評価の中心化傾向とは【具体例】原因や影響と対策を人事データ活用の視点で解説

評価の中心化傾向とは【具体例】原因や影響と対策を人事データ活用の視点で解説評価の中心化傾向とは【具体例】原因や影響と対策を人事データ活用の視点で解説

評価の中心化傾向とは、評価者が極端な判断を避け、「普通」に寄せてしまう心理的バイアスの典型例です。厳しい評価をつけて従業員との関係性が悪化するのをおそれ、甘めの評価をつけてしまったことはありませんか。

明らかな評価の中心化傾向を放置すると、従業員のモチベーションを下げてしまったり、年功序列に戻ってしまったりするため注意が必要です。

本記事では、評価の中心化傾向の具体例や背景にある心理・組織的な要因をひも解き、企業や管理職がとりたい対策について解説します。

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    評価における中心化傾向とは

    評価の中心化傾向とは、 評価者が極端な評価を避け、無難に中間に寄せてしまう心理です。人事評価の場面でも見られるバイアスの一つで、公平な評価をゆがめる要因になります。

    たとえば次のように、成果の差が評価に反映されないケースです。

    目標達成率評価(5段階)問題点
    Aさん150%3成果が過小評価されている
    Bさん70%3改善点が放置されている

    評価の中心化傾向は人事評価の場面でも見られ、一人ひとりの育成につながらず、組織の成長を妨げる可能性も否定できません。

    なぜ評価の偏りが起こるのでしょうか。日本企業では「周囲と足並みをそろえたい」「波風を立てたくない」という心理的な背景から、評価の中心化傾向が起こりやすいといわれています。

    人事評価は、単なる格付づけではなく、人材育成と組織の成長を支える制度です。評価の中心化傾向を避け、個々の成果や課題を正しく見極めることで、評価が本来の役割を果たし、双方の成長につながります。

    評価で起こりがちな代表的な心理傾向

    評価の中心化傾向以外にも、評価者が陥りやすい心理的バイアスはいくつかあります。

    評価バイアス
    寛大化傾向評価が全体的に甘くなる。部下への好意や遠慮が影響
    厳格化傾向反対に、必要以上に厳しい評価をつけてしまう
    極端化傾向評価に大きな差をつけすぎる。中間評価を避ける傾向
    ハロー効果特定の目立つ印象(例:性格や一度の成果)が全体評価に影響する


    評価バイアス・評価エラーといった心理傾向は、どの職場でも起こりうるものです。

    客観的で公正な評価を行うには、まず第一に評価者がみずからの心理傾向を理解し、意識的に修正することが大切といえます。

    ▼各傾向を詳しく知るには、以下の記事もご確認ください。

    評価の中心化傾向が発生する心理的・組織的要因

    多くの評価者は、公平で適切な評価を行いたいと考えていますが、さまざまな要因によって中央値に評価が集中してしまう傾向があります。評価者個人の問題だけでなく、組織全体の課題として捉えなければなりません。

    以下では評価の中心化傾向を引き起こす主な要因について、評価者の心理や組織の特性から詳しく解説します。

    評価者の不安・人間関係への懸念

    評価の中心化傾向は、評価者の「人間関係への不安」から生まれることがあります。人事評価に自信が持てず、対立や不和を避けたい心理が働くのです。

    多くの評価者は以下のように感じています。

    • 「厳しすぎる・甘すぎる」と思われたくない
    • 部下との関係が悪化するのが怖い

    たとえば、ある管理職は高い成果を上げた部下に最高評価をつけることをためらいました。ほかのメンバーとの関係悪化を懸念したためです。別の上司は、低評価をつけると部下のモチベーションが下がり、チーム全体に悪影響が出るのではと心配していました。

    状況評価者の心理・行動結果として起こること
    高い成果を上げた部下への評価
    「他のメンバーとの関係が悪化しそう」
    「特定の人をひいきしていると思われたくない」
    本来は高評価すべき社員を中間評価にとどめる
    成績が芳しくない部下への評価「モチベーションを下げたくない」
    「雰囲気が悪くなりそう」
    改善すべき点を明確に伝えられず、成長の機会を失う

