人材育成のための目標管理|重要性や管理・運用方法を解説
人材育成の一環として、従業員の目標管理を導入している企業もあるでしょう。しかし、目標設定や目標管理が思うように運用できていないという声もあります。また、目標管理の重要性を理解しつつも、管理工数の多さに苦慮している人事担当者や管理職もいるかもしれません。
本記事では、人材育育成の観点から適切な目標設定の方法や、管理・運用の手法について解説します。組織全体の成長を促進し、目標管理の負担を軽減するためにお役立てください。
目標管理とは
目標管理(MBO)は、組織のマネジメント手法のことです。経営学者であるピーター・ドラッカーによって提唱されました。従業員一人ひとりが、組織目標に沿った自己目標を設定し、周囲のサポートを受けながら達成に向けて業務を遂行する仕組みです。MBOとも呼ばれ、詳しくは後述しますが、従業員自らが設定した目標を主体的に管理し、達成に向けて行動することが重要とされています。
人材育成とは
人材育成とは、企業の将来的な成長のために、会社が望む方向へと従業員を育成することを意味します。似たような言葉に「人材教育」がありますが、これは知識やスキルを教えることを指し、人材育成の手段の一つとして捉えられています。人材育成は、教育だけでなく、経験によって人材を成長させることも含むため、広い意味合いを持ちます。
人材育成での目標管理の重要性
人事担当者や上司が、企業や組織が目指すべき方向に部下を育成するのは簡単ではありません。このような課題を円滑に解決していくために「目標管理」は重要な役割を持っています。人材育成を行ううえで目標管理が重要な理由は、次の通りです。
・目標達成までの道筋が把握できる ・従業員エンゲージメントの向上が見込める ・適正な評価がしやすい |
詳しく解説します。
目標達成までの道筋が把握できる
目標設定により、達成するために何が不足しているのかがわかりやすくなります。足りない部分を把握できれば、補うための育成プランも立てやすくなるでしょう。無駄がなく、効率的かつ効果的に人材育成を行うことができます。
従業員エンゲージメントの向上が見込める
目標が明確になれば、従業員は意識的に達成に向けてのアクションを取るようになるでしょう。目標達成に向かって行動できていることを明確に意識できれば、モチベーションの向上にもつながります。
このときに、最終的なゴールだけでなく、途中に小さな目標も設定すれば、目標達成の成功体験を重ねていけます。それによって、より従業員のエンゲージメントの向上も見込めます。
適正な評価がしやすい
目標管理を行うことにより、従業員への人事評価がしやすくなります。人事担当者や管理職の感覚や印象による評価は、従業員の納得が得られるものではありません。前もって目標設定をしておくと、達成状況に応じた公平な評価が行えます。
加えて、人材育成を行う人事担当者や管理職、マネジメント層など評価者側に対する評価も行いやすくなります。管理する部下の目標達成度により、人材育成が機能しているかを定量的に判断できるでしょう。
人材育成での目標設定のポイント
人材育成を行うにあたって、目標設定は高い効果を発揮する可能性があります。しかし、適切に設定しないと、期待するような効果は得られません。
人材育成に必要な目標設定とはどのようなものでしょうか。ポイントは以下の通りです。
・具体的で定量的な目標を設定する ・チームや組織の目標を意識する ・達成可能な目標を立てる ・従業員自らが目標設定に関わる ・目標と人事評価制度を連携する ・定期的にフィードバックする |
詳しく解説します。
具体的で定量的な目標を設定する
客観的な判断ができるように、できるだけ具体的で定量的な目標を設定することが大切です。
たとえば営業職における目標設定では、「売り上げを伸ばす」「受注件数を高める」のようにあいまいな設定の仕方は、おすすめしません。最終的に目標が達成できたのかが判別しづらいからです。
一方、「◯月までに売上◯◯万円」のように、具体的な数値目標を設定すれば、達成度合いが第三者でもわかりやすいです。進捗も振り返りやすいので、従業員が達成感を得やすくなるでしょう。目標が未達成、あるいは最終的な期日までの進捗が遅れている場合も、改善策を立てやすいです。
チームや組織の目標を意識する
従業員が個々に目標を設定するのは、本人の成長のためだけではありません。従業員一人ひとりが目標を達成すると、チームや組織全体の目標達成にもつながります。
そのため、チームや組織の目標をしっかりと確認したうえで、それに沿った個人目標を立てる必要があるでしょう。チームや組織の目標を従業員全員に共有することが大切です。
