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ピッチとは? 意味やビジネスにおける重要性、成功させるためのテクニックを解説

ピッチとは? 意味やビジネスにおける重要性、成功させるためのテクニックを解説

ピッチとは、聞き手の関心や支持を引き出しながら短時間で、自分自身やビジネスアイデア、商品、またはサービスを紹介するプレゼンテーションです。

音楽や野球・サッカーでは耳なじみがあるかもしれませんが、ビジネスシーンでは社内ミーティング・営業で重要視されています。投資家や顧客などを説得するために、簡潔で説得力のあるピッチが不可欠です。

ピッチを成功させるには、明確なメッセージや熱意、そして聞き手のニーズに対する深い理解が必要です。本記事では、ピッチの基本的な意味から重要性、成功のテクニックをご紹介します。

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    ピッチとは?

    ピッチとは、アイデアや商品、プロジェクトなどを簡潔に、かつ魅力的に伝えるための短い説得的なスピーチです。ピッチは「投げる」「間隔」「フィールド」など、活用シーンによって意味が変化します。具体的には、次のような使われ方をします。

    音楽音の高さ
    野球ボールを投げる動作、またはそのボール自体。
    野球の「ピッチャー」の起源
    サッカー試合が行われるフィールドやグラウンド
    製造・材料石炭タールや樹脂などの粘性のある物質

    ビジネスにおけるピッチの意味と重要性

    ビジネスにおける「ピッチ」は、野球の「投げる」という意味から派生したと考えられています。アイデアや提案を「投げかける」ように相手に伝え、提案するという意味で使われています。

    ビジネスにおけるピッチの意味と重要性を、より詳しく確認してみましょう。

    短時間でのプレゼンテーションを指す言葉

    ピッチは起業家やビジネスパーソンが、関係者に対して事業計画やアイデア、サービス、製品の価値を短時間で説得力を持って伝えるプレゼンテーションです。

    関係者には投資家やクライアント、パートナーなどが含まれます。相手の注意を引いて、興味を持ってもらうために、キーポイントを絞り込み、話す時間を30秒から5分程度に限定して行われます。

    ピッチの重要性は、第一印象と関係構築のチャンスにあります。初めて会った人を説得する機会は限られているため、ピッチはその短い時間の中で聞く人の関心を引き、記憶に残るメッセージを与える必要があります。

    ピッチでは、明確かつ簡潔に事業の核となる価値提案を伝え、人が行動を起こすように誘導できると、その後の商談につながりやすくなるでしょう。成功するピッチは、ただ事実を羅列するだけではなく、聞き手の感情に訴え、ストーリーを描くことが重要です。

    アイデアや製品の魅力を短時間でアピールするための重要技術

    ピッチは、アイデアや製品、サービスの価値を短時間で伝え、相手の興味や信頼を勝ち取る手段です。現代のビジネス環境は競争が激しく、多くの情報や選択肢であふれており、目新しいアイデアを相手に提案したとしても、その価値を瞬時に理解してもらうことは困難といえます。ピッチはその障壁を乗り越える可能性があります。

    たとえば、スタートアップの場合、強力なピッチは投資家の心をつかみ、資金調達のチャンスを増大させます。また、新製品の販売や新サービスの提案においても、効果的なピッチは顧客の興味を引きつけ、ビジネスの拡大を実現するためのステップです。

    また、ピッチは、企業や個人のブランディングにも寄与します。印象的なピッチによって、相手に強く印象づけられ、信頼性や信用性を高められます。

    ピッチとプレゼンテーションの違い

    ピッチとプレゼンテーションは、どちらも「伝える手法」ですが、違いがあります。

    ピッチプレゼンテーション
    目的売り込み(が強い)伝達と理解の促進
    時間30秒〜5分程度決まりはない
    内容構成ストーリーテリング論理的かつ系統的
    活用場面投資家への資金調達
    新商品の販売促進
    新しいプロジェクトの提案
    教育や研修
    業績報告
    プロジェクトの進行状況の共有

