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フィルターバブル現象とは【例】メリットと危険性、対策を解説

フィルターバブル現象とは、インターネット上で個人の興味や過去の検索履歴に基づいて情報がフィルタリングされ、同じような情報や意見ばかりが個人に提供されることにより、多様な視点に触れる機会が減少する現象です。情報を効率的に取得できるのは、情報過多の時代においてメリットがありますが、一方で範囲を狭めることにより、思考の偏りや分断を深める危険性が指摘されています。

本記事では、フィルターバブル現象の具体的な例を挙げつつ、そのメリットと危険性を紹介し、対処するための対策を解説します。

フィルターバブル現象とは【例】メリットと危険性、対策を解説
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    フィルターバブルとは何か

    フィルターバブルとは、自分の興味や好みに合わせてインターネット上で情報がフィルタリングされ、自分の視野や考え方に合った情報しか見えなくなる現象です。今やインターネットは日常生活に欠かせなくなり、情報を得る手段として重要な役割を果たしています。検索アルゴリズムによって「見たい情報が優先的に表示される」「見たくない情報が遮断される」環境が構築され、ユーザーの視野が狭くなっています。

    フィルターバブルは、自分の好みや価値観に合った情報が効率的に得られる一方で、視野が狭くなり、異なる価値観や意見に触れる機会が減少するという問題点が指摘されています。

     フィルターバブルの具体例

    ある特定の政治的立場を持つニュース記事を頻繁に閲覧すると、その立場に合致する記事が優先的に表示され、異なる立場の記事はあまり見られなくなります。これにより、自分の意見が正しいという確証バイアスが強まり、ほかの視点を理解する機会が失われていくのがフィルターバブル現象です。

     フィルターバブルが生じるメカニズム

    フィルターバブルは、トラッキング機能、フィルタリング機能、パーソナライゼーション機能と密接に関係しています。

    トラッキング機能はユーザーの行動を追跡し、その行動データを基にユーザーの興味や嗜好を把握します。

    フィルタリング機能はユーザーの好みや傾向に合わせて検索結果を表示させるものです。たとえば、ある商品を購入したユーザーに対して、その商品と関連性の高い商品を推奨するなどの働きをします。

    パーソナライゼーション機能はトラッキングやフィルタリングをさらに個人最適化するものです。ユーザー一人ひとりに合わせた情報が提供されます。

    以上の機能が組み合わさることで、ユーザーは自分の興味・嗜好に合った情報しか見られなくなり、フィルターバブルが生じます。

    フィルターバブルのメリット

    インターネットの世界は、情報があふれかえっており、自分にとって必要な情報を見つけ出すのは容易ではありません。そこで役立つのが「フィルターバブル」です。

    フィルターバブルには、ユーザーにとってのメリットと広告主や事業者にとってのメリットがあります。

     ユーザーにとってのメリット

    ユーザーにとっての最大のメリットは、自分の好みや価値観に合った情報を効率的に得られることです。たとえば、あるユーザーが特定の音楽ジャンルやアーティストに興味を持っているとします。フィルターバブル現象は、ユーザーの好みを学習し、そのジャンルやアーティストに関連する情報を優先的に表示します。ユーザーは自分が興味のある情報に素早くアクセスでき、情報収集の手間が省けます。

    また、フィルターバブルは、ユーザーが新たな情報に出会う機会を増やすというメリットもあります。たとえば、あるユーザーが特定の本を読んだとします。その本の著者やテーマに関連するほかの本の情報が推奨されることで、ユーザーは自分が知らなかった新たな本に出会えます。フィルターバブルは、ある特定の範囲内でユーザーの知識を広げる機会を提供します。

     広告主や事業者にとってのメリット

    広告主や事業者にとっての最大のメリットは、ターゲットとしている顧客を効率よく獲得できることです。フィルターバブルの仕組みは、ユーザーの行動や好みを追跡することで、そのユーザーに合った広告を表示します。

    たとえば、あるユーザーが特定の商品を頻繁に検索しているとします。そのユーザーに対して、商品に関連する広告を表示することで、広告主や事業者はそのユーザーを自社の顧客として獲得する可能性が高まります。また、ユーザーが特定の商品を購入したあとも、商品に関連するほかの商品の広告を表示することで、リピート購入を促せます。

