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社会保険料の本人負担は何割? 事業主・労働者の負担割合や計算方法を種類別に解説

従業員の社会保険料は、企業が計算して納める必要があります。しかし、給与から天引きする金額の計算方法がわからず、困ってしまう担当者は多いものです。そこで本記事では、社会保険料の企業・従業員それぞれの負担割合や、給与に対する社会保険料の本人負担割合について解説します。具体的な計算方法や計算例を紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

※本記事の内容は作成日現在のものであり、法令の改正等により、紹介内容が変更されている場合がございます。

社会保険料の本人負担は何割? 事業主・労働者の負担割合や計算方法を種類別に解説
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    日本の社会保険制度の概要

    負担割合や計算方法について解説する前に、まずは日本の社会保険制度の仕組みをご紹介します。

    「万が一」に備える公的保険制度

    社会保険とは、病気やけが、失業などのさまざまなリスクに備える公的な保障制度。誰かの「万が一」のために、国民みんなでお金を出し合って備えるというものです。各種助成金・給付金や就労支援など、企業・従業員双方がさまざまな支援を受けられます。

    一定条件を満たした企業は加入必須

    一定条件を満たした企業は社会保険に加入する義務があります。基本的に、法人として設立された事業所は健康保険や厚生年金保険への加入が必須です。「従業員が5人未満の個人事業所」など一部適用外の事業所もありますが、従業員の半数が同意し、申請が通れば加入できます。

    社会保険料は労使双方が負担するもの

    基本的な考え方として、社会保険料は労使(従業員と企業)双方が負担するものです。従業員が負担する分の社会保険料は、給与から天引きする形で徴収し、企業が代わりに納付します。

    ただし例外として、労災保険だけは企業側が保険料を100%負担する決まりです。なお、保険料の負担割合は社会保険の種類によって異なります。

    【種類別】社会保険の本人負担・企業負担はそれぞれ何割?

    社会保険には、健康保険・介護保険・厚生年金保険・労災保険・雇用保険の5種類があります。前3つを社会保険、後ろ2つを労働保険と区別して呼ぶこともありますが、本記事ではすべてまとめて「社会保険」として扱います。

    健康保険の負担割合

    健康保険とは、業務外の病気・けがによる療養や、休業にともなう収入減に備える制度です。この健康保険制度により、私たちが病院の窓口で支払う医療費は総額の1〜3割程度に抑えられています。

    また、被保険者やその家族が出産をしたときや、亡くなったときに給付金を受け取ることも可能です。健康保険の保険料は、企業と従業員がそれぞれ「5:5」の割合で負担します。

    参考:『制度の目的』全国健康保険協会
    参考:『医療費の自己負担』厚生労働省

    介護保険の負担割合

    介護保険とは、介護や支援が必要と認められた人の生活をサポートする制度です。具体的には、以下の要件に当てはまる人が、日常生活に必要な各種サービスを受けられます。

    • 要介護認定または要支援認定を受けた65歳以上の人
    • 特定の疾病により、要介護認定または要支援認定を受けた40~64歳までの人

    40歳以上の従業員は、それまでの健康保険料に加えて介護保険料を納めなければなりません。介護保険の保険料は、企業と従業員がそれぞれ「5:5」の割合で負担します。

    参考:『介護保険制度の概要』厚生労働省

    厚生年金保険の負担割合

    厚生年金保険とは、老後を迎えたときや障がいを負ったとき、死亡したときなどに、加入者本人やその遺族に給付金が支払われる制度です。

    厚生年金保険の適用事業所で働く人は、すべての国民を対象とした国民年金と、厚生年金の2種類の年金制度に加入する必要があります。厚生年金保険の保険料は、企業と従業員がそれぞれ「5:5」の割合で負担します。

    参考:『厚生年金保険』日本年金機構
    参考:『公的年金制度の種類と加入する制度』日本年金機構

    労災保険の負担割合

    労災保険とは、業務中または通勤中のできごとに起因する疾病やけが、障がいや死亡などに際し、従業員や遺族に給付金が支払われる制度です。健康保険とは異なり、あくまで業務または通勤によるケガや病気を対象としているのがポイントです。

    ほかの保険制度とは異なり、労災保険料は企業が100%負担する必要があります。

    参考:『労災補償』厚生労働省

    雇用保険の負担割合

    雇用保険とは、従業員の雇用継続や、働く意欲のある人の就労や生活をサポートする制度です。たとえば、失業中の生活を支援する「失業給付」は、雇用保険の基本手当として給付されます。

    雇用保険の負担割合は、事業所の業種によって異なります。

    業種企業の負担割合従業員の負担割合
    一般の事業9.5/1,0006/1,000
    農林水産・清酒製造の事業10.5/1,0007/1,000
    建設の事業11.5/1,0007/1,000

    ※雇用保険料率は毎年見直されており、上記は2024年4月1日から2025年3月31日まで適用されるものです。

    参考:『雇用保険制度』厚生労働省
    参考:『令和6年度の雇用保険料率について』厚生労働省

    給与に対する社会保険料の本人負担は何割?

