過緊張とは? 症状と仕事ができない原因・対処法を紹介
不思議なもので「緊張を抑えなければいけない」と思うときほど、人は緊張してしまうものです。背後には「成功させたい」「恥をかきたくない」という思いがあるのでしょう。
過緊張とは、その思いが強すぎるがために頭が真っ白になってしまうことです。ささいな悩みと思う人もいるかもしれませんが、「相談窓口がない」「どう対処すればよいのか」と思い悩む人もいます。
本記事では、過緊張の症状や原因、対処法を紹介します。
過緊張とは?
過緊張とは、心身に過度なストレスがかかり、仕事や日常生活に支障をきたす状態です。プレゼンテーションや試験などの重要な場面でよく見られます。
ビジネスシーンでの過緊張の影響
コミュニケーション能力や決断力、生産性低下の要因として、過緊張の影響が考えられます。たとえば、プレゼンテーションや会議で発言する際に緊張すると、伝えたいメッセージが伝わらなかったり、自分の意見を的確に表現できなくなってしまいます。
過緊張に陥ると、アイディアや解決策を提案する場面でも、緊張により固定観念に捉われやすくなるのです。また、リスクを避けるために保守的な判断に偏る傾向もあります。
過緊張は、ビジネスシーンのあらゆる場面において、機会損失につながるといえるでしょう。
過緊張の原因
過緊張に陥ってしまう要因として、以下の5つが挙げられます。
- 個人の性格や経験
- 職場環境
- 人間関係
- 仕事のプレッシャー
- 過緊張性発声障害
個人の性格や経験
過緊張の1つめの原因は、個人の経験です。具体的には、幼少期に親の意向で無理に発表会に出演し失敗してしまったときや、文化祭や体育祭で恥ずかしい思いをするなど人前での体験が影響しています。
「うまくできた」という成功体験がない人は、緊張することに対し、過敏になってしまう傾向が見受けられるのです。
職場環境
過緊張の2つめの原因は、職場環境の物理的な側面から受ける影響です。たとえば、騒音が多い、照明が暗い、掃除が不十分という環境は、従業員の緊張やストレスを増加させる可能性があります。
また、プライバシーが不十分なオープンスペースのオフィスは、一部の従業員にとって集中力を妨げ、過緊張を引き起こす要因となることもあります。
人間関係
過緊張の3つめの原因は、職場の人間関係や組織文化による影響です。上司や同僚とのコミュニケーションが不足していると、誤解や不信感が生じ、緊張を引き起こす可能性があります。
仕事のプレッシャー
過緊張の4つめの原因は、仕事の内容や量、期限をプレッシャーに感じることによるものです。過重労働や不規則な労働時間、締め切りへのプレッシャーなどは、従業員のストレスを増加させ、過緊張を引き起こします。
過緊張性発声障害
過緊張は、環境や個人のストレスに起因するものだけではありません。声帯の病変や麻痺などによって引き起こされる「過緊張性発声障害」という症状もあります。主な症状は、のどに力が入りすぎて声がかすれる、反対に筋肉が締まらず声が出しにくいなどです。
過緊張性発声障害の治療には、言語聴覚士による専門的な指導が必要です。心理的な要因が大きいと考えられる場合は、医師による心理療法が併用されることもあります。
参考:『機能性発声障害の症状・症例』京都耳鼻咽喉音聲手術医院
ビジネスシーンでの過緊張の具体的な症状
過緊張が生じると、ビジネスシーンにおいて、以下3つの症状があらわれやすいといわれています。
- コミュニケーションの困難
- プレゼンテーションや会議での不安
- 発声できない
コミュニケーションの困難
コミュニケションの困難な状態とは、「失敗したらどうしよう」「恥をかきたくない」という思いが強すぎるあまり、自分の意見を発したり、メンバーの意見を聞いたりできない状態です。
結果として、正しい判断ができなくなります。情報は聞こえていますが、聞き取った内容をしっかり考える余裕がなく、上手にコミュニケーションが取れません。
プレゼンテーションや会議での不安
多くの人が感じやすい、プレゼンテーションや会議での不安も過緊張の一種である可能性があります。とくに事業の行方を左右する会議での発言は、誰しも緊張してしまうものです。
過緊張の強い人は「円滑に進めなければ」という思いが強く、周りが見えなくなりがちです。メンバー間のコミュニケーションを阻害する要因となっています。
発声できない
声が出なくなるのも過緊張の一種です。事前に話す内容を考えていたものの「人前に出たらど忘れしてしまった」という経験をした人は少なくないでしょう。
過緊張が強い人は、自分の意思とは無関係に全身の筋肉が硬くなってしまい、発声できない、または声を出せても小さいと言われてしまいます。
過緊張の対処法
過緊張は誰にでも起こりうるものです。しかし、常に緊張していては、身も心も疲れてしまいます。
自分に合ったリラックス方法を知ることが、過緊張と上手に付き合うためのコツといえるでしょう。日常に取り入れやすい対処法を6つ紹介します。
- 深呼吸
