【ヒューマンスキル一覧】高める方法を解説|注目理由とメリットも
ヒューマンスキルとは、円滑な対人関係を築けるスキルのことです。ビジネスにおいて、昨今のグローバル化やダイバーシティ&インクルージョン推進といった背景から、今まで以上に「ヒューマンスキル」が重視されています。しかし、ヒューマンスキルの具体的な種類や高め方について、詳細はわからない方もいるでしょう。
そこで本記事では、ヒューマンスキルの概要を解説するとともに、高め方、注目理由、メリットなども紹介します。「従業員のヒューマンスキルを高めたい」「ヒューマンスキルの注目理由を知りたい」とお考えの方は、ぜひお役立てください。
ヒューマンスキルとは
ヒューマンスキルとは、円滑な対人関係を築くスキルです。アメリカのハーバード大学教授のロバート・カッツ氏によって提唱されました。
ヒューマンスキルには、相手の気持ちへの理解や物事を的確に伝えるといった技術が含まれます。
またヒューマンスキルが高い人は、人間関係を良好に保ちつつ、仕事もスムーズに実施することができるとされています。
ヒューマンスキル一覧【構成要素を8つに分解】
ヒューマンスキルは、複数の構成要素で成り立っています。ここでは8つの要素をご紹介します。
1 | ネゴシエーション能力 |
---|---|
2 | ヒアリング能力 |
3 | リーダーシップ能力 |
4 | プレゼンテーション能力 |
5 | コーチング能力 |
6 | コミュニケーション能力 |
7 | ファシリテーション能力 |
8 | 向上心 |
1.ネゴシエーション能力
ネゴシエーション能力とは、交渉や折衝を円滑にすすめるスキルです。
営業職はもちろん、他者との交渉や調整を行う社会人に欠かせない能力だといえます。また交渉や調整をスムーズに進めるには、自分と相手の「双方の立場」で物事を考え、上手にまとめる必要があります。
ネゴシエーション能力を持つと、お互いのメリットを考え「両者にとってベストな方法」を見つけられます。
2.ヒアリング能力
ヒアリング能力とは、相手の話をよく聞いて共感しつつ理解を示せる能力です。
また、単純に相手の話を聞くだけではありません。話の主旨や伝えたいポイントを見極め、全体像を理解しながら話を聞きます。
ヒアリング能力は、ベテラン社員はもちろん、新入社員にも必要なスキルだといえます。なぜならビジネスでは、立場を問わず「相手の伝えたいこと」を的確に理解する姿勢が求められるからです。
3.リーダーシップ能力
リーダーシップ能力とは、指導力や統率力のことです。
リーダーシップというと、「チームを引っ張る上司」といったイメージが強いかもしれません。しかし、一般社員や新入社員にも必要な要素です。なぜならリーダーシップは、目標達成を目指し、成果をあげるために必要なスキルだからです。
企業で働く社員は、目標達成を目指し業務を遂行しているため、リーダーシップは誰にでも必要だといえます。
4.プレゼンテーション能力
プレゼンテーション能力とは、自身の考えや思いを的確に伝えるスキルです。
自社のサービスを取引先に紹介するときや、上司に自身のアイデアを採用してもらいたいときに、プレゼンテーション能力が役立ちます。
またプレゼンテーション能力が高い人は、「誰に何を伝えるか」や「理解を深めてもらうために必要な要素」を見極める力に長けています。
5.コーチング能力
コーチング能力とは、個人やチームに能力を最大限に発揮してもらい、人材育成につなげる能力のことです。
コーチング能力の「コーチ(coach)」は馬車が語源であり、馬車が目的地に到達できるよう指導します。とはいえ、コーチングでは「手取り足取り」の指導は行いません。
コーチング対象者が、自身で成功へのプロセスを歩めるよう「気づき」を促します。
6.コミュニケーション能力
コミュニケーション能力とは、メンバーと円滑な関係を構築し、スムーズに意思疎通をするスキルのことです。
双方向を意識することによって、互いを尊重し適切なコミュニケーションがはかれます。適切な意思疎通ができると、業務も効率的に進められるでしょう。
7.ファシリテーション能力
ファシリテーション能力とは、会議やミーティングにおいて、円滑な進行ができるようにサポートするスキルです。
ファシリテーション能力が高い人は、参加メンバーの発言を促したり、多様な意見を理解するスキルがあります。議論の活発化に貢献し、最終的な落着地点へと会議をサポートするので、頼りにされることも多いでしょう。
最終的にはチームの結束も高める役割を担うこともあります。
8.向上心
向上心とは、目標に向かって努力して前向きに取り組めるスキルのことです。現状より高みを目指す姿は、周囲に対して前向きな影響を与えられるでしょう。
また、ビジネスでは、誰しもさまざまな壁にぶつかることもあります。向上心があると、壁にぶつかってもそれを乗り越え、スキルアップにつなげられるでしょう。
なぜ今、ヒューマンスキルなのか?