    社会保険料の計算には、従業員の給与が基礎になりますが、保険の種類によって「基礎」とする金額が異なります。

    健康保険や介護保険、厚生年金保険は、「標準報酬月額」「標準賞与月額」といった基準額に、労災保険料と雇用保険料は、従業員が実際に受け取る賃金の総支給額をもとに計算します。

    それぞれの保険料率を合算すれば、給与の何%を社会保険料の本人負担として徴収すればよいかがわかります。

    健康保険料率と介護保険料率は自治体によって異なり、本記事では東京都の数値で考えてみましょう。それぞれの保険料率は以下の通りです。

    保険の名称従業員が負担する保険料率
    健康保険+介護保険料(労使折半)5.79%(健康保険4.99%+介護保険0.8%)
    厚生年金保険(労使折半)9.15%
    労災保険なし
    雇用保険0.6%

    ※2024年4月時点の保険料率

    すべての保険料率を合計すると、給与に対する社会保険料の本人負担割合は15.54%と計算できます。(東京都・40歳以上・協会けんぽ・一般事業に従事する会社員の場合)

    参考:『令和6年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表(東京都)』全国健康保険協会
    参考:『令和6年度の雇用保険料率について』厚生労働省

    社会保険料の本人負担額の計算例

    社会保険料の本人負担額の計算例を紹介します。

    社会保険料の計算に使用する「標準報酬月額」は段階的な等級に分かれており、それぞれの月給に応じた等級に該当する金額を使用します。

    たとえば、月給21〜23万円は健康保険の等級18(厚生年金保険であれば等級15)に該当し、この範囲内であればすべて一律22万円として計算するということです。雇用保険の負担割合は業種によって異なり、今回の例ではすべて一般事業として計算します。

    参考:『令和6年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表(東京都)』全国健康保険協会
    参考:『令和6年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表(大阪府)』全国健康保険協会
    参考:『令和6年度の雇用保険料率について』厚生労働省

    東京都在住のAさん(43歳)・月給36万円の場合

    月給36万円は、標準報酬月額表では25等級(厚生年金保険は22等級)に該当し、基準額を36万円として計算します。また、Aさんは40歳以上なので、介護保険料を徴収する必要があります。

    これらの情報を踏まえると、計算結果は以下の通りです。

    健康保険+介護保険360,000(円)×5.79(%)=20,844(円)
    厚生年金保険360,000(円)×9.15(%)=32,940(円)
    雇用保険360,000(円)×0.6(%)=2,160(円)
    合計55,944(円)

    大阪府在住のBさん(25歳)・月給24万円の場合

    月給24万円は、標準報酬月額表では19等級(厚生年金保険は16等級)に該当し、基準額を24万円として計算します。Bさんは40歳未満なので、介護保険料の徴収は必要ありません。また、大阪府の健康保険料率(介護保険を抜く)が5.17%です。

    これらの情報を踏まえると、計算結果は以下の通りです。

    健康保険240,000(円)×5.17(%)=12,408(円)
    厚生年金保険240,000(円)×9.15(%)=21,960(円)
    雇用保険240,000(円)×0.6(%)=1,440(円)
    合計35,808(円)

    【Q&A】社会保険料の計算に関するよくある質問

    社会保険料の計算に関するよくある質問にお答えします。

    計算結果の端数はどのように処理する?

    従業員から徴収する保険料を計算する際は、50銭以下を切り捨て、51銭以上を切り上げて1円とします。事業主が社会保険料を納付する際の計算では、全員の保険料を合算したあとに、1円未満を切り捨てましょう。

    介護保険料の徴収を開始するタイミングは?

    介護保険料の徴収は、40歳から64歳まで継続されます。なお「40歳になる年度から」ではなく「40歳の誕生日の前日が属する月から」介護保険料の徴収がはじまる点に注意しましょう。

    参考:『介護保険制度と介護保険料について』全国健康保険協会

    社会保険の本人負担割合を把握し、適切な金額を徴収しましょう

    社会保険料の本人負担割合は、保険の種類によって異なります。たとえば、健康保険・介護保険・厚生年金保険料は企業と従業員が半分ずつ負担しますが、労災保険料は企業の全額負担です。従業員の社会保険料は、企業が計算から納付までの一連の業務を担う必要があります。それぞれの保険における本人負担割合を把握し、適切な金額を徴収することが大切です。

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