MBOにおける目標管理シートの書き方|必要項目や評価コメントまで解説
「MBOの目標管理シートの適切な書き方がわからない」「MBOの運用がうまくいっていない」
MBOを運用している企業の中で、このように感じている人事担当者や部署責任者もいるでしょう。
MBO(目標管理制度)は、目標達成の結果や貢献度をもとに、業績や人事評価に反映させるための仕組みです。MBOを効率的に運用するためには、目標管理シートの書き方やMBOの運用手順を理解することが重要です。
本記事は、MBOの目標管理シートにおける書き方や項目を紹介しながら、MBOの手順やポイントについて解説しています。MBOの運用に課題を感じている企業や、これから導入を検討している人事担当者や部門責任者の方は、ぜひお役立てください。
MBOにおける目標管理シートの書き方と項目
MBOの書き方としてまず把握しておきたいのが、MBOの目標管理シートの書き方や必要項目です。そこで、MBOを運用するうえで重要な目標管理シートの書き方や必要項目をご紹介します。
効果的なMBOを運用するためにも、まずは目標管理シートの書き方について理解しましょう。
個人目標
MBOの目標を管理するうえで必要なのが、従業員の個人目標です。個人目標の内容をもとに、進捗や評価を行うため、いつでも確認しておけるようにしておかなくてはなりません。
ポイントは、大項目(ジャンル)を設定してから、そこに対する具体的な数値目標を設定することです。
たとえば大項目を「売上」にした場合、具体的目標を「売上100万円」「新規顧客10件」などとします。定量的な数値目標を立てると、進捗確認や評価の際にも測定しやすいため、意識しましょう。
具体的アクション
MBOとして立てた個人目標に対して、必要な行動を記載します。
進捗確認の際に、具体的アクションに記載された必要な行動がとれているのかとれていないのかがわかると、今後の改善策にも違いが生じるからです。目標達成の指標にもなるため、重要なポイントといえるでしょう。
ウエイト
MBOでは、自らが複数の目標を設定するため、全体を100%としたときの各目標のウエイトを決めておく必要があります。
ウエイトの基準としては「目標達成のために取り組む時間の長さ」や「目標や業務の重要度」が中心となるでしょう。
重要度を基準とする場合は、従業員の認識によってもズレが生じる可能性があるため、上司や責任者の確認が必要です。
評価基準
MBOは業績や人事評価にも活用できるため、従業員や部署によって偏りが出ないよう評価基準を明確にしておかなくてはなりません。
「S~D」や「5~1」のように、アルファベットや数字を用いて段階的な評価にしておくと評価しやすいでしょう。さらに、判断に迷わないよう、各評価に該当する具体的な達成率の範囲も記載しておきましょう。
評価および評価コメント欄
MBOの目標期間が終了したら、従業員と上司による評価と評価コメントの記入をそれぞれ行います。
評価欄には結果に基づいた評価だけを記載し、結果に対する事実や今後の改善点をコメント欄に記載できるようにしておきましょう。
MBOにおける評価コメントの書き方
MBOの評価を行う際は、上司と従業員でそれぞれ評価に関するコメントを記入します。両者のコメントとして適切な書き方には違いもあるため、書き方の具体例を確認してみましょう。
MBOにおける自己評価コメントの書き方
従業員本人が自分の結果に対して行うのが自己評価コメントです。
結果 | 新規顧客を12件獲得し、目標の10件を上回る120%で終えることができた |
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理由 | 架電数1日50件を目標にし、電話でのアポイント獲得を増やせたこと |
総評 | 架電を諦めずに続けられたが、通話が続かないケースがあった |
改善策 | 通話の段階でよい印象をもってもらうこと、先方の悩みを引き出せるようにしたい |
自己評価コメントでは、客観的に自分の結果を踏まえてコメントします。目標が定量的なものであれば、客観的な評価をしやすいですが、過大評価にならないように注意しましょう。
