嘱は高度な専門性を要する場合に使用されます。
委託は専門性が必要ない業務に用いられるわけではなく、専門性の有無に関係なく使用されるのが特徴です。委嘱は委託の中に含まれると理解しましょう。
委嘱と嘱託の違い
嘱託とは、さまざまな業務や役割を外部の人に依頼するという意味の言葉です。専門性の有無にかかわらず業務を依頼することを指すため、委託とほぼ同義と考えてよいでしょう。
ただし、嘱託は、企業が嘱託社員を雇用する場合に使用されるケースが多いです。嘱託社員とは、主に定年を迎えた従業員を、期間に定めのある非正規雇用として再度受け入れる場合に用いられます。
同じ有期雇用契約であっても、出勤先の企業が直接雇用する嘱託社員は、派遣会社が雇用主である派遣社員とは性質が異なります。
委嘱と就任の違い
就任とは、任された業務や役割に新しく就くことを指します。委嘱は業務や役割を一時的に任せることなのに対し、就任はその任務に就くことを指し、一時的ではありません。基本的に、取締役や執行役の役職に新しく就く際に使われることが多いでしょう。
ある役割を委嘱したあと、その人物が特定の職務に就く場合は、就任が用いられます。たとえば、新製品のデザインを依頼した外部デザイナーに後日、自社の専任デザインアドバイザーの職務に就いてもらうならば「就任」を使います。
委嘱と指名の違い
指名とは、特定の人物を名指しで指定することです。業務や役割を委嘱・委託する場面や、ある役職に就任する人物を名指しで選ぶ場面において使用されます。
たとえば、委嘱したい人物を名指しで選びたいとき「委嘱する担当者の1人に〇〇さんを指名した」というように用いられます。
また委嘱とは異なり、指名には「業務を任せる」という意味は含まれません。指名は、その業務や役割の担当者を選任するというニュアンスが強い言葉です。
委嘱と担当の違い
担当とは、特定の業務や役割を受け持ったり、任されたりすることを指します。
委嘱は業務を任せることなのに対し、担当は「業務を任される」という受け手目線の言葉です。受嘱と同じように用いられますが、受嘱が専門性の高い業務を任された場合に用いられる一方、担当は特定の業務や役割に縛られない広い意味で用いられます。
また、基本的に受嘱や受託は社外の人材に対して、担当は社内の人材が一定の役割を与えられた際に使用されます。たとえば、「A社の営業を担当することになった」「Bさんの教育担当になった」というたように、幅広いシーンで用いられる言葉です。
政府や行政で使われる委嘱と似た言葉との違い
公務員や裁判員の任命に際して用いられる「委嘱」と関連する用語には、どのようなものがあるでしょうか。以下の2つの言葉の意味や委嘱との違いを解説します。
- 管掌
- 任命
委嘱と管掌の違い
管掌(かんしょう)とは、自分の担当業務をみずからが責任を持って行うことです。
委嘱は他人に業務を任せるという意味なので、両者は反対の意味を持ちます。そのため、管掌はどちらかといえば受嘱や担当に近く「責任を持って行う」という意味が含まれという点で、より重いニュアンスの言葉といえるでしょう。
委嘱と任命の違い
任命とは、ある人物に対して、特定の業務や役割への就任を命じることです。
委嘱は組織内でのポジションや立場に関係なく「業務を任せること」を意味します。一方で任命は、公務員や裁判官などが昇任(昇進)する際に用いられることが多いでしょう。
指名と混同される任命の本質的は「命じる」ことであり「正式決定」という意味を強く持ちます。たとえば、下級裁判官は、最高裁判所が指名した人物の中から内閣が任命する決まりです。このように、通常は指名して任命するという流れで行われます。
委嘱状とは?
委嘱状とは、業務や役割を委嘱する際に、依頼側が発行する書類です。
簡単にいうと「業務や役割を任せること」を証明するための書類で、委嘱する相手の氏名や業務内容、契約期間、委嘱側の社名を記載します。業務内容は詳細に記載するのではなく、おおまかな内容を記載するのが一般的です。
委嘱状と委任状の違い
委任状は、事情によって本人が対応できない手続きや行為について、代理人を立てる際に、本人の意思表示を書き記した書類です。代理人が「本人から手続きや行為を頼まれて代理する」ことを証明するという役割があります。
たとえば、以下のような手続きや行為に代理人を立てる場合は、委任状が必要です。
- 不動産などの契約
- 訴訟
- 住民票や税証明の取得
「業務を任せる」委嘱に対し、委任は「公的手続きや法律行為などに代理人を立てる」ことを指します。
委嘱状と辞令書の違い
外部の専門家に対して発行する際は委嘱状、社内や行政機関に在籍する人物に対して発行する際は辞令書が用いられるのが一般的です。記載内容としてはほとんど同じものと考えていいでしょう。
委嘱状の書き方【テンプレート】
委嘱状に法律で定められた様式はありません。ただし委嘱期間や委嘱業務など、明記すべき項目もあります。
以下のテンプレートを参考に、重要な項目を漏らさず記載しましょう。なお、テンプレートはあくまでも一例なので、実際に委嘱状を作成する際は、委嘱内容や条件に応じて必要に応じて調整してください。
「委嘱」と類似語の違いを把握し、適切に使い分けましょう
「委嘱」とは、特定の業務や役割を一時的に任せることです。専門性を求められる業務や役割を対象とし、専門性の有無にかかわらず使用する「委託」の一種といえます。
嘱託や指名など、委嘱と混同されやすい用語は、ほかにも多数あります。ビジネスの場で使い方を間違えると相手の気分を害してしまう恐れもあるため、それぞれの意味や違いを把握して適切に使い分けましょう。