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ニートの意味とは【定義】フリーターやひきこもりとの違いと現状、採用ポイントを解説

ニートとは、15歳から34歳までの仕事をしていない人をあらわす言葉です。「若年無業者」とも呼ばれており、今後少子高齢化が進み労働力がさらに減少することが懸念されている日本において、大きな社会問題として捉えられています。

最近では、人材活用の一環で、ニートに特化した就職支援サービスや積極採用に乗り出す企業も増加しているようです。人材不足に悩む企業が、ニートを貴重な人材リソースとして活用する動きが活発となっているのです。

本記事では、ニートの意味や定義、フリーターやひきこもりとの違い、即戦力として採用するためのポイントを詳しく解説します。

※本記事の内容は作成日現在のものであり、法令の改正等により、紹介内容が変更されている場合がございます。

ニートの意味とは【定義】フリーターやひきこもりとの違いと現状、採用ポイントを解説
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    ニートとは|意味・定義

    ニート(NEET)とは、イギリス発祥の言葉で、「Not in Education, Employment or Training」の頭文字を取った略語です。もともとは、16歳から19歳の若者で学生でもなく就労もしておらず、就職のための職業訓練も受けていない人、つまり仕事をする意思を持たない人をあらわしていました。

    日本におけるニートの定義

    イギリスのNEETが伝わり、独自の解釈を含んだものが日本における「ニート」です。総務省は、ニートを次のように定義しています。

    15~34 歳の非労働力人口のうち家事も通学もしていない者

    引用:『労働力調査(基本集計)2022年(令和4年)平均結果の概要』総務省統計局

    また、厚生労働省の定義では、病気や家の事情などで働けない場合もニートに含めます。ただし、35歳から44歳の無業者はニートではなく「中年無業者」と呼び、ニートと区別されている点を覚えておきましょう。

    参考:『労働力調査に関するQ&A(回答)』総務省統計局

    ニートの条件

    総務省や厚生労働省の定義を踏まえると、ニートと認められる条件は、以下の5つを満たす者と考えられます。

    1. 15〜34歳の若者
    2. 就業していない
    3. 求職活動をしていない
    4. 学生ではない
    5. 専業主婦(主夫)ではなく、家事手伝いもしていない

    ニートとフリーター、ひきこもりとの違い

    ニートと同じような意味を持つ言葉として、フリーターやひきこもりがあります。それぞれの言葉の意味やニートとの違いを詳しく解説します。

    フリーターとの違い

    ニートとフリーターの大きな違いは、次の2つです。

    • 働く意思があるか
    • 働いているかどうか

    ニートは無職で労働の意欲や意思を持たない人です。対してフリーターは、たとえ無職の状態であっても働く意思があったり、アルバイトやパートとして働いていたりする人です。

    フリーターは非正規雇用で生計を立てる「フリーアルバイター」を語源とし、法的な定義はないものの、総務省は次のように定義しています。

    年齢が15~34歳で、男性は卒業者、女性は卒業者で未婚の者のうち次の者をいう。雇用者のうち勤め先における呼称がパート・アルバイトの者完全失業者のうち探している仕事の形態がパート・アルバイトの者非労働力人口で、家事も通学のしていないその他の者のうち、就業内定しておらず、希望する仕事の形態がパート・アルバイトの者

    引用:『16A-Q09 フリーターの人数』総務省統計局

    アルバイトやパートの仕事に従事している既婚女性は対象外です。また、一般的に現在就業していないものの求職中の人、年齢を問わずアルバイトで生計を立てる人をフリーターと呼ぶこともあります。

    フリーターから正社員になる人は一定数存在するものの、正社員への転換は非常に困難とされています。年齢が上がるにつれて収入が増加傾向にある正社員に対して、パートやアルバイトはほとんど上がりません。