目標に対する結果として事実を書くとともに、目標を達成できた理由や達成できなかった理由、今後の改善策なども含めて記載するとさらなる成長が期待できます。
MBOにおける上司の評価コメントの書き方
上司が部下の結果に対して行うポイントは、部下が出した結果の事実に基づいて客観的に記載することです。
また、部下の努力や行動を認めるコメントや今後の改善点など、ポジティブな点も記載するようにしましょう。
結果 | 目標の120%を達成し、部署の目標達成にも大きく貢献した |
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総評 | 誰よりも架電を続けるなど、諦めない姿勢が結果につながったと思う |
課題 | 架電回数や顧客獲得数はよかったが、通話で断られる件数も多いため、通話内容の質を磨き、アポイント獲得率を改善していきましょう。 |
上司の評価コメントは、日頃から仕事への姿勢や取り組みを近くで見ている分、過大評価になりがちです。また、相性によって評価に偏りが出てしまわないように注意しなくてはいけません。
定量的な目標であれば、目標数値に対する達成率や貢献度が判断基準となり、客観的評価をしやすいでしょう。定性的な目標であっても、社内で統一基準を設けて公平性を保てるよう意識しましょう。
MBO(目標管理制度)とは
MBO(Management By Objectives=目標管理制度)とは、設定した目標の達成度や貢献度から業績評価に活用できる人事評価制度です。
目標管理は、1950年代にアメリカの経営学者ピーター・ドラッガーが提唱した概念であることでも有名です。日本では、長年浸透していた年功序列による人事評価制度を見直し、MBOを導入した企業が多くあります。
MBOの目的
MBOを導入する目的は、目標達成そのものや、より公平で客観的な評価の実施などが中心です。
MBOを導入すると、自らが立てた目標達成に向けた主体的な動きが期待できるでしょう。また、達成度に基づいた客観的な評価を行うと、より透明性の高い公平な評価につながります。
MBO(目標管理制度)のメリット
MBOの運用で得られるメリットには、どのようなものがあるのか確認してみましょう。
従業員の主体性を高める
MBOでは、従業員が自らの目標を設定するため、自分が立てた目標達成のために主体性を高めて行動できるでしょう。
主体性が高まると、アイデアの創出や意見の提案など、積極的な動きが期待できるようになります。
従業員のモチベーションが上がる
MBOでは、従業員の成果がそのまま評価や報酬につながります。目標に対する成果が評価に直結するため、従業員のモチベーション向上にもつながるでしょう。
評価がしやすい
MBOでは、目標に対する成果が評価になるため、評価自体がわかりやすくスムーズに進められます。成果が評価に直結するので、公平で納得感の高い評価となりやすく、人事評価にも活用できるでしょう。
業務管理を適切に行える
MBOは個人と組織の目標を関連させて設定します。目標とそのプロセスがわかりやすいため、やるべきことが明確になり、業務管理がしやすいというメリットもあります。
MBO(目標管理制度)とOKRの違い
MBOは、目標に対する達成率や貢献度をもとに、業績評価や人事評価へ活用するための評価制度です。
一方のOKRは、1つの明確な目標(O)と、付随する結果(KR)を会社全体で意識することによって、社内における意思統一やモチベーション向上などを目的としています。
それぞれ違いについて、詳しく確認してみましょう。
評価
MBOでは、目標に対する評価は半年~1年に一度を目安に行います。一方のOKRでは、四半期に一度の頻度で評価を行い、短期間のサイクルを繰り返すのが特徴です。
達成度測定
MBOの達成度測定は、定量・定性を組み合わせる場合や、どちらか一方のみで設定する場合など、組織や状況によって異なります。
OKRはOを定性目標、KRを定量目標として設定しますが、Oの達成を導くものがKRになっています。そのため、数値で測れないOについて、KRの達成度などを踏まえて判断できるようになっていると認識しましょう。
目標の共有
MBOの場合、設定した目標は上司と本人など、限られたメンバーのみで共有されるのが一般的です。目標設定は個別に行い、部署や全社的への共有はされません。
