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イニシエーションとは? ビジネスでの意味や定義と具体例、実施方法、リアリティショック防止策

イニシエーション(initiation)とは、個人がある社会や集団に適応するためのプロセスです。主にビジネスや宗教、医療分野などで用いられる言葉で、それぞれ異なる意味で使用されます。

本記事では、ビジネスシーンにおけるイニシエーションの基本的な意味や具体例を解説します。イニシエーションの重要性や目的についてもご紹介していますので、参考にしてください。

イニシエーションとは? ビジネスでの意味や定義と具体例、実施方法、リアリティショック防止策
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    イニシエーションとは

    イニシエーションとは、人が新しい集団・組織に適応するための儀式や儀礼です。使用シーンによって意味合いが異なるため、まずは基本的な意味・定義から解説します。

    意味・定義

    イニシエーションを日本語に直訳すると、加入や入門、儀式を意味します。

    もともとは宗教の信徒になるために必要な儀式を指す言葉です。それが転じて「新しい組織や集団に属する際に待ち受ける困難(課題)」という意味で使用されるようになりました。

    多くの場合、イニシエーションは加入する側・受け入れる側双方の取り組みによって成り立ちます。たとえば、新しいメンバーを迎え入れるための歓迎会やオリエンテーションなどには、イニシエーションとしての側面があります。

    注目されている理由

    近年、ビジネスシーンにおいてイニシエーションが注目を集めている理由は、終身雇用制度の衰退にあります。

    「1つの会社で定年まで勤めあげる」という働き方が大多数だった時代とは異なり、現在はキャリアアップやキャリアチェンジのために転職する人が増え、人材の流動性が高まっている状態です。

    しかし、転職をする人が増えると、当然イニシエーションを経験する回数が増えます。なかにはイニシエーションを乗り越えることに失敗し、組織に上手になじめずモチベーションが低下したり、離職につながったりするケースもあるでしょう。

    そのため、ビジネスシーンにおいては企業側がイニシエーションに配慮し、新たな人材の受け入れ体制を整えることが重要視されています。

    イニシエーションを乗り越えるためには、新たな組織に加わる本人の努力だけでなく、組織側からの働きかけが必要不可欠です。

    【分野別】 イニシエーションの意味と使い方

    イニシエーションの意味や使い方を、分野別に例文とともに解説します。

    • 宗教や伝統文化
    • 社会学
    • 医療・看護
    • 心理学
    • 組織や企業、ビジネス

    宗教や伝統文化

    宗教や伝統文化におけるイニシエーションは、ある人が特定のコミュニティや社会的グループに正式に加わるための儀式・儀礼を指します。たとえば、キリスト教における「洗礼」は、宗教上のイニシエーションの一つです。

    宗教における儀式は、共同体に新しく参加する人が、自身の役割やアイデンティティを受け入れることを象徴するものとして行われます。

    また、共同体が持つ価値観や信念などを教える儀式としての意味合いもあります。

    例文
    仏教における受戒式は、僧侶としての道を歩み始めるためのイニシエーションといえる。
    キリスト教では、正式な教徒となるイニシエーションとして、洗礼と呼ばれる儀式が行われる。

    社会学

    社会学におけるイニシエーションは、ある人が社会的なグループや階層に加わる過程を意味します。たとえば、青年男女が成人として認められることを祝う「成人の儀」は、社会学におけるイニシエーションの一つです。

    社会の構造・秩序を維持しながら、社会における自分の新たなポジションやアイデンティティを受け入れる手段としても機能します。

    例文
    部族社会における成人の儀をイニシエーションと呼ぶことがある。
    都市部のギャングは、自分たちのグループに新メンバーが加入する際、イニシエーションとして何らかのチャレンジをさせることがある。

    医療・看護

    医療・看護分野におけるイニシエーションは、さまざまな意味で用いられます。

    たとえば、発がん過程の最初のステップをイニシエーションと呼ぶこともあれば、病院・クリニックにおける入職研修やオリエンテーションなどをイニシエーションと位置づけることもあるでしょう。

    また、治療・医療プロセスの開始を意味する場合もあります。具体的には、患者に新たな薬の投与を開始することや、治療計画をスタートさせることを指します。

    例文
    発がんのメカニズムには、イニシエーション・プロモーション・プログレッションの3つの過程があると考えられている。
    医学生がはじめて臨床実習に臨む際のオリエンテーションを、医学の現場におけるイニシエーションと捉えることもできる。

    心理学

    心理学分野でのイニシエーションは、人生におけるライフステージの変化や、新たな役割への適応を指します。

    主に自己認識やアイデンティティの形成など、心理的過程にかかわることが多くあります。新しい環境や困難な状況に適応するための儀式・儀礼としての役割を持つケースもあるでしょう。

    例文
    子どもが学校に入り、学校生活に適応するまでの過程には、イニシエーションの側面がある。
    新たな役割や環境に適応する際、イニシエーションとして心理的な調整や変化が必要な場合がある。

    組織や企業、ビジネス

    ビジネスシーンにおけるイニシエーションは、主に新たなプロジェクトやタスクの開始を意味します。

    また、就職や配属などにより新しい環境や役割に適応するためのプロセスを、イニシエーションと捉えることもあるでしょう。

    従業員が環境や役割に適応するのをサポートする活動は、組織文化やビジョンを共有し、生産性を高めることにもつながります。

    例文
    新人研修やオリエンテーションは、新入社員にとってビジネスの現場におけるイニシエーションである。
    プロジェクトにメンバーが加わる際の紹介や説明は、プロジェクトへのイニシエーションといえる。

