タイムマネジメントとは【本質的な意味】コツや実践方法と必要スキル、研修について解説
タイムマネジメントは、時間の使い方を改善して生産性の向上をはかるスキルです。限られた時間を有効活用することは、仕事をするうえで非常に大事なスキルといえます。
本記事では、タイムマネジメントの概要やコツ、実践方法を解説します。タイムマネジメント力を高めるために必要なスキルや研修についても紹介するので、人事担当者や部下の育成にかかわる方は、ぜひ参考にしてください。
タイムマネジメントとは
タイムマネジメントとは、効率的な時間の使い方を計画し、実行することです。組織全体が掲げる目標や個人が設定する目標を達成するためには、限られた時間を有効活用しなければなりません。時間あたりの生産性を高めることが、タイムマネジメントの目的です。
タイムマネジメント力が高いと、自分自身の仕事をコントロールでき、結果的に気持ちに余裕を持った状態で業務に集中できます。
タイムマネジメントは、日本国内の労働力人口減少によって、以前よりも強く求められるようになりました。労働力人口が減少するなか、より激化する市場競争に勝ち抜いていくために、従業員一人ひとりの生産性を上げ、時間を最大限活用するタイムマネジメントの強化が求められます。
本質的な意味
タイムマネジメントと聞くと、スケジュール管理と同義に感じる方もいるでしょう。しかし、時間やスケジュールの管理だけでは、時間あたりの生産性向上にはつながりません。
タイムマネジメントとは、私たちの行動に対する時間管理です。すべての人に対して同じように与えられる時間の中で、行動をどのようにハイパフォーマンスに変換し、マネジメントしていくかが重要なポイントといえるでしょう。
言い換え
タイムマネジメントは、英語で「time management」と表記します。直訳すると「時間管理」ですが、より本質的な意味を踏まえると、次のような言葉に言い換えられます。
- 時間管理術
- 時間の最適化
- 時間配分
横文字を使わずに、わかりやすく説明したい場合は、上記のような言葉を使うのがおすすめです。
例文
タイムマネジメントを使った例文をご紹介します。
仕事の効率化に関する例文 |
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タイムマネジメントの能力を活かして、仕事の生産性を大幅に向上できました。たとえば、毎朝の30分を使って、その日のタスクリストを作成し、優先順位を決定します。これにより、日中は集中して重要なタスクに取り組め、無駄な時間を減らせました。 |
勉強の時間割作成に関する例文 |
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タイムマネジメントの原則に従い、効果的な学習スケジュールを作成しました。各科目に割りあてる時間を明確にし、短い休憩を入れながら、1日の学習時間を最大限に活用しています。 |
個人的な目標達成に関する例文 |
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私はタイムマネジメントにより、健康的なライフスタイルを実現するための個人的な目標を設定しました。毎週の運動スケジュールを計画し、食事の準備と食事時間もあらかじめ決めています。これにより、忙しい日々の中でも健康を維持し、自己管理に成功しています。 |
タイムマネジメントは仕事だけでなく勉強や私生活など、さまざまなシーンにおいて活用できるスキルです。
身につけるメリット
タイムマネジメント力を身につけると、次のようなメリットが得られます。
- 仕事の質を向上できる
- 仕事の効率化を通して処理能力が高まる
- みずからの知識やスキルを磨き、より高い価値を発揮できる
- 仕事を効率化することで、新たな業務に取り組む時間を捻出できる
- 仕事とプライベートを両立しやすくなる
- コストカットにつながる
タイムマネジメントの短期的なメリットとして、従業員の仕事の質や業務の処理能力が高まることが挙げられます。さらに、仕事を効率化することで捻出した新たな時間を活用し、業務領域を広げられるといった中長期的なメリットも考えられるでしょう。
タイムマネジメントは、企業と従業員が現状を改善するための時間を生み出すスキルといえるでしょう。
タイムマネジメントのコツ
タイムマネジメントを行う際のコツを6つご紹介します。
- 優先順位を決める
- 目標を立てる
- 計画と期限を設定する
- タスクを集中させる
- 本当に自分がやるべき仕事なのか吟味する
- 反省して改善する
優先順位を決める
タスクの優先順位を決めて、優先度の高い業務にできるだけ多くの時間を費やすことが、タイムマネジメントをこなすコツです。
