マルチタスクとは? メリット・デメリット、効率的なタスク管理の方法を解説

マルチタスクとは? メリット・デメリット、効率的なタスク管理の方法を解説

マルチタスクとは、複数の作業を短期間で切り替えながら同時進行で行う手法です。

ビジネスシーンでは業務の効率化を目的に取り入れられることが多く、日常生活でも家事や育児など、さまざまな場面で活用されています。一方で、マルチタスクは注意散漫になるリスクもあります。

本記事では、マルチタスクの概要と効果的な活用方法、さらに効率的な仕事の進め方について解説します。

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    マルチタスクの定義

    マルチタスクとは、複数の作業を短期間で切り替えながら同時進行で行う手法・能力を指します。単一の作業(シングルタスク)に専念するのではなく、意識を複数の作業に分散させながら並行して進めていくことが特徴です。

    シングルタスクとの違い

    シングルタスクは、一度に1つのタスクに集中し、それに専念するアプローチです。

    ほかのタスクの進捗を気にかける必要がなく、管理が単純なので、マルチタスクより高い生産性が見込めます。また、1つの作業への集中力を維持しやすく、精神的なストレスも少ない傾向にあります。

    一方、マルチタスクは複数の作業へ注意が分散してしまい、集中力が低下しがちです。管理や優先順位の設定が複雑です。

    ビジネスシーンでの利用

    ビジネスにおけるマルチタスクは、同じ時間帯に複数の業務やプロジェクトに取り組むことです。異なる業務やプロジェクト間での切り替えや、優先順位づけなどが含まれます。

    たとえばプロジェクトマネージャーは、複数のプロジェクトの進捗状況を同時に監視し、リソースを調整する必要があります。

    日常生活での利用

    いわゆる「ながら作業」もマルチタスクの一種です。歩きながら音楽を聴く、歩きながらコーヒーを飲む、テレビを観ながらスマートフォンを触る、といった何気ない日常動作もマルチタスクに含まれます。

    マルチタスクの起源

    「マルチタスク」という言葉は、コンピューターの発展と密接に関係しています。

    1960年代から1970年代にかけて、大型のメインフレームコンピュータが広く普及しました。これらのコンピュータは、複数のプログラムを同時に実行でき、異なる作業(ジョブ)を並行して処理する機能を持っていました。この機能が「マルチタスク」という言葉の由来とされています。

    マルチタスク技術により、コンピュータは限られたリソース(CPUやメモリなど)を効率的に活用できるようになり、複数のユーザーが同時に利用することが可能となりました。

    「複数の作業を同時に行う」という概念は、現在のオペレーティングシステム(WindowsやmacOS、UNIXなど)の基本機能として取り入れられ、複数のプログラムやアプリを同時に動作させる際に活用されています。

    その後「マルチタスク」という言葉はコンピュータの専門用語から一般的な言葉として普及しました。現在では、日常生活や仕事の現場でも、複数の作業を同時に行うことを「マルチタスク」と表現するようになっています。

    マルチタスクのメリット

    マルチタスクの遂行は、ビジネスにおいて以下のようなメリットがあります。

    • 効率的な時間の活用
    • 全体像の把握
    • 柔軟な思考の促進
    • 多様なスキルの習得

    効率的な時間の活用

    マルチタスクを上手に活用すると、1つのタスクの空き時間をほかのタスクに振り分けられます。時間の無駄を省いて、限られた時間を最大限に活用できるようになるでしょう。

    全体像の把握

    マルチタスクには、全体像を把握しやすくなるというメリットがあります。複数のタスクを同時に進めることで、常に全体を見渡す視点を持てるでしょう。

    たとえば、プロジェクトを進める際、1つの作業に集中するだけでなく、並行して他の作業の進捗も把握できます。これにより、プロジェクト全体の流れを常に意識しながら進められます。

    日常生活でも、家事と育児を同時に行うことで、家族全体の状況を意識しながら動けるようになります。1つのタスクに没頭するのではなく、全体を見渡す力が身につくでしょう。

    柔軟な思考の促進

    マルチタスクを行うことで、複数の作業を同時に進めながら優先順位をつける判断力が自然と身につきます。作業量を常に計算し、どの業務にどれだけの時間を割くべきかを瞬時に判断しなければならないためです。

    また、ときには状況に応じて作業を切り替えるタイミングを決めたり、一時中断したりする決断も必要です。たとえば、締め切りが近づいている業務を優先し、次に重要度の高い作業に取り組むといった柔軟な対応が求められます。

    このように、複数の業務を同時に進行することで、全体を見渡しながら迅速に最適な判断をする力が養われます。

    多様なスキルの習得

    マルチタスクを実践することで、本来の業務以外の分野にかかわる機会が増えます。その結果、自分の得意分野を超えて、新たな知見やノウハウを吸収できる可能性が高まります。