    ビジネスにおける2つのイニシエーション

    ビジネスにおけるイニシエーションは「グループイニシエーション」と「タスクイニシエーション」の2種類に分けられます。

    グループイニシエーション

    グループイニシエーションとは、新しい会社やチームなどに加入した際、そのグループ(集団)に適応し、周囲に認められるためのプロセスを指す言葉です。集団に対する忠誠心や協調性を示し、周囲との人間関係になじむことをあらわします。

    ビジネスにおいては、新入社員に対するオリエンテーションや新人研修などが該当します。

    タスクイニシエーション

    タスクイニシエーションとは、新しい会社やチームに加入し、新しい業務に慣れるためのプロセスです。組織やチームに対する業務上の貢献を示し、ほかの従業員や上司から認められることを指します。

    ビジネスにおいては、新しいプロジェクトのキックオフミーティングや新製品の開発フェーズにおける活動などが該当します。

    ビジネスにおけるイニシエーションの具体例

    ビジネスにおけるイニシエーションの具体例をご紹介します。

    • 採用(就職・転職)
    • 出向
    • 部署異動・配置転換

    採用(就職・転職)

    就職や転職は、労働者にとって大きなイニシエーションです。企業は、新しいメンバーの受け入れ体制を整え、職場に早くなじめるようサポートする必要があります。

    先輩社員や上司が密にコミュニケーションをとり、業務遂行をサポートすれば、イニシエーションを乗り越えやすくなります。

    たとえば、メンター制度を導入したり、新人研修を実施したりすると、新しいメンバーは就職先・転職先での業務内容をスムーズに身につけられるでしょう。

    出向

    グループ企業や関連企業への出向も、ビジネスにおけるイニシエーションの一つです。

    たとえば、人間関係の構築や業務内容の違いに慣れるまでに乗り越えるべきストレスは、従業員にとってイニシエーションとなり得ます。

    出向先は、出向社員が新しい環境に早くなじめるよう配慮するとともに、円滑な業務遂行をサポートする必要があります。

    たとえば、出向者を交えたオリエンテーションや、業務の流れ・役割などを共有し合うミーティングをすると、出向先の文化や業務内容を素早く理解してもらえるでしょう。

    部署異動・配置転換

    部署異動や配置転換も、ビジネスでよくあるイニシエーションの一つです。

    同じ企業内であっても、部署やチームが変われば、一緒に働くメンバーや業務内容も変化するものです。人間関係になじみ、仕事に慣れるための取り組みが必要といえます。

    従業員がイニシエーションを乗り越えるためには、受け入れ側からのていねいなサポートが求められます。

    たとえば、部署の業務内容や役割分担などを伝える説明会、部署内のチームビルディング活動を実施すれば、新しい環境にもスムーズになじんでもらえるでしょう。

    ビジネスにおけるイニシエーションの重要性・目的

    次に、ビジネスにおけるイニシエーションの主な目的や重要性について解説します。

    • リアリティショックの防止
    • 新しい所属への適応
    • 信頼関係やコミュニケーションの構築

    リアリティショックの防止

    リアリティショックとは、理想と現実の差に心理的衝撃を受けることです。

    リアリティショックは、従業員のモチベーション低下やメンタル不調、早期離職を招いてしまう恐れがあります。

    そこで重要なのが、就職・転職や配置換えなどにおけるイニシエーションへの配慮です。従業員がイニシエーションを乗り越えられるようサポート体制を整えれば、新しい環境での人間関係や業務上の課題を乗り越えやすくなり、リアリティショックを和らげられるでしょう。

    新しい所属への適応

    イニシエーションには、新しい組織やグループへの適応を促進する働きがあります。組織文化や人間関係、業務内容など、新しいビジネス環境にスムーズに適応するための基盤を築くことが可能です。

    個人が組織に適応することは、組織全体の生産性や効率性にも直結します。企業としても積極的に働きかけたいポイントです。

    信頼関係やコミュニケーションの構築

    イニシエーションは、新しい環境での信頼関係を構築するファーストステップとして機能します。文化・理念の共有やコミュニケーションの機会の確保は、メンバー間の相互理解を深めることにつながるためです。

    また、コミュニケーションが促進されることで、業務におけるチームワークも向上するでしょう。

    イニシエーションに適した人事施策

    最後に、イニシエーションが想定される場面に適したおすすめの人事施策をご紹介します。

    • 社内コミュニケーションの活性化
    • フォローアップ制度の導入
    • 研修プログラムの整備

    社内コミュニケーションの活性化

    イニシエーションを乗り越えるのをサポートするためには、風通しのよい職場づくりが欠かせません。社内コミュニケーションを活性化し、新しいメンバーが質問・相談しやすい環境を構築しましょう。

    フォローアップ制度の導入

    新メンバーが新しい環境にスムーズになじめるよう、フォローアップ制度を導入することも大切です。具体的には、先輩社員によるメンター制度や実際の業務を通じて1対1で指導を行うOJT、定期的な1on1ミーティングなどが挙げられます。

    研修プログラムの整備

    新しい業務内容をスムーズに理解できるよう、研修プログラムを整備しましょう。まずは研修プログラムで業務に求められる能力とのギャップを埋め、実際の現場では先輩社員や上司によるていねいなサポートが大切です。

    イニシエーションは離職防止のためにも重要

    イニシエーションとは、個人が新たな組織やグループに適応するための儀式・儀礼です。企業においては、就職・出向・部署異動などにより新たなビジネス環境に身に置いた労働者が、その環境になじむまでに必要なプロセスを指します。

    イニシエーションを乗り越えられず、新しい職場になじめない状態が続くと、従業員の働く意欲は低下してしまうでしょう。

    また、企業におけるイニシエーションは業務内容の理解を促進するとともに、メンバー間の相互理解を深め信頼関係を構築する役割も果たします。人事労務の担当者としては積極的に施策を実施し、フォローアップ体制を整備したいところです。

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