合同会社の特徴とは【わかりやすく】株式会社との違いや設立のメリット・デメリット、費用
合同会社とは、出資者と経営者が同一の会社形態です。柔軟な経営構造と簡易な設立手続きから、特に小規模の事業やBtoCの企業の運営に適しています。しかし、合同会社の具体的な特徴や株式会社との違いを理解できていない方もいるでしょう。
本記事では、合同会社の特徴や設立するメリット・デメリットを解説します。設立に必要な対応や費用も紹介するので、合同会社の設立が自身のビジネスに適しているかの判断にお役立てください。
合同会社とはどんな会社? 特徴
合同会社とは、2006年5月に施行された会社法改正により新しくつくられた会社形態です。
アメリカのLCC(Limited Liability Company)をモデルとしており、最近では大手外資企業であるAppleやGoogle、Amazonの日本法人が合同会社の形態をとっていることでも注目を集めています。
合同会社の5つの特徴を詳しく解説します。
- 出資者全員が経営者
- 有限責任を負う
- 平等に決議権を持つ
- 役職の任期がない
- 定款の認証が不要
出資者全員が経営者
合同会社では出資した人が会社の経営者となるため、出資したすべての社員に会社の決定権があります。合同会社における社員とは出資者のことで、一般的な従業員という意味ではありません。
原則として出資者(社員)が経営も行うため、所有と経営が一致しており、株主総会を実施せず、迅速に意思決定ができるのが大きな特徴です。
有限責任を負う
合同会社では、すべての社員に有限責任があります。万が一倒産した場合は、各社員が自身の出資額を限度に責任を負わなければなりません。
合同会社は社員数や債権者数が比較的少ないため、社員や債権者の保護よりも経営の自由度を重視する傾向が強いといえるでしょう。
平等に決議権を持つ
合同会社は出資者が経営者であり、出資したすべての社員が平等に決定権を持ちます。そのため、社員全員の意見が一致すれば迅速な経営判断ができます。
内部決定についてあらかじめ定款に定めておくと、多数決に頼らない決議方法を採用することも可能です。
役職の任期がない
株式会社の場合は役員の任期が定められているのに対して、合同会社における役員は任期に定めがなく、無期限で務められるのも大きな特徴です。役員の氏名や役職が変わらない限り登記を変更をする必要がないため、重任登記の登録免許税もかかりません。
定款の認証が不要
株式会社や一般社団法人、一般財団法人などを設立する際は、公証役場で定款の認証を受ける必要があります。正しく定款を作成し、書類や費用を準備して手続きを行わなければなりません。
しかし、合同会社の場合は定款の認証が不要なので、以下の手数料の負担を削減できます。
資本金の額 | 定款認証手数料 |
---|---|
100万円未満 | 3万円 |
100万円以上300万円未満 | 4万円 |
その他 | 5万円 |
合同会社と株式会社の違い
株式会社とは、株式を発行して集めた資金をもとに運営する会社形態です。原則として出資者である株主と経営者が異なる人物で構成され、株主と経営者の役割が切り離されています。株主と経営者が同一人物でも問題はありません。
株式会社と合同会社の特徴や違いは、以下の通りです。
株式会社 | 合同会社 | |
---|---|---|
最低資本金 | 1円以上 | 1円以上 |
所有と経営 | 原則完全分離 | 原則同一 |
役員の任期 | 2年(最大10年) | なし |
取締役会 | 任意による設置 | なし |
代表者の名称 | 代表取締役 | 代表社員 |
決算公告 | 必要 | 不要 |
定款 | 認証必要 | 認証不要 |
利益分配 | 出資比率に応じる | 定款で自由に規定可能 |
設立費用 | 25万円程度 | 10万円程度 |
信用度 | 高い | 低い |
大きく異なる点は、会社の所有と経営が一致しているかということです。株式会社では経営者が株主から委任されて業務を行うのに対し、合同会社では出資者全員が業務執行権限を有し、業務を行います。
ほかにも、決算公告の義務や利益分配、会社経営の自由度、設立費用、信用度などに大きな違いがあります。
税金面については、株式会社も合同会社も法人税が適用されるため違いはありません。また、出資者の責任が有限責任である点も共通しています。
