ナラティブマーケティングとは? 意味や注目される理由、 顧客の心をつかんだ成功事例を紹介

ナラティブマーケティングとは? 意味や注目される理由、 顧客の心をつかんだ成功事例を紹介

ナラティブマーケティングとは、ユーザーを物語の主人公に据えたマーケティング手法です。多くの企業が広告宣伝に取り入れており、注目されています。

本記事では、ナラティブマーケティングの概要や注目される理由、メリット、実践のポイント、事例について解説します。ナラティブマーケティングの実践の参考に、お役立てください。

 

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    ナラティブマーケティングとは?

    ナラティブマーケティングとは、ユーザーを主人公とする物語を展開し、それぞれに適したアピールをするマーケティング手法です。

    ナラティブマーケティングによって、ユーザーは商材に対して親近感を持ちやすくなり、購買意欲の向上につながります。

    ユーザーの心をひきつけてファン化させやすくする効果が期待できることから、新しい時代のマーケティング手法として知られています。

    そもそもナラティブとは?

    「ナラティブ(narrative)」の言葉の意味は、日本語で「物語」「語ること」「語り口」などです。「ストーリー(story)」と似ているように思えますが、以下の通り明確な違いがあります。

    ナラティブ主人公は語り手の視点を重視。それぞれの経験や解釈によって物語の展開が変わる。起承転結や完結が存在しないこともある。
    ストーリー主人公や登場人物が決められている。基本的に起承転結に沿って話が展開する。

    従来のストーリーマーケティングとの違い

    ナラティブマーケティングと似たマーケティング手法に、ストーリーマーケティングがあります。

    ストーリーマーケティングとは、企業側がユーザーに対して一方的に物語を伝えることです。たとえば、企業側のメッセージを主張することやブランドが生まれた経緯を説明することなどが例に挙げられます。

    ナラティブマーケティングと同様にストーリーマーケティングにも、企業側が伝えたい内容を届けられるというメリットがあります。しかしユーザーに主体性を与える観点においてナラティブマーケティングとは異なります。

    それぞれの企業の戦略に合わせて、適した手法を選択するとよいでしょう。

    ナラティブマーケティングが注目される理由

    ナラティブマーケティングが注目されている主な理由に企業とユーザー間の相互的なコミュニケーションが必要であること、ユーザー自身が自分の経験を語る機会が増えたことが挙げられます。

    膨大な情報量からユーザーに自社情報を選択してもらうためには、自社商材に対して興味を持ってもらうことが重要です。

    そこでナラティブマーケティングにより「あなた自身の物語がここにあります」と語りかけ、一方的ではなく相互的な対話を実現させます。商材を選択した理由とユーザー個人の物語をリンクさせて、他社の商材にはない独自のブランド価値を生み出すのがナラティブマーケティングです。。

    また、X(旧Twitter)やInstagramなどをはじめとしたSNSの発展によって、ユーザー自身が自分の意見を発表する機会が増えてきました。自由に発言できる機会が増えることで、ユーザー自身がそれぞれの物語を展開することが一般化したといえます。つまり、企業が実施した広告キャンペーンは、ユーザーのもとで大きく展開する可能性を秘めています。

    ナラティブマーケティングは、現代社会のコミュニケーションツールに合ったマーケティング手法だといえるでしょう。

    モノがあふれている現代社会において、競合他社との差別化をはかるマーケティングには、ナラティブマーケティングが持つ「共感性」や「拡散性」が大切です。

    ナラティブマーケティングのメリット

    ナラティブマーケティングを展開すると、さまざまなメリットを感じられます。リピーターを増やしたい、商材が持つ本当の魅力を伝えたいと考える企業には、ナラティブマーケティングが向いています。

    ナラティブマーケティングの具体的なメリットを紹介します。

    ユーザーからの信頼や共感を獲得できる

    ナラティブマーケティングはユーザーの心を動かしやすいマーケティング手法であり、適切に運用すれば高い好感度を得られるでしょう。

    ストーリーマーケティングと比較してユーザーが自分自身の物語を思い出す過程があるため、商材への愛着を深められる可能性があります。

    商材や企業そのものへの好感度が上がれば、ユーザーは今後も継続して商材を購入してくれるかもしれません。ブランディングの成功によって、業界内での差別化も進められるでしょう。

    商品やサービスの付加価値を伝えられる

    ナラティブマーケティングは、ユーザーに寄り添いながら購入すべき理由を提示することで、商材の本来の魅力を効果的に伝えます。

    マーケティングでは価格の安さや素材のこだわりをアピールすることも有効です。しかし、ナラティブマーケティングを活用すると、商材がもたらす価値や必要性をユーザーに明確に伝えられます。ユーザーが自身にとって意味のある商材だと認識してもらうことで、購買意欲を一層高められるでしょう。

