オペレーションマネジメントとは? 7つの機能や必要性、実施手順も解説
オペレーションマネジメントは、生産ラインの効率化や物流プロセスの最適化など、企業全体の業務プロセスを改善するための手法です。
長期にわたり企業の持続的な成長を目指すためのマネジメント手法といえます。オペレーションマネジメントを成功させるためには、正しい理解や取り組みが必要です。
本記事では、オペレーションマネジメントの目的や機能、進め方などを解説します。生産性を向上させたいと考えている方やオペレーションマネジメントに興味がある企業の経営者や現場責任者は、ぜひ参考にしてください。
オペレーションマネジメントとは
オペレーションマネジメントとは、業務プロセスを管理するマネジメント手法です。
ビジネスにおけるオペレーションは、会社全体の経営戦略から日常業務まで、業務を進めるためのさまざまな活動を意味します。そのため、オペレーションマネジメントの目的や方法は、業務や分野によって異なります。
オペレーションマネジメントを適切に行われると、業務改善や効率化が進み、生産性の向上が見込まれるため、目標達成など企業の成長にもつながるでしょう。
また、オペレーションマネジメントは、長期的かつ戦略的に取り組むことで、より効果が高まるとされています。
オペレーションマネジメントの目的
オペレーションマネジメントの主な目的は、以下の4つです。
- チームメンバーのモチベーション向上
- 経営資源を有効活用
- 組織内連携を強化
- トラブルなどのリスク回避
チームメンバーのモチベーション向上
オペレーションマネジメントは、従業員のモチベーションを高める効果が期待できます。
モチベーションマネジメントによって職場環境の改善や業務効率化が実現すれば、従業員がよりスムーズに仕事に取り組めるでしょう。
従業員のモチベーションが向上することで、仕事への主体性が高まったり、生産性が向上したりして、成果にもつながりやすくなります。
経営資源を有効活用
オペレーションマネジメントは、限られた経営資源を有効活用するためにも重要です。
オペレーションマネジメントに取り組むことで、経営資源である「ヒト」や「モノ」「カネ」「情報」を適切に管理できれば、必要な場所に必要な資源を投じることができます。
その結果、生産性が向上し、企業の目標達成や成長にも効果があるでしょう。
組織内連携を強化
企業規模が大きいと、部門を細分化して構成されている組織もあるでしょう。組織を細分化している場合、部門や部署同士の連携が難しくなるため、スムーズな連携がとれる体制構築が重要です。
オペレーションマネジメントによって、部門ごとの連携を強化できれば、横断的なコミュニケーションや協力体制が構築され、生産性を高めやすくなるでしょう。
トラブルなどのリスク回避
業務内容や職種に応じて、オペレーションマネジメントの一環としてマニュアルを作成する場合があります。たとえば、飲食店ではオペレーションマネジメントのためのマニュアルにより、スタッフ間で共通認識を持ち、サービスの均質化をはかることができます。
あらかじめ用意された正しい手順に従って業務を行えると、ミスの軽減やトラブルの防止といったリスク回避にもつながるでしょう。
オペレーションマネジメントの必要性
オペレーションマネジメントの必要性について、主な理由は以下の2つです。
- 市場における優位性
- 継続的かつ長期的な企業の成長
市場における優位性
オペレーションマネジメントを行うことで、業務のボトルネックを見つけて改善できるため、効率化が進みます。
業務の効率化が進めば、製品やサービスの質向上のために時間を割いたり、経営資源である「ヒト」を人材不足の部署に配置転換をしたりできるため、生産性も向上します。
その結果、競合他社よりも優れたサービスにするためのアイデア創出や機能開発、顧客対応などに注力できるため、市場における優位性を確立できるでしょう。
継続的かつ長期的な企業の成長
オペレーションマネジメントでは、定期的に業務フローの見直しや課題の発見を行います。
このような流れを常に意識しておくと、企業は限られた経営資源を最大限活用しながら成果を得られ、継続的かつ長期的な成長につながります。
オペレーションマネジメントの機能と役割
オペレーションマネジメントでは、以下のように7つの機能と役割があります。
- 業務計画
- 財務
- 製品デザイン
- 品質管理
- 予測
- 戦略
- サプライチェーンマネジメント
一つひとつの機能と役割を解説します。
業務計画
業務計画の機能は、業務効率の維持においてオペレーションマネジメントの根幹となる機能です。
具体的な業務計画の内容は、以下の業務が挙げられます。
- 在庫管理
- 生産状況やサービス運営状況の観察と把握
- 日程や工程の計画立案
- 人的資源の管理と状況把握 など
業務計画は、経営資源の動きを常に把握し、改善すべき部分の発見や、臨機応変な対応を行うために欠かせません。
財務
オペレーションマネジメントにおいて、財務機能はコストを削減しながら売り上げや利益を増やすために重要な機能です。
具体的な財務の内容は、以下の業務が挙げられます。
- 目標に連動した予算作成
- 適切な予算配分
- 投資の検討 など
