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ジョハリの窓とは? 4つの領域の詳細や活用例、ワークの実践方法を解説

ジョハリの窓は、自己認識と人間関係の理解を深めるための心理学的モデルを指します。ビジネスにおいて性格や考えが異なる人と意見を交わすうえでは、自己理解が重要です。

本記事では、ジョハリの窓の「公開領域」「盲点領域」「隠れ領域」「未知領域」の詳細を明らかにし、日常生活や職場でのコミュニケーションに活用する方法やモデルを用いたワークの実践方法も解説します。

ジョハリの窓とは? 4つの領域の詳細や活用例、ワークの実践方法を解説
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    ジョハリの窓とは?

    ジョハリの窓とは、自己理解と人間関係の改善を目的とした心理学的理論です。1955年にアメリカの心理学者ジョセフ・ルフト(Joseph Luft)氏とハリントン・インガム(Harrington Ingham)氏によって考案されました。「ジョハリ」という名前は、彼らの名前の一部です。

    ジョハリの窓の誕生背景

    ジョハリの窓の起源は、1955年の「グループ成長のためのラボラトリートレーニング」にあるといわれています。

    1955年の「グループ成長のためのラボラトリートレーニング」

    ラボラトリートレーニングは、人間関係や組織のダイナミクスを研究・体験するための実験的な教育・トレーニング方法です。1950年代に、特にアメリカの国立トレーニング研究所(NTL)で発展しました。

    参加者は実際のグループ状況での対人関係やコミュニケーションのパターンを体験し、これを通じて自己認識を深めるとともに、グループとしての機能やダイナミクスの理解を得ることを目指します。

    このトレーニングは、ジョハリの窓をはじめ、その後の人間関係のトレーニングや組織開発の分野における多くの手法の基礎を築くことになったといわれています。

    参照:『ラボラトリー・トレーニングにおけるモデルの検討』南山大学

    ジョセフ・ルフトとハリントン・インガムの貢献

    ジョセフ・ルフト氏とハリントン・インガム氏は、ジョハリの窓のモデルを開発したことで知られています。彼らは、1955年のグループ成長のためのラボラトリートレーニングにおいて重要な役割を果たしました。

    ルフト氏とインガム氏は、人間の自己認識と人間関係を理解するためのフレームワークとして、ジョハリの窓の概念を導入しました。

    ジョハリの窓のモデルは、個人の自己認識と他者からの認識の間の関係を図式化し、個人が自己についてどの程度認識しているか、他者がその人についてどの程度知っているかを示すものです。

    自己開示と相互フィードバックを促進することで、個人とグループの成長を支援するために使用されています。ルフト氏とインガム氏の貢献は、コミュニケーションや心理学、組織開発の分野における重要なツールとして、今日でも広く利用されています。

    ジョハリの窓の四つの領域

    ジョハリの窓は、以下4つの領域から構成されています。

    • 公開領域
    • 盲点領域
    • 秘密領域
    • 未知領域

    公開領域

    公開領域は、自分自身が知っている情報であり、同時に他者も知っている情報を指します。自分が意識的に他者に明らかにしている部分であり、オープンなコミュニケーションや相互理解の基盤となります。

    公開領域の具体例
    基本情報名前や年齢、出身地、職業などの基本的な個人情報
    趣味や興味好きな映画や読書の嗜好、趣味など
    価値観や信念公然と表明している政治的な立場や宗教的信念など
    経験やスキル教育背景や専門的な技能や知識、職歴など、キャリア関連の情報
    感情や態度人々とのコミュニケーションの中で公然と表明される感情や考え方

    公開領域が領域が広いと、他者とのコミュニケーションがスムーズに行われ、情報の共有や意見交換がしやすくなります。

    また、公開領域を拡大すると、秘密領域や盲点領域の情報も共有され、より深い相互理解や信頼関係の構築につながります。

    公開領域を共有するメリット
    信頼の構築透明性や誠実さが評価され、他者との信頼関係を築きやすい
    明確なコミュニケーション公開領域が広いほど、誤解やコミュニケーションの障壁が少なくなる
    相互理解の促進自分の価値観や考え方を他者と共有することで、相互の理解を深める
    効率的な協力公開されている情報やスキルに基づいて、他者との協力やタスク分担がスムーズに行われる