    たとえば、営業職は営業活動に付随するプレゼン資料の作成を通じて、文書の作成力が向上するでしょう。技術者であれば、会議運営などの業務にも携わることで、プロジェクト管理やリーダーシップのスキルを習得することが可能です。

    マルチタスクによって異なる職種や領域の業務を経験することで、個人のスキルセットが広がります。新しい分野に触れ、試行錯誤を重ねる中で失敗を経験しながら、多様な能力が自然と身につけていけるでしょう。

    マルチタスクのデメリット

    マルチタスクには、メリットがある一方、以下のようなデメリットも存在します。

    • 注意散漫による品質の低下
    • ストレスの増加
    • 過度な疲労
    • 時間のロス

    注意散漫による品質の低下

    マルチタスクは、複数の作業に同時に取り組むために注意力が分散し、ケアレスミスが生じやすくなるというデメリットがあります。さまざまな作業を同時にこなそうとすると、結果的に一つひとつのタスクに十分な注意を払えなくなるためです。

    フォローメール忘れや転記ミス、見落としなどが続けば、顧客からの信頼を失う原因となり、結果として企業に対する評価が下がるリスクがあります。

    ストレスの増加

    マルチタスクでは、同時並行しているすべての作業において、最善のサービスを提供しなければならず、従業員に大きなプレッシャーがかかります。

    たとえば、営業職が電話対応とメール作成を同時に行う場合、電話では丁寧な応対が、メールでは速やかな返信が求められます。どちらかをおろそかにすると、顧客に悪印象を与えかねません。

    マルチタスクをこなす中でも一つひとつの作業に気を遣う必要があり、従業員の緊張感は高まり、ストレスも大きくなります。

    過度な疲労

    マルチタスクでは、複数の作業を同時に行うため、高い集中力と多大なエネルギーが必要です。結果的に、過度な疲労に陥りやすくなるというデメリットがあります。

    疲労により、集中力の維持が難しくなると、作業効率が低下してミスが増えるでしょう。

    また、マルチタスクでは作業を切り替えるたびに気持ちの切り替えも必要です。切り替えのたびにエネルギーを消耗してしまうと、さらに疲労感が増して、全体のパフォーマンスが低下する原因となります。

    時間のロス

    マルチタスクでは注意力が分散し、作業の切り替えにともなう時間のロスが避けられません。結果として、作業効率が落ち、生産性も低下する可能性があります。時間をロスすると焦ってミスを誘発しやすくなるでしょう。

    マルチタスクのやり方・方法

    適切に実施しないと効率の低下も懸念されるマルチタスクを、効果的に取り入れるには、どのようなことに注意すればよいでしょうか。

    マルチタスクを適切に実施する方法やポイントを紹介します。

    1. タスクの優先順位の設定
    2. タスクの配分と整理
    3. 適切な休憩の確保
    4. 適切なツールの利用
    5. 環境の最適化

    1.タスクの優先順位の設定

    マルチタスクでは優先順位を明確にしましょう。優先順位を判断するポイントは以下の通りです。

    • 所属する部門として優先度の高いものから着手する
    • 時間のかかるものから着手する
    • 締め切りが近いものから着手する
    • 工数のかかからないものから着手する

    2.タスクの配分と整理

    マルチタスクでは、優先順位と同時にタスクの割り当てにもコツがあります。

    たとえば、従業員が得意な分野を中心に複数の仕事を割り振ると、マルチタスク環境でも高い生産性を維持できます。各従業員が専門知識やスキルを最大限に活かしながら、効率よく作業を進められるため、仕事の質とスピードが向上します。

    適切にタスクを配分するには、日頃から従業員のスキルや能力を正しく把握しておかなければなりません。一人ひとりのスキルを可視化するためには、タレントマネジメントの導入が有効です。

    タレントマネジメントとは、従業員のスキルや能力、キャリアパスを一元管理し、適材適所の人材配置や育成を行う手法です。最終的に経営目標の達成を目指しています。

    タレントマネジメントで実現できることや効果については、以下からご確認いただけます。

    3.適切な休憩の確保

    マルチタスクを取り入れる際、適切な休憩を確保することが重要です。人間の集中力には限界があり、長時間の作業は疲労を招き、かえって生産性を低下させます。

    マルチタスクを実行する従業員には「一定の作業が完了したら休憩を取る」よう促しましょう。適切な休憩を取ることでリフレッシュし、次のタスクに向けて集中力を取り戻すことができます。

    4.適切なツールの利用

    マルチタスクを効率的に行うためには、適切なツールの活用が不可欠です。

    たとえば、大量の顧客データを分析するとき、手作業では時間がかかりすぎます。ExcelやAccessなどのツールを使用すると、マルチタスクの効率を向上させることができるでしょう。ツールを上手に活用することで、複数の作業を同時に進めながらも生産性を維持できます。

    5.環境の最適化

    マルチタスクを成功させるためには、従業員の作業環境を最適化することが重要です。各従業員の作業スタイルに合わせた環境を提供することで、マルチタスクの効率を最大化できます。

    たとえば、適度な音楽がある環境で集中できる従業員もいれば、静かな環境を好む従業員もいます。企業は限られたリソースの中で、従業員一人ひとりの生産性を最大化できる環境を整備しましょう。工夫を凝らした環境づくりがマルチタスクの成功につながります。

    苦手なマルチタスクを克服するには?

