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給与明細とは|基本的な作成手順や注意点を解説

給与明細書は、従業員に支払われる給与の内訳を示す文書であり、給与の額や控除される税金、社会保険料、手当などの詳細が記載されています。適切に作成することで、従業員から信頼を得るとともに、組織の透明性を保持するために適切に作成しなければなりません。

本記事では、給与明細とは何かについて、必要性や記載すべき項目、基本的な作成手順と特に注意すべきポイントを解説します。

※本記事の内容は作成日現在のものであり、法令の改正等により、紹介内容が変更されている場合がございます。

給与明細とは|基本的な作成手順や注意点を解説
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    給与明細の基本的概要

    まずは給与明細の基本を確認しましょう。

    給与明細とは給与の詳細を記載した書類

    給与明細とは、従業員に支払われた給与の総額、各種控除額の詳細などを示す文書です。「給与がどのように計算され、どんな控除がされたあとに支払われたか」を説明する内容が記載されています。

    給与明細の作成は企業にとって欠かせない業務

    給与明細の作成は、企業にとって欠かせない業務の一つです。従業員の給与を計算して振り込むだけでなく、給与明細を作成して発行するまでが給与計算業務といえます。

    給与明細が必要な理由

    企業は従業員に給与を支給する際、給与額や徴収した所得税額などが記載された支払い明細書を交付しなければなりません。労働基準法には明記されていませんが、所得税法に定められています。

    給与明細の作成は会社の義務

    所得税法施行規則第100条に、給与明細の発行について明記されています。

    第百条 (〜中略〜)支払明細書を、その支払の際、その支払を受ける者に交付しなければならない。

    引用:『所得税法施行規則』e-Gov法令検索

    また、健康保険法第167条では、給与から社会保険料を控除した際、企業はその控除額を従業員に通知しなければならないと定められています。

    第百六十七条 事業主は、被保険者に対して通貨をもって報酬を支払う場合においては、(〜中略〜)、その控除額を被保険者に通知しなければならない。

    引用:『健康保険法』e-Gov法令検索

    以上より、給与額や税金・社会保険料などの控除額を記載した給与明細の作成・交付は、法律に定められた企業の義務であるといえるでしょう。

    給与明細は従業員も使用する書類

    給与明細は、従業員にとって大切な書類であり、プライベートでも必要になる場面があります。たとえば住宅ローンを組む際は、金融機関の審査への提出が求められます。

    また、自身の給与額や控除額を正確に把握することは、将来のライフプランを設計するうえで重要です。そのため企業は、給与明細を滞りなく作成して発行できる環境を整える必要があります。

    給与明細に必要な項目

    給与明細には、主に次の5つの項目を記載します。

    • 勤怠
    • 給与の支給
    • 総支給額
    • 控除
    • 差引支給額

    それぞれの項目について、以下でくわしく解説します。

    1.勤怠

    出勤日数や欠勤日数、労働時間など、従業員の勤怠情報に関する項目です。そのほか有給休暇の取得日数や残業時間、深夜労働時間(22〜5時)など、給与計算の根拠として使用した情報を記載します。

    なお、給与明細に記載されるのは、締め日を基準とした期間の実績です。たとえば、有給休暇の残日数は締め日時点のものなので、給与支給時点との情報に時間差が発生します。

    2.給与の支給

    基本給をはじめ、通勤手当や資格手当などの各種手当や割増賃金、勤怠控除など給与の支給に関する情報を記載する項目です。

    基本給とは、毎月・毎週などの固定で支払われる賃金を指します。昇給あるいは降給がない場合、毎月一定額が支払われます。

    割増賃金とは、時間外労働や休日労働、深夜労働などに対して、通常の賃金に上乗せして支払われるものです。時間外労働には25%、深夜労働には35%など、定められた割増率を適用します。

    勤怠控除とは、欠勤や遅刻・早退などで従業員が労働しなかった時間分、あるいは日数分の賃金を差し引くことです。

    3.総支給額

    基本給をベースとして、それぞれの従業員に該当する手当や割増賃金、勤怠控除などを足し引きした金額を記載します。いわゆる「額面給与」と呼ばれるものです。

    4.控除

    給与から天引きする金額を記載する項目です。健康保険料(40歳以上の従業員は介護保険料も)や厚生年金保険、雇用保険、所得税や住民税など、項目ごとに控除した金額を記載します。企業によっては、労働組合の組合費や従業員持株会の積立金など、独自の控除項目を差し引くこともあります。

    5.差引支給額

    総支給額から社会保険料や税金などを差し引いて、従業員に実際に支給する金額です。いわゆる「手取り給与」と呼ばれるもので、支給方法は企業によって異なります。

    労働基準法上、原則として給与は現金を手渡しすることとされています。しかし、従業員の同意を得たうえで口座に振り込むことができ、振り込みを採用している企業が一般的です。

    給与明細の作成手順

    給与明細は、基本的に次の手順で作成します。

    1. 給与明細の作成に必要な書類を準備する
    2. 勤務時間を計算する
    3. 各従業員に該当する手当を計算する
    4. 総支給額を明確にする
    5. 社会保険料や税金などの控除を差し引く

    それぞれのステップについて、詳しく解説します。

    1.給与明細の作成に必要な書類を準備する

    まずは、給与明細の作成に必要な書類をそろえましょう。

    具体的には、以下のような書類が必要です。

    • タイムカードや勤怠管理システムのデータなどの勤怠記録
    • 健康保険・厚生年金保険被保険者標準報酬決定通知書
    • 住民税課税決定通知書
    • 健康保険と厚生年金保険の保険額表
    • 雇用保険料率表
    • 給与所得の源泉徴収税額表

