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ノーマライゼーションとは? 意味や歴史、事例も紹介

ノーマライゼーションは、障がい者や高齢者が、健常者と同じように社会生活を送れることを目指す考え方で、社会福祉における重要な概念の一つです。

ノーマライゼーションは、社会福祉や医療の現場だけでなく、企業活動を展開するうえでも重視されるようになりました。

本記事では、ノーマライゼーションの意味や歴史などを解説し、企業での取り組みのポイントや事例もご紹介します。

社会福祉への理解やダイバーシティ推進に向けて、意識を高めたいと考える企業の経営層や人事担当者は、ぜひ参考にしてください。

※本記事の内容は作成日現在のものであり、法令の改正等により、紹介内容が変更されている場合がございます。

ノーマライゼーションとは? 意味や歴史、事例も紹介
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    ノーマライゼーションとは?

    ノーマライゼーション(Normalization)とは、障がい者や高齢者などが、健常者と同等に生活できる社会を目指す考え方です。日本語を直訳すると「標準化」や「正常化」ですが、社会全体を誰もが生きやすいように適応させるという意味があります。

    ノーマライゼーションで重要なのは、変化する主体は高齢者や障がい者ではなく、社会そのものです。社会全体を変化させて、誰もが生きやすく社会生活を送れるようにすることが、ノーマライゼーションなのです。

    ノーマライゼーションと混同しやすい言葉や概念

    ノーマライゼーションには、混同しやすい言葉や概念があります。代表例を紹介するので、意味の違いを正しく理解しましょう。

    • バリアフリー
    • ユニバーサルデザイン
    • インクルージョン

    バリアフリーとの違い

    バリアフリーは、障がい者や高齢者が日常生活を送るうえでの物理的な障壁だけでなく、情報やサービスへのアクセスの障壁も解消することです。

    たとえば、高齢者にとって階段の上り下りは危険がともなうため、手すりをつけます。車椅子利用者は、段差がある場所や階段を使用できないため、スロープを設置したり、エレベーターを活用したりします。

    このように、バリアフリーは、ノーマライゼーションを実現するための手段や方法の一つです。

    ユニバーサルデザインとの違い

    ユニバーサルデザインとは、多様な人々が利用しやすいように配慮してデザインや設計をすることです。たとえば、自動ドアや多機能トイレが挙げられます。さまざまな人や状況を想定し、誰にでも使いやすくしたものです。

    インクルージョンとの違い

    インクルージョンとは、個性や価値観を受け入れ、包括する概念です。

    ノーマライゼーションは、障がい者や高齢者など、社会的弱者と呼ばれる人を対象にした概念で、インクルージョンは、すべての人を対象としています。

    ノーマライゼーションの歴史

    ノーマライゼーションは、どのような歴史を持つ概念なのでしょうか。発祥から浸透までの歴史を紹介します。

    ノーマライゼーションの提唱者

    ノーマライゼーションは、デンマークの社会省で知的障害者施設に勤務していたニルス・エリク・バンク-ミケルセン氏によって提唱されました。

    当時、障害者施設の環境は劣悪で、入居者には自由が与えられていませんでした。バンクミケルセン氏は、知的障害者の生活環境を改善するため、法改正に取り組み、ノーマライゼーションの概念を提唱しました。

    その結果、デンマークで「知的障害福祉法」が誕生し、世界で初めてノーマライゼーションが法律で保障されるようになったのです。

    ノーマライゼーションが広まった背景

    ノーマライゼーションは、スウェーデンの知的障害者児連盟のベンクト・ニィリエ氏によって「8つの原理」としてまとめられました。ノーマライゼーションについて成文化されたものが英語に翻訳されたことで、世界に浸透したのです。

    ノーマライゼーションの8つの原理とは?

