RJPとは?効果やメリット、注意点解説
「RJP(Realistic Job Preview)」とは、候補者に対して入社前に職場の実態や仕事内容をありのまま伝える手法です。
採用活動において、企業と候補者の間で期待と現実のギャップが生まれるのは少なくありません。入社後に「思っていた仕事内容と違う」と感じ、早期退職に至るケースは、企業と候補者の双方にとって大きな損失です。
採用ミスマッチを防ぐための有効な手法として、RJP(Realistic Job Preview)が注目されています。
本記事では、RJPの効果や企業にとってのメリット、導入にあたっての注意点について詳しく解説します。候補者との信頼関係を築き、組織への理解を深めるためのポイントを押さえて、より適切な採用活動にお役立てください。
RJPとは
RJPとは、採用活動で、候補者に対し企業の実態を隠すことなく伝える手法です。
RJPは、Realistic Job Preview(現実的な仕事情報の事前開示)の頭文字を取った言葉です。従来の採用方法では、企業は前向きな情報に焦点を当てて話し、入社後に現実とのギャップを感じた従業員が早期に離職する例もありました。。
RJPの目的は、採用ミスマッチの防止です。前向きな情報とともにネガティブな側面も事前に開示すれば、入社後のギャップ軽減がはかれます。
RJPがもたらす4つの効果
RJPには以下の4つの効果が期待できます。。
- ワクチン効果
- スクリーニング効果
- コミットメント効果
- 役割明確化効果
RJPの効果を理解し、計画的な人材マネジメントを促進するために解説します。
ワクチン効果
RJPが持つ効果の一つは、ワクチン効果です。
ワクチン効果とは、企業が社内の現実的な側面を事前に候補者へ伝え、あらかじめ免疫をつけてもらうことです。たとえば、仕事が高ストレスであることや、業務内容が頻繁に変わる可能性があると事前に知らせておけば、候補者は精神的な準備を整えやすくなります。
現実を過度に美化してしまうと、ワクチン効果は得られず、反対に入社後の離職率が高まるリスクが生じます。ポジティブな面とネガティブな面をバランスよく伝えましょう。
スクリーニング効果
スクリーニング効果とは、RJPにより、候補者が自分に向いている仕事であるかを事前に判断できるようになる効果です。
コミットメント効果
コミットメント効果とは、RJPで候補者にネガティブな情報も誠実に開示することで、信頼感や愛着心を高める現象です。
候補者が企業に信頼を抱き、モチベーションも向上し、仕事に対して前向きな姿勢を維持しやすくなるでしょう。
役割明確化効果
役割明確化効果とは、RJPにより自分の仕事に対する役割への理解を促進する効果です。
RJPを通して、候補者は仕事内容だけでなく、仕事で自分が果たすべき具体的な役割や責任範囲も詳しく把握できます。
候補者が最初から自分の役割を理解していると、「期待に応えたい意欲」も高まるでしょう。結果的に、業務をスムーズに進められるようになり、上司や同僚とのコミュニケーションも円滑になります。
RJP導入のガイドラインとは
RJPを導入する際は、RJP理論の提唱者であるジョン・ワナウス氏が示した以下のガイドラインが参考になります。
- RJPの目的を候補者に説明し、誠実な情報提供を行う
- 情報に見合ったメディアを使用し、信用できる情報のみを提供する
- 現役の従業員がリアルな情報を提供する
- 組織の実態にあわせて、開示するよい情報と悪い情報のバランスを考慮する
- 情報開示は採用活動の早期段階で行う
ワナウス氏のガイドラインをもとに、自社の実情にあわせて、どのように進めるか検討してみましょう。
参考:『Is This the Right Job for You? A Realistic Job Preview(原文)』米国人事管理局 (米国人事管理局、OPM)
RJPのメリット
RJPを導入するメリットは主に以下の4つです。
- 候補者からの信頼を得やすくなる
- 企業にマッチした人材と出会える
- 採用コストを削減できる
- 離職率が低下する
メリットを理解したうえで、RJPを活用し、採用ミスマッチを防止につなげることが大切です。
候補者から信頼を得やすくなる
RJPのメリットの一つは、候補者からの信頼を得やすくなることです。
採用過程で、企業が魅力的な面だけでなく、潜在的な課題や現実的な話も率直に伝えると、候補者に企業の透明性や誠実さを感じさせ、信頼性を高められます。
候補者は企業に対する期待を現実的に捉えるため、入社後のミスマッチが減少します。
RJPを通して期待と現実のギャップを縮め、候補者が企業文化に適応しやすくなる効果も見込めます。結果として、長期的な定着率の向上も期待できるでしょう。
企業にマッチした人材と出会える
自社にマッチした人材と出会える点も、RJPを導入するメリットです。
候補者は、仕事内容や職場環境の正確な情報を得ることで、自分が仕事に適しているかどうかを冷静に判断できるようになります。求められるスキルや価値観、企業の文化などが自分に合わないと感じた候補者は、みずから応募を控えるでしょう。
結果として、企業は自社の文化や目標に合った候補者に絞って選考でき、採用のミスマッチを減らせます。
RJPを通じて入社した従業員は、仕事への理解が深まっているため、無知の状態でスタートするよりも、自信を持って業務に望めます。そのため、全体のパフォーマンスが向上する可能性もあります。
採用コストを削減できる
採用コストを削減できる点も、RJPのメリットです。
RJPを実施すれば、候補者が企業の実態を理解し、自身に適した職場かどうかを判断するため、応募者数が絞られる傾向があります。そのため、多くの応募が集中することで発生する手間や時間を抑えられるでしょう。
