生産年齢人口とは【労働力人口の違い】推移と割合、減少した理由とその影響を解説

生産年齢人口とは【労働力人口の違い】推移と割合、減少した理由とその影響を解説

生産年齢人口とは、国内の経済活動の中核を担う人口のことです。基本的に、15〜64歳の世代を指します。日本の生産年齢人口は減少傾向にあり、国が抱える課題の一つです。このまま増加の見込みがないと、日本経済全体や各企業の経済活動にも影響を及ぼすかもしれません。

本記事では、生産年齢人口の概要や関連用語、実際の推移、割合、今後の予測について取り上げます。減少してしまった理由や懸念される影響、ならびに今後の対策についても解説します。

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    生産年齢人口とは

    生産年齢人口とは、国内の生産活動の核となる人口をあらわす経済学用語です。具体的には、年齢が15〜64歳の中に入る人たちが含まれ、日本では1995年をピークとして、その後は減少傾向が続いています。英語では「working age population」と表現します。

    参照:『住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数(令和5年1月1日現在) 』総務省

    生産年齢人口と労働力人口の違い

    生産年齢人口とよく似ている用語に「労働力人口」がありますが、年齢や定義が異なります。

    労働力人口とは、労働に従事する意思や能力を持った人口を意味する言葉です。働く意志があれば、現在働いているか否かは問われません。具体的には15歳以上で「現在就業している人」と「完全失業者」を合算した人口です。

    労働力人口に対して、「非労働力人口」とは、15歳以上の働いていない人々(休業中や求職中の人を除く)を指します。働く意欲がないことが判断基準の一つであるため、家事に従事する人(専業主婦・主夫)や学生などが該当します。

    生産年齢人口に関連する用語

    生産年齢人口に関連する用語を5つ取り上げて解説します。

    • 年少人口
    • 老年人口
    • 従属人口
    • 被扶養人口
    • 従属指数

    年少人口と老年人口

    15〜64歳の年齢を指す生産年齢人口に対して、年少人口と老年人口は、以下の年齢区分で定義されています。

    年少人口14歳以下の人口
    老年人口65歳以上の人口

    従属人口・被扶養人口・従属指数

    生産年齢人口に関連して、従属人口(被扶養者人口)は年少人口と老年人口を合算した人口を指します。また、従属人口指数とは、従属人口の数を労働力人口の数で割った比率を示す指標です。

    従属人口年少人口(14歳以上)と老年人口(65歳未満)を合算した人口
    被扶養人口従属人口とほぼ同じ意味を持つ言葉
    従属人口指数生産年齢人口が従属人口(被扶養人口)をどの程度の割合で支えているか示す指数

    また、従属人口指数を求める計算式は以下の通りです。

    従属人口指数=(従属人口・被扶養人口)÷生産年齢人口×100

    日本の生産年齢人口の推移と割合、予測

    日本では生産年齢人口は減少傾向にあります。実際のデータを紹介しながら、これまでの推移、総人口における割合、今後の予測について解説します。

    過去11年の推移と総人口に占める割合

    日本の生産年齢人口は、1995年を最後に減少の一途をたどっています。総務省のデータによると2024年2月現在、最新となる2023年のデータにおける実際の数値は、約7,480万人(総人口の割合:約59.6%)です。

    2013年は約8,060万人(総人口の割合:約62.8%)であったことから、少しずつ生産年齢人口は減っていることがわかります。

    参照:『住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数(令和5年1月1日現在) 』総務省

    今後の予測

    生産年齢人口は今後も減少を続けると考えられており、内閣府のデータによると、以下のように推移することが予測されています。

    生産年齢人口の推移予測
    2050年約5,540万人
    2060年約5,080万人
    2070年約4,540万人

    生産年齢人口の減少が、国内における重要な課題であるとうかがえるでしょう。

    参照:『令和5年版高齢社会白書(全体版)』内閣府

    世界の生産年齢人口

    減少を続ける日本の生産年齢人口に対して、世界各国はどのような状況にあるのでしょうか。『GLOBAL NOTE』によると、生産年齢人口の国別ランキング(2022年・人口比率)は以下の通りです。