    ノーマライゼーションの8つの原理は、以下の通りです。

    1. 1日のノーマルなリズム
    2. 1週間のノーマルなリズム
    3. 1年間のノーマルなリズム
    4. ライフサイクルにおけるノーマルな発達的経験
    5. ノーマルな個人の尊厳と自己決定権
    6. その文化におけるノーマルな経済水準とそれを得る権利
    7. その社会におけるノーマルな経済水準とそれを得る権利
    8. その地域におけるノーマルな環境形態と水準

    8つの原理では、1日の基本的生活や1週間の過ごし方、1年間の流れから地域社会や労働、文化まで、健常者が営む一般的かつ当たり前ともいえる社会生活を、社会的弱者にも保障することを求めています。

    参照:『総論』厚生労働省

    参照:『The Normalization Principle and Its Human Management Implications*(Bengt Nirje)』Canon Sociaal Werk

    日本におけるノーマライゼーションの取り組み

    日本でもノーマライゼーションの推進が進んでいます。具体的にはどのような取り組みが行われているのか、分野ごとに確認してみましょう。

    • 教育
    • 公共
    • 雇用
    • 法律

    教育

    教育分野では、障害の有無で区別せず、すべての子どもが同じ環境でともに学ぶ「インクルーシブ教育」が注目されています。インクルーシブ教育は、子どもの頃から多様性の認め合いや包括的な社会への理解を養うことが期待されています。

    公共

    社会ではさまざまな場所で、バリアフリーが導入されています。たとえば、音声案内や点字、スロープなどが挙げられます。バリアフリーは、障がい者や高齢者を公共の場でも過ごしやすくすることが目的です。

    雇用

    雇用においても、ノーマライゼーションが促進されています。

    たとえば、シルバー人材センターによる高齢者の雇用推進が挙げられます。高齢者でも継続して働ける環境を整備し、企業全体として高齢者の雇用促進を強化することが目的です。

    企業は高齢者を雇用することで、人材不足の解消や優秀な人材の確保などのメリットを得られるでしょう。

    法律

    法整備の面でも、ノーマライゼーションが促進されています。

    障害者雇用促進法は、障がい者の労働に関する法律であり、差別の禁止や企業への配慮義務が定められています。

    厚生労働省の『障害者雇用状況の集計結果』によると、令和5年の民間企業における障がい者雇用者数は、前年対比4.6%増加しました。

    障がい者の雇用増加から、障害者雇用促進法の影響によって、企業におけるノーマライゼーションへの取り組みが進んでいることがわかります。

    参照:『令和5年 障害者雇用状況の集計結果』厚生労働省

    ノーマライゼーションと障害者雇用促進法

    ノーマライゼーションとは? 意味や歴史、事例も紹介

    企業では、障害者雇用促進法により、障がい者の雇用義務や職業リハビリテーションの実施を定めています。また、国は企業に対して障害者雇用に関する納付金制度を設けています。

    雇用義務制度

    雇用義務制度とは、事業主に対して一定割合の障害者雇用を行うことを定める制度です。従業員40人以上の企業や国・地方公共団体、教育委員会ごとに、法定雇用率を設定しています。

    法定雇用率と対象事業主の範囲は、以下のように段階的な引き上げが行われています。

    令和5年度令和6年度令和8年7月以降
    民間企業の法定雇用率2.3%2.5%2.7%
    対象事業主の範囲43.5人40.0人37.5人

    また、国や教育委員会の法定雇用率も以下のように段階的な引き上げが行われています。

    令和5年度令和6年度令和8年度
    国や地方公共団体の法定雇用率2.6%2.8%3.0%
    教育委員会の法定雇用率2.5%2.7%2.9%

    参照:『障害者の法定雇用率引上げと支援策の強化について』厚生労働省

    障害者雇用納付金制度

    障害者雇用納付金制度とは、法定雇用率未達成の企業などから、納付金を徴収する制度で、法定雇用率を満たす企業や障がい者を多数雇用する中小企業などへ還元される仕組みです。

    障害者雇用納付金制度の目的には、企業における障害者雇用の水準向上や負担の公平性担保があります。

    障害者雇用納付金制度の対象は、常時労働者100人以上の企業などです。該当する企業は、障害者雇用の不足分1人につき月5万円を納付しなければなりません。

    参照:『障害者雇用納付金制度の概要』厚生労働省

    職業リハビリテーション

    職業リハビリテーションとは、障がい者の社会参加や経済的自立を目的に、職業指導や職業訓練等を行う制度です。

    職業リハビリテーションは、ハローワークと地域障害者職業センター、障害者就業・生活支援センターなどが実施しています。

    参照:『職業リハビリテーションの実施体制の概要』厚生労働省

    企業がノーマライゼーションに取り組む際のポイント

    企業がノーマライゼーションに取り組む際のポイントを紹介します。

    • 障がい者の労働をサポートできる体制を整備する
    • 採用前に企業実習を実施する

    障がい者の労働をサポートできる体制を整備する

    障害者雇用を行う際は、障がい者の特性を理解し、教育体制やサポート体制を整えましょう。

    たとえば、支援担当者を設置したり、勉強会を実施して、ほかの従業員の理解と協力を得たりする方法があります。

    企業は、雇用する障がい者に対して過保護になりすぎる必要はありません。障がい者が整備された環境で求められる役割や責任を果たせるよう、バックアップすることが大切です。