    目的

    ピッチの目的は、売り込みの側面が強いです。投資家にアイデアの魅力を伝えて印象づけ、資金や支援の獲得を目指します。初めての相手でも、何らかの行動を取らせることを狙っています。

    一方でプレゼンテーションの目的は、あくまでも「伝達」にとどまる場合が多いでしょう。説得や売り込みをともなうこともありますが、データや分析結果などを踏まえて、業績報告や進行状況を伝え、相手の理解の促進に重点を置いています。

    時間

    ピッチの時間は3〜5分程度です。限られた時間内に、ポイントを絞って核心的な情報を伝え、顧客を説得します。

    一方、プレゼンテーションは、詳細な情報を伝達するためのものであり、ピッチに比べて長くなるでしょう。ピッチは短時間での説得に軸を置いているのに対し、プレゼンテーションはより長く詳細に情報の伝達を目的としています。

    内容の構成

    ピッチはストーリーテリングの要素が強く、情熱や感情を伝えることが重要です。また、特定の要求や行動への呼びかけが含まれています。

    一方でプレゼンテーションは、論理的かつ系統的に情報を構成し、明確な流れの中で情報を伝達します。客観的なデータや事実をもとにした内容が中心です。

    活用する場面

    ピッチは投資家への資金調達、新商品の販売促進、新しいプロジェクトの提案など、相手に何らかの行動を起こさせることを目的とした場面で活用します。

    一方でプレゼンテーションは、教育や研修、業績報告、プロジェクトの進行状況の共有など、情報の伝達を主目的とした場面で活用されます。

    ピッチの種類

    ビジネスにおけるピッチにはいくつか種類があります。

    エレベーターピッチ

    エレベーターピッチとは、通常30秒から2分程度の非常に短いピッチです。限られた時間内で相手の興味を引くことが目的で、エレベーターでの短い乗車時間を想定して名づけられました。企業や商品、サービスの核心的な価値をシンプルに伝えます。

    投資家向けのピッチ

    投資家向けには、スタートアップや企業が、投資家からの資金調達を目指す際にピッチを行います。目的は投資家からの資金提供や関心を引き出すことです。ビジネスモデルや収益予測、市場分析、競合分析、チームの紹介などを伝えます。

    商品・サービスのセールスピッチ

    商品・サービスのセールス用のピッチは、顧客の関心を引き、購入や契約に結びつけることが目的です。商品やサービスの特徴、利点、違いなどを伝えます。

    企業のビジョンやミッションのピッチ

    企業の理念や将来の展望を伝えるピッチです。従業員や関連企業、顧客・取引先・株主に対して、企業の方向性や価値を共有することを目的としており、企業のミッションやビジョン、目標、価値観などで構成します。

    内部プロジェクトの提案ピッチ

    企業内での新しいプロジェクトや改善提案を行う際のピッチです。上司や関連部門の承認や賛同を得ることを目的とし、提案の背景や目的、期待される成果、リソースの必要性などを伝えます。

    競技型ピッチ(ピッチコンペ)

    複数の企業や団体が一定のテーマや問題に対するソリューションを競い合う形式のピッチです。目的は受注や賞金、認知度の向上であり、解決策の提案や予算、時間枠などを伝えます。

    ピッチを構成する5つの要素

    日本語に「起承転結」という論法があるように、ピッチにも論法があります。実務においては、以下の流れに沿って話を組み立てるのがよいでしょう。

    1. 自己紹介
    2. 問題提起
    3. 解決策の提示
    4. 顧客価値の説明
    5. クロージング

    1.自己紹介

    自己紹介は、非常に重要なパートです。自己紹介で相手を惹きつけられると、その後の内容もスムーズに進められます。以下に、自己紹介を明確に伝えるためのテクニックと具体的な例をご紹介します。

