ニーズとは? 意味や把握方法をウォンツとの違いから解説|使い方や例文、言い換え
「ニーズ」とは、人が本質的に求めていることや欲求のことです。ニーズは、生物学的なものから社会的、心理的なものまで多岐にわたります。
ニーズは「ウォンツ」と混同されがちですが、両者はまったく異なるものです。しかし、ニーズとウォンツはマーケティングや製品開発、サービス提供において同じくらい重要な意味を持ちます。
本記事では、ニーズの意味を深掘りし、それを正確に把握する方法を探ります。また、ニーズの具体的な使い方や言い換え表現なども解説するので、ぜひ参考にしてください。
ニーズとは|意味や使い方、言い換え
まずは、ニーズという言葉の意味や使い方からご紹介します。
意味
ニーズは、英語の「Need(必要とする)」を語源とし「必要とするもの」「欲求」といった意味を持つ言葉です。主にマーケティングや心理学などで用いられ、多くの場合はビジネスにおける顧客の需要を指します。
また、ニーズは「潜在ニーズ」と「顕在ニーズ」の2種類に大別されます。
使い方と例文
例文1 | マーケティングでは、顧客ニーズを正しく把握することが大切 |
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例文2 | 新たなヒット商品を生み出すには、顧客の潜在ニーズをつかむ必要がある |
例文3 | A社のスマートフォンは高性能でブランド力もあり、機能的ニーズと情緒的ニーズを両方満たしている |
言い換え
ニーズは、日本語で「需要」「必要性」「時代の要請」などと言い換えることが可能です。
たとえば「この地域は高齢者が多いので介護職のニーズが高い」は「この地域は高齢者が多いので介護職の需要が高い」と言い換えられます。
ニーズとウォンツの違いを例文つきで解説
次にウォンツとの違いについて解説します。
ウォンツはニーズを満たすための手段
ニーズが「欲しい」「こうしたい」といった目的なのに対し、ウォンツは目的を満たすための手段です。顧客のニーズとウォンツは、どちらもビジネスにおいて重要な視点です。
3つのウォンツ
ウォンツには、以下の3つの種類があります。
基本ウォンツ | 目的を満たすためのモノ・コトを求める欲求 |
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条件ウォンツ | 基本ウォンツが満たされたとき、より理想的な状態を求める欲求 |
期待ウォンツ | 「目的が満たされることは当然」として、期待されている欲 |
ニーズとウォンツの違いがわかる例文
「快適に眠りたい」がニーズなら、その目的を満たす手段である「高品質の枕が欲しい」がウォンツです。
ほかにも、以下のような例が考えられます。
- ニーズは、子どもの家庭学習のレベルをアップしたい
ウォンツは、質の高い教材が欲しい
- ニーズは、痩せて健康的になりたいが、時間に余裕がない
ウォンツは、短時間でヘルシーな料理がつくれる家電が欲しい
ニーズとウォンツの違いを見極める方法
ある気持ちや欲求に対して、理由を深掘りしていくと「ニーズ」、達成するための手段を考えていくと「ウォンツ」を発見できます。
たとえば「高品質の枕が欲しい」という欲求の理由を深掘りしていくと「快適に眠りたい」というニーズが見えてきます。反対に「快適に眠りたい」という欲求の手段を考えていくと、ウォンツにあたる「高品質な枕が欲しい」を発見できるでしょう。
ニーズ把握の重要性
多くの場合、1つのニーズに対して複数のウォンツが考えられます。たとえば「快適に眠りたい」というニーズには「高品質な枕が欲しい」以外にも「体に合うサイズのベッドを買いたい」「新しいパジャマが欲しい」などさまざまなウォンツがあります。
このように、顧客のニーズがわかるとその目的を満たすための幅広いアプローチ方法を考案できるため、ビジネスにおいてはニーズの把握が欠かせません。
ニーズの種類7つ
ニーズを細かく分類すると、以下の7種類に分けられます。
種類 | 説明 |
---|---|
顕在ニーズ | 当人が自覚しているニーズ。 欲しいモノ・コトやその理由を、当人がはっきりと説明できる |