    盲点領域

    盲点領域は、自分は知らないが、他人が知っている情報を指します。他人が自分のことをどのように見ているか、自分が気づいていない特徴や行動などが含まれます。

    盲点領域の具体例
    コミュニケーションスタイル・声が大きい
    ・話すスピードが速い
    ・独特の口癖がある など
    ・緊張すると無意識に足を動かす
    ・ペンをいじる など
    気質・他人と比べて特に辛抱強い
    ・すぐにイライラする など
    社会的な役割・チームワークの中でのリーダーシップの傾向
    ・従順さ など
    感情表現・感情を表に出しにくい
    ・感情が顔に出やすい など

    盲点領域は、自覚していないものの他者が見ている自己の特性や行動が含まれ、他者のフィードバックを通じて明らかになることで自己の弱点や改善点がわかり、自己改善や成長が促進されます。信頼関係の構築と協調性の強化が期待でき、チームやコミュニティにも好影響を与えるでしょう。

    また、自分自身に気づいていなかった行動や態度を変えるきっかけにもなり、豊かな人生経験と人間関係の構築に寄与するのです。盲点領域の探求と他者からのフィードバックは、自己実現と人間関係の向上の両方において重要なプロセスです。

    ただし、他者からのフィードバックが期待と異なる場合、傷ついたり防御的な態度になったりするなど、受け取る側や与える側のコミュニケーションの方法やタイミングによっては、デメリットやリスクをともないます。

    盲点領域に気づくメリット
    自己成長自己成長やスキルの向上の役立つ
    信頼関係の構築正直なフィードバックを受け入れることで、他者との信頼関係を築く
    コミュニケーションの向上自分の知らない行動や態度について知ることで、他者とのコミュニケーションの質が向上する
    効率的な協力公開されている情報やスキルに基づいて、他者との協力やタスク分担がスムーズに行われる

    秘密領域

    秘密領域は、自分自身が知っているものの、一方で他人が知らない情報を指します。個人の過去の経験や感情、恐れ、秘密、希望など、他人には共有されていない内部の考えを含むことが多いでしょう。

    秘密領域の具体例
    個人的な不安や恐れ・仕事の失敗に対する不安
    ・特定の社会的状況への恐怖 など
    秘密にしている野望や夢・自分だけが知っているキャリアアップの計画
    ・ある分野での成功への願望 など
    過去の経験・トラウマになっている過去の出来事や
    ・他人には話したくない恥ずかしい経験 など
    真の感情・実際には怒りを感じているが、外には穏やかさを見せる など
    個人的な価値観や信念・自分の政治的、宗教的な信条
    ・道徳的な価値観 など

    秘密領域を探ることは、自己の本質を深く理解するのに役立ち、自分らしい生き方を追求し、意思決定をするうえで重要です。

    秘密領域には、隠された感情や過去のトラウマが潜むことが多く、これらを直視することで精神的な健康を取り戻し、内面的な平和を実現する手助けにもなります。感情の処理は、自己受容を促進し、個人の感情的なバランスを保つうえで不可欠です。

    秘密領域を開放するメリット
    コミュニケーションの改善自己開示により、コミュニケーションがより開放的になる
    自己理解の向上自分自身について他者に話すことで、自己理解が深まる
    ストレスの軽減秘密を抱えることによる心理的ストレスが軽減される
    信頼関係の構築より深い人間関係を構築できる可能性がある

