キャリアアンカーとは? 8つの分類や診断方法も紹介
キャリアアンカーとは、仕事をするうえで重視する価値観や軸となる考え方です。キャリアアンカーは8つに分類されており、それぞれ向いている仕事や活躍できる環境などが異なります。
個人がキャリアアンカーを把握することで、自分の価値観に沿ったキャリアデザインを描きやすくなるため、仕事への満足度や充実度の向上に影響するでしょう。
本記事では、キャリアアンカーについて解説しながら、具体的な8つの分類や測定方法なども紹介します。キャリアデザインについて考えている方はもちろん、企業の人事担当者や管理職も、人材育成などに活用できるため、ぜひ参考にしてください。
キャリアアンカーとは
キャリアアンカーとは、個人がキャリア形成において大切にする価値観のことです。アメリカの組織心理学者エドガー・シャイン氏により提唱されました。
キャリアアンカーは一般的に30歳前後に形成されるといわれており、若手社員や学生にはまだ確立されていないことがあります。一度形成されたあとは、経験や状況の変化により、大きく変わることは少ないと考えられています。
キャリアアンカーは従業員の特性を測る指標です。人材配置や人材育成に適切に活用することにより、従業員満足度やエンゲージメント向上が期待できるでしょう。
キャリアアンカーの3要素
キャリアアンカーは以下の3つの要素で構成されています。
- コンピタンス
- 動機
- 価値観
以上の要素を深く探り、自分自身が譲れない点を見つけていきます。3要素が重なる部分をキャリアアンカーとして仕事に活かせると、満足しながら仕事に取り組めるでしょう。
コンピタンス
コンピタンスとは、仕事をするうえで必要な能力や知見を持ち、実践できることを指す言葉です。コンピタンスがあれば自信を持てるため、スムーズな業務遂行やモチベーション向上につながるでしょう。
動機
動機とは、自分の願望や意志、欲求などを指します。
動機には、外から刺激されて発生する外発的動機と、自分の内側から発生する内発的動機があります。キャリアアンカーで特に重視するのは内発的動機です。
自分の内側からわき上がる欲求や志向を大切にすると、満足感や達成感が得られやすくなるでしょう。
価値観
価値観とは、個人が大切にしている信念を指し、その人が物事の価値を判断する基準です。自分が「やるべき」と考えている感覚や義務感をイメージするとよいでしょう。
価値観を大切にして働けると、仕事への意義を感じ、意欲が向上しやすくなります。
キャリアアンカーの8つの分類
キャリアアンカーには8つの分類があります。
8つのキャリアアンカーのうち、自分自身がどのキャリアアンカーを持つのかがわかれば、キャリア形成にも役立つでしょう。
- 専門能力
- 管理能力
- 自立・独立
- 保障・安定
- 創造性
- 奉仕・社会貢献
- チャレンジ
- ライフスタイル
専門能力
専門的な能力や知見を活かして、エキスパートとして働くことを大切にするタイプです。自分自身が現場で働いてスキルや知識を活かすことや、才能そのものに大きな価値があると考えます。
現場から管理職への出世などキャリアの変化は望まず、専門性を活かせないような職場では意欲が低下してしまいます。
管理能力
管理することに魅力を感じ、昇進意欲が強いタイプです。エキスパートとして現場で働くよりも、組織の中で役職に就くことを好み、メンバーやチームの管理を望んでいます。
このタイプは、昇進や出世のために多様な経験を積むことに抵抗がなく、キャリアアップのために精進します。責任感が強く、人の世話を焼くのが好きな一面もあるでしょう。
自立・独立
1人で行動するのを好む自立心が高いタイプです。仕事を進めるうえで自分のやり方を尊重し、人の力を借りたがらない一面があるため、集団行動が苦手です。従業員に裁量を与える企業や柔軟な働き方ができる企業で活躍しやすいという特徴があります。
このタイプは、何かのきっかけで離職したり独立したりする傾向がありますが、優秀であればある程度の裁量を与えて、自由に仕事ができる環境を整備するとよいでしょう。
保障・安定
雇用や企業規模において安定性を求め、1つの企業で長く働きたいと考えるタイプです。終身雇用を採用している企業や公務員などが向いているでしょう。