    マルチタスクのデメリットを抑えつつ、効率的に複数のタスクを管理するテクニックを紹介します。

    • ポモドーロテクニック
    • デジタルデトックス
    • タイムブロッキング
    • 2分ルール

    ポモドーロテクニック

    ポモドーロテクニックは、25分の短い集中時間と5分の休憩を明確に区切って繰り返す時間管理の手法です。マルチタスクを行う際にポモドーロテクニックを取り入れると、短い時間で集中しやすくなり、異なるタスクに取り組む際の疲労やストレスを軽減できます。

    1980年代に、イタリアのフランチェスコ・チリロ(シリロ/チリッロ)氏によって開発されました。「ポモドーロ(pomodoro)」という名前は、イタリア語でトマトを意味し、彼が使用していたトマト型のキッチンタイマーに由来しています。

    ポモドーロテクニックの基本的なステップは以下の通りです。

    1.タスクをリストアップする取り組むべきタスクをリストアップし、集中して取り組むことが大切です。
    2.25分のタイマーを設定する次にタイマーを25分に設定します。この25分間が「1ポモドーロ」と呼ばれる作業時間です。
    3.1ポモドーロに集中して作業するタイマーが鳴るまでの25分間、リストアップしたタスクに全神経を集中して取り組みます。この間、ほかのことに気を取られたり作業を中断したりしてはいけません。
    4.5分の休憩を取る25分の作業が終わったら、5分間の休憩を取り、リフレッシュします。
    5.ステップ3と4を繰り返す作業25分休憩5分を4回(合計100分)繰り返したら、15〜30分の長めの休憩を取ります。

    デジタルデトックス

    デジタルデトックスとは、一定の時間、デジタル機器から離れることです。15分や30分などの時間を決めて、仕事で使うデジタルツールから離れ、次に取り組むべき業務とその優先順位を考えることに集中します。

    デジタルデトックスを行うことで、次の作業内容が明確になり、業務をより効率的に進められるでしょう。デジタル機器に気を取られずに、作業の見通しを立てられます。

    タイムブロッキング

    タイムブロッキングとは、時間を特定の「ブロック」に区切り、それぞれのブロックに特定の活動やタスクを割り当てる時間管理の手法です。

    タイムブロッキングの基本的な流れは以下の通りです。

    1.タスクをリストアップする1日や1週間で達成したいタスクや活動をリストアップします。
    2.時間をブロック化するカレンダーや手帳に具体的な時間帯を設定し、それぞれのタスクや活動にブロックを割り当てます。
    たとえば、9時から11時はプロジェクトA、13時から14時はメールの返信などです。
    3.ブロックを遵守する設定されたブロックの時間帯には、そのブロックに割り当てられたタスクだけに専念します。
    4.柔軟に調整する予定外の出来事や急なタスクが入った場合は、必要に応じてタイムブロックを調整します。

    タイムブロッキングにより、生産性が向上し、マルチタスクを効果的に管理できます。

    2分ルール

    2分ルールは「業務上のタスクが2分以内に完了できるなら、すぐに着手する」という手法です。「Getting Things Done」(GTD)という生産性向上手法で提唱されました。

    小さなタスクでもあと回しにすると、作業中に気になって集中力が散漫になります。短時間で済ませられるタスクはすぐに片付けることで、その後の大きなタスクに集中できるというメリットがあります。

    まとめ

    マルチタスクとは、複数の作業を同時に、あるいは切り替えながら行うことです。

    ビジネスシーンでは業務の効率化を目的に取り入れられることが多く、日常生活でも家事や育児など、さまざまな場面でも活用されているでしょう。一方で、マルチタスクには注意力が分散するため、作業ミスや生産性の低下を招くリスクがあります。

    マルチタスクを行う際は、優先順位の設定や作業環境の最適化、適切なツールの活用など、効率的に進められるような工夫が必要です。状況に応じてシングルタスクを取り入れるなど、マルチタスクとシングルタスクを使い分けるとよいでしょう。

    また、ポモドーロテクニックやタイムブロッキングなど、効率的なタスク管理手法を取り入れることもおすすめします。個人の特性に合わせて最適な作業スタイルを見つけていくことが大切です。

    マルチタスクのメリット・デメリットを理解したうえで、上手に活用することで、業務の生産性向上につながるでしょう。