達成可能な目標を立てる
人材育成において、従業員に対してあまりにも高すぎる目標を課すのはおすすめできません。達成が非現実的となり、モチベーションの低下や期待する成長が見込めないといった事態を招きます。
従業員それぞれが持つスキルや能力を見極めたうえで、達成可能な目標を立ててもらうことを意識しましょう。現在の実力を見極めて、少し工夫と努力をすれば達成できるような目標が理想的です。
従業員自らが目標設定に関わる
人事担当者や上司から一方的に目標を押しつけられると、それは目標ではなくノルマになってしまいます。従業員にはやらされているという感覚が芽生え、モチベーションも下がる可能性があります。
目標設定には従業員本人が関わるようにするのが大切です。人事担当者や管理職は、その目標がチームや組織の目標から大幅に外れていないか、無理のある目標となっていないかなどを確認し、適切な助言をしましょう。
目標を設定をするにあたり、従業員に仕事でやってみたいことや組織での自身の役割などを事前に考えてもらっておくと、最適なアドバイスがしやすくなります。
目標と人事評価制度を連携する
人材育成のために目標設定を行う際、人事評価制度と連携することも大切です。各目標に対する達成度を明確にし、「◯◯が達成できればA評価」というような評価基準を設定しておくとよいでしょう。
目標の達成度合いと人事評価を連携させておくと、評価者は適切な評価を行いやすくなります。また、従業員も人事評価の内容に対する納得感が高まります。公平かつ透明度の高い評価は、従業員エンゲージメントを高める効果も期待できます。
定期的にフィードバックする
目標を設定したあとは、上司と従業員の振り返りの場を設けることも大切です。進捗を確かめることはもちろん、目標達成までに必要なアドバイスもできるようにしておくとよいでしょう。
定期的にフィードバックの機会を設けておけば、細かな軌道修正が可能です。従業員自身も目指すべきゴールや改善すべき行動などを確認して次の行動がとれるため、効果的な人材育成につながるでしょう。
人材育成での目標管理の方法
人材育成においてどのような目標管理の手法を採用すればよいでしょうか。目標管理の手法にはさまざまな方法があります。それぞれ目標の設定方法や評価方法が異なるため、チームや組織に合った方法を選ぶとよいでしょう。
人材育成に効果的な目標管理法の中で、代表的なものをご紹介します。
MBO
目標管理制度(MBO)は、従業員それぞれが目標を立て、その達成度によって従業員を評価する手法です。企業が一方的に評価するのではなく、個人が設定した目標を企業に共有するという点がポイントです。目標の具体的な数値や期日を細かく設定し、目標の達成度合いにより評価します。
MBOは業績を評価しやすい目標管理方法といえます。社員は定期的に達成度合いを自己評価し進捗を管理します。自ら設定した目標を達成するための行動を取れるようになり、自律的な人材に成長することが期待できます。
OKR
OKRも目標管理の方法の一つです。目標(Objectives)と主要な結果(Key Results)をリンクさせ、目標設定と進捗確認、評価を短期間で見直します。これにより個人と企業やチームが同じ課題に向かって計画的に業務に取り組めます。
目標は定性的で高めのものを設定し、6〜7割ほどの到達を目指します。そして定量的に測れる主要な結果の達成を目指します。短期間で目標を見直すため、状況が変化しやすいチームや組織に合っている方法といえます。近年では、MBOと対照的なマネジメント手法として注目されています。
KPI とアクションプラン
KPIは目標設定のために使用される指標を指します。企業の最終目標に至るまでのプロセスをもとに設定される中間目標で、組織や個人が、中間目標をどの程度達成できているかを定量的に計測するために用います。
KPIによってアクションプラン(行動計画)を具体化できます。具体的なアクションプランを、従業員一人ひとりの目標管理シートとリンクさせ、KPIを個人で確実に達成していくのが理想です。
目標管理の運用方法
目標は具体的であることが望ましいですが、部署や部門によっては具体的な目標を立てにくいという場合もあります。そのような場合、目標管理を効率的かつ効果的に実行できる目標管理シートや目標管理ツールを用いると便利です。
目標管理シート
目標管理シートを用いる場合、まずは自身が抱えている課題点を洗い出すことが重要です。その課題点が個人のものなのか、組織または仕組みに関するものなのかなどを整理し、目標を立てていきます。