    シンプルかつ明確に

    名前、所属、役職を簡潔に伝えることで、相手に余計な混乱を与えないよう心掛けましょう。

    皆さん、こんにちは。私は[会社名]の[役職]、[名前]と申します。

    関連性を強調

    ピッチの内容と自分の役職や経験の関連性を明確にすることで、自分の信頼性や権威を強調できます。

    私は[会社名]のプロダクトマネージャー、[名前]として、過去5年間この業界での製品開発に携わってきました。

    エピソードを組み込む

    自己紹介に小さなエピソードを加えると、印象に残りやすくなります。

    [名前]と申します。私のチームが開発したアプリは、昨年のアワードで最優秀賞を受賞しました。

    つながりをつくる

    すでに知っている共通の知人や過去の出来事を引用することで、相手とのつながりを強調できます。

    先月、[イベント名]でいくつかの方とお話しした際に、私たちの新しいプロジェクトについて興味を持っていただいたので、今日はその詳細をお伝えしたいと思います。

    明るい声のトーンでハキハキと

    普段より少し高めのトーンを意識すると、元気で活発な印象になります。

    皆さん、こんにちは! 私は[会社名]の[役職]、[名前]と申します。今日は、皆さんにとって耳よりな情報をお伝えするために来ました。

    ボディーランゲージ

    ボディーランゲージは、言葉だけでなく、身体を使って自己紹介するため、より印象に残ります。

    名刺を手に持ちながら「私は[会社名]の[役職]、[名前]と申します」と自己紹介する。

    2.問題提起

    問題を効果的に提示することで、聞き手の関心や共感を引き出し、提案する解決策への関心が高まるでしょう。以下に、問題提起を明確に伝えるためのポイントと具体的な例を紹介します。

    共感を引き出す

    問題が具体的で、多くの人々が感じることができるものであれば、共感を引き出しやすくなります。

    人事領域の従業員の情報管理は、手間がかかりますよね。

    具体的なデータを使用

    統計や調査結果を用いることで、問題の実態や規模が明確に伝わります。

    最新の調査によれば、国内企業の70%が情報管理にExcelを使っているそうです。

    ストーリーテリングを取り入れる

    実際のエピソードや体験を共有することで、問題のリアリティを強化できます。

    何よりも私自身がExcelを使っていて、手間・わずらしさを感じていた1人です。

    問題の影響を明確に

    問題がもたらす具体的な影響やリスクを指摘することで、その重要性を強調できます。

    Excelは使いにくくはないですが、従業員数が増えてくるとファイルが重くなって時間がかかります。

    感情を動かす表現を用いる

    声のトーンと表情を変え、聞き手の注意や関心を引き寄せます。

    結果、工数がかかって残業が増えてしまっていませんか?

    3.解決策の提示

    解決策の提示はピッチの根幹です。問題がうまく共感を得られるものであったとしても、その解決策が明確で魅力的でなければ、成功は見込めません。解決策の提示で伝える情報は以下の通りです。