    未知領域

    未知領域は、自分自身も他人も知らない情報を指します。まだ発見されていない潜在能力や未経験の感情や反応など、意識の深い部分に隠れた情報を含みます。

    未知領域の具体例
    未発見の才能や能力未経験の状況や活動に挑戦したときに初めて明らかになる可能性のある、隠れた音楽や芸術、スポーツ、言語に関する才能
    潜在的なリーダーシップ特定の圧力の下や緊急事態において初めてあらわれるかもしれないリーダーシップの資質
    対人関係での反応予期せぬ出来事や新しい人間関係に直面した際に示される反応や感情
    ストレスや危機の下での行動極度のストレスや危機状況で初めて見える、冷静さや決断力
    個人の信念や価値観まだ表面化していない、自分の核となる信念や価値観

    未知領域には、自分でもまだ気づいていない才能や能力が眠っていることがあります。見つけ出すことで、新しい可能性を開拓し、人生の新しいチャンスをつかめるのです。

    さらに探索を通じて新たな感情や感受性に触れることで、感情の幅が広がるでしょう。未知領域を探るには、瞑想や日記、カウンセリングなどを試すのがよいでしょう。内面を深く見つめ、気づかない自分を発見するのに役立ちます。

    カウンセリングやセラピーでは、プロの手引きを得ながら、自分でも気づいていない感情や考え方に光を当てられます。さらに、カウンセラーからのフィードバックによって、他者の目を通して自己を見つめ直し、新たな自己発見につながることもあります。

    また、普段と違う活動に挑戦したり新しい場所へ行くことで、予想外の反応や才能が顕在化したりすることがあります。

    ジョハリの窓の活用例

    ジョハリの窓は日常のさまざまな場面で活用されています。シーン別の活用例をご紹介します。

    チームビルディング

    新しいプロジェクトチームが結成された際、メンバー間の信頼が不足している場合、ジョハリの窓を活用することで、効率的なコミュニケーションを促進できます。

    具体的には、フィードバックの機会を設けて「盲点領域」を「公開領域」へ移行させ、また自己開示のアクティビティで「秘密領域」の一部を「公開領域」へ移行させます。これにより、メンバー間の相互理解が深まります。

    リーダーシップの強化

    新任マネージャーが部下からのフィードバックを受け取る機会が少ない場合、ジョハリの窓を活用することで、自分のリーダーシップに対する部下の考えを理解できます。

    具体的には、360度フィードバックを通じて他者からの視点を得たり、1on1ミーティングで自己開示を行ったりしながら部下とのコミュニケーションを深めていきます。

    組織文化の形成

    企業がM&Aにより合併した際、異なる組織文化や価値観を持つ従業員同士が協力し合わなければならない場合、ジョハリの窓を活用することで、従業員間の自己開示やフィードバックの重要性を共有し、組織文化の形成を促進できます。

    パーソナルデベロップメント

    若手社員の育成プログラムの成果を最大化するために、ジョハリの窓を活用することで、若手社員の自己認識を深め、キャリアの方向性を探るサポートができます。 

    カウンセラーやセラピストのツール

    カウンセリングやセラピーのセッションでは、ジョハリの窓はクライエントの自己認識を促進し、セラピストとの信頼関係を構築するための有効なツールとなるでしょう。

    個人の自己啓発と成長

    ジョハリの窓を活用した自己啓発の方法は、信頼できる人々からのフィードバックを受け入れ、自分の感情や考えを他人と共有することです。自己探求のための瞑想や日記の記述などの活動を通じて「未知領域」の情報を掘り起こし、自己認識を一層高められます。

    これらのプロセスを通じて、自己開示の能力が高まり、他人からのフィードバックを受け入れやすくなり、コミュニケーション能力が強化されます。

    人間関係の改善にもつながり、チームワークを強化する効果が期待できるでしょう。自分の中の未発見の才能や可能性を発掘する機会も増え、感情のコントロールやバランスを取りやすくなります。

    教育・トレーニングセッション

    教育やトレーニングの現場でも、ジョハリの窓は参加者の自己認識の深化や相互理解の促進といった目的で用いられます。

    人間関係全般における信頼構築

    ジョハリの窓は、人間関係全般における悩みごとの解決策を考える手がかりにもなります。具体的には、自己認識を深めることで、誤解や期待値のずれによるけんかを未然に防ぐ助けとなり、もしけんかが起きてしまった場合には解消のきっかけを提供します。