設定する目標は、客観的で具体的なものであるように意識し、金額や前年比対何%などの数値を用いるようにしましょう。そして、その目標を達成するために取り組むべき具体的なアクションプランも同時に考えます。
目標管理シートを作成するにあたり、盛り込むべき基本項目には次の6点が挙げられます。
・目標項目 ・評価基準 ・達成期限 ・アクションプラン ・結果 ・フィードバック |
各項目はシンプルでありながらも、必要な情報を網羅した内容にすることが大切です。それぞれについて詳しく解説します。
目標項目
目標としている内容を、客観的かつ具体的に記載します。数値を用いて設定することで、効果的な目標設定が行えます。
評価基準
設定した目標をどの程度まで達成させるのかを記載します。数値目標が設定されている場合は、たとえば前年比対何%以上を達成と見なすのかを明確にすることが大切です。
達成期限
目標をいつまでに達成するのかを記載します。達成期限があまりにも長すぎたり、逆に短すぎたりしないよう、適切な期限を設定することが重要です。
アクションプラン
目標を達成するための計画について記載します。達成に向けてどのような行動をとるのか、具体的なアクションプランを考えます。この際も、数値を用いた計画を立てることが望ましいでしょう。
結果
目標の進捗状況を記載します。設定した目標が現時点でどの程度達成できているのか、あらかじめ設定した達成基準をもとに記載するとわかりやすいです。
フィードバック
結果に対しての自己評価や上司からのフィードバックを記載します。その内容をもとに、次のアクションプランを立てられるよう、具体的な内容を記載するとよいでしょう。
目標管理ツール
人材育成や会社の成長のために目標による管理を行うことは重要ですが、管理に課題を抱える組織は多いでしょう。たとえば、従業員数が多い企業は、人事担当者や管理職・マネジメント層にとって大きな労力となりかねません。「目標管理シートでは管理しきれない」「目標がなかなか全体に浸透しない」などの課題を抱えている会社では、目標管理ツールの導入を検討するのも一案です。
近年は、さまざまな目標管理ツールがあります。なかには無料で使用できるものもありますが、有料のツールの方が機能面が充実しているため、業務効率化も期待できるでしょう。
目標管理ツールの導入には、以下のメリットがあります。
・目標を可視化できる ・従業員の自己管理能力が身につく ・進捗を確認しやすい ・組織全体にまとまりが出る ・従業員への評価を反映しやすい ・従業員エンゲージメントが向上する |
目標管理ツールを導入することによって得られる効果について、詳しく解説します。
目標を可視化できる
目標管理ツールを導入すると、目標を可視化できます。従業員は目標を明確に把握することができるため、達成に向けて意欲的な行動を取りやすくなります。
従業員の自己管理能力が身につく
目標管理ツールでは、従業員それぞれが情報を管理することができます。目標達成に向けて、何をすべきかが見えやすくなり、自己管理スキルの向上も見込めます。
進捗を確認しやすい
目標管理ツールでは、個々の進捗状況が細かく確認できます。管理職やマネジメント層も必要に応じて指示やアドバイスを出せるので、効率的に業務を進めやすくなります。
組織全体にまとまりが出る
目標を組織全体で共有できている状態であれば、達成のために全従業員が一丸となって取り組み、パフォーマンスの最大化が期待できるでしょう。それぞれが同じ経営目標などに向かって働き、効率的かつ効果的に業務を遂行できます。
従業員への評価を反映しやすい
目標管理ツールを導入すると、目標の達成度が従業員ごとに明確になります。達成状況を人事評価に反映すれば、評価も明確になり、上司と部下がお互いに納得しやすい評価結果を導き出すことができます。
従業員エンゲージメントが向上する
目標管理ツール導入によって目標が明確になり人事評価と連動させれば、公平かつ透明性のある評価が実現しやすくなります。
全従業員に納得感が生まれ、組織へ貢献したい気持ちも高まるでしょう。それにより従業員エンゲージメントも向上し維持できれば、定着率も高まります。結果的に、離職防止にもつながるでしょう。
まとめ
人材育成に必要な目標管理は、効率的な運用が望ましいです。紙やExcel、スプレッドシート、チャットツールなどを用いても目標管理は運用できますが、従業員数が多い会社では手間がかかり、効率的な運用は難しいでしょう。
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