    第1位アラブ首長国連邦(82.94%)
    第2位カタール(82.67%)
    第3位蘭領セント・マーチン島(78.44%)

    資料:GLOBAL NOTE 出典:世銀(World Bank)

    ランキング上位の国は、総人口における生産年齢人口の割合が約80%前後となっています。前述した総務省の発表によると、日本(2023年)は約59.6%なので、アラブ首長国連邦をはじめとする国々と比べると、世界的に見て低い水準といえるでしょう。

    参照:『住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数(令和5年1月1日現在) 』総務省

    日本の生産年齢人口が減少した理由

    日本は世界的に総人口における生産年齢人口の割合が低い水準にあります。なぜここまで生産年齢人口が減ってしまったのでしょうか。主な理由を3つ取り上げて解説します。

    • 1.人口そのものが減少している
    • 2.少子高齢化が進んでいる
    • 3.「結婚しない」「子どもを産まない」選択肢が拡大している

    1.人口そのものが減少している

    日本の全体的な人口が減少しているため、生産年齢人口も減っていると考えられます。総務省統計局のデータによると、日本の総人口は12年続けて減少しています。都道府県別に見ても人口が増えているのは東京都のみで、そのほかの地域はすべて減少しています(※2022年10月1日現在の下記データを参照)。

    参照:『人口推計(2022年(令和4年)10月1日現在)‐全国:年齢(各歳)、男女別人口 ・ 都道府県:年齢(5歳階級)、男女別人口‐』総務省統計局

    2.少子高齢化が進んでいる

    少子高齢化も生産年齢人口を押し下げる理由の一つです。日本では少子高齢化が深刻な社会問題となっており、出生率の低下によって将来の労働力となる若い世代の数が減少を続けています。総務省統計局も、15歳未満の子どもの数が42年連続で減っていることを公表しています(※2023年4月1日現在のデータを参照)。この傾向は、将来の生産活動に大きな影響を与える可能性があります。

    参照:『我が国のこどもの数 -「こどもの日」にちなんで- (「人口推計」から)』総務省統計局

    3.「結婚しない」「子どもを産まない」選択肢が拡大している

    時代によって、結婚や出産に対する認識が変わりつつあることも、生産年齢人口が減少した理由の一つです。近年の日本社会は、結婚や出産について、以下のような変化が起きています。

    • 結婚や子育てが実現できるほど余裕を持った収入が得られない
    • 働く女性にとって結婚のニーズが減った
    • 多様性のある生き方が受け入れられるようになった

    結婚や子育てを選ばない生き方の広まりが、人口減少や少子高齢化につながり、結果的に生産年齢人口の減少にも影響しているのでしょう。

    生産年齢人口が減少するとどうなる? 影響と問題点

    このまま生産年齢人口が減少し続けると、どのような影響が生じるのでしょうか。日本全体だけでなく、企業にも問題が発生する可能性があります。主な懸念点を3つご紹介します。

    • 国の経済力が低下してしまう
    • 社員のパフォーマンス力が下がる
    • 従来の社会保障が維持しにくくなる

    国の経済力が低下してしまう

    国の生産活動を支える人々の数が減れば、日本全体の経済力も低下してしまいます。多くの企業で人材が不足し、事業の拡大が困難になる事態も考えられます。最悪の場合、事業縮小や倒産などを選ばなければならなくなる日が来るかもしれません。

    若い世代による新鮮な発想力が、企業および国に対して有益に働く機会も減ってしまう恐れもあります。悪影響が国内で広がると、日本経済の発展は厳しくなると予測されています