財務では、適切なコスト管理を行うだけでなく、売り上げや利益につながるような市場への投資を検討することも重要です。
また、オペレーションマネジメントにおける財務は、あくまで製造プロセスで発生する損益にかかわる業務で、給与計算など企業の財務経理が行うものとは異なります。
製品デザイン
オペレーションマネジメントにおける製品デザインは、製品やサービスについて、需要を見据えたデザインを行うために、市場トレンドやニーズなどの情報を収集する機能です。
製品デザインの具体的な内容は、以下の業務が挙げられます。
- 市場調査を行ったうえで、内容をまとめ、製品デザイナーに連携
- 製品デザインのディレクション
- 製品デザイナーのサポート など
製品デザインでは、市場調査を通じて顧客のニーズや満足度を満たせるデザインを考えます。市場調査の結果を製品デザイナーに伝え、顧客の期待に応えるデザインを実現することで、売り上げの向上や顧客満足度の向上が期待できます。
品質管理
オペレーションマネジメントにおける品質管理は、生産段階において、自社の品質基準を満たした製品かどうかを管理する機能です。
品質管理の具体的な内容は、以下の業務が挙げられます。
- 品質基準の明確化
- 品質チェックテストの実施
- 生産ロスの管理
- 品質リスクの管理と分析 など
品質管理は、基準を満たした安全・安心な製品を生産できるだけでなく、製品の廃棄数や無駄なコストの削減にもつながるでしょう。
予測
オペレーションマネジメントにおける予測は、過去のデータなどから今後の見通しや需要を予測する機能です。
予測の具体的な内容は、以下の業務が挙げられます。
- 市場分析
- 製品やサービスの需要変化の想定
- 製品に関するマーケティング活動の計画
- コストの試算 など
予測は、データなどを用いて客観的な根拠に基づいた内容でなければなりません。数値を用いて、プロモーションやマーケティング計画、原材料費の見積もりなどを行いましょう。
戦略
オペレーションマネジメントにおける戦略は、目標達成までの戦略を策定したうえで管理する機能です。業務計画・財務・予測などから得た幅広い情報を用いて、適切な意思決定と、組織の目指す目標と矛盾がないかを確認することが大切です。
戦略の具体的な内容は、以下の業務が挙げられます。
- 顧客満足度の向上を最重視
- 生産体制や環境の改善
- 市場競争の優位性を確保し、生産コストの管理 など
戦略は、オペレーションマネジメントのそれぞれの機能や役割を活用し、最適な生産体制を分析して構築します。
サプライチェーンマネジメント
オペレーションマネジメントにおけるサプライチェーンマネジメントは、生産過程を管理するうえで必要な機能です。
製品やサービスの生産から出荷までの工程では、以下の流れや接点を要します。
- 原材料
- サプライヤー
- 生産者
- 流通業者
- 小売業者
- 消費者
一つひとつの流れを適切に管理し、課題や障害となっている点を早期に発見して改善することが重要です。サプライチェーンは、一巡したらまた1に戻り、6で洗い出した消費者のニーズをもとに原材料を調達する工程を繰り返していきます。
オペレーションマネジメント担当者に必要なスキル
オペレーションマネジメントを担当する人材には、どのようなスキルが必要なのでしょうか。具体的なスキルをご紹介します。
- 臨機応変な対応力
- 財務や経理の知識
- データ解析能力
- クリティカルシンキング
- 問題解決能力
それぞれのスキルについて解説します。
臨機応変な対応力
オペレーションマネジメント担当者には、臨機応変な対応力が求められます。企業では、目標や市場動向の変化によって、オペレーションが変わることもあります。オペレーションマネジメントの担当者が柔軟な対応ができれば、組織の混乱を最小限に抑えられるでしょう。
財務や経理の知識
オペレーションマネジメント担当者は、財務計画を立てたり、コスト削減に努めたりする必要があります。どんなによい製品をつくったとしても、顧客の手の届く価格に抑えなければ売り上げにはつながりません。
そのため、予算管理や財務戦略など、経理や財務分野の知識が求められることがあるでしょう。
データ解析能力
オペレーションマネジメントは、過去のデータを用いて分析を行うため、データ解析能力も必要とされます。ただデータを管理していても、読み解けなければ意味がありません。
また、マネジメント担当者がデータに基づいて分析結果と今後の戦略をメンバーにわかりやすく伝えるためにも、データ解析のスキルが重要です。
クリティカルシンキング
オペレーションマネジメント担当者は、ものごとを批判的に捉えるクリティカルシンキングの能力も必要です。
当然のように行っていたプロセスの必要性や進め方をあえて疑うことにより、根本的な問題を見つけ、より適切な業務フローの提案ができたりするでしょう。
問題解決能力
オペレーションマネジメントの担当者は、問題解決能力も求められます。
業務を進行する際、新たな問題点の発見や予期せぬトラブルに見舞われることもあるでしょう。マネジメント担当者に問題解決能力があれば、冷静な判断や対処ができるため、オペレーションへの影響も最小限に抑えられます。
オペレーションマネジメントの基本的な手順