合同会社を設立するメリット
合同会社を設立するメリットは、次の6つです。
- 設立と運営費用が安い
- 法人税を節税できる
- 経営の自由度が高い
- 意思決定が速い
- 利益の配分率を自由に決められる
- 決算を公表しなくてよい
設立と運営費用が安い
合同会社は、設立費用や運営にかかるランニングコストが安い点が特徴です。合同会社の設立コストは、株式会社の半分以下ともいわれています。
さらに、株式会社にかかる以下の維持費を削減できる点も大きな魅力です。
- 決算公告費用
- 重任登記費用
- 株主総会開催費用
法人税を節税できる
個人事業主が合同会社を設立すると、所得税の代わりに法人税が適用されます。
個人事業主は、所得金額によって最大税率45%の「超過累進課税」が課されます。
一方、法人税の場合は、資本金1億円以下の中小企業に適用される税率が最大でも23.2%です。所得金額によっては高い節税の効果が期待できるでしょう。
経営の自由度が高い
合同会社では経営の意思決定を経営者間で行えるため、経営に関する自由度が高いといえます。たとえば、組織設計や利益分配について、法令に反しない限り自由に決定できます。
定款内容の自由度が株式会社よりも高く、それぞれの事情に応じた定款を作成できるのも大きなメリットです。
意思決定が速い
合同会社では出資者が役員として経営にかかわるため、株式会社のように株主を集めて議案の承認を持つ必要がなく、意思決定のスピードが速いのも特徴です。出資者が複数いる場合でも、経営に対する価値観が大幅にずれていない限りは迅速な意思決定ができます。
利益の配分率を自由に決められる
出資金に関係なく利益の分配を自由に設定できるのも、合同会社のメリットです。資金がある役員と能力に優れた役員が平等に事業にかかわれるため、会社への貢献度に合わせた利益配分を実現できるでしょう。
決算を公表しなくてよい
決算公告の義務がない点も、合同会社の大きなメリットです。
株式会社は、株主や債権者に対して会社の決算状況を公開するため、次の方法で毎年決算公告をしなければなりません。
- 国の機関紙である『官報』に掲載する
- 日刊の新聞に掲載する
- 自社や信用調査会社などのWebサイトなどに掲載する
合同会社であれば、決算公告を掲載するための費用や手間を省けるだけでなく、会社の財政状況を公開しないことで取引を有利に進められる場合もあるでしょう。
合同会社を設立するデメリット・注意点
合同会社を設立するデメリットや注意点は、以下の通りです。
- 株式会社と比較すると信用度が低い
- 資金調達の方法が限られている
- 出資者同士で意見が対立すると混乱が生じる
- 事業承継が難しい
株式会社と比較すると信用度が低い
合同会社は比較的新しい会社形態であり、決算公告の義務がないため、株式会社と比べると認知度や信用度が低い傾向があります。小規模で閉鎖的なイメージを持たれがちなので、取引先によっては契約してもらえなかったり、優秀な人材を確保しにくかったりするリスクも考えられるでしょう。
資金調達の方法が限られている
合同会社は、株式会社のように株式を増額しての資金調達ができません(ただし、既存の社員が追加で出資することや、新たな社員を追加して出資することは可能)。基本的に、国や地方自治体の補助金や助成金、借り入れなどで資金を調達します。
また、合同会社は、株式会社のように証券取引所への上場ができないこともデメリットです。上場すると資金調達がしやすくなり、複数の資金調達方法から選択できるなどのメリットがありますが、合同会社はそのような恩恵を受けられません。
出資者同士で意見が対立すると混乱が生じる
合同会社の出資者が複数人いる場合、出資額に関係なく全員が経営に対する決定権を持ちます。そのため、出資者同士で経営に対する意見が食い違ってしまうと、経営や業務に混乱が生じてしまうでしょう。
また、利益配分を理由にもめごとへと発展するケースも少なくありません。対立を回避するためにも、定款で利益配分に関するルールを定めるとよいでしょう。
事業承継が難しい
合同会社は、株式会社と比べて売却や事業継承が難しいとされています。社員は、全社員の合意がない限り、持ち分の一部またはすべてを譲渡できません。
(持分の譲渡)
