人員管理とは? 配置管理の最終目的と基本の4ステップ、大切なこと、システム

人員管理とは、事業計画を達成するために、社内人材を最適な配置・数・タイミングで確保する戦略的な取り組みです。
「人員管理がうまくいかない」「スキルや適性をどう反映すればいいかわからない」と悩む人事担当者は多いのではないでしょうか。
本記事では、人員管理とは何かと目的、進め方4ステップ、そして効率化に役立つシステムまでをわかりやすく解説します。

目次[表示]
人員管理/人員配置管理とは
人員管理(人員配置管理)とは、従業員一人ひとりのスキルや適性を踏まえて、最適な業務や部署に配置する人事施策です。配置転換や異動、採用、昇進を通じて、人材とポジションのマッチングをはかります。
人員管理の目的は、単なる人数調整ではなく、組織成果の最大化にあります。
- 従業員の能力を活かす → 生産性向上
- 公平な評価の実現 → モチベーション向上
- 組織体制を最適化 → 離職防止・人件費の適正化
変化の激しいビジネス環境では、柔軟な組織構造の見直しが求められるといえるでしょう。

人員管理は事業目標の達成に不可欠
人員配置はあくまでも、事業目標を達成するために必要とされる戦略的な手段です。単なる人数調整ではありません。
人員管理は、経営資本である「人」の活かし方を設計する判断であり、事業計画の実行を左右します。現場のパフォーマンス、部署間の連携、生産性、定着率にまで影響します。
しかし実際には、大きな理由もなく配置が決まるケースも少なくないでしょう。
成果を最大化するためには、人員管理を通して目的意識を持ち、戦略的に人を管理する視点が欠かせません。ここでは、人員管理の目的を大きく3つに整理して紹介します。
効率を上げ生産性を高める
組織全体の生産性を高めるには、従業員一人ひとりのスキルや特性を踏まえた人員管理が必要です。
業務に対して最適な人がアサインされていない場合、作業のやり直しや属人化が発生し、非効率な状態を招くからです。
とくにプロジェクト型組織やマルチタスクを担う現場では、スキルマッチングを誤ると、タスクが遅れて品質低下にもつながります。
たとえば、事務処理や経理業務を本社に業務集約した企業では、同じ業務品質を維持しつつ作業時間を削減でき、全体の生産性が向上しました。また、「会議時間の上限を45分まで」「17時以降の会議禁止」など、業務時間の見直しルールを導入したことで、残業時間の削減を実現した事例もあります。
適切な人員管理により、人的リソースを最大限に活用し、組織全体のパフォーマンスを底上げできるでしょう。
収益を最適化する
人員配置管理は、限られた人員と予算で収益を最適化するために行われます。
人手不足や過剰配置は、業務効率を低下させて余剰コストの発生につながり、収益を圧迫するからです。とくに、複数拠点や多工程にまたがる業務では、人員管理がコストと収益を左右します。
たとえば、ある工場では作業動線を再設計し、配置も最適化したことで、移動時間や待機時間が減り、結果として在庫管理の効率化と物流コストの削減を実現しました。さらにバックヤードの業務を見直し、業務分担を再編成したことで、少人数体制でも安定的に収益を出せるオペレーションに移行できた事例もあります。
「作業効率」「稼働率」「部門収益」といった経営指標と連動させて人員を管理すると、収益力の強化につながるのです。
人材の離職を防ぐ
人員管理は、離職防止・定着率の向上にもつながります。従業員が「自分の能力を活かせる環境にいる」と感じられることで、エンゲージメントが維持されるためです。
希望に合わない業務や、能力に対して過小評価された配置は、モチベーションの低下を招くでしょう。反対に、本人の適性と志向を踏まえた配置は、「期待されている」「成長できる」といった前向きな感情につながります。
たとえば、ある企業ではキャリア面談と配置シミュレーションをセットで実施したところ、「挑戦したいポジションへの異動希望」が顕在化し、配置転換によるモチベーション回復と離職防止を実現しました。また、リモート勤務や時短制度など柔軟な勤務体系と人員配置の両立を進めたことで、育児・介護との両立を理由とした離職が大きく減少した事例もあります。
人員管理は、従業員との信頼関係を築く手段ともいえます。「長く働き続けたい」と思える環境づくりが、離職率の改善につながります。
人員管理の基本4ステップ・大切なこと
ここまで、人員配置管理の目的や事例について解説してきました。では実際に、人員配置を適切に管理するには、何から始めればよいのでしょうか。
人員管理を実践するうえでおさえておきたい4つの基本ステップについて、順を追って解説していきます。
- 達成基準を確認する
- 社内アンケートで要望を聞く
- 人事評価で振り返る
- 配置結果を組織的に分析する
達成基準を確認する
人員管理の第1ステップは、配置の目的と評価基準を数値で可視化することです。
あいまいな目標では、配置の是非も、改善すべき点も判断できません。「3か月で残業時間を30%削減」「半年で営業利益率を10%向上」など、部署・職種ごとのKPIに落とし込むことが重要です。
たとえば、製造部門では「1人あたりの生産量」、営業部門では「提案書提出件数」など、成果につながる指標をもとに配置を判断する例もあります。具体的な指標があると、改善アクションも打ちやすくなるでしょう。
人員管理は、明確な目的に基づく指標管理から始まります。
社内アンケートで要望を聞く
続いて、人員管理後に、社内アンケートで現場の実態を把握します。
スキルや負荷状況は人によって異なり、それを無視した配置はミスマッチや不満につながるため、人事権がある者だけで決定してはいけません。
たとえば、定期的な1on1やキャリア面談、社内サーベイを通じて声を集め、部署や職種別に分類・分析して活用する方法があります。
現場の声をデータとして構造化して反映することが、納得感ある人員配置管理につながります。
人事評価で振り返る
人員管理の成果を検証し、改善につなげるには、人事評価の結果を振り返り材料として活用するとよいでしょう。
業務の成果や貢献度、スキル成長の度合いをもとに、配置が妥当だったかを定期的に見直すします。振り返りにより、次回以降の配置精度が高まります。
たとえば、ある企業では、OKRやコンピテンシー評価と人員配置を連動させ、「配置→評価→配置改善」というサイクルを構築しています。評価結果は本人へのフィードバックにも活用され、モチベーション向上にもつながっているようです。
人員管理と人事評価を連動させて、「次の配置戦略の材料」にする視点が重要です。
配置結果を組織的に分析する
最後に、人員配置の効果を個人単位ではなく、組織単位で分析します。
部署別の稼働率、残業時間、離職率、連携状況などのデータをもとに、「どの配置が成果につながったか」「どのポジションに負荷が集中しているか」を可視化しましょう。
たとえば、BIツールを用いて「部署別生産性推移」と「配置変更履歴」を突合すると、配置と業績の相関をデータで検証している企業もあります。
定期的な組織診断の一環として人員配置を振り返る仕組みをつくるのがポイントです。