昨今、ヒューマンスキルの注目が高まっているのはなぜでしょうか。
ヒューマンスキルの始まりは「カッツ理論」から
前述したように、ヒューマンスキルはハーバード大学教授のロバート・カッツ氏によって提唱されました。
カッツ氏が提唱した理論は「カッツ理論」と呼ばれます。ヒューマンスキルは、カッツ理論の中で登場した概念です。
カッツ理論では、成果をあげるために必要な「ビジネススキル」を以下の3種類に分類しました。
テクニカルスキル | 業務遂行能力 | 業務を進めるうえで必要な知識、技術、ノウハウ |
---|---|---|
ヒューマンスキル | 対人関係力 | 周囲と良好な人間関係を築き、人も動かせる能力 |
コンセプチュアルスキル | 概念化能力 | 抽象的な物事から本質を見抜き、創造的に捉える能力 |
さらにマネジメント層においては、各階層によって必要な能力が変わるとしています。マネジメントの各階層とは以下の通りです。
トップマネジメント | 経営者層 | 経営者、役員、事業部長など |
---|---|---|
ミドルマネジメント | 管理者層 | マネジメントを専任で実施する部長や課長など |
ロワーマネジメント | 監督者層 | 現場でマネジメントを実施する主任など |
カッツ理論では、各マネジメント層におけるテクニカルスキル・ヒューマンスキル・コンセプチュアルスキルの必要な割合を説いています。
ヒューマンスキルに注目が集まる理由
カッツ理論をきっかけとして広まったヒューマンスキルは、昨今さらに注目度が高まっています。その理由は以下の2点です。
急速なビジネス環境の変化への対応
情報技術の発展やグローバル化によって、ビジネス環境は急速に変化しています。さらに、AIやロボットといった人が行う仕事を代替する技術も発達してきました。そのため、人が業務を進める際に必要とされるテクニカルスキルは、以前より必要性が薄まっているという考えもあります。
そこで、さまざまな環境に通用できるとされるヒューマンスキルが重要視されているのです。
多様性に配慮したマネジメントの必要性
昨今は、さまざまな価値観を持つ人と一緒に働くことが当たり前になりました。そのため、企業の発展を目指すためにも多様性に配慮したマネジメントが欠かせません。
従業員の個性や考え方を認め尊重するには、コミュニケーション能力が不可欠です。したがって、ヒューマンスキルへの関心が高まっています。
ヒューマンスキルはすべての役職で求められる
前述したように、カッツ理論では「ヒューマンスキルはすべての役職で必要」とされています。
経営者や役員である「トップマネジメント層」では、ヒューマンスキルが身についていることが前提です。通常のヒューマンスキルに加え、下位のマネジメント層や一般社員も統括できるヒューマンスキルが求められます。
同様にミドルマネジメント層も、ロワーマネジメント層などの部下を動かし、組織の成果をあげられるヒューマンスキルが必要です。
監督層であるロワーマネジメント層も例外ではありません。現場監督としてメンバーの意識向上をはかるなど、さまざまな場面でヒューマンスキルは役立ちます。
マネジメント層は特に重要
前述したように、ヒューマンスキルはマネジメント層にとって重要なスキルです。
人を動かして成果をあげるマネジメント層には、部下一人ひとりと信頼関係を築き、的確な指示を出す高度なヒューマンスキルが求められます。
成果をあげるには、チーム全体の意欲も高めなければいけません。個と集団の両面を奮い立たせるヒューマンスキルを高めることは必須といえるでしょう。
ヒューマンスキルを高めるメリット
ヒューマンスキルを高めると、どのようなメリットがあるのでしょうか。主なものを2点ご紹介します。
業績アップにつながる
1つ目のメリットは、企業の業績アップにつながることです。
ヒューマンスキルの高いメンバーが所属する組織は、日頃よりコミュニケーション量が多く、社内の風通しがよい傾向にあります。
お互いの意見を交わし合う活発な組織は、生産性も高く、業績アップにつながりやすいでしょう。
ヒューマンスキル向上は、個人のキャリア発展にも大きく寄与します。リーダーシップを発揮できる立場への昇進機会が増え、より重要な役割を任される可能性が高まります。また、急速に変化するビジネス環境において、適応力や柔軟性が向上することで、キャリアの安定性も高まる可能性があります。
ダイバーシティ&インクルージョンを実現しやすい
2つ目のメリットは、ダイバーシティ&インクルージョンを実現しやすいことです。
昨今はビジネス環境でもダイバーシティ&インクルージョンへの注目が高まり、企業の持続的発展には、実現に向けた取り組みが不可欠だと考えられています。
ダイバーシティ&インクルージョンの実現には、異なる性別、人種、国籍、価値観などを持った相手を認め合う姿勢が重要です。
ヒューマンスキルを高い人は、価値観や特徴の異なる相手を認める能力も高いと考えられます。従業員一人ひとりのヒューマンスキルを高めることは、企業運営にも影響するのです。
ヒューマンスキルを高める方法
従業員のヒューマンスキルを高める方法について、主なものを3点ご紹介します。