引用:『会社法』e-Gov法令検索
第五百八十五条 社員は、他の社員の全員の承諾がなければ、その持分の全部又は一部を他人に譲渡することができない。
上場企業の株式のように、自由には譲れないことが売却しづらい理由です。代表社員の継承についても同様に、社員全員の同意が必要になると理解しておきましょう。
合同会社の設立費用
合同会社の設立に必要な法定費用は10万円程度で、主に以下の費用がかかります。
登記免許税 | (1)資本金額×0.7% (2)6万円のいずれか高い方 |
---|---|
定款用収入印紙代 | 紙の場合は4万円、電子定款の場合は無料 |
登記免許税とは、法務局で登記手続きをする際にかかる税金です。登記免許税の額は資本金額によって異なり、資本金額×0.7%で算出した金額が6万円未満の場合は一律6万円です。
定款とは、会社を経営していくための規則をまとめたもので、会社を設立する際に作成しなければならない書類です。定款の作成方法には、紙と電子の2種類があります。電子定款の場合は収入印紙代が不要のため、コストを大幅に削減できるでしょう。
合同会社の作り方・設立の流れ
合同会社を設立する手順は以下の通りです。
- 会社の基本情報を決める
- 法人用の実印を作成する
- 定款を作成する
- 出資金(資本金)を払い込む
- 登記書類を作成する
- 法務局に登記申請をする
合同会社を設立するためには、書類や費用の準備が必要です。大まかな流れを把握しておくと、手続きをスムーズに進められるでしょう。
合同会社にまつわる疑問
合同会社を設立する際によく寄せられる疑問や質問をまとめてご紹介します。
合同会社は1人で設立できる?
出資者が1人でも、合同会社を立ち上げられます。
個人事業主でいるよりも効率的な節税ができるとともに、法人化により社会的な信用が高まるなど、さまざまなメリットが得られるでしょう。ただし、すべての手続きや業務を1人で行う必要があり、資金を確保しなければならないといった注意点があります。
合同会社は株式会社に移行できる?
合同会社を株式会社に移行することは可能です。
合同会社が株式会社に移行すると、次のようなメリットが得られます。
- 企業としての信用度を高められる
- 外部からの資金調達が可能となる
- 初めから株式会社を設立するよりもコストを抑えられる
株式会社に移行する際の大まかな流れは、以下の通りです。
- 組織変更計画書を作成する
- 債権者保護手続きを行う
- 変更登記申請を行う
移行費用として10万円程度かかります。
合同会社に置かれる役職とその役割は?
合同会社における役職は、主に次の3種類があります。
代表社員 | 業務執行社員 | 社員 | |
---|---|---|---|
株式会社における 同様の役員 | 代表取締役 | 取締役 | 株主 |
業務執行権 | あり | あり | 原則あり |
代表権 | あり | 代表社員を兼務している場合はあり | 原則あり |
登記の必要性 | あり | あり | なし |
合同会社では、原則として社員全員が代表社員であり、業務執行社員でもあります。しかし、定款で定めると、代表社員や業務執行社員を一部に限定することも可能です。
合同会社の設立に適した業種はある?
合同会社の設立に向いている業種は、以下の通りです。
- 小規模のスタートアップ企業
- カフェやサロンなどのBtoC企業
- 個人事業主からの法人化
合同会社は迅速な意思決定や自由な利益配分を行えるため、小規模の会社やスタートアップ企業におすすめです。カフェやサロンのような一般消費者向けのBtoC企業も、合同会社の恩恵を受けやすいでしょう。
また、個人事業主から法人へ移行する際にも合同会社が適しています。
合同会社は比較的新しく生まれた会社形態
合同会社は、2006年5月の会社法改正によって設けられた比較的新しい会社形態です。出資者と経営者が一致しており、出資者全員が有限責任を負います。
設立時の費用を抑えられ、経営の自由度が高いなどのメリットがある一方、認知度が低く取引先からの信用を得られなかったり、資金調達方法が限定されたりなどのデメリットもあります。
合同会社の設立が自身のビジネスに適しているかどうか、判断に悩んでいる方は、本記事で紹介した内容を参考にしながら法人化を視野に入れてみましょう。