    たとえば、高い成果を上げた部下に最高評価をつけるのをためらうケースです。「ほかのメンバーとの関係が悪化しそう」「チームのバランスを崩したくない」といった理由から、評価を控えめにすることがあります。

    反対に、業績が振るわない部下に対しても、「モチベーションを下げたくない」「雰囲気を悪くしたくない」との思いから、低評価を避けるケースも少なくありません。

    評価の中心化傾向は、評価者の自己防衛心理から生じます。

    評価結果が査定に直結するプレッシャー

    評価の中心化傾向は、処遇に直結するプレッシャーからも発生します。結果が昇給や昇進などに影響するため、評価者は慎重になりすぎて無難な中間評価を選びがちです。

    自分の評価が部下の給与やキャリアに直接影響すると思うと、評価者は責任の重さを感じて、次のような思考が働くのです。

    • 高くつけすぎて会社の人件費を圧迫したら
    • 低くつけて優秀な人材を失ったら
    状況評価者の心理・行動結果として起こること
    評価結果が昇給・昇進に直結「判断が部下の収入やキャリアを左右するのは重い責任」「高くつけすぎると人件費が増える」
    無難な評価でリスクを回避しようとする

    たとえば、評価結果が翌年度の昇給率に反映されるケースです。自分の判断が部下の収入を左右することにプレッシャーを感じ、自信が持てない評価はすべて3にしてしまう人もいます。

    プレッシャーは、評価者の判断を鈍らせ、本来あるべき評価の分布をゆがめてしまいます。

    評価スキルの不足

    評価の中心化傾向は、評価者のスキル不足によっても起こります。評価に自信がないため、無難な判断に逃げてしまうのです。

    適切な評価基準の理解や、フィードバックの方法を学ぶ機会が不足していると、評価者は以下のように感じます。

    • 根拠を説明できない
    • 部下から反論されたら困る
    • あとから説明を求められたら面倒
    状況評価者の心理・行動結果として起こること
    評価スキルに自信がない「どう差をつけてよいかわからない」「納得する説明ができない」全員を3など平均評価に寄せてしまう

    とくに、評価を初めて行う新任管理職で起こりやすいケースです。 結果として、すべての部下を平均的に扱う傾向が強まってしまうため、 評価者への教育・研修が欠かせません。

    評価基準があいまい

    評価の中心化傾向は、評価基準があいまいであることも大きな原因の一つです。 基準が不明確だと、評価者は確信を持てず、安全な選択として中間評価をつけやすくなります。

    定義や測定方法があいまいな評価項目では、評価者ごとに解釈が異なります。 結果として、評価の一貫性や公平性が失われ、評価者が主観に頼らざるを得なくなるでしょう。

    状況評価者の心理・行動結果として起こること
    評価基準があいまい「何をもって達成とするか判断できない」「ほかの評価者と基準がズレていそう」判断が主観的になり、結果的に中央に集まる

    たとえば、チームへの貢献度という評価項目がある場合、ある上司は発言回数で判断し、別の上司は周囲からの評判で判断する、といったズレが生じます。

    このようなケースでは、そもそも人事評価制度が機能していないといえます。定量・定性的な基準を明確に定め、評価者と被評価者が「期待される役割・成果」について共通認識を持つことが大切です。

    評価の中心化傾向が企業に与える影響

    評価の中心化傾向は、組織にさまざまな悪影響をもたらします。評価が平均化されると、評価制度本来の目的である「公正な処遇」と「人材育成」が機能しなくなるのです。

    結果として、従業員のモチベーション低下や人材流出、組織の競争力低下を招くおそれがあります。評価の中心化傾向が企業にもたらす主な影響を具体的に見ていきましょう。

    優秀な社員のモチベーションが低下する

    評価の中心化傾向を放置すると、優秀な社員のモチベーションを低下させます。

    高い成果を上げても平均的な評価しか得られないと、努力が正当に報われないと感じるためです。成果と評価の間にズレがあると、社員はどれだけ頑張っても変わらないと不満を抱きやすくなります。