    最終的には、これらのプロセスを経ることで、感情の安定と心の平和が得られるでしょう。

    ジョハリの窓を活用したワークの実践方法

    ジョハリの窓は、他者との関係の中で自己認識を深めるツールとして用いられています。具体的な実践方法をご紹介します。

    自己評価と他者評価のワーク

    ジョハリの窓を活用したワークとして、形容詞リストを使った方法があります。

    ワークのやり方
    1A4サイズの用紙と筆記用具、ジョハリの窓の項目リスト(一般的には55~60の形容詞がリストアップされているもの)を用意
    2用紙を大きく4つの領域に分ける。それぞれ「開放」「秘密」「盲点」「未知」と名前をつける
    3形容詞のリストから、自分をもっともよくあらわしていると思う項目5〜10語を選び「開放」の領域に書く
    4同じリストから、参加者に自分を形容する言葉5〜10語を、3と同様に選択してもらう
    53と4のステップから、自分が認識していなかった項目を「盲点」の領域に、自分も他者も認識していない項目を「未知」の領域に、自分が認識しているが他者が認識していない項目を「秘密」の領域に書く
    65の結果から、自分の「盲点領域」や「秘密領域」を認識し、否定せず冷静に分析する
    7自分の強みや弱み、改善点などを再評価し、今後の行動や態度を見直す

    ワークを行う際は以下の点に注意しましょう。

    安全な環境の確保

    ワークは、参加者が自分と他者との関係について深い洞察を得ることを目的としています。批判や攻撃の場とならないよう、安全な環境を確保することが重要です。

    オープンマインドの維持

    「盲点」にある情報は、自分が認識していない領域です。他者からのフィードバックを受け入れる際は、否定的にならず受け入れる姿勢を持つことが重要です。

    結果の過度な一般化を避ける

    ワークの結果は、現時点での参加者の感じ方や認識を示しています。過去や未来を一般化するものではありません。

    個人のプライバシーの尊重

    特にジョハリの窓の秘密領域において、自己開示をするか否かやどの程度行うかは、個人の選択に委ねるべきです。プレッシャーを与えて強制的に開示させることのないようにしましょう。

    自己開示の実践

    ジョハリの窓を通じた自己開示には、次のメリットがあります。

    • 自己認識の深化
    • 他者との関係の強化
    • 相互理解の促進
    • コミュニケーション改善
    • 誤解の軽減
    • 心の負担の軽減とメンタルの安定
    自己開示の手順
    1まず、自分自身を深く反省し、自分の感情や考え、信念、価値観について理解することがスタート地点です。意識的な自己認識が、自己開示の基礎を築きます。
    2次に、自己開示を行うタイミングを検討します。相手が受け入れやすい状態にあり、お互いに信頼関係が築かれている状況を選ぶことが、自己開示の効果を高めます。
    3自分の具体的な経験や感じた感情を他者と共有します。具体的な情報を共有することで、相手に自分の経験や感情をより明確に伝えられます。
    4最後に、自分が情報を開示するだけでなく、相手からの反応やフィードバックを受け入れます。それによりコミュニケーションを豊かにし、より理解を深められます。

    ただし、過度な自己開示は避けたほうがよいでしょう。互いの関係がまだ十分に発展していない場合や、自己開示を行うには適切な状況にないと判断される場合は、逆効果になることがあります。

    また、相手の感情や反応を尊重することも大切です。相手がどのように感じているかを理解し、その反応を適切に扱うことで、相互の信頼関係を損なうことなくコミュニケーションを続けられるでしょう。

    自己開示は信頼関係の上に成り立つものであり、個人のプライバシーや境界線を尊重することが不可欠です。自分自身だけでなく、相手のプライバシーも守りながら、お互いの理解を深めるための適切な情報共有を心がけるべきです。