    賃金格差が広がり、フリーターがワーキングプアの温床であることは社会問題の一つとされています。

    参考:『16A-Q09 フリーターの人数』総務省統計局

    ひきこもりとの違い

    ひきこもりとニートの大きな違いは、学校や仕事など社会的な組織に所属しているかどうかです。特定の組織に属していて社会参加が半年以上できていない場合はひきこもり、組織に所属しておらず社会参加ができていない場合はニートと考えてよいでしょう。

    ひきこもりは厚生労働省によって以下の通り定義されています。

    様々な要因の結果として社会的参加(就学、就労、家庭外での交遊など)を回避し、原則的には6ヵ月以上にわたって概ね家庭にとどまり続けている状態を指す現象概念(他者と交わらない形での外出をしていてもよい)

    引用:『「ひきこもり」の定義など』厚生労働省

    ひきこもりは、仕事や学校に行かず、家族以外の人との交流をほとんど持たずに、6か月以上続けて自宅に閉じこもっている状態をあらわします。家からまったく出られない人、他人とかかわりを持たないようにすれば散歩や買い物に行ける人など、さまざまなケースがあります。

    ひきこもりになると、一般的に次のような行動や状態が多く見られます。

    • 昼夜逆転
    • 抗うつ状態
    • 家庭内暴力
    • 対人恐怖
    • 強迫行動など

    学校や職場でのトラブルや家庭内での問題など、きっかけや要因は個別の事情によりさまざまです。

    2016年の内閣府調査によると、15歳から39歳までのひきこもり状態にある人は、54万人を超えていると試算されています。

    参考:『まず知ろう!「ひきこもりNOW」!』厚生労働省

    ニートの割合

    2022年の総務省統計局の調査によると、ニートの人口は57万人にのぼり、全人口の2.3%を占めています。さらに、中年無業者(35歳から44歳の無業者)は36万人と報告されました。

    ニートの人口は、新型コロナウイルスが流行しはじめた2020年に69万人と大幅に増加しています。それ以前の5年間は、53万人から58万人とほぼ横ばいの状態で推移していました。

    しかし、ニート状態にある若者の実態を調査することは決して容易ではありません。厚生労働省は、正確な人数を把握するために引き続き調査を行う必要があるとしています。

    参照:『労働力調査(基本集計)2022年(令和4年)平均結果の概要』総務省統計局
    参照:『 若者自立塾とサポートステーションでは来所者の特性に違いがある。』厚生労働省

    ニートが生まれる原因

    一度でもニートを経験してしまうと、社会復帰が困難になるケースも少なくありません。ニートの期間が長くなればなるほど、その状態から脱せなくなる人も見られます。

    ニートになる理由は人によってさまざまですが、代表的な原因は次の通りです。

    • 学生時代のひきこもり経験(不登校やいじめ、勉強への苦手意識など)
    • コミュニケーションに対する苦手意識
    • 自分に対する劣等感
    • 受験や就職活動での失敗経験
    • 勤務先でのパワハラや過重労働、失業などの経験
    • 親の過保護や過干渉
    • 家庭環境

    ニートになる背景には、対人関係を構築できなかったり、自分や仕事に対する劣等感があったりするなど、失敗体験や心理的な要因が挙げられます。

    また、年齢が上がれば上がるほど社会的に求められるスキルは高くなるため、ニートとして長期間過ごしているうちに就職や社会復帰が難しくなってしまう傾向があります。

    ニートの社会的な影響

    今やニートは深刻な社会問題に発展しています。労働力不足や社会保障の維持といったテーマとも無関係ではありません。

    総務省統計局によると、2022年10月1日時点で65歳以上の人口は約3600万人、全人口の29.0%と過去最高を記録しました。内閣府は、2060年には65歳以上の割合が全人口の38.4%に達し、約2.6人に1人は65歳以上になると予想しています。

    ニートのような若年層の労働人口が市場に参加しないことで、国の生産性や経済成長が抑制されてしまう恐れがあるのです。

    さらに、長期にわたってニート状態にある人は、生活保護や失業保険などの社会保障制度に依存するケースが多いため、税金や社会保障費の増加につながるリスクも懸念されています。文化的多様性の欠如や政治的無関心など、社会的な悪影響を及ぼす恐れも考えられるでしょう。