優先順位を決める際は、タスクを箇条書きにして取り組むべき業務を明確にします。優先順位を「高い・普通・低い」の3段階に振り分けて、高い順番のタスクから優先的に時間を費やしていきましょう。
目標を立てる
タスクの優先順位が決まったら、それぞれの業務に対する目標を立てます。タイムマネジメントを成功させるためには、次の3つのポイントを意識することが大切です。
- どのタスクを
- いつまでに
- どの程度のレベルまでやり終えるか
上記の目標を設定すると、生産性向上が期待できるタイムマネジメントを実践できるでしょう。
計画と期限を設定する
目標設定が完了したら、それぞれのタスクを実際の行動計画に落とし込んでいきます。
行動計画は、月単位・週単位・日単位などのタイムスケジュールと業務の内容によって細分化しましょう。時間軸でアクションプランを構成すると、より実践的なタイムマネジメントを実現できます。
タスクを集中させる
同じタイミングでできる仕事を組み合わせたり、まとめて処理したりするなど、作業のタイミングや場所を集中させると業務効率の向上につながります。優先順位の低い業務や雑務などのタスクをまとめて処理することで、より高いパフォーマンスを発揮できるでしょう。
本当に自分がやるべき仕事なのかを吟味する
優先順位の低い業務や自分が対応する必要のない業務は、本当に自分がやるべき仕事なのか吟味しましょう。他人に任せられないか、アウトソーシングできないかを検討し、より効率よく業務をこなせる方法を考えます。
反省して改善する
優先順位や目標設定をしたうえで実際にタスクを処理したら、最後に振り返りを行うことも重要です。タイムマネジメントは、一度計画を実行して終わりではありません。計画通りに進んだか、目標を達成できたかなどを振り返り、改善することで、今の業務をより高いレベルで遂行できるようになるでしょう。
タイムマネジメントに必要なスキル
タイムマネジメントに必要なスキルとして、次のようなものが挙げられます。
- 計画性
- 柔軟性
- 自分を律する力
- 集中力
- ときにはタスクを断る力
自分の業務内容を正確に把握し、効率的な働き方を見つけることこそが、タイムマネジメント力を高める第一歩といえるでしょう。
タイムマネジメントの実践方法
タイムマネジメントを実践する手順を解説します。
- タスクを洗い出す
- 優先順位をつける
- 目標や期限を設定する
- 計画通りに実行する
1.タスクを洗い出す
まずは、自分がどのようなタスクを抱えているかを洗い出します。どのような仕事を抱えていて、それぞれの仕事にどれくらいの時間を使っているかを正確に把握することから始めましょう。
タスクを洗い出す際の手順は以下の通りです。
- 仕事内容を書き出す
- それぞれの仕事にどの程度の時間を費やしているかを記入する
- 仕事内容と一緒に仕事のフローも書き出す
まずは1週間分のタスクに着目し、その後、月次のタスクについても同様の手順で洗い出します。タイムマネジメントの第一歩である業務効率化を実現するには、適切な仕事に適切な時間を使うことが重要です。そのためにもタスクの見える化が重要といえるでしょう。
2.優先順位をつける
やるべきタスクを見える化できたら、それぞれのタスクに優先順位をつけます。重要度や緊急度によってタスクを割り振る際に、おすすめのフレームワークが『アイゼンハワーマトリックス』です。
アイゼンハワーマトリックスは、タスクの処理や時間管理に役立ちます。米国元大統領のアイゼンハワー氏が活用していたことで有名な手法です。
アイゼンハワーマトリックスでは、まず次の4領域にタスクを分類します。
第一領域 | 重要度・緊急度も高いタスク |
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第二領域 | 重要度は高いが、緊急ではないタスク |
第三領域 | 緊急だが、重要度は低いタスク |
第四領域 | 重要度も緊急度も低いタスク |
重要度が低い業務については、ほかの人に任せられないか、アウトソーシングできないかを検討してみましょう。
3.目標や期限を設定する
重要度の高いタスクに対して目標や期限を設定します。どの程度のレベルで、いつまでに処理すべきかを明確に定めましょう。
目標設定をする際は『SMARTの法則』を活用するのがおすすめです。SMARTの法則とは、目標達成に重要な5つの要素の頭文字を組み合わせたフレームワークです。
S | Specific「具体性・明確性」 | 具体的な目標か |
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M | Measurable「計量性」 | 目標の達成度を測定できるか |
A | Assignable「割り当て設定」 | 権限・役職などが割り当てられているか |
R | Realistic「実現可能性」 | 達成できる目標か |
T | Time-related「期限設定」 | 期限が設けられているか |