OKRの場合は、目標自体が企業や部署で共有されます。従業員それぞれの目標は組織内で公開され、達成するための調整や見直し等が行われます。
目的
MBOの目的は、業績評価に活用するためのものであり、業績によって従業員の報酬を決めることにもつながります。
OKRの目的は、会社全体の意思統一や組織力の強化、従業員のモチベーションや生産性の向上とされています。
目標達成の水準
MBOでは100%以上の達成率が求められます。MBOは業績評価や報酬と連動しているので、目標設定の難易度を適切にしたり、適正に評価したりするためです。
OKRの場合は、60~70%程度の達成度が求められます。OKRはストレッチの効いた目標を設定しているため、60~70%の水準で達成とみなすのが一般的といえるでしょう。
MBO設定や運用の流れ
MBOの適切な目標設定や手順を理解すると、より効果的な運用につながります。そこで、MBOの運用に関する一連の流れや手順をご紹介します。
MBOを実施する目的の明確化と共有
MBOを導入する際は、どのような目的で行うのかを社内全体に周知することが重要です。
MBOでは会社目標とともに個人目標を設定するため、従業員が自分ごととして取り組めるよう、根本的な目的を理解する必要があるでしょう。
従業員が目的を理解しないで進めると、認識にズレが生じたり、モチベーションを維持できなくなったりしてしまいます。
組織目標の設定と共有
MBOでは、組織としての全体目標を明確にして共有することが大切です。全体目標が共有されれば、そこにリンクした個人目標を立てやすくなります。
従業員が自らの目標を設定する際に、全体目標とのズレを避けることにも役立つでしょう。
目標の設定
全体目標が共有されたら、従業員が自らの個人目標を設定します。
全体目標とリンクし、モチベーションを維持できるような内容で設定するようにしましょう。
しかし、低すぎる目標は会社の目標や業績にも貢献しません。本人の意思を尊重しながら、上司が確認したうえで設定を進めるようにしましょう。
進捗確認
MBOの運用では、達成度を高めるためにも、進捗状況を定期的に確認するのが重要です。
進捗状況に応じて、上司と従業員で不足や課題を考えてみましょう。期間から逆算して考えることなども、従業員の主体性の向上に影響するでしょう。
面談
MBOでは、上司による面談を実施して従業員の目標達成をサポートします。進捗状況が芳しくない場合、前向きなコミュニケーションをとり、従業員のモチベーション低下を抑えられるようにしましょう。
評価とフィードバック
MBOで設定した期間が終了したら、評価と振り返りを行います。
評価内容やフィードバックを行うことで、従業員の納得感にもつながるでしょう。よい点とともに今後の改善点なども示すと、さらなる従業員の成長が期待できます。
MBOをはじめ評価制度の効率化に|One人事[タレントマネジメント]
MBOなどの目標管理や評価制度を効率化するには、タレントマネジメントシステムの利用がおすすめです。タレントマネジメントシステムの中には、目標管理シートのテンプレートや複数の評価制度を管理できるものがあります。
One人事[タレントマネジメント]は、MBO評価、OKR、コンピテンシー評価など各目標管理におけるテンプレートを用いて、複数の評価制度の効率化に役立つツールです。自社の運用に応じて、ワークフローや評価シートを柔軟にカスタマイズもできます。
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まとめ
MBOで重要なのは、目標管理シートの書き方を理解したうえで適切な目標設定と手順による運用を行うことです。やみくもにMBOを運用していても、根本的な目標設定や手順を誤解していては、失敗してしまうケースも少なくありません。
当記事でご紹介した、MBOにおける目標管理シートの書き方や項目を前提にしながら、適切な手順で効果的な運用を目指しましょう。
MBOの運用管理を効率化させたいという場合は、システムを活用するのがおすすめです。MBOだけでなく、複数の目標管理に対応したタレントマネジメントシステムもあるため、ぜひチェックしてみてください。