人員配置管理表・人員配置管理図の準備を
ここまでで、人員管理の考え方や進め方は整理できたかと思います。しかし、「頭では理解できても、何から始めればいいのかわからない」という声も多く聞かれます。
そこで役立つのが、「人員配置管理表」「人員配置管理図」といった見える化ツールです。
配置の偏りやスキルの過不足、部署ごとの業務負荷を視覚的に把握するために作成している企業もあるでしょう。
人員配置管理表を活用すると、次のようなメリットがあります。
- 人員の過不足の把握が容易になる
- 部署間の人材バランスを確認できる
- 将来的な人材育成計画の立案に活用できる
▼人員配置表の作成を詳しく知るには、以下の記事をご確認ください。
人員(配置)管理をエクセルでやる方法
人員配置をまず可視化したい場合、エクセルを使う方法も一案です。小規模で専用システムを導入するほどではないという組織なら、対応が可能でしょう。
必要なのは社員名や雇用形態などの基本情報を一覧で整理し、部署や期間ごとに配置の偏りや過不足を把握できる表をつくることです。
テンプレートを使えば一から設計する必要もなく、自社の状況にあわせてカスタマイズして始められます。
Excelは完璧な管理手段ではありませんが、「今の人員配置を見える化したい」というニーズには適しています。
営業部の人員配置図の例
| 部署 | 営業部 | |||
| 人数 | 10名 | |||
| 雇用形態 | 正社員 | 契約社員 | 派遣社員 | パート・アルバイト |
| 名前 | 田中 太郎 | 山本 結衣 | 中村 直樹 | 小林 紗英 |
| 鈴木 花子 | 鈴木 美咲 | 加藤 優香 | ||
| 佐藤 健 | ||||
| 高橋 翔太 | ||||
| 渡辺 悠人 | ||||
人員管理を助けるツール
人員配置管理は、Excelでも一定の可視化は可能ですが、人員が増えるほど運用が複雑になります。
- 社員情報の更新が煩雑(異動・配置転換のたびに複数シートを修正)
- 配置と評価がつながらない(データが分断されている)
- 分析に時間がかかる(手集計・属人化)
以上の課題を解決し、人員管理を効率的に行うには、人事管理システムやタレントマネジメントシステムの導入がおすすめです。
とくにタレントマネジメントシステムなら、集約したスキルや配置実績などの人事情報をもとに、配置シミュレーションや分析もサポートしてくれます。
One人事[タレントマネジメント]は、従業員一人ひとりのスキルや経験を見える化し、最適な人員配置管理も支援するクラウド型システムです。
配置シミュレーションや配置結果の分析を、半自動化したいなら、ぜひご検討ください。