    従業員の勤怠記録は、給与明細に出勤日数や労働時間などを記載する際に用います。そのほか、各種社会保険料や税金の通知書、保険額表、保険料率表など、それぞれの金額を算定するための資料を用意しましょう。

    働き方改革関連法により「労働時間の客観的な把握」が義務づけられ、自己申告型の記録による把握・管理は原則禁止されているため注意が必要です。

    2.勤務時間を計算する

    タイムカードや勤怠管理システムのデータなどから、従業員一人ひとりの勤務時間を集計します。実際に働いた時間がわかれば、給与計算において元となる給与を決定することが可能です。

    残業時間や休日労働、深夜労働の時間も計算し、それぞれに割増賃金を適用します。なお、割増賃金は重複するため、たとえば休日労働に深夜労働が含まれる場合は計60%以上の割増率を適用しなければなりません。

    このステップで有給休暇の残日数も調べておくとよいでしょう。

    3.各従業員に該当する手当を計算する

    次に、それぞれの従業員に該当する手当を計算します。一般的に設けられていることが多い手当は以下の通りです。

    • 資格手当
    • 通勤手当
    • 役職手当
    • 家族手当 など

    支給される手当の種類や金額は従業員によって異なるため、個別に計算します。たとえば、オフィスへの出勤を原則とする従業員の多くには通勤手当が支給される一方、役職手当は対象の従業員が限られています。

    4.総支給額を明確にする

    ここまでの情報をもとに、従業員に対する総支給額を計算します。基本給に各種手当や割増賃金を加算するとともに、欠勤や遅刻などがあった場合はその分を減給しましょう。

    5.社会保険料や税金などの控除を差し引く

    最後に、従業員の社会保険料や税金を計算し、総支給額から社会保険料や税金などを差し引きます。ここで算出された金額が、従業員に実際に支給される「手取り額」です。

    給与から差し引いた社会保険料や税金は、会社が従業員に代わって納付します。

    なお、健康保険料・介護保険料と厚生年金保険料は従業員と企業で折半しますが、雇用保険料は事業の種類によって負担割合が異なるため、保険料を計算する際は注意してください。労災保険料は全額会社が負担するため、従業員負担分は存在しません。

    給与明細と賃金台帳の違いとは

    給与明細と混同されがちな書類に「賃金台帳」があります。どちらも従業員に支払った給与に関する内容を記載した書類ですが、目的や役割が異なります。

    賃金台帳とは何か?

    賃金台帳とは、従業員の給与支払いに関する状況を記載した帳簿です。基本給や手当、労働時間数や日数などの情報が記録されています。

    「従業員に給与計算の詳細を明らかにする」ことを目的としている給与明細に対し、賃金台帳は「企業が従業員の給与計算・支払いの情報を管理する」ことを目的としているという違いがあります。

    賃金台帳の作成と保存も義務

    賃金台帳は、労働基準法で作成と保管が義務づけられた「法定三帳簿」の一つです。また、労働基準法によって記載項目が定められており、従業員の雇用形態に関係なく作成・保存する義務があります。一方、給与明細には発行義務があるものの、企業が保存する義務はありません。

    なお、賃金台帳は会社単位ではなく、事業場ごとに用意が必要です。

    給与明細の作成時における注意点

    給与明細を作成する際は、以下の3つのポイントに注意しましょう。

    計算ミスを防ぐ手段を確立する

    給与明細に間違いがあると、従業員とのトラブルに発展しかねません。トラブルを未然に防ぐためには、ミスが出ないような環境を整備することが大切です。ダブルチェック体制を確立したり、自動計算ツールを導入したりして、信頼できる書類の作成に努めましょう。

    作成した給与明細の渡し忘れに注意する

    給与明細を作成するだけでなく、交付までが企業に課せられた義務です。作成後に放置するといった管理は、問題に発展する恐れがあります。給与明細は電子データでの交付も認められているため、渡す方法の見直しも含めて対策を検討しましょう。

    給与明細の作成と管理体制を整える

    給与明細の作成は、担当者の負担を減らすためには適切な管理体制の整備が求められます。便利なツールやソフトの導入も視野に入れつつ、自社に最適な環境を考案することが大切です。

    給与明細を作成と交付を効率化するには?

    給与明細の作成業務を効率化するなら、専門サービスの導入も検討しましょう。たとえば、専用の給与計算システムやWeb明細発行システムです。

    計算を自動化し、給与明細を電子発行・交付できるシステムなら

    • 従業員への自動交付
    • 印刷や封入作業の軽減
    • ペーパーレス化(書類の保管場所の確保が不要に)

    が実現できます。

    給与明細の手配業務を簡略化しましょう

    給与明細の作成・交付は、企業にとって重要な業務の一つです。

    基本給や総支給額、各種控除額などさまざまな項目を計算・記載する必要があるため、計算ミスや抜け漏れのないように細心の注意を払いましょう。専用のシステムの導入と活用も含め、ヒューマンエラーを起こさない仕組みづくりを進めることが大切です。

    One人事[給与]は、給与計算からWeb明細発行までの作業を簡単にするシステムです。給与明細の発行と交付で生じる煩雑な作業を効率化し、担当者の負担を軽減します。Web上で明細を気軽に確認できるため、便利に感じる従業員もいるはずです。

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