    新しい経験の挑戦

    ジョハリの窓の中で「未知領域」は、自分も他者もまだ認識していない自己の部分を指します。新しい経験や挑戦を通じてこの「未知領域」を探ることは、自己の未知の側面を発見し、自己成長の機会を増やす機会です。

    未知領域を探るには、通常の活動範囲を超えて快適ゾーンを離れ、挑戦的なタスクや目標に取り組んだり、異なる文化やバックグラウンドを持つ人々とのかかわりを深めたりすることが有効です。

    これにより限界を押し広げ、隠された潜在能力を発見できるとともに、自分の価値観や信念を見直し、新たな視点や認識を獲得できます。

    方法
    旅行自己の適応力や柔軟性を試す
    ボランティア活動自己の価値観や社会への貢献の方法を再考する
    新しいスキルの習得自己の成長や発見につながる
    スポーツやフィットネス身体の限界や能力、チームワークの価値を体験できる

    ロールプレイ

    ジョハリの窓をもとにしたロールプレイを行うことで、参加者が自己と他者との関係をより深く理解し、実際のコミュニケーションでの活用方法を学べます。

    ロールプレイの設定の例
    1本人が自覚していない最近のAさんの態度について伝える
    2Bさんに明らかにしていない自分の内面について伝える
    3Cさんは新しいチームやグループに参加することになった。どこまで領域を公開するか、そしてどの領域は公開しないかを意識しながら、自己紹介をする

    ロールプレイは自己開示やオープンなコミュニケーションの練習になります。自己認識と相互理解を深められ、人間関係を強化する助けとなるでしょう。

    ジョハリの窓の限界と批判

    ジョハリの窓はビジネスや教育現場において自己分析・相互理解のためのツールとして活用されていますが、あくまでも一理論に過ぎず「過信しすぎるのはよくない」との意見も存在します。

    ジョハリの窓の限界について詳しく解説します。

    現代社会へ適用しない

    ジョハリの窓が提唱された1955年頃のアメリカは、第二次世界大戦後の経済成長期にあり、企業や組織内での人間関係やコミュニケーションが重視される時代でした。

    背景には、戦後の復興期を迎え、組織やチームとしての連携が不可欠となったこと、また心理学や社会学が注目されるようになったことが挙げられます。対照的に21世紀の現代社会は、情報技術の進化とともに、SNSやオンラインコミュニケーションが日常の一部となりました。

    これにより、人々のコミュニケーションスタイルや自己認識、他者との関係性にも大きな変化が生じており、ジョハリの窓が必ずしも自己を説明するツールといえなくなっている可能性があります。

    オンラインコミュニケーションにより各領域が拡大・縮小している

    現在はSNSやオンラインプラットフォームの普及により、自分の日常生活や考え、感情を以前よりも容易に他者と共有できるようになりました。つまり公開領域が拡大しているといわれています。

    一方でオンラインでの広範な人々との交流が増えたことで、直接会って他者からフィードバックを受ける機会が減り、自分が知らない他者から見た自分(盲点領域)を知りにくくなっています。

    実際に直接会ってコミュニケーションを取れたとしても、感情や考えをあまり表に出さない傾向が強くなり、秘密領域が以前に比べて拡大しているといえるでしょう。

    自己開示の制限や誤解が生じることも

    コミュニケーションスタイルの変化によって、ジョハリの窓の限界が指摘されています。

    SNSでは、人々が自分のポジティブな面や成功した瞬間を選んで見せることが多く、これにより真実に近い自己開示が制限されるという問題が指摘されています。

    選択的な自己提示は、オンラインでの自己イメージと実生活での自己イメージとの間に差異を生じさせることがあり、その結果コミュニケーションの中で誤解や摩擦が発生することがあるでしょう。

    また、オンラインでの自己開示が増加するにつれて、プライバシーに関する問題や、情報が誤って解釈されたり悪用されるリスクも高まっています。ジョハリの窓で自己や他者を知ったり開示したりするうえで、コミュニケーションの質と安全性に重要な影響を及ぼしていると考えられるでしょう。

