【例文あり】キャリアビジョンとは? メリットや考え方を解説
キャリアビジョンとは、仕事にとどまらず、人生全般を視野に「こうなりたい」という理想像を指す言葉です。実現できるかどうかは関係なく、あくまでも将来の理想を考えればよいとされています。
本記事では、キャリアビジョンについて解説しながら、メリットや考え方も紹介します。キャリアビジョンが定まらない方はもちろん、企業の人事担当者や人材育成を行う管理職層も、ぜひ参考にしてください。
キャリアビジョンとは
キャリアビジョンとは、仕事や人生を通して思い描く理想の姿です。実現できるかどうかよりも、将来的に「こうなりたい」という希望を描くことが重要であると考えられています。
たとえば以下のように、人によってさまざまな理想像があります。
- 人事担当者の採用責任者として現場を管理するリーダーになりたい
- 海外支店に赴任して英語を使って仕事をしたい
- 育児と仕事を両立しながら管理職として働きたい
キャリアプランとの違い
キャリアビジョンと混同しやすい言葉としてキャリアプランが挙げられます。
キャリアプランは、人生や仕事における理想像を実現するための行動計画を指します。キャリアビジョンを実現するために、必要な行動を時系列にして、行動目標を立てるものです。
キャリアビジョンを実現するための計画を、キャリアプランと理解するとよいでしょう。
キャリアパスとの違い
キャリアパスとは、組織内で目指す役職に就くために必要な能力や経験を、企業が従業員に対して示した道筋です。たとえば課長を目指している場合、具体的に提示されている条件がキャリアパスです。
キャリアデザインとの違い
キャリアデザインは、仕事を通して将来何をしたいのかをみずから設計することです。目指したい具体的な人物像や、実現したいライフスタイルを描くことであり、キャリアプランと似た意味を持ちます。
キャリアビジョンを実現するための具体的な計画を「キャリアプラン」、自分の理想の人生設計を「キャリアデザイン」と区別すると、違いがわかりやすいでしょう。
キャリアビジョンの必要性
キャリアビジョンは、以下の観点から必要とされています。
- 終身雇用制度が崩れ始めているため
- 社会の変化に対応できるようにするため
- 優秀な人材を離職させないため
終身雇用が崩れ始めているため
ひと昔前の日本では、終身雇用が一般的な働き方として浸透していました。
しかし今は、働き方改革の影響で、テレワークや副業など、さまざまな働き方が認められています。転職もめずらしくなくなり、人材の流動化が進んでいます。キャリアアップ転職を成功させるためには、必要なスキルや経験を身につけ、市場価値を高める必要があります。
キャリアビジョンを描くことは、将来の目標を明確にし、必要なスキルアップなどの計画を立てるために重要です。目標と計画があると、日々の仕事や学習の方向性が明確になり、モチベーションを維持しながら着実にステップアップできます。
終身雇用が崩れつつある現代において、いつでも転職できる準備をしておくためにも、キャリアビジョンを描く必要性が高まっています。
変化に対応できるようにするため
近年、DXや新型コロナウイルスの流行など、ビジネス環境は急速に変化しています。変化に対応するため、企業はデジタル技術に精通する人材や、遠隔地でも成果を出せる人材を求めています。
具体的には、以下のような人材です。
- デジタル技術に関する知識やスキルを持つDX人材
- 場所や時間に縛られずに成果を出せる人材
- 変化に対応できる柔軟性を持つ人材
キャリアビジョンが必要とされる理由は、将来の活躍の場を増やすためです。上記のようなスキルや経験、変化への柔軟な思考と問題解決力がある人は、今後ますます活躍の場が増えるでしょう。
優秀な人材を離職させないため
人材の流動化が起こり得る現代において、企業は新たな人材確保だけでなく、今いる人材を離職させないことが重要です。企業ができる対策に、人材を大切にしながらキャリアに関する支援を行う環境整備が挙げられます。
たとえば、従業員が描くキャリアビジョンを実現するために、必要な環境整備や支援が人材の離職防止にもつながるでしょう。
キャリアビジョンを描くメリット
キャリアビジョンを描くことで得られる具体的なメリットを紹介します。
- 自己分析になる
- 目標が明確になり行動しやすくなる
- 仕事のモチベーションアップにつながる
自己分析になる
キャリアビジョンを描くことは、自分にとって何が大切なのかを再確認する機会です。自分の価値観や考え方を整理することで、強みや弱みを客観的に把握できます。
さらに、将来の目標を明確にすると、今後必要なスキルや経験が見えてきます。 これらのスキルを身につけることで、自分の可能性を広げ、より充実したキャリアを築けるでしょう。
目標が明確になり行動しやすくなる
キャリアビジョンを描くことで、将来の目標が明確になり、どのような行動を取ればよいかも把握できます。
たとえば「海外支店へ赴任して英語を使った仕事がしたい」というキャリアビジョンを立てた場合、赴任試験の勉強や、ビジネス英語の習得が具体的な行動です。
仕事のモチベーションアップにつながる
キャリアビジョンによって将来の目標が定まると、仕事への意欲が自然と向上するでしょう。具体的な目標があるからこそ、スキルアップへの意欲がわくものです。
反対に将来どうなりたいかが明確でないと、モチベーションの維持は困難です。
