社会人基礎力の重要性とは? 意味と企業が取り組むべき施策
社会人基礎力とは、経済産業省が公表している仕事をするうえで、土台となる能力です。技術の革新とグローバル化の進展にともない、従業員が持つべきスキルセットは日々進化し続けています。
本記事では、社会人に求められる「社会人基礎能力」の具体的な意味と重要性、鍛えるために企業が取り組むべき施策についてご紹介します。
社会人とは?
「社会人」とは、学校を卒業した人々、つまり新卒者だけを指す言葉ではなく、社会で生活している全ての人々を指す一般的な用語です。社会人という言葉は、一般的に「働いている人々」を指すと捉えられがちですが、実際には社会を構成するすべての成人を含みます。
社会人基礎力とは?
社会人基礎力とは、2006年に経済産業省が提唱した新卒者や学生が社会に出る際に身につけるべき基本的なスキルや態度、マインドセットを指す概念です。
職場や地域社会で多様な人々と協働するための基本的な能力として提唱された社会人基礎力は「前に踏み出す力」「考え抜く力」「チームで働く力」という3つの主要能力と、12の構成要素によって成り立ちます。
2017年度に開催された研究会では「人生100年時代の社会人基礎力」と新たに定義され、ライフステージの各段階で活躍し続けるために求められる力が強調されました。自己を認識して振り返りながら目的や学び、統合のバランスをはかる力が含まれ、みずからのキャリアを切り開くうえで重要とされています。
社会人基礎力を構成する要素
社会人基礎能力の主要能力と構成要素は次の通りです。
前に踏み出す力(アクション)
主体性 | ものごとに進んで取り組む力 |
---|---|
働きかけ力 | 他人に働きかけ巻き込む力 |
実行力 | 目的を設定し、確実に行動する力 |
考え抜く力(シンキング)
課題発見力 | 現状を分析し、目的や課題を明らかにする力 |
---|---|
計画力 | 課題の解決に向けたプロセスを明らかにし、準備する力 |
創造力 | 新しい価値を生み出す力 |
チームで働く力(チームワーク)
発信力 | 自分の意見をわかりやすく伝える力 |
---|---|
傾聴力 | 相手の意見をていねいに聴く力 |
柔軟性 | 意見の違いや立場の違いを理解する力 |
情況把握力 | 自分と周囲の人々やものごととの関係性を理解する力 |
規律性 | 社会のルールや人との約束を守る力 |
ストレスコントロール力 | ストレスの発生源に対応する力 |
以上から社会人基礎能力は、コミュニケーション能力を「積極性」「思考力」「協調性」の3つに細分化したものといえます。
新たに定義された「人生100年時代の社会人基礎力」
2018年に経済産業省は、現代ならではの切り口が必要と考え「人生100年時代の社会人基礎力」を新たに提唱しました。
「人生100年時代」とは、平均寿命が延び、100年近い年数を生きることが一般的な時代を示す言葉です。人々が長寿になることで、キャリアや生き方の選択肢が広がります。
以前の社会人基礎力が、ビジネスシーンや企業内での基本的なマナーやコミュニケーション能力に焦点を当てていたのに対し、新しい社会人基礎力は、一生涯にわたる学びや成長、柔軟性、自己の意識や価値観の再確認など、より幅広い視点やスキルを含んでいます。
「人生100年時代の社会人基礎力」を構成する要素は次の通りです。
- 継続的な学びの意識
- リフレクション(振り返り)
- 柔軟性
- 自己の価値観や意識の再確認
- ストレスコントロール力
それぞれの要素について解説します。
継続的な学びの意識
早期に学んだ知識やスキルだけでなく、生涯学習の意識が求められます。新しい技術や知識の更新、さらなる学びの追求が不可欠です。
リフレクション(振り返り)
自分の行動や結果を定期的に振り返り、反省や再評価を行う力です。自己の成長や変化を意識的に捉え、次のステップを考えることが重要です。
柔軟性
さまざまな変化や新しい環境に適応する能力です。固定的な考え方や方法に固執せず、新しいアプローチや視点を持つことが求められます。
自己の価値観や意識の再確認