    このように、フィルターバブルは広告主や事業者にとって、広告効果を最大化するツールとなります。ユーザーの行動や好みを詳細に把握することで、広告主や事業者は最適な広告戦略を立てられ、その結果、売り上げの向上につながる可能性があります。

    フィルターバブルの危険性と問題点

    フィルターバブルは、ユーザーと広告主や事業者の双方にとって、多くのメリットを提供します。しかし、その一方で情報の偏りを生む危険性もあります。

    • ユーザーの視野の狭まりと孤立化
    • 情報漏えいのリスク
    • 新規顧客獲得の困難性

     ユーザーの視野の狭まりと孤立化

    フィルターバブルにより、ユーザーは興味や嗜好に基づいて情報を得られます。しかし、自分の考えや思考に近い意見ばかりが提示されるため、ほかの意見や思考を理解しにくくなるという問題があります。視野が狭まり、自己確認バイアスが強まる結果を生む危険性が指摘されています。

    さらに、フィルターバブルによって見ている情報が偏っていることに気づけず、閉鎖的な空間にいることになります。ユーザーは孤立化し、視野が狭まります。社会全体の意見や情報を理解することが難しくなり、社会的な誤解や偏見を生む可能性があります。

     情報漏えいのリスク

    フィルターバブルは、検索エンジンやSNSがユーザーの情報を収集し、それに基づいて情報を表示するため、個人情報の取り扱いに関する問題が生じる可能性があります。

    ユーザーの行動履歴や興味、嗜好などの情報は、個人を特定するための重要なデータです。情報が不適切に取り扱われた場合、ユーザーのプライバシーが侵害されてしまいます。情報が第三者に漏えいした場合、ユーザーはリスクにさらされることになります。

     新規顧客獲得の困難性

    フィルターバブルが形成されると、ユーザーが新たな商品やサービスに出会う機会が減少し、企業は新規顧客を獲得することが難しくなります。既存顧客も自分の興味や嗜好に合わない商品やサービスには目を向けなくなるため、新商品の販売やサービスの提供が難しくなる可能性があります。

    フィルターバブルの具体的な事例

    フィルターバブルは、ユーザーが自分と異なる意見や視点に触れる機会を奪い、社会全体の意見分裂や偏見の増大を引き起こす危険もあります。フィルターバブルが問題となった具体的な事例を3つ紹介します。

    • 米国大統領選挙
    • 新型コロナウイルス流行
    • 議会議事堂襲撃事件

     米国大統領選挙の事例

    2016年の米国大統領選挙は、フィルターバブルが大きな影響を及ぼした事例としてよく挙げられます。

    フェイスブックがアルゴリズムにより、ユーザーのニュースフィードをカスタマイズし、ユーザーが興味を持つと予測される情報だけを表示することで、フィルターバブルを形成しました。

    共和党支持者はドナルド・トランプ氏の投稿や、彼を支持する情報ばかりが表示され、一方で民主党支持者はヒラリー・クリントン氏の投稿や、彼女を支持する情報ばかりが表示されるという状況が生じます。

    選挙の真実が一方的にゆがめられ、ユーザーは自分の意見が多数派であると誤認する「多数派錯覚」を引き起こすなど、フィルターバブルが社会全体の意見分裂を助長したとされています。

     新型コロナウイルス流行の事例

    新型コロナウイルスの流行においても、フィルターバブルが大きな問題となりました。パンデミックの初期、人々は情報を求めてインターネットに頼りましたが、自分の信じる情報だけが表示され、異なる意見や情報に触れる機会が減少しました。

    これにより、ウイルスの危険性を過小評価する情報や、科学的根拠のない治療法を推奨する情報など、誤った情報が広まる「インフォデミック」が発生しました。また、ワクチンに対する偏見や誤解も広がり、ワクチン接種の拒否や遅延を引き起こすなど、公衆衛生への影響も生じました。

     議会議事堂襲撃事件の事例

    2021年のアメリカ議会議事堂襲撃事件も、フィルターバブルが大きな影響を及ぼした事例です。ドナルド・トランプ前大統領の支持者が議会議事堂を襲撃し、5人が死亡したという衝撃的な事件でした。

    事件の背後には、特定の情報だけが流れ、異なる視点の情報に触れる機会がなかったフィルターバブルが存在していました。特にトランプ氏の選挙不正主張を信じる情報が一方的に流れ、反対する情報に触れる機会がなかったことが、事件を引き起こす一因と考えられています。この事例は、フィルターバブルが社会的な混乱や暴力を引き起こす可能性を示しています。