    社員のパフォーマンス力が下がる

    生産年齢人口の減少は、各企業の人手不足を引き起こし、個人の業務にも直接的にダメージを与えるかもしれません。主な理由は以下の通りです。

    • 勤務時間や残業が増える
    • 業務過多により有給が取りづらくなる
    • 仕事へのやる気が低下する
    • 創造性が高い業務に割く時間が減る

    職場環境が悪化すると従業員のモチベーションが下がり、、間接的に退職にも結びつく可能性があります。結果として最悪の場合、企業の業績ならびに国全体の経済力の低下につながるでしょう。

    従来の社会保障が維持しにくくなる

    生産年齢人口が減り続けると、これまで機能していた社会保障制度(社会保険、生活保護、福祉など)を維持できなくなる恐れもあります。社会保障制度の財源の多くは働く人が納める保険料でまかなわれているためです。財源が確保できないと、支払われる保険料が減少し、従来のような社会保障制度の維持が苦しくなるかもしれません。

    生産年齢人口の減少に企業はどう対処する?

    生産年齢人口が減少している状況を少しでも改善するには、国全体で実施するだけでなく、企業が率先して取り組めるものもあります。生産年齢人口の減少に対応するための企業向け対処法を3つご紹介します。

    • 人材採用手法の拡大
    • 業務における生産性の向上
    • 人的資本への投資

    人材採用手法の拡大

    生産年齢人口の減少に対処するためには、まず幅広い人材を採用することが重要です。シニア人材なども含めて、スキルや意欲のある人材を活用し、新しい体制を築き上げる必要があります。具体的には以下のような人材をはじめ、範囲を広げることを検討してみましょう。

    • 就業を希望する高年齢人材
    • 育児中の人
    • 介護従事者
    • 障害を持つ人

    企業は、多様な人材が働きやすいように、時短勤務やテレワークなどの柔軟な労働環境を整える必要もあります。どのような制度や設備が必要かを調査し、適切な準備を進めましょう。

    業務における生産性の向上

    生産年齢人口の減少による人手不足への対処法として、業務システムや自動化ツールを取り入れて、業務効率を高める方法もあります。業務効率化につながるサービスの例は以下の通りです。

    Webミーティングツールネット上で会議を行えるようにする
    チャットツール電話やメールの手間を省く
    プロジェクト管理ツール業務の進捗を把握する
    電子契約ツール契約業務をネット上で実施する
    業務自動化ツール該当する作業を自動で終わらせる

    まずは業務を洗い出したうえで目的を明確にし、自社に必要なツールを見極めたうえで、取捨選択することが大切です。

    人的資本への投資

    人的資本とは、教育や経験を通じて個人が得た知識やスキルを指し、経済成長や生産性向上に影響する要素の一種です。企業が人的資本に投資することで、従業員の能力を最大限に活用した経営の実現につながります。

    具体的には、今いる従業員のスキルを管理して、適材適所の人材配置を行ったり必要な育成計画を実行したりすることが挙げられます。人的資本の可視化やスキル管理、データに基づいた人事施策の実行には、タレントマネジメントシステムの導入も有効な手段です。

    タレントマネジメントシステムとは、従業員一人ひとりのスキルや経歴を一元管理して可視化し、適材適所の人材配置や育成を実現するツールです。最終的に組織の経営目標の達成を目指しており、人的資本の可視化にも役立ちます。

    お役立ち資料

    まとめ

    生産年齢人口とは、生産活動を担う15〜64歳の人口のことです。日本では長年、生産年齢人口の値が減少し続けており、今後もその傾向が続くと予想されています。生産年齢人口の減少により「国全体の経済力が低下する」「業務の質が下がる」「社会保障制度の継続が厳しくなる」などの影響があるため、対策への取り組みが急務といえます。

    一企業が取り組める対策には、採用対象の拡大や業務ツールの導入、人的資本への投資があります。なかでも人的資本への投資により、今いる従業員の能力を最大限に伸ばし、生産年齢人口の減少による人手不足に対応する組織づくりが重要です。