    ナラティブマーケティング実践のポイント

    ナラティブマーケティングを実践するには、ユーザー調査の徹底やSNSの活用、商材における目的の明確化といった3つのポイントがあります。

    ユーザー調査に力を入れる

    ユーザーの心に刺さるナラティブマーケティングを実践するには、ユーザー調査を徹底する必要があります。ユーザー調査時に取得するとよい情報は以下の通りです。

    • ユーザーの特徴や属性
    • ユーザーが求めるもの
    • 商材を利用する際にユーザーが抱える課題点
    • 商材を利用する際のシチュエーション
    • 商材を購入する理由やきっかけ

    ユーザー調査には、アンケートの回収やインタビュー取材などさまざまな方法があります。

    具体例としては、「過去に使用した製品で特に満足した点は何ですか?」「現在の製品で改善してほしい点はありますか?」といった質問がアンケートで使われます。

    インタビューでは「普段どのようなシチュエーションでこの製品を使用していますか?」「他の製品と比較して、この製品を選んだ理由は何ですか?」などの質問が有効です。

    正確なデータを得るためには、複数の方法を併用することをおすすめします。

    SNSを使ってユーザーとの距離を近づける

    ナラティブマーケティングでは、ユーザーと相互的な関係を構築する必要があります。

    そのため、SNSを上手に利用して、企業とユーザーが対等な立場にあると伝えなければなりません。ユーザーが企業に対して友好的な感情を持ちやすくなるように整えます。

    具体的には、ライブ配信を行ってメッセージに返答すること、投稿されたコメントに返事をすること、質問コーナーを設けることなどが挙げられます。

    ビジュアル重視の投稿が有効なInstagramを活用する場合、ストーリーズ機能を活用してリアルタイムでユーザーと対話するとよいでしょう。SNSを活用して成果を上げるためには、商材の特徴やユーザーの属性にマッチした手法を選ぶことが重要です。

    商材のメッセージを明確化する

    商材を通して企業がユーザーに何を伝えたいかを明確にすることは、ナラティブマーケティングを成功させるために必要な考え方です。マーケティングで届けたいメッセージを明確にしなければ、ターゲットを定められません。

    メッセージがあやふやなまま施策を実施すると、行動の促進が期待できるようなユーザーに情報を届けられない可能性があります。施策の詳細を決める前に、具体的なメッセージの中身を定義しておきましょう。

    ナラティブマーケティングの成功事例

    実際に成功を収めたナラティブマーケティングの有名企業の実例を3社紹介します。自社でナラティブマーケティングを実施したい場合、参考にできる案がないか確認してみましょう。

    PANTENE|#PrideHair

    ヘアケアブランド・PANTENEによる「#PrideHair」は、画一的なヘアスタイルが求められがちな日本の就職活動に疑問を投げかけ、自由な表現を尊重するプロジェクトです。

    X(旧Twitter)では「#PrideHair」のハッシュタグを通じてユーザーからの意見を募集し、自己表現の重要性を伝えるメッセージが広く拡散され、大きな成功を収めました。現代社会の生きづらさや窮屈さに共感するユーザーに響いた、ナラティブマーケティングの成功例といえるでしょう。

    参照:『#PrideHair』PANTENE

    SUBARU|Your story with

    大手自動車ブランド・SUBARUは「Your story with」のショートフィルムシリーズをTVCMとして放映してきました。CMの中では、自動車にまつわる思い出をユーザーに思い起こさせるような、エモーショナルな物語が描かれています。

    CMを視聴した人は、自動車に対する愛があるブランドのポジティブイメージを持つことでしょう。長い目で見て製品の購買につながったナラティブマーケティングの事例です。

    参照:『Your story with「旅立ち」篇』株式会社SUBARU

    GoPro|#HomePro チャレンジ

    小型アクションカメラ・GoProは、新型コロナウイルスによって外出が制限されていた時期に「#HomePro チャレンジ」のキャンペーンを開催しました。キャンペーンの内容は、GoProを自宅の中で使用し、魅力的な作品を制作・投稿することです。

    アウトドアなどで使用されるイメージが強いアクションカメラの利用を自宅内に規定して、ユーザーの日常生活を物語として展開することに成功させました。投稿が、ほかのユーザーが購入するきっかけになったと考えられています。

    参照:『#HOMEPROチャレンジ 開催!家などで撮影したコンテンツを大募集』GoPro

    まとめ

    ナラティブマーケティングとは、ユーザーを物語の語り手に設定して実施するマーケティング手法です。ストーリーマーケティングと異なり、ユーザーに主体性を与えられる特徴があります。

    ナラティブマーケティングのメリットは、ユーザーからの好感度が高まること、商材が持つ本来の価値を伝えられることなどです。

    競合他社と差をつけたい、ブランディングを進めたい企業にとって、ナラティブマーケティングは実施する価値のあるマーケティング手法といえます。本記事で紹介した内容を参考にして、実際に取り組んでみてはいかがでしょうか。進め方に迷った場合は、他社の成功例ををもとに、ユーザーの心をつかむポイントを探るのも一案です。