    採用前に企業実習を実施する

    障がい者を雇用する際は、採用前に実習や職場体験を実施するのもよいでしょう。実際の仕事を通して、今いる従業員と雇用前の障がい者が事前に交流することで、お互いに働いたときのイメージがわきやすくなります。

    障がい者側は、職場環境や人間関係、仕事内容を知ることもでき、就労に対する不安を軽減することにつながります。

    企業側は、雇用する障がい者の特性などを事前に把握できるため、配慮やサポートの仕方を工夫できるでしょう。また、実習や職場体験を採用前に実施することで、自社で責任を持って雇用できるか否か判断材料にもできます。

    助成金を活用する

    企業の障害者雇用は、国による助成金の対象にも該当します。具体的にどのような助成金があるのかを紹介します。

    障害者雇用を支援する助成金

    障害者雇用に関する助成金は、以下の通りです(2024年3月時点)。

    助成金の種類受給対象の企業
    特定求職者雇用開発助成金ハローワークの紹介により、継続して障がい者を雇用した※細かいコース分類あり
    トライアル雇用助成金障害者を試行的に雇用した※細かいコース分類あり
    障害者雇用納付金制度に基づく助成金障害者雇用のために環境整備や介助措置を実施した
    障害者能力開発開発助成金・職業能力の開発・向上のための環境整備などを行った・職業能力開発訓練事業を行った
    キャリアアップ助成金障害者雇用を促進し、定着をはかる措置を継続的に講じた※具体的な措置の条件あり

    ※助成金の内容は、今後変更になる可能性もあるため、最新情報を確認しましょう。

    参照:『障害者を雇い入れた場合などの助成』厚生労働省

    ノーマライゼーションの事例

    ノーマライゼーションに取り組む企業について、実際の取り組み事例を紹介します。

    • 株式会社りそなホールディングス
    • 藤田観光株式会社

    株式会社りそなホールディングス

    株式会社りそなホールディングスは、多岐にわたるノーマライゼーションへの取り組みを行っています。

    高齢者や妊娠中の方に配慮した「優先ATM」や「優先シート」の店舗設置を筆頭に、主な取り組みは以下の通りです。

    • 視覚障害者向けのATMの設置
    • 点字通知サービス
    • 車椅子利用の方に配慮した現金封筒入れの設置(優先ATMが対象)
    • コミュニケーションボードの設置
    • 簡易筆談器・無線式振動呼出器
    • 認知症サポーターの配置
    • AEDの設置
    • 点字カレンダーの制作や贈呈

    このように、ノーマライゼーションとして障がい者や高齢者が安心して利用できるような環境整備に取り組んでいることがわかります。

    参照:『ノーマライゼーションへの取り組み』株式会社りそなホールディングス

    藤田観光株式会社

    藤田観光株式会社でも、ノーマライゼーションを推進しています。

    具体的には、ノーマライゼーション研修での有識者による講演や疑似体験などが挙げられます。そのほか、手話講習や補助犬同伴者への対応を学ぶ研修も実施するなど、積極的に取り組んでいるようです。

    同社は「すべての人が平等に社会参加できる社会や環境について考え、そのために必要な行動を続けること」を目的とした、東京都の「心のバリアフリー」サポート企業にも認定されています。

    参照:『ノーマライゼーションの取り組み』藤田観光株式会社

    まとめ

    ノーマライゼーションは、障がい者や高齢者が、健常者と同じように社会で生活できることを目指す考え方です。

    障害者雇用促進法によって一定数の障害者雇用が義務化されるなど、企業によるノーマライゼーションへの取り組みが求められています。

    障がい者の雇用においては、さまざまな配慮や工夫が必要です。国による助成金なども活用したうえで、積極的に進めてみてはいかがでしょうか。

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