    参考:『人口推計(2022年(令和4年)10月1日現在』総務省労経局
    参考:『令和4年版高齢社会白書(全体版) 第1章 高齢化の状況』内閣府

    ニートに対する国や民間の取り組み

    ニートの中には、就職や社会復帰をしたい気持ちはあるものの、具体的にどのように行動すべきかわからない人もいるでしょう。近年では、就職や社会復帰を目指す若者をサポートするために、国や民間企業がさまざまな取り組みを実施しています。

    『地域若者サポートステーション(以下、サポステ)』は、地域における若者自立支援ネットワーク整備事業として2006年に開設された機関です。

    就業や就職が困難な15歳から49歳までの人に向けた就労支援サービスを提供しています。厚生労働省が委託した全国のNPO法人や、民間企業などが運営しているのが特徴です。

    サポステでは、以下のような就業支援を行っています。

    • 専門家による就労に関する相談・面談
    • 利用者の悩みや希望に合わせたセミナー
    • 就労体験や見学
    • 若年無業者等集中訓練プログラム事業
    • 定着・ステップアップ支援

    サポステでは、各地域でニートに特化した訓練プログラム事業を展開しています。自宅から離れた合宿形式で、社会参加訓練や資格取得支援を行っているのが大きな特徴です。

    そのほかにも、ニートの就職に特化した支援サービスが増えています。サポート体制が整っているので、社会人経験がない人や社会復帰に不安のある人でも安心して利用できるでしょう。

    参考:『地域若者サポートステーション』厚生労働省

    ニートも即戦力に|採用ポイント

    現在はニートの状態であったとしても、適切な受け入れ体制によって能力を発揮できる人もいます。また、ニートになる前の経験が自社の人材要件とマッチする場合もあるでしょう。

    人材不足に悩む企業は、採用要件を広げることも一案です。ニートを含む幅広い人材を対象にした採用におけるポイントを解説します。

    入社後のサポート体制

    ニートは長期間の就労経験がない傾向にあり、職場の環境はもちろん業務の進行に慣れるまで時間がかかることが予想されます。さらに、社会復帰による精神的な負担も大きいため、十分な適応期間を設ける必要があります。

    業務に必要なスキルや知識に関する研修会、1on1ミーティングの定期的な実施、本人のスキルと経験を考慮した業務の割り当てを検討しましょう。お互いを理解することはもちろん、必要なサポートを十分提供できる体制を整えることがポイントです。

    コミュニケーション強化

    ニートに限らず、採用ミスマッチの防止には双方のコミュニケーションが大切です。対人恐怖症の人や会話をすることに対して苦手意識がある人もいるため、意見や考えを発信しやすい環境を整える必要があります。

    また、面談や勉強会などを通して定期的にフィードバックする機会を設け、職場に適応できるようにサポートするとよいでしょう。

    社会復帰に対する心理的な負担にも配慮するため、カウンセリングのサービスを提供するなども検討してみてください。

    キャリア目標を確認

    ニート採用の従業員をはじめ、組織として個別の希望を尊重し、キャリア目標に沿った具体的な支援を提供しましょう。職業訓練や定期的な勉強会、研修会、資格取得のための支援など、スキルアップの機会を提供する方法があります。

    労働不足の解消にニートの採用も

    就職や就労への意欲があるものの、一歩が踏み出せずにいるニートも一定数いるはずです。企業が就業に対する不安を取り除くことで、前に踏み出せる人もいるかもしれません。

    人材を確保して生産性を維持するためにも、将来的に深刻化する働き手不足への対応は喫緊の課題です。サポート体制の整備や社内コミュニケーションの強化に着手し、ニートの社会復帰をサポートすることも、企業の社会貢献のあり方の一つといえるでしょう。