エンパシーとは?意味やシンパシーとの違いもわかりやすく解説

エンパシーとは?意味やシンパシーとの違いもわかりやすく解説

エンパシーとは、共感という意味合いを持つ言葉で、自分以外の他者を理解するために必要とされている能力です。

エンパシーについて正しく理解できていない人やエンパシーを身につける方法を知りたいという人もいるでしょう。

そこで本記事は、エンパシーとはどのようなものかを解説しながら、混同しやすいシンパシーとの違いや活用方法などをご紹介します。

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    エンパシーとは?

    エンパシー(empathy)とは、自分とは異なる価値観に遭遇した際に、相手の考えていることや感じていることを想像する能力のことを指します。

    自分の立場のまま相手の感情を想像したり、受動的に相手の感情を感じたりするのとは異なり、みずから相手の立場に立って能動的に相手の感情を感じ取ろうとすることです。英語の場合は、共感や感情移入などと訳されます。

    エンパシーとシンパシーとの違い

    エンパシーと混同しやすい言葉に、シンパシーがあります。シンパシーは思いやりや同情という意味合いを持つ言葉で、ニュアンスとしては「気の毒に思う」「哀れむ」というニュアンスが強いです。状況を理解して共感し共鳴する気持ちから発生する感情であるため、「彼女にシンパシーを感じた」などと表現します。

    エンパシーは、自分とは異なる価値観を持つ相手に対して、他者の立場に立って心情を想像しようとすること、シンパシーは相手を哀れに感じて言葉をかけたり、自分の立場のまま他人の気持ちに共感したりすることです。

    エンパシーが重要な理由

    エンパシーが重要とされる理由には、ビジネスではさまざまな人とかかわり、関係性を構築する必要があるためです。自分の価値観とは異なる価値観を持つ人と接することも少なくなく、エンパシーを駆使して相手とコミュニケーションを取り、相手の考え方を理解するために求められます。

    エンパシーは社会人として必要とされる能力で、マネジメントシーンにおいてもエンパシーが高いほど部下との信頼関係を構築しやすいため、特に管理職やリーダーは身につけておきたい能力です。

    また、新型コロナウイルスの影響でテレワークが浸透し、出社しなくても仕事ができるようになりました。出社しないと、対面でのコミュニケーションが減り、人とのつながりが希薄になる場合もあるでしょう。そこで、より重要なのがエンパシーです。エンパシーは相手の心情や考えを理解したり共感しようしたりする能力であり、相手に配慮して話せるようになるでしょう。

    さらに最近はダイバーシティという概念が浸透し、取り組む企業も少なくありません。ダイバーシティを推進すると、より多彩な価値観の人材を理解することになるため、エンパシーが求められるでしょう。

    エンパシーの種類

    エンパシーは細かく分けると4つの種類があります。それぞれについて、理解を深めましょう。

    エモーショナル・エンパシー

    エモーショナルエンパシーとは、感情的共感といい、相手の価値観や感情に深く共感して示すことです。

    たとえば、目標を達成できなかったメンバーの悔しい気持ちや悲しい気持ちを想像し、ねぎらいや励ましの声をかけるときに役立ちます。声をかけられたメンバーは、自分のことを認めてくれている、自分の気持ちを理解してくれていると感じ、信頼感が増すでしょう。

    信頼関係を深め、メンバーのモチベーションを高める効果があり、パフォーマンスにもよい影響が期待できます。

    コグニティブ・エンパシー

    コグニティブエンパシーとは、認知的共感のことで、共感しにくい相手に対して使うエンパシーです。本来自分の立場や価値観では共感しにくい相手に共感するために、より相手の立場や心情に立って想像する意味合いで使われます。

    ビジネスにおいては、本来自分の考え方と合わない人物がいた場合も協力し合わなければならず、コグニティブエンパシーでコミュニケーションを深める必要があるでしょう。

    コンパッショネイト・エンパシー

    コンパッショネイト・エンパシーは、相手の立場に立って想像して共感するだけでなく、そのうえで行動を起こすエンパシーです。相手が感じているつらさや悲しみを解決して助けようとするなど、問題を解決することを意識します。

    ソマティック・エンパシー

    ソマティック・エンパシーは、相手の苦しみやつらさを想像したり理解しようとすることで、自分自身も同じように身体に苦しみを感じてしまうエンパシーです。たとえば、高熱を出した人を見て、自分も体調が悪くなるような例が挙げられます。

    エンパシーが高い人の特徴

    エンパシーが高い人には、いくつかの特徴があります。具体的な特徴について確認してみましょう。

    好奇心が強い

    エンパシーが高い人は、好奇心が強く、色々なことに興味を持って理解しようとします。人との会話でも、考え方が異なる相手に対しても、相手の立場に立って捉えられます。意図的に努力して理解しようとするというより、自然と相手の立場を想像できるといえるでしょう。

    傾聴力がある

    エンパシーが高い人は、傾聴力に長けています。傾聴力とは、相手の話に共感しながら耳を傾けられる能力です。傾聴力がある人は、相手に信用されやすく、相手からより多くの事柄を話してもらえたり、気持ちや感情を打ち明けられるでしょう。

