ニッチとは? 意味や語源、ビジネスにおける活用例を解説

ニッチとは? 意味や語源、ビジネスにおける活用例を解説

ビジネスにおいて収益を上げる方法の一つにニッチな市場への参入があります。本記事では、ニッチな市場とは何かや意味、語源、参入を検討する場合のリスク分析の方法を解説します。

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    ニッチとは?

    ニッチとは、市場の中で特定の商品やサービスがターゲットとする狭い顧客層や専門分野です。一般的な大市場に対して、特定のニーズを持つ小規模なグループに焦点を当てた市場戦略で、競争が少ないため、小さな企業や新規事業でも成功しやすいとされています。

    「ニッチな趣味」「ニッチな市場」といった表現をよく使用します。ニッチな市場に参入するニッチ戦略をとることで、顧客の細かい要望に応えられるため、顧客ロイヤルティが高まるでしょう。

    ニッチの語源

    ニッチの語源は、英語のnicheとフランス語のnicheにあるといわれています。「奥まったところ」「へこんだ瞬間」という意味です。

    英語では「その人に適した場所」または「道具に適した用途」という意味で使用します。

    日本における使われ方とその意味

    日本においてニッチは、英語やフランス語から派生して、次のような領域で使われています。

    建築分野・壁面の一部をくぼませて作り出したスペース
    ・壁を凹状にくりぬいた飾り棚
    建築分野・生態系
    ・1つの生物がまとまった環境・形態
    ビジネスシーン・隙間
    ・小規模市場
    ・限られた、特定の市場

    「小規模市場」が意訳され「めずらしい」「数少ない」といった意味でも使用されます。

    ニッチの類義語と対義語

    ニッチの類義語と対義語をご紹介します。

    類義語

    ニッチの類義語は「風変わりな」「マニアック」「マイナー」という言葉が該当します。特定の市場やターゲットを指しているため、その特定性や特化を意味しています。

    対義語

    ニッチの対義語は「主流」「幅広い」「一般的な」という言葉が挙げられます。一般的で広範な市場やターゲットを意味します。

    ビジネス分野におけるニッチ

    ビジネス分野において、ニッチは以下のように使用します。

    ニッチ市場

    ニッチ市場は、広範な市場の中で特定の要求や興味を持つ狭い顧客層をターゲットとした小さな市場セグメントです。通常、大手企業や主流の商品・サービスが見落としている、または意図的に取り扱わないような特定のニーズに対応しています。

    このような市場に特化することで、小規模な事業者やスタートアップもビジネスを始めやすくなるだけでなく、競争相手が少ないので成功の可能性も高まります。

    ニッチな市場の例は次の通りです。

    ペット用品特定の種類の動物(フェレットやハリネズミ)専用の商品を取り扱う市場
    健康食品グルテンフリーやヴィーガン専用の食品など、特定の食事制限や健康志向を持つ人々を対象とした市場
    趣味・嗜好手作りの石鹸や特定のアニメキャラクターのグッズなど、特定の趣味や興味を持つ人々を対象とした市場
    高齢者向け商品高齢者のための特化した技術製品(スマートスピ―カー)や健康補助グッズ(ウェアラブルデバイス)など、高齢者のニーズに特化した市場
    旅行ダイビング専門のツアーや鳥観察のための旅行など、特定の活動や興味を持つ人々を対象とした市場

    ニッチビジネス

    ニッチビジネスとは、特定の市場セグメントや特定の顧客ニーズに特化して提供されるビジネスです。一般的な市場や大規模な競争に対して、独自の価値提案や特定の顧客層に集中することで、差別化と競争優位性を追求するビジネスモデルを意味します。

    ニッチビジネスの例は次の通りです。

    カスタム製品個々の顧客の要望にあわせて手作りの靴やカスタムジュエリーを製作・販売するビジネス
    特殊なサービス動物のタクシーサービスや特定の言語の翻訳サービスなど
    趣味・嗜好独特な植物の栽培や販売、レトロゲームの修理・販売、特定のアートスタイルの教室など
    特定の人々向けエコフレンドリーな生産手法を用いた商品やヴィーガン向けのレストラン
    オンラインコミュニティ特定の興味や趣味を持つ人々のためのオンラインフォーラムやコミュニティサイト
    特定の技術・知識珍しい素材や技術を使った製品、または特定の業界や分野に関するコンサルティング

    ニッチマーケティング

    ニッチマーケティングは投資対効果の高いビジネス戦略の一つです。

    ニッチマーケティングは、特定の市場セグメントや特定の顧客グループに焦点を当てています。広範な市場よりも限定されたターゲット市場に向けて製品やサービスを最適化し、プロモーション活動を行います。このような戦略によって、企業はその市場内での高いシェア率を獲得できます。

    ニッチマーケティングの例は次の通りです。

    ヴィーガン向け製品の広告特定のヴィーガンのライフスタイルを持つ人々をターゲットとして、ヴィーガン向けの食品や化粧品をプロモートする。
    地域活性化ある特定の地域や都市の住民をターゲットとして、その地域の文化や習慣にあわせた商品やサービスを宣伝する。
    特定の趣味や興味を持つ人々向けバードウォッチングを趣味とする人々向けの専門的な機器やガイドブックの広告。
    特定の業界や職種向け医師や法律家を対象とした専門的なソフトウェアのプロモーション。

    市場規模とニッチの関係性

    ニッチな市場への投資は、自社に大きな収益をもたらす可能性もある一方、市場が小さすぎてそれほど大きな利益にならない可能性も否定できません。その中で、収益をつくるには以下の準備が不可欠です。