長い人生を有意義に過ごすために、自分の価値観や目的を定期的に考え直す力です。
ストレスコントロール力
長い人生を健康的に過ごすための体や心のケアへの意識です。
従業員の社会人基礎力向上のために企業ができること
従業員の社会人基礎力を高め、コミュニケーション能力の向上や自己成長を促進することは、業務を円滑に進め、生産性を上げるために重要です。具体的には、次の取り組みが考えられます。
- 研修プログラムの導入
- メンタリング・コーチング制度の確立
- 実践的な業務課題の提供
- コミュニケーションスキルの強化研修
- 外部講師やセミナーの活用
- フィードバック文化の醸成
研修プログラムの導入
1つめは研修です。社会人基礎力を高めることを目的とした研修も、新入社員や中堅社員など、各階層に分けて実施するとよいでしょう。
プログラムは、企業の成長や変化に応じて柔軟に変更されることが望ましく、常に最新の情報や方法論に基づいて実施できるように注意します。
研修の目的や到達目標を明確に設定し、従業員のニーズや業務内容、実務への応用を十分に考慮したうえで、最適な内容を設計します。実施後は、フォローアップやフィードバックを定期的に行い、従業員の継続的な学びを促進しましょう。
メンタリング・コーチング制度の確立
従業員の社会人基礎力を高める有効な手法の2つめは、メンタリングやコーチングです。
メンタリングは、経験や知識が豊富な従業員(メンター)が、キャリアの初期にある従業員(メンティー)にアドバイスや支援を提供する関係性です。アドバイスの内容は、キャリアの方向性やスキルの開発、組織文化の理解など、多岐にわたります。
コーチングは、個人やチームのパフォーマンスと学びを最大限に引き出し、目標達成をサポートする対話や指導のプロセスです。コーチはコーチーに質問を投げかけ、本人の目標設定や行動計画の策定を支援することで、リフレクションを促し、自己認識を高める役割を果たします。
メンタリングやコーチングの一連のプロセスによって、社会人基礎力向上が期待できます。個々の能力を伸ばし、リーダーシップを発揮し始める社員もあらわれるかもしれません。メンタリングやコーチングは、GoogleやGeneral Electric (GE)、Microsoftなどで実施され、成果が出ています。
メンタリングやコーチングの導入も制度を導入する目的を明確にしましょう。メンターやコーチとなる人物とメンティーやコーチーとのマッチングも重要です。定期的なフィードバックと評価を通して質を維持・向上させ、上層部の協力や必要なリソースの提供など、組織として適切なサポート環境を整えましょう。
実践的な業務課題の提供
日常業務だけでなく、新しい課題やプロジェクトを通じた経験によっても、社会人基礎力は鍛えられます。具体的には、新しいプロジェクトのリーダーとしての役割を任せて、プロジェクトマネジメントやリーダーシップのスキルを養うことです。新しい課題に取り組むことで、従来持っていなかったスキルや知識の習得が可能です。
ほかの部署やチームとの連携を強化するプロジェクトを任せると、異なる視点やスキルを取り入れ、社会人基礎力の向上が期待できるでしょう。課題を成功させた結果、自信がつき、次回の課題にも前向きに取り組めます。
ただし、従業員の現在の社会人基礎力レベルにあわせて適切な課題を提供しましょう。社員の社会人基礎力を伸ばすには、新しい課題の提供と同時に、そのサポートやフォロー、モチベーションを維持するための取り組みも大切です。
コミュニケーションスキルの強化研修
コミュニケーションスキルを直接的に高める研修も、社会人基礎力を高めるために重要です。コミュニケーションは、職場の生産性やチームの連携を向上させる要因になるでしょう。
代表的な研修内容は、ロールプレイやグループディスカッション、ワークショップが挙げられます。
外部講師やセミナーの活用
社内にない考えや価値観に触れる機会も、社会人基礎力を向上には必要です。社員の現状の社会人基礎力レベルにあわせて、適した講師やセミナーを選びましょう。
フィードバック文化の醸成