    たとえば、前年比120%の売上を達成した社員と、前年比90%の社員が同じ「3」と評価されると、当然ながらやる気を失う社員が増えるでしょう。

    優秀な人材は、自分を正当に評価してくれる環境を求めて離職する可能性が高くなります。流出によってスキル・ノウハウ・顧客関係も失われるのは大きなリスクです。

    成長が止まる

    評価の中心化傾向は、従業員の成長機会を奪い、組織全体の成長も停滞させます。

    改善すべき点を持つ人が「平均的」とされると、課題を認識できなくなるためです。本来であれば低い評価を通じて改善点を明確にすべきところが、無難な中間評価で終わってしまいます。

    たとえば、業務の質に問題がある社員に対しても、平均点がつけられては、本人が課題を自覚できず、改善のための行動もできません。

    適切なフィードバックは、厳しくても成長に欠かせないプロセスです。評価の中心化傾向が続くと、成長が止まってしまうでしょう。

    評価制度が形だけのものになる

    評価の中心化傾向は、評価制度そのものを形骸化させます。

    どんなに努力しても評価が変わらないと、制度への信頼が失われるためです。評価に基づく昇進・昇給といった人事施策も形だけになっていきます。

    評価の透明性と納得感を保てなければ、従業員エンゲージメントも低下し、フィードバックも真剣に受け止められなくなるでしょう。結果として、評価制度は機能不全に陥り、存在意義を失ってしまいます。

    年功序列に戻る可能性もある

    評価の中心化傾向は、成果主義を掲げる企業でも「年功序列」への逆戻りを引き起こすおそれがあります。

    評価に差がつかなくなると、結果的に勤続年数や年齢で判断されやすくなるためです。年功序列的な評価は、組織の硬直化を招きます。

    「長く勤めれば評価される」という空気が広がると、チャレンジ精神や創造性が失われ、変化に対応できない組織になってしまいます。

    評価の中心化傾向を防ぐための対策【管理職向け】

    ここまで、評価の中心化傾向の原因と影響を確認してきました。では、どのようにしたら防げるのでしょうか。

    評価の中心化傾向は、評価者個人の意識改革と適切なスキル向上によって防げる可能性があります。

    ここでは管理職向けに、具体的な対策として「スキルアップトレーニング」「マネジメントにおけるコミュニケーションのコツ」を紹介します。

    人事評価を部下の成長と組織の発展を支えるマネジメントの一部と捉え直し、チーム全体の成果向上につなげていきましょう。

    スキルアップトレーニング

    評価の中心化傾向を防ぐには、評価者自身のスキルアップが欠かせません。専門的なトレーニングを通じて評価スキルを磨く必要があります。

    多くの企業が評価者研修を実施していますが、制度を機能させるには、評価者自身が積極的に学び、意識と行動を変えていかなければなりません。評価者自身の成長は、制度の信頼性を支えます。

    たとえば 研修では、ケーススタディやロールプレイを通じて、中心化傾向を含む評価バイアスの種類や回避法を学びます。また、同じケースでも評価が分かれる理由を議論することで、自分の評価の癖や主観に気づけるでしょう。評価面談やフィードバックの方法も学びが必要です。

    自信を持って評価できるようになれば、無難な判断に逃げる必要がなくなり、中心化傾向の防止につながります。管理職自身のマネジメント能力向上も促せるでしょう。

    日頃のマネジメントコミュニケーション改善

    評価の中心化傾向を防ぐには、半期・四半期に一度の評価の場だけでなく、部下との対話の積み重ねも大切です。

    日常的にフィードバックや観察を行っていれば、感覚ではなく、業務の進捗や成果といった事実ベースで判断しやすくなります。 

    たとえば、部下の行動や成果を日常的に記録することは重要です。

    1on1ミーティングを定期的に行えば、上司と部下が進捗や課題を共有し、評価基準をすり合わせる機会になります。その場で組織の期待や評価軸を伝えると、部下は求められていることを理解しやすくなり、最終的に評価への納得感も高まるでしょう。