仕事に対するモチベーションが向上すると、成果にもつながりやすくなるため、従業員がキャリアビジョンを描くことは企業側にもメリットがあります。
キャリアビジョンの描き方や手順
キャリアビジョンの描き方について、具体的な方法や手順を紹介します。
- キャリアの棚卸し
- 自己分析
- ゴールの設定
- 実現のために必要なことを抽出
1.キャリアの棚卸し
キャリアビジョンの最初のステップは、キャリアの棚卸しです。自分のスキルや経験、知見などを整理して、自分の現状や得手不得手などをあらためて見つめてみましょう。
成功体験や得意なことだけでなく、失敗体験や苦手なことも棚卸しすることで、より客観的に自分を見つめられます。
2.自己分析
次に、自己分析を行い、大切にしたい価値観や考え方を明確にします。仕事とプライベートのバランスや給与と仕事のやりがい、役職、専門性など、自分の価値観や譲れない点を洗い出します。
キャリアビジョンを考えるときは、仕事だけでなく、人生全般におけるライフイベントや価値観を踏まえることもポイントです。
3.ゴールの設定
自己分析を行ったあとは、最終的に目指すゴールを設定します。
キャリアビジョンを描く際は、現時点で実現できるか否かを考える必要はありません。発想を縛りつけず、将来に向けて計画を立て、実現できるようにしていけばよいのです。
4.実現のために必要なことを抽出
キャリアビジョンを描いたら、具体的に実現するために必要なスキルや経験を抽出しましょう。このとき、具体的に取るべき行動も洗い出します。
実現するためのスキルや行動について複数の選択肢がある場合は、できるだけ多く抽出し、現時点で自分が取り組みやすいものを選んで実行するとよいでしょう。
キャリアビジョンの具体例と例文
キャリアビジョンを描く場合の具体的な例文を紹介します。
営業のキャリアビジョン例
営業職のキャリアビジョン例を紹介します。
私は医療機関向けの設備を提案し、医療従事者の方に喜んでいただきました。医療機関の設備が充実することは、患者様にメリットがあり、よりよい治療にもつながるはずです。 これまでは比較的小さなクリニックや、地域に根づいた医療機関の顧客を担当してきました。 3年後には、さらなる医療従事者や患者様のサポートを行うために、地域を代表する規模の医療機関に向けて自社のサービスを提供したいと考えます。 |
小売業(アパレル)のキャリアビジョン例
小売業(アパレル)のキャリアビジョン例を紹介します。
これまで店舗での接客経験を通して、弊社ブランドに求められている要望を理解してきました。 今後3年間でさらなる経験を積み、本社で勤務したいです。 本社勤務では、商品企画部門でお客様の要望を反映した商品の開発に携わるか、広報部門でお客様に向けて商品のこだわりやポイントをお伝えし、多様なチャネルから販売促進につなげていきたいです。ブランドの認知度向上にも貢献したいと考えています。 |
飲食業のキャリアビジョン例
飲食業のキャリアビジョンの例を紹介します。
店舗での接客と調理を経験する中で、自分のお店を開きたいという気持ちが強くあります。5年後までに、店舗運営スキルを身につけ、カフェを開業したいです。 そのために、さまざまなエリアでの経験を積み、責任者として店舗運営やスタッフ管理などを行いたいです。 |
キャリアビジョンを描く際のポイント
キャリアビジョンを描く際のポイントとして、特に意識すべき点を紹介します。
- ロールモデルを探す
- プライベートやライフステージを考慮する
- なりたくない姿も考えてみる
- 自分の価値観を大切にする
ロールモデルを探す
キャリアビジョンを描くうえで、ロールモデルとして尊敬している人物や憧れている人物を探してみましょう。ロールモデルのどのような部分に引かれるのか、憧れるのかを深く掘り下げることで、自分が目指したい将来が描きやすくなります。
プライベートやライフステージを考慮する
キャリアビジョンを描く際は、仕事だけでなくプライベートやライフステージについての理想も含めて考えます。
特に女性の場合、結婚や妊娠、出産、育児などの重要なライフステージによって、仕事面にも大きな変化が訪れる可能性があります。
自分の希望や価値観を大切にしながら、どのような人生にしたいかを考えましょう。
なりたくない姿も考えてみる
キャリアビジョンを描く際は、理想像を追及するだけでなく、なりたくない姿を考えるのも一つの方法です。どうすればなりたくない未来を避けられるのか逆算して考えます。
まずはなりたい理想像を考えたうえで、どうしてもイメージがわかない場合などに取り入れるとよいでしょう。
自分の価値観を大切にする
キャリアビジョンを描く際は、自分の大切にしたい価値観を軸において考えましょう。他人の価値観にとらわれると、本心とは異なる方向に進んでしまう危険性があります。
自分にとって譲れない点を明確にしたうえで、価値観に沿ったキャリアビジョンを描きましょう。
まとめ
キャリアビジョンとは、仕事や人生を通して、理想像として思い描く将来の姿です。
キャリアビジョンを描くことで、大切な価値観とあらためて向き合う機会が生まれます。企業の人事施策の一環として、従業員に機会を設けるとよいでしょう。将来の自己実現に向けて本人のモチベーションが向上し、具体的な行動を促せるため、企業にとってもメリットがあります。
従業員にキャリアビジョンを描いてもらう際は、本記事で紹介した手順やポイント、例文を参考にしてみてはいかがでしょうか。