オペレーションマネジメントの手順は以下の通りです。
- プランニング
- オペレーションの見直しと改善
- データ分析
- 分析結果から改善
一つひとつのステップを確認してみましょう。
1.プランニング
オペレーションマネジメントは、目指す方向性を明確にするために計画を立てることから始めます。
具体的には、以下の設定が必要です。
- 目標の確認と設定
- 目標達成までの道筋
- 課題や改善点の抽出と優先度の見極め
プランニングの段階で、オペレーションマネジメントを行うメンバーも選定します。マネジメントメンバーには、現場を理解している人材を入れると、現在の課題を抽出しやすくなり、現実的な改善策を考案しやすくなるでしょう。
2.各現場における改善
オペレーションマネジメントの次のステップでは、各現場におけるオペレーションの見直しや改善を実施します。
一般的には、以下のオペレーションが対象です。
生産オペレーション | 商品の企画から仕入れ、製造、検品までの スケジュール管理や生産性向上を行う |
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保全オペレーション | 工場の設備の点検や維持を行う。 点検後のフィードバックまで実施する |
在庫オペレーション | 発注や棚卸しなどの在庫を管理する。 生産オペレーションに在庫の残数を伝え、スケジュールを共有する |
品質オペレーション | 商品の品質基準の設定や向上を目指す |
製品やサービスの生産に関する工程を細かく分類し、改善をはかることが大切です。
3.データ分析
オペレーションマネジメントでは、機能や各オペレーションにおいて収集したデータから分析を行います。データ分析によって、課題や注意点を発見し、今後の改善に役立てます。マネジメント担当者は、改善策の実行によってさらなる問題が発生しないか注意を払いましょう。
4.分析結果から改善策の実行
データ分析によって得られた課題点や施策をもとに、改善に取り組みます。
マネジメント担当者は現場の従業員による混乱を防ぐためにも、改善策を実行する前に十分な説明や周知を行いましょう。理解を得られないまま実行しても、思うような効果は得られにくいためです。
また、改善策を実行してから一定期間が経過したら、効果を検証しましょう。新たに生まれた課題とよかった点を洗い出し、プランニングに立ち返ります。一度の改善で終わるのではなく、PDCAを回すことでオペレーションをブラッシュアップできるでしょう。
オペレーションマネジメントのポイント
オペレーションマネジメントを成功させるために重要なポイントを紹介します。
- ミスやトラブルにも備えて計画する
- 全体の方針を明確化する
- ツールを活用する
- 適切な業務采配を行う
ミスやトラブルにも備えて計画する
具体的な業務においては、人的ミスやトラブルの発生により、遅延する可能性もあります。
オペレーションマネジメントはさまざまな部署と連携する必要があるため、計画が緻密すぎると、予期せぬトラブルが起きたときにほかのスケジュールに影響を及ぼし、計画倒れになることも考えられます。
オペレーションマネジメントにおける計画策定では、何らかのミスやトラブルも想定したうえで、余裕を持たせた計画を立てましょう。
全体の方針を明確化する
オペレーションマネジメントでは、組織全体の方針を明確にしておくことが大切です。
細分化されている大規模な組織では、部門ごとの個別方針にとらわれて、本質的な目的が見失われがちです。目的を見失うと無駄な工程が発生し、本来得たかった成果が得られない可能性があります。
組織として統一された方針を明確にすると、部門ごとのオペレーションマネジメントも、最終的な目的を意識して行動しやすくなるでしょう。
ツールを活用する
オペレーションマネジメントでは、システムやツールを活用してもよいでしょう。
タスク管理ツールやプロジェクト管理ツールを導入すると、細かい業務や作業をシステム上で管理して業務の効率化につながります。データ収集や分析に活用できるシステムもあり、適切なオペレーションマネジメントに役立つでしょう。
適切な業務采配を行う
オペレーションマネジメントでは、現場の従業員の特性を理解したうえで、適切に業務をすることも重要です。従業員の適性に合った配置ができると、最小限のコストで効率的にプロジェクトを進められるでしょう。
また、希望とかけ離れている業務や適性に合っていない業務を任せると、従業員のモチベーション低下にもつながりかねません。
マネジメント担当者は、従業員の性質やこれまでの経験を踏まえて、従業員のパフォーマンスを最大化できるような体制や環境を構築しましょう。
まとめ
オペレーションマネジメントは、各部門における業務をスムーズに進行させるために、業務プロセスを適切に管理するマネジメント手法です。特に製品やサービスの生産において重視されていますが、組織のあらゆる部門でも活用できる手法といえます。
オペレーションマネジメントの体制を構築できると、業務の効率化やコスト削減、業務改善を継続的に支えるため、企業の成長にもつながります。組織において、業務プロセスに課題を感じている場合は、オペレーションマネジメントの導入を検討してみましょう。