    ビジネスシーンにおけるエンパシーの具体例

    よくあるビジネスシーンを例に、エンパシーの具体例をご紹介します。簡単にイメージするために、ぜひ参考にしてみてください。

    上司から部下へのエンパシー

    上司が部下と接する際にエンパシーを意識している場合、

    上司から部下へのエンパシー例
    (上司)
    「急で申し訳ないけど、先月の数字データを表にしてまとめてくれないかな?もし今やっている業務が急ぎなら、私が優先度を調整しておくから」
    (部下)
    「承知しました。すぐに取り掛かります。」

    という仕事の頼み方をします。緊急性が高い業務だから優先的にやってほしいものの、今の仕事の優先度や仕事を中断させられることにより困るということを想像し、配慮を示します。

    一方、仕事を頼まれた部下は、上司が部下の仕事に配慮した伝え方をしてきてくれたことで、不満や不快感が生まれにくいでしょう。

    部下から上司へのエンパシー

    部下がエンパシーを意識していると、

    部下から上司へのエンパシー例
    (上司)
    「来週の会議の資料はまとまったかな?調査データの数が多いから、ほかに仕事があれば、他の人と分担してやってもらうようにするよ」
    (部下)
    「はい、ありがとうございます。資料は調査データなどを含め、報告内容自体はすべて入れてあり、あとは来月の目標について追加するだけなので、本日夕方までに提出できます。」

    という報告をします。上司が進捗を聞いてきた時点で、不安に感じているのかもしれないと察し、心配をかけないようできるだけ端的かつ詳細に報告をします。

    このようにエンパシーを活かして相手の質問の仕方や言葉の意図を想像したり、共感したりすることで、相手の状況や考え方に配慮した伝え方ができるようになるでしょう。

    エンパシーを高める方法

    エンパシーを高めるために有効な方法をご紹介します。エンパシーを高めたいと感じているマネジメント担当者はぜひ参考にしてください。

    傾聴を意識する

    エンパシーを高めるためには、日頃から人とコミュニケーションを取る際に傾聴を意識して、相手の話に耳を傾けることが大切です。傾聴する姿勢を続けると、相手の立場で想像したり理解したりする癖がつきやすくなるでしょう。

    さまざまな人と会話をする

    エンパシーを高めるためには、多くの人やさまざまなタイプの人と接することも有効です。人それぞれで考え方や価値観は異なるため、多数の人と会話したりコミュニケーションを取ったりすると、さまざまな価値観や感じ方を理解できるでしょう。

    エンパシーを活かせる場面

    エンパシーをビジネスで活かせる場面についてご紹介します。

    営業活動

    営業活動では、顧客とのコミュニケーションから、信頼関係を築くことが重要です。サービスや商品の市場競争が激化している場合、質や内容に大きな差が出にくく、自社のサービスを選んでもらうことが難しいでしょう。

    だからこそ、顧客が営業担当者を信頼できるように努めることが重要です。日頃のコミュニケーションの中でエンパシーを発揮し「この人なら信じられる」「この人がおすすめするものなら間違いない」と思ってもらえる関係を構築することを意識します。

    営業職でエンパシーを発揮する際は、できるだけ顧客に耳を傾けて共感し、解決しようとする姿勢を示すと、顧客から信頼を得られるでしょう。信頼を得られると、交渉や商談の際もうまくいく可能性が高くなるため、日頃からエンパシーを活用することが大切です。エンパシーを高く保っていると、顧客からの受注が増えて、交渉が成立しやすくなるでしょう。

    マーケティング

    マーケティングにおいても、エンパシーを活かせるシーンが多くあります。顧客の価値観や考えを踏まえて商品を開発し販売すると、自分に合った商品として感じてもらえるはずです。マーケティングの調査や宣伝にも効果があるでしょう。

    商品の開発

    商品開発についても、営業活動と同様に、通常のサービスや品質だけでは選ばれにくくなっています。そのため、顧客の要望に応じた商品やサービスがどのようなものか感じ取る必要があります。

    商品開発では、このような思考を「デザイン思考」と呼び、新たな商品開発のやり方として取り入れる企業が増えています。デザイン思考では、エンパシーを活かしながらユーザーの悩みや欲しいものを理解して共感することが大切といえるでしょう。

    まとめ

    エンパシーとは、共感という意味合いを持つ言葉で、自分以外の他者を理解するために必要とされている能力です。みずから相手の立場に立って想像する姿勢が大切であり、ビジネスにおいて顧客や取引先との信頼関係構築にも大きく影響するため、最終的には成果や業績に影響する可能性もあります。

    エンパシーを高めるには、傾聴とさまざまなタイプの人とのコミュニケーションを取ることが重要です。短期間で身につけられるスキルではありませんが、研修など人材育成を行うことで鍛えられます。

    また、エンパシーについて知らない従業員もいるため、会社全体にエンパシーについて紹介をすることも大切です。相手の心情や価値観を理解しようとする姿勢や共感で、将来的には組織としての生産性向上も期待できるでしょう。