    シンプルさ

    提案するソリューションは、明確かつ簡潔に伝えることが重要です。

    私たちのアプリは、AI技術を用いて情報過多をフィルタリングし、個々のニーズに合わせた情報だけを提供します。

    具体的な利点の強調

    製品やサービスの特徴だけでなく、それによって得られる具体的な利点を強調することで、ソリューションの価値を高めます。

    これにより、ユーザーは毎日の情報消費時間を50%削減でき、重要な情報を見逃すリスクも大幅に減少します。

    事例やテスト結果の利用

    すでに取得している事例やテスト結果の提示は、ソリューションの有効性や実現可能性を証明できます。

    実際に先行テストでの300人のユーザーのうち、90%が情報管理のストレスが減少したと感じています。

    情報の可視化

    スライドやグラフ、画像などのビジュアルを活用することで、複雑な内容も分かりやすく伝えることができます。クリアでわかりやすいデザインを選ぶことが重要です。

    競合との差別化を明確に

    ほかの競合製品やサービスとの違いや、自分たちのソリューションが独特である理由を明確に伝えることで、魅力を増大させます。

    ほかの類似アプリと違い、私たちのAI技術はユーザーの過去の行動や嗜好だけでなく、将来的なニーズまで予測します。

    リスクの取り扱い

    ソリューションに関連する潜在的なリスクや課題についても触れ、それをどのように考えているかを提示します。

    情報のプライバシーは最優先事項であり、ユーザーデータは絶対に第三者と共有されません。

    呼びかけやアクション

    ソリューションの提示の最後には、聞き手に何らかのアクションを取るよう呼びかけることで、具体的な成果につなげます。

    私たちのアプリを試して、情報管理のストレスから解放される経験をしてみてください。

    4.顧客価値の説明

    相手が関心があるのは、製品の購入・契約は自分にどんなメリットがあるか、会社であれば業務がどう変わるかです。顧客価値を説明するときのポイントをご紹介します。

    明確なポジショニング

    製品やサービスの位置付けを明確にすることで、競合製品との違いを簡単にアピールできます。

    私たちの製品は、高級ながら手頃な価格帯のコーヒーメーカーです。ほかの高級ブランドの半額以下で、同じ品質のコーヒーを楽しむことができます。

    具体的な利点の列挙

    製品やサービスの具体的な利点や機能を列挙し、どのように顧客の問題やニーズを解決するのかを説明します。

    私たちのソフトウェアは、クラウドベースであるため、どのデバイスからでもアクセス可能。さらに、AI技術を活用して、ユーザーの作業効率を40%向上させることが実証されています。

    競合比較

    表やグラフを使用して、競合製品との直接的な比較を示すことで、自社製品の優れた点や独自性を明確にできます。

    競合の製品Aは、月額20万円で10の機能を提供していますが、私たちの製品は月額10万円で15の機能を提供します。

    独自のストーリーや背景

    製品やサービスの背後にあるストーリーや理念を共有することで、顧客との感情的なつながりを構築できます。

    私たちのブランドは、持続可能な農業をサポートするために設立されました。各製品の売り上げの10%は、環境保護のためのプロジェクトに寄付されます。

    限定性や独占的な要素の強調

    製品が持つ独占的な特許や限定版、特別なコラボレーションなどの要素を強調することで、ほかにはない独自性を伝えます。

    私たちの製品は、特許取得済みの技術を使用しており、この機能はほかのどの製品にも見られません。

    5.クロージング

    クロージングは、ピッチ全体の成功を左右する重要な部分であるため、事前の準備と練習に時間をかけ、もっとも伝えたいメッセージや行動の呼びかけを明確にするとよいでしょう。

    ピッチをどのように締めくくるかで、顧客の印象が変わります。好印象ならば、継続的な付き合いが見込めます。以下に、クロージングの重要性と効果的に行うためのテクニックをご紹介します。

    メインメッセージの再強調

    ピッチの中で最も伝えたいポイントやメッセージを再度強調し、聞き手の記憶に残します。

    最後に、私たちの製品が業界をリードする技術と価格で最高の価値を提供することを忘れないでください。

    具体的な成果の提示

    実際の顧客の声や成功事例を共有することで、製品の効果や価値を具体的に伝えます。

    XYZ企業では、私たちのソリューションを導入してから、月間の売り上げが20%増加しました。

    明確な呼びかけ

    聞き手に何らかの具体的な行動をとるよう促します。

    興味を持っていただけたら、私たちのブースにお立ち寄りください。詳細なデモや質問に答える時間を設けていますので、ぜひ参加してください。

    感謝の表明

    聞き手の時間と注意を感謝することで、好意的な印象を残します。

    今日は貴重な時間を割いていただき、ありがとうございます。

    質問はクロージング後に時間を設けることを明言し、聞き手と対話するとよいでしょう。

    ピッチの具体例と成功のためのテクニック

    ピッチがビジネスシーンでどのように応用できるか、成功のテクニックをご紹介します。シチュエーション別にピッチの具体例とコツを確認してみましょう。

    企業の創業者として

    新しい製品を投資家に印象づけるには短時間で納得感を生む必要があります。

    ピッチの例
    こんにちは、私は[名前]、[会社名]の創業者です。私たちの新しいAI駆動の健康モニタリングデバイスは、既存の製品の3倍の速さでデータを解析し、98%以上の精度で病状を予測します。現在、5つの大手医療機関とパートナーシップを結んでおり、市場に投入する前の最終段階にあります。私たちのビジョンと技術に投資して、革命的な健康診断の未来をともに築きませんか?