潜在ニーズ | 当人が自覚していないニーズ。 まったく自覚していない、または不満はあるが具体的に説明できないなど |
顧客ニーズ | 顧客が欲求を感じている状態。 生活で生まれた不満を解消し、理想的な状態に近づけるための欲求 |
情緒的ニーズ | 顧客の心に働きかける価値。 商品パッケージなどで、本来備わった機能以上の満足感や喜びを得られる |
基本的ニーズ | 人間が人間らしい暮らしを送るために、最低限必要な欲求。 「十分な食事をとる」「安全な住居で生活する」などが該当する |
副次的ニーズ | 基本的ニーズを満たしたうえで、さらに理想的な状態に近づけたい欲求。 たとえば、洗濯洗剤に香りや成分を求めるなどが該当する |
機能的ニーズ | 製品の機能や品質に求められる価値のこと。 機能的に優れた製品だけで競争に勝つのは難しい |
顕在ニーズ
当人が自覚しているニーズのことです。欲しいモノ・コトやその理由を、当人がはっきりと説明できます。
潜在ニーズ
当人が自覚していないニーズのことです。まったく自覚していない場合もあれば、「不満は感じているが具体的に説明できない」といった場合もあります。
顧客ニーズ
顧客が欲求を感じている状態のことです。日々の暮らしや仕事のなかで生まれた不満を解消し、理想的な状態に近づけるための欲求を指します。
情緒的ニーズ
顧客の心に働きかける価値のことです。その商品やサービスを使用することで、本来備わった機能以上の満足感や喜びを得られる場合は、情緒的ニーズが満たされている状態です。たとえば、ブランドイメージや商品パッケージなどは、情緒的ニーズにつながるケースが多いでしょう。
基本的ニーズ
人間が人間らしい暮らしを送るために、最低限必要な欲求のことです。「十分な食事をとる」「安全な住居で生活する」などが該当します。
なお、ビジネスにおいては、顧客が最低限求めているものを指します。
副次的ニーズ
基本的ニーズを満たしたうえで、さらに理想的な状態に近づけたい欲求です。たとえば、顧客が洗濯洗剤に求める基本的ニーズは「汚れをきれいに落とせる」ですが、その欲求が満たされると「衣類をよい香りにしたい」「自然に優しい商品を使いたい」といった副次的ニーズが生じます。
機能的ニーズ
製品の機能や品質に求められる価値のことです。機能的に優れた製品は市場にあふれているため、機能的ニーズを満たすだけで競争に勝つのは難しいとされています。
多様化する顧客ニーズの見つけ方・把握する方法
顧客ニーズを見つけたい場合は、以下の3つの手段を講じるケースが一般的です。
インターネットでニーズを調査する
X(旧Twitter)やFacebookなどのSNSには、顧客のリアルな声があふれています。自社の商品・サービスや競合他社、関連ワードで検索すれば、消費者のニーズをスムーズに把握できるでしょう。
また、キーワードツールを活用すれば「今、インターネット上でどのようなキーワードが検索されているのか」を調査できます。
顧客にアンケートを行う
顧客にアンケートを実施すれば、知りたい情報や回答を確実に収集できます。また、回答者の年齢や性別といった属性をある程度絞り込めるのもポイントです。オンラインアンケートなら、短時間で多くの回答を得られます。
顧客データや購買情報を分析する
自社の顧客データや商品の購買情報を分析するのも、顧客ニーズを把握する手段の一つです。データ分析の仕方にはさまざまな種類がありますが、主な方法は以下の3つです。
分析手法 | 分析の指標 |
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RFM分析 | 直近の購入日・利用頻度・金額 |
CTB分析 | カテゴリ・テイスト・ブランド |
セグメンテーション分析 | 年齢・性別・職業 など |
ニーズに関連するその他用語の意味と違い
ここからは、ニーズによく似た用語との違いや関連用語をご紹介します。
デマンド
デマンド(demand)とは「需要」「要求」といった意味を持つ言葉です。マーケティング分野では、顧客の欲求を指します。ニーズとよく似ていますが、それぞれ以下のような違いがあります。
ニーズ | 不満を解消するために不可欠な欲求 |
---|---|
デマンド | 「もっとこうなったら嬉しいな」と思う欲求 |