社内外の研修
1つ目は研修の実施と参加です。研修では以下のようなスキルの習得プログラムが組まれているとよいでしょう。
・コミュニケーションのとり方 ・おもてなしの精神 ・リーダーシップの発揮方法 ・ハラスメントの知識 |
研修に参加することで、今までとは違う視点から物事を捉えられるようになるかもしれません。ヒューマンスキルの重要性に気づくきっかけにもなるでしょう。
1on1の実施
1on1の時間を利用して部下に対してフィードバックを行うと、ヒューマンスキルを高められる可能性があります。
本人の業務の振り返りを促すことで、不足するヒューマンスキルの構成要素を発見できるかもしれません。上司は部下の気づきをサポートし、必要に応じてアドバイスを行うとよいでしょう。本人が自発的に気づいてPDCAを回していけるとなおよいです。
人事評価に取り入れる
人事評価の項目にヒューマンスキルを取り入れます。評価項目に加えれば、従業員の自律的なスキルアップを促すことができるでしょう。また、「ヒューマンスキルも大事」という企業側からのメッセージにもなります。
ただし、ヒューマンスキルは計測するのが難しいスキルです。運用の際は、明確な基準を設定する必要があるでしょう。
ヒューマンスキルを高めるためのポイント
それでは実際にヒューマンスキルを高めるためにはどのような点に気をつけるべきなのでしょうか。3つのポイントを解説します。
人間性を高める意識
ヒューマンスキルを高めるには、広い心を持って他者に信頼されるように努力する姿勢が必要です。常日頃より人間性を高める意識が求められているといえるかもしれません。
相手に関心を持つ
ヒューマンスキルを高めるには、相手に関心を持つことも大切です。
相手に関心を持つとさまざまな情報を得て意見交換ができるでしょう。円滑なコミュニケーションのきっかけとなります。
話を最後まで聞くこと、相手の役に立つ方法を考えること、逆の立場に立って考えることなどがポイントです。
win-winの関係
ヒューマンスキルを高めるには、win-winの関係を目指すことが大切です。
win-winを目指すには、相手の望みを知ったうえで、自身の望みも叶えられる方法を考えるとよいでしょう。
ヒューマンスキル向上の課題
ここまでヒューマンスキルの高め方を解説してきました。しかしヒューマンスキル向上への取り組みには、課題もあります。主なものを3点ご紹介します。
計測が難しい
ヒューマンスキルは、定量的に測れないため計測が難しいです。人事評価などに取り入れる際は、評価者の主観や価値観が入りやすいので、注意が必要です。
できるだけ客観的に公平に判断できるよう明確な基準を設ける必要があるでしょう。
問題点を自覚しにくい
ヒューマンスキルは、本人の価値観や性格の影響を受けやすく問題点を自覚しにくい点も課題といえます。
上司から見てヒューマンスキル不足に感じる点も、部下にとっては特に気にしていないことかもしれません。
本人は問題点に気づいていないという前提で、コミュニケーションをとり、育成をサポートする必要があるでしょう。
長期的な視点が必要
ヒューマンスキルは短期間で習得できるものではありません。本人が長年培ったものであることが多く、向上には時間を要します。
なかにはテクニカルスキルの向上より、時間がかかる事例もあるようです。
ただし、昨今のビジネスに求められるヒューマンスキルは、育成に時間をかけてでも伸ばす必要があります。根気よく取り組む姿勢が欠かせません。
従業員のヒューマンスキルを確認するには
ヒューマンスキルは計測が難しく、従業員のスキル管理も困難な場合が多いです。そのため、人事評価項目で明確な基準を設けたり、定量化した指標に変換することが必要です。また、従業員に対する構造化面接を実施し、行動質問や状況質問を投げかけてみるというのも一案です。
まとめ
ヒューマンスキルとは、他者と適切な人間関係を築き、コミュニケーションを円滑に進めるスキルです。マネジメント層は特に必要とされる能力ですが、一般の従業員においても高めることによって、スムーズな業務遂行につながります。
研修や1on1でのフィードバックの機会を利用し、PDCAを回していけるように促すとよいでしょう。
ヒューマンスキルを開発し、活躍人材を見極めるには
従業員のヒューマンスキルを開発して活躍人材を見極めるには、1on1の継続的な実施や面談記録の管理が有効でしょう。
One人事[タレントマネジメント]は、従業員のスキルや経歴などの情報を一元管理し、人材マネジメントに役立つタレントマネジメントシステムです。1on1の実施内容の記録やアジェンダの共有など、継続的な実施をサポートする機能もあるので、ヒューマンスキルの向上も含めた人材育成にお役立ていただけます。
One人事[タレントマネジメント]は自社の人事課題や目的に応じて欲しい機能だけを選べる、柔軟な料金プランでご利用いただけますので、多機能過ぎて使いこなせないといった無駄はありません。
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