- 瞑想・マインドフルネス
- プログレッシブマッスルリラクゼーション
- 音楽鑑賞
- 緊張を和らげるスキルの習得
- 医師に相談
深呼吸
深呼吸は、緊張しているときやストレスを感じたときに、深く吸ってゆっくりと息を吐き出すだけのシンプルな過緊張の対処法です。
心拍数が落ち着き、筋肉の緊張が和らぐことで、体は自動的にリラックスモードに切り替わります。深呼吸には、神経の過剰な高ぶりを抑える効果があります。
瞑想(めいそう)・マインドフルネス
瞑想・マインドフルネスとは、現在の瞬間に意識を集中させるマインドコントロールの手法です。「現在」と「過去」を切り離して考えることで、自信を客観的に評価する能力を養います。
プログレッシブマッスルリラクゼーション
プログレッシブマッスルリラクゼーションは、体の異なる筋肉群を順番に緊張させてからリラックスさせるテクニックです。筋肉の緊張を意識的に感じられ、その緊張を解放することで、全体的なリラックス感を得ることができます。
音楽鑑賞
音楽や自然の音を聞くことも、過緊張を和らげる有効な手段の一つです。とくに、波の音や鳥の鳴き声、静かな音楽などは、心と体を落ち着ける効果があるといわれています。
緊張を和らげるスキルの習得
自分で緊張をほぐすスキルを習得できると、過緊張とうまく付き合えるようになるでしょう。そのためには分析と反復が必要です。
ステップ1.分析
過緊張に陥る場面は人によって異なります。友達や家族の前なら大丈夫な人もいれば、反対に、第3者の方が話しやすい人もいるでしょう。
まず「自分がどのようなシチュエーションで緊張するか」を知ることが、過緊張との付き合い方を考える一歩です。
ステップ2.反復
自己分析したうえで練習するとよいのが成功体験の反復です。始めから人前でのプレゼンの練習をするのは難易度が高いでしょう。
まずは自分が話せる人、気軽に話せるシチュエーションを見つけて、その中で話す練習をしてみてください。周囲から見ると、取るに足らないようなことでも、自分の中で「上手にできた」という感情を積み上げられると、過緊張はあらわれにくくなるでしょう。
医師に相談
ストレスや疾患が原因で過緊張に陥っているなら医師に相談しましょう。会社など特定の場面で声が出なくなったり、食事がとれなかったりする場合、ストレスが原因である可能性が考えられます。
また、のどや舌に何らかの異常が起きているために発語ができず、それが過緊張を引き起こしている可能性も否定できません。過緊張は心理的な要因だけで起こるとは断言できないのです。
病院に行くのに抵抗を感じる人もいるかもしれませんが、放置するのは賢明とはいえません。総合病院で検査を受け、過緊張の根本にある疾患を治療したり、医師の指導のもとストレスから離れたりする対処をおすすめします。
過緊張に効果的な実践型アプリ
過緊張をほぐして、緊張緩和とリラックスに焦点を当てたアプリも開発されています。
Headspace
『Headspace』は、瞑想とマインドフルネスを中心に設計されたアプリです。初心者から上級者まで、さまざまなレベルのユーザーが瞑想の手順を学び、日常生活に取り入れることができます。
また、特定のテーマ(例:睡眠、焦燥感、集中力向上など)に基づいた瞑想セッションも提供されています。
参考:『Headspace』
Calm
『Calm』は、リラックスや瞑想、睡眠をサポートするアプリとして人気があります。このアプリには、深いリラックスを促進するためのガイドつき瞑想や、睡眠を助ける物語、さらにはリラックスする音楽やサウンドスケープが含まれています。
※iOS版のみ(2023年11月時点)
Breathe2Relax
『Breathe2Relax』は、特に呼吸に焦点を当てて設計されています。ストレスや過緊張の緩和のための深呼吸テクニックを学ぶことができます。ユーザーは、アプリを使用して呼吸のペースを追跡し、指示に従って正しい呼吸法を習得できます。
Insight Timer
数千の無料の瞑想セッションを提供する『Insight Timer』は、瞑想の練習をサポートするための多くの機能を持っています。また、ユーザーは自分の興味やニーズに合わせて瞑想のセッションやテーマ、指導者を選べます。
まとめ
緊張は誰しもしますが、過緊張は過去の経験や今置かれている環境によって通常の緊張を超えた状態です。「過緊張」という言葉を知らずに「自分はなぜプレッシャーに弱いのか」と悩んでいる人もいるかもしれません。
過緊張の原因は、過去の経験や環境によるストレス、音声障害などが関連していることが多くあります。
過緊張の一般的な対処には「日常でできる深呼吸や瞑想を繰り返す」または「医師など専門スタッフに相談する」という方法があります。成功体験の積み重ねによって上手に付き合えるようになるケースと、病院での治療・医師の指導によって改善されるケースがあるようです。
過緊張を克服し、自己を受け入れて落ち着きと自信を取り戻せると、仕事のパフォーマンスや日常生活は改善に向かうでしょう。