    対話の積み重ねがあれば、評価面談は建設的な場に変わります。なんとなくの印象や記憶に頼るあいまいな判断を避けられ、評価の中心化傾向を防ぐ助けとなるのです。

    ▼1on1ミーティングの効果を詳しく知りたい方は、以下の資料を参考にしてください。

    評価の中心化傾向を改善する方法【企業・人事向け】

    評価の中心化傾向は、個々の評価者だけの問題ではなく、組織全体の課題として捉える必要があります。

    そのためには、人事評価制度の運用や仕組みから改善することが重要です。

    評価者の努力だけでは限界があり、企業として評価プロセスや制度設計の見直しも検討しましょう。

    ここでは、人事部門が主導して取り組みたい具体的な改善策を解説します。

    責任の分散

    評価の中心化傾向を防ぐには、評価の責任を1人に集中させないことが重要です。評価者が1人で判断を背負うと、心理的な負担が大きくなり、無難な中間評価を選びやすくなるためです。

    たとえば、360度評価の導入は有効な方法です。上司だけでなく、同僚・部下など複数の視点を取り入れることで、より客観的な評価が可能になります。

    また、評価プロセスを二段階に分ける仕組みも検討しましょう。一次評価を上司、二次評価を部門長や人事部門が行えば、評価の偏りを修正できます。

    評価を複数人で担う体制を整えると、評価者の心理的負担を減らし、公平で信頼性の高い評価につながっていきます。

    基準の明確化と標準化

    評価の中心化傾向は、評価基準があいまいな状態で起こりやすくなります。 何をもって高評価・中評価とするかが不明確だと、評価者は自信を持てず、安全な中間評価を選びがちだからです。

    そのため評価基準の明確化と標準化が欠かせません。評価シートを全社で統一し、抽象的な項目をレベルで定義しましょう。たとえば「コミュニケーション能力」の評価なら、以下のように具体化します。

    評価点数定義の例
    5点チーム内外の調整を主導し、難しい問題解決に貢献している
    3点必要な情報を適切に共有し、意思疎通に問題がない
    1点情報共有が不十分で、業務に支障が出ている

    また、評価基準を従業員とも共有することで透明性と納得感が高まります。ロールモデルやスキルマップを全社的に整備すれば、評価の共通言語が生まれ、中心化傾向の防止にもつながります。

    データを活用した評価プロセスの可視化

    評価の中心化傾向を防ぐには、データに基づく客観的な分析と可視化をおすすめします。

    そもそも人は、評価の偏りに気づきにくいものです。

    たとえば、部署ごとの評価分布をデータで可視化すれば、中心化傾向が強い部署を特定できます。評価者ごとの傾向を分析して、パターンを把握し、個別研修やフィードバックにつなげましょう。

    さらにタレントマネジメントシステムの活用も有用です。

    One人事[タレントマネジメント]では、評価データを分析し、中心化傾向などのバイアスの検出をサポートします。偏りの度合いに応じて「甘辛調整」機能で補正もできるため、評価の公平性を保つことが可能です。

    また、目標管理との連動によって、目標の達成度に応じた、客観的な評価運用の実現にお役立ていただけます。

    データによる評価支援とプロセスの透明化を通じて、納得感と信頼性を高められるでしょう。

    まとめ|評価の中心化傾向を防ぐために

    評価の中心化傾向とは、「極端な判断を避けたい」という心理から、無難な中間評価に偏ってしまう現象です。放置すると組織全体に悪影響があり、評価制度が形だけになってしまうおそれもあります。

    評価の中心化傾向を防止するには、基準を明確にし、その基準を公平に運用する体制を整えなければなりません。

    タレントマネジメントシステムを活用すれば、評価分析や目標管理との連動を通じて、客観的な評価運用につながります。

    評価の透明性と納得感を高め、従業員エンゲージメント向上と組織の成長に取り組みましょう。

    人事評価データを活用|One人事[タレントマネジメント]

    属人的な人事評価を公平で納得感のあるものへと変化させるには、システムの活用も一案です。

    One人事[タレントマネジメント]は、人材情報を一元管理し、評価の公平性や透明性を高めるために役立てられるクラウド型タレントマネジメントシステムです。

    目標管理と人事評価を連携させることで、明確な評価基準の運用をサポートします。

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