    フィルターバブルを回避する方法

    フィルターバブルの問題を解決するためには、情報の多様性を保つことや、異なる視点の情報に触れる機会を増やすことが重要です。回避するための対策・方法を紹介します。

     プライベートブラウズの活用

    プライベートブラウズは、インターネットを利用する際にユーザーの行動履歴を追跡することを制限する機能です。使用すると、セッション中の閲覧履歴、検索履歴、入力情報などが保存されず、次回のブラウジングに影響を与えません。自分の好みや興味に基づいた情報だけが表示される状況を避けられます。

     アルゴリズムの解除

    検索エンジンやSNSのアルゴリズムを解除する方法です。

    検索エンジンでは「パーソナライズされた検索結果」の設定をオフにする、SNSでは「おすすめの投稿」を非表示にするなど、アルゴリズムによる情報選択を解除できます。これにより、自分の好みや価値観に基づいた情報だけが表示される状況を避けられます。

     インターネット以外の情報収集

    インターネット以外から情報を収集することが重要です。新聞や本、テレビなどのメディアは、インターネットとは異なる視点や意見を提供します。多様なメディアを活用することで、自分の視野を広げ、多様な情報に触れる機会を増やせます。

    また、人と直接会話することも有効です。異なる背景や価値観を持つ人々との対話は、自分が普段接触しない情報に触れるよい機会となるでしょう。

    フィルターバブルとエコーチェンバー、サイバーカスケードの違い

    フィルターバブル以外にも、情報が個々のユーザーに偏って伝わる現象が指摘されています。それが「エコーチェンバー」「サイバーカスケード」です。それぞれの違いを詳しく確認しましょう。

     エコーチェンバーとは何か

    エコーチェンバーとは、みずからが選んだ環境に閉じ込められる現象です。音響学で使われる「エコーチェンバー(反響室)」から派生した言葉で、自分の声が反響して返ってくる様子から、自分と同じ意見ばかりが返ってくる状況を指しています。

    エコーチェンバーは主にSNS上で起きる現象です。同じ価値観や環境を持つ人同士がつながり、自分と似た意見ばかりが流れてくることがあります。自分の意見を補強する情報ばかりが目に入るため、自分の考えが正しいという確証バイアスを強化され、ほかの意見を受け入れる機会を失う危険性があります。

     サイバーカスケードとは何か

    サイバーカスケードは、同じ考えや思想を持った人々が結びついて閉鎖的なコミュニティを形成する現象です。情報が一方的に伝播し、その情報が増幅されていく様子を指します。

    サイバーカスケードによって、特定の考えや思想が強化され、異なる意見や視点が排除されます。情報の伝播が一方的であるため、情報の真偽を確認する機会が少なく、誤った情報が広まる危険性があります。

     フィルターバブルとの違いとは何か

    フィルターバブルは、ユーザーが自分自身が作り上げたフィルターによって閉じ込められ、他の情報から切り離される状態を指します。これは、検索エンジンやSNSがユーザーの過去の行動データをもとに、ユーザーが興味を持つと予測される情報だけを提供するために起こります。

    一方、エコーチェンバーはみずからが選んだ環境に閉じ込められる現象、サイバーカスケードは同じ考えを持つ人々が集まることで生じる現象です。

    以上の現象は、情報の偏りを生む原因であり、社会全体の意見の多様性を損なう問題点が指摘されています。現象を理解し、情報の偏りに陥らないようにすることが必要です。

    まとめ

    フィルターバブルは、インターネット上でユーザーの興味や好みに基づいて情報がフィルタリングされ、異なる意見や視点に触れる機会が減少する現象です。

    ユーザーにとっては好みに合った情報を効率的に得られるメリットがある一方で、視野が狭まり、情報の多様性が失われるデメリットもともないます。

    広告主や事業者にとっては、ターゲット顧客を効率的に獲得できる利点がありますが、新規顧客の獲得が困難になる可能性もあります。

    フィルターバブルは情報の偏りや孤立化、情報漏えいのリスクが懸念されるため、プライベートブラウズの活用したり、インターネット以外から情報収集をしたりするなどしましょう。多様な情報に触れる機会を設けることで、フィルターバブルの影響を最小限に抑えるられるはずです。