安心しながら仕事をしたいという価値観があるため、将来への不安がない状態が理想です。リスクや大きな変化を避けるため、部署異動や転勤がない職場で働くことを望みます。
創造性
新しいことを創造することに価値を見出すタイプです。発明したり企画を考えたりすることを好むため、新規事業や新しい事業企画にも向いているでしょう。
このタイプは、自由な発想を尊重する企業やベンチャー企業で活躍の場面がありそうです。
奉仕・社会貢献
社会や人のために動くことに価値を感じ、貢献意欲が高いタイプです。人の面倒を見たり、人の役に立ったりする仕事が向いており、具体的には医療や教育関係が挙げられます。
正義感が強く、社会や人に貢献することを大切にするため、監査・監視をする仕事や人事労務の仕事でも活躍できるでしょう。
チャレンジ
難しいことにチャレンジするタイプです。競争心や向上心が強いため、スキルアップに余念がありません。難しい問題に対して果敢に挑み、課題を解決することに価値を感じるため、事務作業や単調な作業は好まない傾向にあるでしょう。
ライフスタイル
仕事と私生活を両立させたいタイプです。どちらか一方を怠るのではなく、両方を大切にしているため、ワークライフバランスを重視します。
有給休暇の取得や時短勤務の選択のしやすさなど、働きやすい環境を好みます。柔軟な働き方を尊重する企業で生き生きと働き、活躍できるでしょう。
キャリアアンカーの診断方法
キャリアアンカーは、アンケートの設問に回答して診断できます。アンケートは、40の設問で構成されており、1つの質問に対して6つの選択肢から当てはまるものを選んでいく形式です。
インターネットでは、無料のチェックシートや診断ツールを提供しているサイトがあり、手軽に活用できるため、おすすめです。回答する際は「こうなりたい」という理想ではなく、自分にもっとも当てはまる選択肢を直感で選びましょう。
キャリアアンカーの診断は、どれにも当てはまらない場合やタイミングによって異なる結果が出る場合もあります。診断結果を絶対と鵜呑みにするのではなく、価値観を測る指標の一つと考え、個人のキャリア形成や会社の人材配置に役立てましょう。
キャリアアンカーの活かし方
キャリアアンカーを活かすには、どのような方法があるのでしょうか。大切にする価値観を持ちながら一人ひとりが活躍する方法を紹介します。
1つの企業には、さまざまなキャリアアンカーを持つ人材がいます。多くの人材が活躍できるような環境を整備するためにも、ぜひ参考にしてください。
- キャリアデザインに活用
- 研修・人材育成に活用
- 人員配置や異動に活用
キャリアデザインに活用
キャリアアンカーに沿って自分自身のキャリアデザインを描くことが大切です。自分が大切にする価値観を反映できると、仕事に対する満足感を高められるでしょう。
キャリアアンカーは、一度確定すると大きな変化はないとされているものの、環境やライフステージによって変化が起こる可能性も否定はできません。定期的にキャリアアンカーを確認して、キャリアの方向性を見直すとよいでしょう。
研修・人材育成に活用
キャリアアンカーは、人材育成における研修にも役立ちます。特に、まだキャリアが形成されていない新卒社員や若手社員などがキャリアアンカーを学ぶことは、仕事に対する大切な価値観を見出すきっかけになります。
キャリアアンカーが確立し始める30歳以降の従業員にとっては、キャリアアンカーを見つけたり、今後のキャリア形成を考えたりする機会になるでしょう。
人員配置や異動に活用
従業員自身がキャリアアンカーを見つけている場合、企業に伝えておくことで、適材適所の人材配置につながります。企業が把握した個人のキャリアアンカーを活かした人材配置を実施すると、より活躍や成長を促進できるでしょう。
まとめ
キャリアアンカーとは、仕事をするうえで重視する価値観や軸となる考え方です。
人材不足を感じる企業が少なくないなか、貴重な人材を確保して定着させるためにも、多様な価値観を尊重して活躍の場を整備することが大切です。
キャリアアンカーには8つの分類があります。まずは一人ひとりがどのタイプなのかを把握したうえで、人材が活躍できる環境整備や適材適所の人材配置を検討してみましょう。