    企業の創業者としてピッチをする際のポイントを6つご紹介します。

    • 明確で簡潔にする
    • 具体的な数字や結果を試用する
    • 解決する問題を明確にする
    • 競合との差別化をはかる
    • 熱意を伝える
    • 明確なアクションを提示する

    余計な情報をカットし、メインのメッセージに焦点を絞りましょう。具体的な数字や結果を使用することで、説得力を強化できます。また、製品が解決しようとしている具体的な問題や痛み点を明示することで、顧客の関心を引くことも可能です。

    競合製品やサービスとどのように違うのか、独自性や優れている点を強調することで、自社の製品やサービスの価値を高められるでしょう。

    また、自社製品やビジョンに対する情熱や熱意を、声のトーンや表情で伝えることで、顧客に対する信頼性が高まります。具体的なアクションや次のステップを提案することで、顧客が製品やサービスを利用するための道筋を示すことも可能です。

    営業担当者として

    商談の成功には、惹きつけと傾聴が不可欠です。

    ピッチの例
    こんにちは、[名前]です。私たちの新しいオフィス用ソフトウェアは、従来のソフトウェアと比べて作業効率を2倍に引き上げることができます。AIを活用して、自動的にタスクを整理・優先付けし、チームのコミュニケーションもスムーズにします。多忙な現代のオフィスワーカーのための、これまでにない革新的なソリューションを体験してみませんか?

    営業担当としてピッチをする際の6つのポイントをご紹介します。

    • 顧客の悩みに焦点をあてる
    • 具体的なメリットを強調する
    • 競合との差別化をはかる
    • 短くて鮮明なメッセージを作成する
    • 体験の提案をする
    • 質問をしやすくする

    新製品の具体的なメリットや利点がどのように顧客の日常やビジネスに役立つのかを強調しましょう。顧客は製品の価値を具体的に理解し、自分の状況にどのように適用できるのか発見できます。

    また、製品のデモやトライアルの提供を提案し、顧客に製品を実際に体験してもらうことで関心を深めます。顧客は製品の機能や利点を直接体験し、自分の状況にどのように適用できるのかを具体的に理解できるでしょう。

    イベント主催者として

    イベントの主催時に、関心を引きつけたい参加者やスポンサーに対して、イベントの魅力や価値を短時間で伝えるためのピッチは有効です。

    ピッチの例
    こんにちは、[名前]です。[イベント名]は、今年初めて開催される国際的なテクノロジーイベントで、500以上の企業と3,000以上の専門家が参加予定です。最新のAI技術やIoTのトレンドを学び、業界のリーダーたちとネットワーキングする絶好の機会です。一緒にこの業界をリードする未来を築きませんか?

    イベント主催者として、ピッチをする際の6つのポイントをご紹介します。

    • イベントの目的を明確にする
    • 参加者のメリットを強調する
    • 数値や統計を使用する
    • 限定的な要素を強調する
    • 短くて鮮明なメッセージを伝える
    • 呼びかけを強化する

    イベントが何のために開催されるのか、どのような価値や経験を提供するのかを明確に伝えることが重要です。イベントに参加することで得られる具体的な利益や学び、独特の経験などを強調することで、参加者にとってのメリットが明確になります。

    さらに、参加予定の企業数や専門家の数など、具体的な数値を使用することで、イベントの規模や影響力を強調できます。イベントの特別なセッションや限定的な体験など、ほかのイベントにはない独自の要素を強調することも重要です。