フィードバックは、社会人基礎力トレーニングと組織の成長に影響します。現状、不足している力と得意な力を理解したうえで、意識しながら学習や課題、自己啓発に取り組めるためです。
フィードバック文化の醸成は、組織の透明性を確保し、生産性の向上にもつながります。従業員満足度も高まる可能性があります。フィードバック文化を醸成するには、360度評価や定期的な1on1を取り入れるといいでしょう。
社会人基礎力以外に備えておきたいスキル
ビジネスシーンでは、社会人基礎力以外にも求められるスキルが多くあります。
デジタルリテラシー
デジタルリテラシーは、単にパソコンやアプリケーションの操作力だけではありません。
X(旧Twitter)やInstagramといったSNSの普及で誰もが情報を発信できるようになった現代では「そもそも発信してよい情報なのか」を判断する能力も重要視されています。
リーダーシップ
リーダーシップは、役職や特定の立場にとどまらず、すべての社会人が持つべきスキルといえるかもしれません。
リーダーシップは、個人がグループや組織を導き、目標達成に向けて他者を影響力や動機づけを通じて指導する能力や行為です。自分だけの成功や成果を追求するのではなく、チームメンバーや同僚の成長や発展をサポートし、ともに成功を追求することを意味します。
真のリーダーは誠実で、明確なビジョンを持ち、メンバーと共有します。そしてビジョンに向かって、周囲を巻き込み、信頼を獲得しています。環境や状況の変化に柔軟に対応し、困難や障壁に立ち向かう能力も求められるでしょう。
セルフマネジメント
セルフマネジメント能力も、社会人に求められる能力の一つです。自己のメンタルやモチベーションを管理することは、生産性向上や個人の成長、チームメンバーとの調和にも影響します。
セルフマネジメント能力を鍛える方法として、バランスの取れた食事や適度な運動など、日常生活から見直しましょう。仕事とプライベートの時間を明確に区切り、良質な睡眠を取って、リラックスする時間を設けてメンタルをケアすることも大切です。
ネゴシエーションスキル
ネゴシエーションスキルは、あらゆる業界・職種で求められ、利害関係者との関係構築において重要です。交渉の場面では、相手と意見が食い違っても頭ごなしに否定せず、どのような利益を追求しているのかを理解し、共通の目標や利益を見つける必要があります。
また、自分が伝えたい内容は、論点を絞って説得に必要な根拠や理由を明確にしたうえで順序立てて説明します。ときには物語や例を用いたり、情熱や感情、非言語コミュニケーションを交えたりすることも重要です。
ネットワーキング能力
お客様や取引先と関係を築くネットワーキング能力も、社会人にとって大切なスキルです。関係者と適切な距離感を築けると、安定的な受注や売り上げが見込めるでしょう。また、社内における人脈づくりは仕事のしやすさにつながります。
従業員の育成や能力開発に役立つタレントマネジメント
従業員の社会人基礎力を向上させることは、企業の生産性や競争力を高めるうえで重要です。社会人として基礎が固まっている従業員は、コミュニケーション能力や問題解決能力、自己管理能力も高く、業務効率やチームへの協力姿勢にも影響します。
社会人基礎力を含め人材スキル育成への投資は、中長期的な視点での競争力の確保や組織の持続的な成長を支えるでしょう。従業員一人ひとりに適した育成を提供するには、タレントマネジメントの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
タレントマネジメントとは、経営目標の達成のために、もっとも適切な人材をもっとも適切な位置に配置し、その能力やポテンシャルを最大限に引き出すための組織的な取り組みです。具体的には、人材の採用や育成、評価、配置、報酬など、人材に関するあらゆるプロセスを戦略的に統合・最適化することを目指します。
タレントマネジメントの考え方を取り入れることで、高いパフォーマンスの継続やリーダーシップの育成、従業員のモチベーション工場などの効果が期待できます。
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