どちらも顧客の欲求を表していますが、最も大きな違いは「気持ちの度合い」だといえるでしょう。
インサイト
インサイト(insight)とは「洞察」「発見」といった意味を持つ言葉です。マーケティング分野では、消費者の隠れた心理を指します。
潜在ニーズに似ていますが、最も大きな違いは「心の深度」です。潜在ニーズは本人が完全には自覚しきれていない欲求を意味しますが、インサイトはそれよりもさらに深い、無意識の領域にあります。
潜在ニーズはヒアリングを通して顧客から引き出せますが、インサイトは深層心理にあるものなので発見するのは困難です。
シーズ(対義語)
シーズ(seeds)とは「種」「種子」といった意味を持つ言葉です。マーケティング分野では、自社のテクノロジーやノウハウなど、商品・サービス開発のもととなる素材をあらわします。
また、自社の強みをもとに商品・サービスを開発することを「シーズ志向」といいます。顧客の欲求をもとに商品・サービスを開発する「ニーズ志向」とは、対極にあるアプローチ方法といえるでしょう。
ニーズ志向とシーズ志向の違い
ニーズ志向とシーズ志向には、それぞれメリット・デメリットがあります。
ニーズ志向のメリット
顧客の需要を調査・分析したうえで商品やサービスを開発しているため、売り上げにつながりやすい点がメリットです。ターゲットをより詳細に絞り込めば、他社との差別化をはかれます。
ニーズ志向のデメリット
顧客の需要は競合他社も把握している場合が大半なので、類似製品・サービスが市場に多く出回ります。シェアの奪い合いとなり、結果的に価格競争に巻き込まれるケースも多いでしょう。
シーズ志向のメリット
自社の強みをもとに開発した商品・サービスは、独自性を保ちやすいのがメリットです。他社にはないユニークな商品やサービスが誕生する可能性を秘めており、顧客に受け入れられれば市場の独占も可能でしょう。
シーズ志向のデメリット
顧客の需要を出発点としていないため、市場でどの程度の売上を見込めるのか予測が立てにくい傾向があります。需要にマッチしていない場合はなかなか売り上げにつながらず、時間や労力が無駄になってしまうリスクもあるでしょう。
どちらを重視すべきか
ニーズ志向だけでは他社との差別化が難しく、シーズ志向だけでは顧客の需要を満たせない恐れがあります。
つまり、商品やサービスをヒットさせるためには、ニーズ志向とシーズ志向がどちらも必要なのです。顧客のニーズを意識しながらシーズ志向で商品・サービスを開発すれば、市場で優位に立てるでしょう。
ニーズ志向で成功した企業事例
ここからは、ニーズ志向の成功例をご紹介します。
ソニーのウォークマン
顧客ニーズを出発点とした商品開発の成功例といえば、ソニーのウォークマンです。外出先でも大きなラジカセで音楽を聴くしかなかった時代、持ち運びに便利なサイズのウォークマンは爆発的にヒットしました。
カメラ付きスマートフォン
カメラ付きスマートフォンも「外出先でも気軽に写真を撮りたい」という顧客ニーズを出発点として開発されたものです。今ではスマートフォンのカメラの性能が高まり、アナログカメラの市場シェアを奪うまでに至りました。
シーズ志向で成功した企業事例
次に、シーズ志向の成功例を紹介します。
Apple社のiPhone
Apple社の創設者であるスティーブ・ジョブズ氏は「消費者のニーズを探るのではなく、消費者にニーズを教える」という考えのもと、革新的な商品開発でiPhoneやiPadなどのヒット商品を次々と世に送り出しました。
Apple社にとっては、スティーブ・ジョブズ氏が持っていた発想力や開発力が大切な「シーズ」だったといえるでしょう。
ニーズの意味を正しく把握し、適切に使い分けましょう
ニーズとは、顧客が感じている欲求のことです。ニーズが「◯◯がしたい」という目的をあらわすのに対し、ウォンツは目的を果たすための手段を指します。
また、ニーズには顕在ニーズや潜在ニーズ、機能的ニーズ、情緒的ニーズなどいくつかの種類があるので、それぞれの違いをきちんと理解することが大切です。ニーズには類似語や関連語も多いため、使用するシーンにあわせて正確に使い分けましょう。
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