    セグメントの選び方

    市場があまりにも小さすぎては、ビジネスを展開しても薄利多売になってしまいます。成功を収めるケースもありますが、需要が見込める市場を選びましょう。

    競合分析

    市場が小さくても、競争相手がいないとは限りません。開発の前に競合になりそうな企業の動向は調査しましょう。自社と同等の技術を持っているか、あるいは1〜2年後に持つ可能性があるかを考慮して競争相手を絞り込みます。

    ニーズの言語化

    アプローチするセグメントが決まったら、ターゲットが何に困っているのかを調査し、求めていることを言語化します。ビジネスの原点は、消費者の悩みを解決することです。対象とする消費者層に、直接話を聞くことも有効でしょう。お客さまの意見はプロダクト開発において大切な資源です。

    開発コストと利益の算出

    予想コストを算出し、黒字が見込まれるなら開発に着手します。小額の収益、または赤字が予想されるなら、いさぎよく手を引く英断も必要です。

    ビジネス分野におけるニッチ戦略の成功事例

    ビジネスにおいて「特定の市場」「小さな市場」と定義されるニッチ市場の事例をご紹介します。

    オーディオ機器のメーカー:STAX

    STAXは、高品質な電気静電イヤースピーカーを製造しており、オーディオ愛好家の間で高い評価を受けています。大量生産される一般的なヘッドフォンとは異なり、特定のニッチな市場に焦点を当てています。

    参考:STAX

    ホビー関連のグッズ:コトブキヤ

    コトブキヤは、フィギュアやプラモデルの製造・販売を行っており、特定のアニメやゲームのファンをターゲットとしています。独自のデザインや品質で、ファンを獲得しています。

    参考:コトブキヤ

    特殊な食材や調味料:山本海苔店

    山本海苔店は、高品質な海苔を提供しており、その品質と風味は多くの料亭や高級レストランからも認められています。一般的なスーパーマーケットの商品とは一線を画す品質で、特定のニッチな市場を獲得しています。

    参考:山本海苔店

    特定の技術や材料に特化した企業:村田製作所

    村田製作所は、電子部品の製造を手掛ける同社は、特に多層セラミックコンデンサの分野で世界をリードしているといえます。特定の技術や材料に焦点を絞り、その分野での高い知名度があります。

    参考:村田製作所

    グローバルニッチトップとは?

    「グローバルニッチトップ」という言葉は、特定の産業や分野において、世界的な規模で特定のニッチ市場に特化し、その分野でトップの地位を確立している企業や製品を指す言葉です。

    具体的には、大規模な市場全体ではなく、特定の狭い範囲やセグメントでのリーダーシップを目指す戦略を取ることを指します。

    たとえば、全体の自動車市場におけるシェアは小さいものの、特定の部品や技術において世界で最も優れた技術やシェアを持つ企業は、その部品や技術の「グローバルニッチトップ」と呼びます。

    グローバルニッチ企業の定義

    グローバルニッチトップ企業とは、以下の要素を持つ企業を指します。

    世界的な規模のニッチ市場でのシェア率

    グローバルニッチ企業は、大規模な市場全体ではなく、特定の狭い市場セグメントや分野で、世界的な知名度とシェア率を保持し続けています。

    高度な専門性と技術力

    一般的に、グローバルニッチトップ企業は、その分野での高度な専門知識や技術的優越性を有しており、競争優位性を持っています。

    持続的な競争力

    グローバルニッチトップ企業は、特定の分野で他の会社が簡単に追いつけないほど強い競争力を保っています。この競争力は、独自の技術や専門知識、高品質な製品、強いブランド力などの要因によって支えられています。

    安定した収益性

    グローバルニッチトップ企業は、ニッチ市場でのシェア率を維持することで、安定した売り上げを確保できています。

    グローバルニッチトップ企業の成功事例

    ニッチ市場において大きな利益を挙げている企業が国内外にあります。経済産業省は、世界で高いシェア率を維持している日本企業を『2020年版グローバルニッチトップ企業100選』と題して公表しました。成功したグローバルニッチトップ企業の事例をご紹介します。

    レオン⾃動機株式会社

    栃木県宇都宮市に本社を置くレオン自動機株式会社は、パン屋向けに自動で具材を生地に包む業務用機械を世界で初めて開発した企業です。同社の製品は127の国と地域に輸出され、食文化を支えています。

    参考:レオン⾃動機株式会社

    兼房株式会社

    愛知県丹羽郡にある兼房株式会社は、鉄鋼やアルミの加工も行う切削工具の専門会社です。産業用部品の切断に不可欠な使い捨てコールドソーが、グローバルなニッチ市場を獲得しています。

    参考:兼房株式会社

    株式会社武⽥機械

    福井県​​福井市に拠点を置く株式会社武⽥機械は、金型ベースや機械部品用の金属加工機械のメーカーです。従業員100名弱の小規模な企業ですが、その技術力で2020年版グローバルニッチトップ企業100選に選出されました。

    参考:株式会社武⽥機械

    テイカ株式会社

    テイカ株式会社は大阪府大阪市に本社を置く化学工業薬品の製造、販売会社です。医療⽤超⾳波画像診断機⽤セラミックス振動⼦を製品化したことが評価され、2020年版グローバルニッチトップ企業100選に選出されています。

    参考:テイカ株式会社
    参考:『2020年版グローバルニッチトップ企業100選』経済産業省

    まとめ

    ニッチとは、特定の小規模または特化した市場セグメントを意味します。特定の製品やサービスが特定の顧客層や特殊な需要に合わせて提供され、グローバルな市場で成功を収めている日本企業も複数あります。

    ニッチな市場は、競合が少ないぶん、自社に大きな収益をもたらす可能性があります。必ず成功するとは限りません。収益を上げるには、消費者ニーズと参入リスクの分析が不可欠です。本記事でご紹介した内容を参考に市場の開拓と分析を進めてみてください。