    ジョハリの窓は、現代社会においても自己分析・相互理解のフレームワークとして活用できます。活用においては、SNSやオンラインコミュニケーションの特性を考慮しながら、その適用方法や範囲を調整することが必要といえます。

    ジョハリの窓以外の心理学モデル

    ジョハリの窓の限界を踏まえて、自己分析・相互理解のためのほかの心理学モデルをご紹介します。

    MBTI (Myers-Briggs Type Indicator)

    MBTIは、人々の性格タイプを、対になる4次元を掛け合わせた16カテゴリーに分類する診断ツールです。

    1E:外向型I:内向型
    2S:感覚型N:直観型
    3T:思考型F:感情型
    4J:判断型P:知覚型

    MBTIは、キャリアカウンセリングやチームビルディング、リーダーシップ開発で活用されています。一方で、過度に簡略化された性格カテゴリーで結果が変わりやすく、科学的な根拠が欠如しているという指摘もあります。

    参照:『MBTI (Myers-Briggs Type Indicator)』The Myers-Briggs Company

    DiSC分析

    DiSC分析は、人々の行動特性を4つの主要なタイプ以下の要素に基づいて評価する診断ツールです。

    DDominance主導
    IInfluence感化
    SSteadiness安定
    CConscientiousness慎重

    DiSC分析は、コミュニケーショントレーニングや営業戦略の策定、リーダーシップの育成において活用されています。ただし簡略化された4つのカテゴリーは、個人の複雑な性格や行動を十分にカバーしていないという指摘もあります。

    参照:『DiSC診断』Discprofile

    ジョハリの窓との違い

    ジョハリの窓は自己認識と他者とのコミュニケーションの観点から、MBTIとDISC分析は個人の性格や行動特性を分析・分類する観点からアプローチしています。

    またジョハリの窓は自己開示やフィードバックの重要性を強調するのに対し、MBTIやDISC分析は、個人の性格や行動特性に基づいて、最適なキャリアや役割を特定することを主な目的としています。

    コミュニケーションや自己啓発のコンテクストではジョハリの窓、組織内でのチームの構成やキャリアの方向性など、より具体的な行動や役割の分析にはMBTIやDISC分析を使用することが一般的です。

    ジョハリの窓を作成できるおすすめのツール・アプリ

    紙やペンを使わずとも、ジョハリの窓は作成できます。PCやタブレットでジョハリの窓を作成できるツールを5つご紹介します。

    Microsoft PowerPoint

    スライド上で4つの領域を表現するシンプルな四角形を使用して、ジョハリの窓を作成できます。ビジネスシーンでは認知度が高く、使ったことのある方も多いと思われます。

    Google Slides

    オンラインでの共同編集が可能なので、チームとの共有や編集が容易です。Google Slidesも認知度が高く、試しやすいサービスの一つといえるでしょう。

    Lucidchart

    フローチャートやマインドマップを作成するのに適したツールで、ジョハリの窓を視覚的に表現するために使用できます。

    miro

    リアルタイムでの共同作業が可能で、ジョハリの窓のワークショップやグループアクティビティに適しています。

    Trello

    カードベースの管理ツールで、各カードをジョハリの窓の4つの領域に割り当てることで、情報やフィードバックを整理するのに使用できます。

    まとめ

    ​​​​ジョハリの窓は、ビジネスシーンにおける人間関係の理解やコミュニケーションの向上に影響を与えるツールです。同僚や上司、部下、取引先とのスムーズなコミュニケーションは業務工数の削減、生産性の向上につながります。

    しかし本来は伏せておきたい一面、自分すら知らない一面を「職場」という公的な場で見せるのは誰しも少なからず抵抗があるものです。ジョハリの窓やほかの心理学モデルを使った自己開示を行う際には互いに否定せず、共感を示すように配慮しましょう。

    メンバー同士が「この職場なら安心して話せる」と思える心理的安全性の高い環境づくりが、正確な自己分析と他者理解を促進し、最終的なビジネスの成果につながるでしょう。