また、RJPによってミスマッチを防ぎ、早期離職が減少することで、採用にかかるリソースの無駄を削減できます。
さらに、適切な人材を早い段階で採用できれば、入社後の研修や教育にかかるコストも一定程度抑えられます。
離職率が低下する
離職率が低下する点もRJPを導入するメリットです。
採用段階で候補者に仕事や企業文化の現実を明確に伝えることで、入社後のギャップを最小限に抑えられます。候補者は実際に働き始めてからのストレスや不満を感じにくく、職場へスムーズに適応できるでしょう。
結果として、仕事に対する満足度が向上し、離職率低下につながります。
RJPの実践方法
RJPの実践には、以下の4つのポイントをおさえることが重要です。
- 紹介予定派遣を活用する
- リファラル採用を行う
- 従業員インタビューを実施する
- 最初から情報を開示する
候補者に現実を伝え、採用ミスマッチを減らす効果を最大化するために、それぞれの方法を解説します。
紹介予定派遣を活用する
RJPを実践する方法の一つは、紹介予定派遣の活用です。紹介予定派遣とは、企業が候補者を一定期間派遣社員として受け入れ、その後、正社員として雇用するかどうかを判断する制度です。
候補者は実際に職場で働き、自分のスキルや価値観が仕事や企業に適しているかを直接体験できます。一方、企業側も派遣期間中に、候補者のパフォーマンスやチームとの相性を評価し、長期的に活躍できる人材かどうかを見極められるでしょう。
リファラル採用を行う
RJPを実践する方法の一つにリファラル採用があります。リファラル採用とは、自社の従業員や社外の取引先から知人や友人などを紹介してもらう採用活動です。
リファラル採用では、紹介者が候補者に対して、仕事内容や企業文化の現実的な側面を事前に伝えるため、入社後のギャップを軽減できます。
また、企業側もどのような人材かを事前に把握できるため、自社に適した人材を採用しやすくなります。
従業員インタビューを実施する
RJPを実践する方法として、従業員インタビューの実施も挙げられます。
自社の従業員が仕事内容や文化、雰囲気などを語った映像や記事などのコンテンツを用意すれば、企業の現実的な部分を直接的に伝えることが可能です。
従業員の視点から語られる情報は、受け手にとって貴重であり、企業への理解が深まります。
候補者は、選考前にコンテンツに触れ、自分が働けそうかどうかを判断できます。
最初から情報を開示する
採用活動の初期段階から、必要な情報を開示することも、RJPの実践方法です。
企業が候補者に対して仕事内容や企業文化、職場環境を最初から正直に伝えると、候補者は選考を進めてもらうかどうかを早めに判断できます。
たとえば、「企業に対してどのように貢献できるのか」「自分が描いているキャリアを実現できる働き方か」がイメージしやすくなるでしょう。
結果的に、選考中の自体や、入社直後の退職など互いに無駄な時間をかけるリスクが少なくなります。
RJPを実践する際の注意点
RJPを実践する際の注意点は、主に以下の4つです。
- バランスよくメリット・デメリットを伝える
- 採用担当者と現場の連携を深める
- イメージしやすい内容を伝える
- 入社後の役割を明確にする
以上の注意点を踏まえて、採用ミスマッチを減らし、入社後の定着率向上や従業員満足度の向上に役立てましょう。
バランスよくメリット・デメリットを伝える
RJPを実践する際は、仕事のメリットとデメリットをバランスよく伝えることが重要です。
採用活動では、企業の魅力や強みをアピールしがちですが、それだけでは候補者が入社後に現実とのギャップを感じるリスクが高まります。仕事のポジティブな面に加え、あえてネガティブな側面を正直に伝える必要があります。
たとえば、プレッシャーが強い環境や繁忙期には残業があることなども示し、総合的に自分に合った職場かどうかを判断してもらいましょう。
採用担当者と現場の連携を深める
RJPを成功させるためには、採用担当者と現場の連携が重要です。
採用担当者は、現場の業務内容や職場環境を正確に理解し、内容を候補者に効果的に伝える必要があります。しかし、実際に業務に携わっているわけではないため、伝えきれない事柄もあるでしょう。
リアルな情報を伝えたい場合には、現場で働く従業員に同席してもらう必要もあります。
イメージしやすい内容を伝える
RJPを実践する際は、候補者が仕事内容や職場での役割を具体的にイメージしやすい内容を伝えることが重要です。
候補者が将来の役割を想像できれば、企業での目標やビジョンもより具体的に描けるようになります。
そのため、候補者の立場に立って、実際に働いている姿が思い浮かぶように採用情報を整理し、伝えていきましょう。
入社後の役割を明確にする
RJPを実施する際には、候補者に対して、入社後の役割や期待される責任を明確に伝えましょう。どのような業務が期待され、企業全体の目標にどのように貢献するのかを示すことが重要です。
具体的なタスクや日常的に求められるスキル、判断力などを詳しく説明すれば、候補者は自分の業務内容や意義を深く把握できます。
候補者が自分の役割に対する責任感を持てるため、モチベーションの向上にもつながります。
RJPを導入して建設的な採用活動を
RJPの導入で、採用候補者と企業の間で生じる期待のズレを最小限に抑えられます。
入社後のミスマッチや退職を防ぐためにも、仕事内容や職場環境の現実的な側面を事前に伝えましょう。
候補者が適応しやすくなるだけでなく、企業にとっても早期離職のリスクを減らせるメリットがあります。
採用ミスマッチ防止のために、双方にとって、よりよい結果をもたらすRJPの導入を検討してみましょう。