SMARTの法則に沿って、上記の項目を基準に目標を設定すると、自然と目標が具体的な内容になります。目標や期限の設定に悩んだら、効率化に影響がない要素に絞ったうえで活用してみましょう。
4.計画通りに実行する
SMARTの法則を使って各タスクの目標や期限を設定できたら、実際にタスクを進めましょう。タイムマネジメントをするうえでのコツを意識しながら、PDCAサイクルでタスクを実行していくと、おのずとタイムマネジメント力の向上につながります。
タイムマネジメント研修について
従業員一人ひとりのタイムマネジメント力を高めるためには、階層や社歴ごとの研修の実施も検討してみましょう。
タイムマネジメント研修を行うメリットや、具体的な研修の内容を詳しく解説します。
メリット
タイムマネジメント研修を実行することで、得られるメリットは以下の通りです。
- 従業員の残業時間を削減できる
- 組織全体の業務効率が上がる
- 業務のスケジューリングがしやすくなる
- 従業員のストレス軽減につながる
- 従業員の自己効力感やワークエンゲージメントの向上につながる
組織全体の業務生産性を上げるために、一人ひとりのタイムマネジメント力の向上が重要です。
また、従業員の残業時間が削減されると、仕事に追われる感覚が減り、結果としてストレスの軽減やワークエンゲージメントの向上も期待できるでしょう。
研修の流れと内容
タイムマネジメント研修は、ただ実施すれば効果が得られるものではありません。受講した従業員や組織全体にタイムマネジメントの考え方を根づかせるような工夫が必要です。
タイムマネジメント研修の効果を高めるための手順は、以下の通りです。
- それぞれの従業員に、業務の見える化を通してタスクの現状を把握してもらう
- タイムマネジメント研修を実施する
- 振り返りを行い、情報を共有をしてもらう
研修内容は、それぞれの従業員が抱えている課題に合わせた内容で構成する必要があります。事前にアンケートを取り、タイムマネジメントにおいて、どのような部分に課題を感じているかを調べておきましょう。
タイムマネジメントが上手な人の特徴
タイムマネジメントが上手な人の特徴をご紹介します。
- タスクを見える化している
- かかる時間を把握している
- 取りかかるのが速い
タスクを見える化している
タイムマネジメントを実行するために重要なポイントが、タスクの全体像をつかむために見える化することです。自分のタスクを見える化しておくと、突然の予定変更やイレギュラーな事態が発生した際も冷静に対応できます。
かかる時間を把握している
タイムマネジメントが得意な人は、それぞれのタスクにかかる時間を把握しているため、無理のないスケジュールを作成できます。また、状況に応じて優先順位を入れ替えたり、タスクを集中させたりといった臨機応変な対応ができるのも特徴です。
取りかかるのが速い
タイムマネジメントが得意な人は、判断力に優れているため、タスクに取りかかるまでの時間が短い特徴があります。タスクを実行したり意思決定をしたりする際に、ダラダラと悩むことなく、すぐに行動に移します。
万が一自分で解決できない場合は、人に相談しながら解決策を見出すため、仕事を抱え込むこともないでしょう。
タイムマネジメントに役立つツール
タイムマネジメントを実行するために役立つツールとして、専用の管理ツールやアプリがあります。おすすめのタイムマネジメントツールは、以下の通りです。
Lychee Redmine | 機能が豊富でタイムマネジメント機能も充実している |
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Hours | 幅広いデバイスに対応しており、場所を問わずに利用できる |
CotoGoto | 会話内容を分析し、日々の作業を見える化してくれる |
Jooto | 直感的に操作できるレイアウトで、複数のチャットツールとも連携できる |
Clock it! | タスク管理とタイムマネジメントを同時に実行できる |
タイムマネジメントのツールを選ぶ際は、以下のポイントに着目しましょう。
- シンプルで使いやすいデザインであるか
- 目的に合った機能が搭載されているか
- 結果を分析しやすい機能が搭載されているか
- 無料で使用できる期間が設定されているか
企業の課題や目的に合っているかどうかを確認し、最適なツールを見つけましょう。
組織全体でタイムマネジメントのスキルを高めましょう
タイムマネジメントとは、限られた時間をどのように活用すべきかを考えるために必要な行動マネジメントの一種です。タイムマネジメントを習得することは、各従業員の能力向上はもちろん、企業全体の生産性向上にも大きく貢献します。
本記事で紹介したコツや実践方法を通して、タイムマネジメントのスキルを組織全体で磨き上げていきましょう。