    具体的なアクション(チケットの予約やスポンサーシップの検討など)を取るよう呼びかけることで、意欲的な印象を与えます。これらのポイントを踏まえて、効果的なピッチを作成してみましょう。

    ピッチを実施する際に避けたい、7つの注意点

    ピッチを実施して利益をあげられるか否かは「相手を惹きつけられるか」と言っても過言ではありません。それには「言葉選び」「話し方」「情報量」「事前の分析」が大きく影響します。

    ピッチの注意点を8つご紹介します。

    • 過度な専門用語は使用しない
    • 情報過多にならない
    • メッセージを明確にする
    • 時間を守る
    • 聞き手の反応を注視する
    • 過度な自己主張は避ける
    • 事前にリサーチをする
    • 聞き手のニーズを全面に提示する

    過度な専門用語は使用しない

    ピッチの際には、専門用語を使用する必要がある場合でも、その意味や背景を簡潔に説明することが重要です。また、専門用語の使用は最低限に抑え、メインのメッセージや価値提案をシンプルかつ明確に伝えることを心掛けるとよいでしょう。

    専門用語の過度な使用は、聞き手が内容を理解する障壁です。特に、聞き手がその分野の専門家でない場合、用語が理解できなければ、メッセージ全体が伝わりません。

    たとえば以下の専門用語は、次のように言い換えられます。

    APIApplication Programming Interfaceソフトウェア同士が互いに情報をやり取りするための接続方法
    ROIReturn on Investment投資に対する利益の割合
    Blockchainデータを安全に保存する技術。一度保存されると、情報の変更が非常に難しい
    IoTInternet of Things家電や車など、さまざまなものがインターネットに接続して、情報をやり取りする技術

    情報過多にならない

    ピッチ内容の全体を通してのバランスや流れも考慮しながら、情報を選択し整理しましょう。メンバーや上司にフィードバックをもらうと精度が高まります。情報が多すぎると、メッセージがぼやけるだけでなく、自分も何を話しているか分からなくなりがちです。

    ピッチの目的を明確にし、内容を絞り込むことが重要です。また、聞き手が何を求めているのか、どの情報が彼らにとって価値があるかを考慮しましょう。伝えたいことを重要な3つのポイントに絞り込むことで、情報が過多になるのを防ぎ、聞き手がメッセージを理解しやすくなります。

    話す内容を物語としてまとめることで、情報の選択と整理が容易になり、ストーリーは聞き手の興味を引きやすいため、伝えたいポイントが鮮明になるでしょう。

    さらに重要なテーマに絞り込むためにも、情報には優先順位をつけます。ピッチの目的を果たすために必要な情報を確認しておきましょう。大きな影響を及ぼす情報は、優先順位を高くします。ほかの競合や選択肢との差別化ポイントになるかも確認しましょう。ピッチの流れや物語の中で、情報をどのタイミングで伝えるかを考慮します。

    メッセージを明確にする

    目的を示さないままピッチをはじめても、相手は何を話されているか分かりません。相手が飽きてしまう可能性があります。

    不明確なメッセージをわかりやすくするには、注意が必要です。伝えたい主要なポイントやメッセージを明確にし、それを中心にピッチを構築します。複雑な言葉や専門用語の使用を避け、シンプルかつ直感的な言葉を使うことが重要です。

    また、物語の形式で情報を伝えることで、聞き手の理解を深め、興味を引きつける効果があります。抽象的な概念やアイデアを説明する際には、具体的な例や比喩を使用することで、聞き手が情報を具体的にイメージしやすくなるでしょう。スライドや図、画像などのビジュアル要素を使用して、メッセージを強化し、聞き手の理解を助けることも有効です。

    伝えたい核心のメッセージを何度か反復し、強調することで、聞き手にそのメッセージをしっかりと記憶させます。ピッチの練習段階では、他者からのフィードバックを求め、メッセージの明確性や伝わりやすさを確認することが重要です。

    時間を守る

    時間を超過することで、他者の時間を尊重していないとみなされ、関心をなくす可能性があります。 予定時間を大幅に超えるピッチやプレゼンテーションは、聞き手の関心や注意を維持することが難しくなるでしょう。

    また、時間内に適切に情報をまとめられない場合、聞き手にとって情報の取捨選択が必要です。さらにイベントや会議などのタイムラインが狂ってしまうことで、ほかのスピーカーや参加者に迷惑をかける可能性があります。

    そこで時間を意識したピッチを練習してみましょう。やり方は次の7つです。

    1.内容の最適化伝えたいメッセージを明確にし、内容を構築する
    無関係な情報や余計な詳細は削除する
    2.リハーサル何度も練習して所要時間を把握し、内容を調整する
    3.ストップウォッチなどの使用プレゼンテーション中に時間を確認する
    4.セクションごとの時間配分全体の流れをセクションやポイントごとに分ける
    セクションごとに時間を配分して管理する
    5.ビジュアルの活用複雑な情報やデータは、グラフや図にまとめる
    短時間でメッセージを伝える効率を上げる
    6.Q&Aセッションの計画質疑応答の時間も考慮し、本旨とQ&Aを区切る
    7.フィードバックの活用リハーサル時に第三者からの意見を求める
    時間の使い方や内容の充実度を確認する。

    聞き手の反応を注視する

    相手のリアクションに気づかれなければ「自分にあまり興味がない」と感じるものです。相手から反応があった場合はおうむ返しをしたり、相づちを打ったりして、聞いている合図を送ってください。

    過度な自己主張は避ける

    実績の強調はピッチにおいて有効な手段です。しかし相手に自社のサービスは「何かよくわからないけどすごい……」程度の印象しか残りません。ピッチの基本は傾聴です。まずは、相手の悩みや困りごとに耳を傾け、課題を言語化することに注力しましょう。

    事前にリサーチをする

    効果的なリサーチとそれを活かしたピッチの方法は、信頼関係の構築や成功の可能性を大きく高める要素です。反対に情報不足・的外れな分析によるピッチは、機会損失につながります。

    リサーチには次の4つの方法があります。

    1.公開情報の収集以下をもとに聞き手の背景情報や最近の動向を理解する
    ・企業の公式サイト
    ・年次報告書
    ・業界レポート
    ・ニュース記事 など
    2.SNSなどの確認個人や企業のSNSやブログを通じて、最新情報や価値観を把握する
    3.直接的なコンタクト可能であれば、事前に具体的なニーズや期待をインタビューする
    4.競合分析聞き手がすでに利用しているほかの製品やサービスを調査する
    どのような点で差別化できるかを考える

    収集した情報は次のポイントを参考にピッチに取り入れましょう。

    聞き手のニーズを前面に提示する

    ピッチの冒頭で、リサーチを通じて把握した聞き手の課題やニーズを明確に述べ、自分の提案がそれに応える方法を示します。


    聞き手の状況や課題に関連した具体的な例を用いることで、情報の信憑性と共感度を高められるでしょう。聞き手の現在の状況や使用している製品・サービスとの違いを強調し、提案の独自性や価値を強く伝えます。ピッチの途中や終了時に、聞き手の意見や反応を求め、リアルタイムで適切な応答や説明を提供します。

    まとめ

    ピッチは一発勝負です。利益につなげるには相手の話を聞いて、悩みを言語化してから、解決策を提示せねばなりません。課題や悩みは一人ひとり違います。全員に同じアプローチをするばかりでは成功は見込めません。

    ピッチを利益につなげるには「情報収集」「目的の明確化」「情報の優先順位づけ」「模擬ピッチの積み重ね」といった事前準備が不可欠です。

    「One人事」編集部

    人事労務・勤怠・給与からタレントマネジメントまで。組織の「人」にまつわる課題解決を支えるお役立ちコラムの編集部です。忙しい担当者の日々の悩みに寄り添う情報を発信してまいります。