人員管理で得られる効果
人員管理では、どのような効果が得られるのでしょうか。以下で詳しく紹介します。
適材適所の人員配置
人材の特性にあった適材適所の人員配置は、組織の生産性を向上させるメリットがあります。業務の質とスピードは、個人の強みと役割の一致度によって大きく左右されるためです。
たとえば、分析力に長けた社員を経営企画に配置し、営業力のある人材をクライアント対応に割り当てると、無理なく成果を上げられる体制が整うでしょう。
人員管理によってスキルと役割を最適にマッチさせられると、パフォーマンス効率が自然と改善します。

従業員モチベーションの向上
本人の志向やキャリア希望に沿った人員配置管理は、モチベーションを向上させます。
「自分が必要とされている」「将来につながる仕事ができている」という実感は、働き続ける理由になります。
キャリア面談で「新規プロジェクトに挑戦したい」と話していた社員を、次期プロジェクトのサブリーダーに抜擢した企業では、育成スピードも上がったという例があります。
適切な人員管理は、従業員のやる気を育てる効果が期待できます。
離職防止/定着率向上
適性と希望に沿った人員配置は、離職を防止し、組織への定着率を高めるメリットがあります。
自分のキャリアや能力が活かされていると感じる職場にこそ「長く働きたい」と思えるものです。反対にミスマッチで先が見えない環境では、モチベーションが下がってしまいます。
たとえば、ある企業では、定期的なキャリア面談と人員配置の見直しを同時に実施したところ、「自分を活かせる環境にいる」と感じる社員が増え、離職率が改善したそうです。
人員管理は、最終的に人材流出を抑制に役立つ打ち手といえるでしょう。
人件費の抑制/収益の向上
人員配置の最適化は、余剰人員の削減・稼働効率の向上によって、人件費の適正化と収益力向上を実現します。
業務量に対して適切な人数で運用できれば、コストの過不足がなくなり、無駄な残業や人員追加が不要になるでしょう。
ある製造業では、繁忙部門へ配置を見直し、シフトの最適化を行ったことで、月40時間の残業が10時間に減少。年間で約800万円のコスト削減につながりました。
人員管理の適正化は、人件費の見えない無駄を削る手段でもあります。
人員管理をやらないデメリット
人員管理を後回しにすると「成果が出ない」「人が辞める」「コストが膨らむ」といった問題が、少しずつ起こり始めます。やらないデメリットは以下のとおりです。
- 効率・パフォーマンスの低下
- 従業員モチベーションの低下
- 離職率の増加
- 人材コストの増加/収益の低下
人員管理を行わないことで組織にどんな影響が出るのか、具体的な側面から整理してみましょう。
効率・パフォーマンスの低下
人員管理が適切でないと、組織全体の生産性が大きく低下していくでしょう。
従業員のスキルと担当業務がアンバランスとなれば、業務の質が下がり、ミスや納期遅延が発生しやすくなるためです。さらに、特定の部署に負担が集中すれば、残業の増加や業務品質も顕著になります。
適材適所が実現できていない組織では、強みを活かせない人員配置が続き、チーム全体のパフォーマンスが伸び悩むでしょう。
結果として、組織の競争力が弱まり、成長が難しくなるのです。
従業員モチベーションの低下
人員管理が十分でないと、従業員のモチベーションは大きく下がります。
自分の強みやキャリアの希望に合わない業務を続けることで、仕事への充実感や成長実感を得られなくなるためです。キャリア形成の道筋が見えなくなれば、将来への不安が増し、意欲も薄れていきます。
適性に合わない配置が続くと「自分は評価されていない」と感じ、組織への信頼やエンゲージメントが低下します。結果として、職場全体の活気が失われ、チームの成果にも影響が出るでしょう。
従業員のモチベーションを維持し、活力ある職場をつくるには、適切な人員配置が欠かせません。
離職率の増加
人員管理を怠ると、優秀な人材の流出を招くリスクが高まります。本人の能力や志向に合わない業務が続けば、モチベーションが下がり、転職を検討するケースも増えるでしょう。
人員管理のメリットで紹介したように、適性や希望を踏まえた配置は離職防止につながりますが、反対にミスマッチな配置が続くと、成長機会を失い、キャリア停滞を感じる人が増えます。
結果として、貴重なノウハウが社外に流出し、組織力の低下を招くおそれがあります。
人材コストの増加/収益の低下
人員管理に不備があると、収益の低下や人材コストの増加を招く要因になります。
配置のミスマッチによって業務効率が下がると、不要な人件費や残業代が発生し、経営資源が浪費されるためです。離職率が上昇すれば、新たな人材の採用・教育コストも増加します。
たとえば、経験の浅い社員が増えると、生産性が一時的に落ち込みます。そうすると既存社員の負担が増し、さらなる離職を招くという悪循環に陥ることも考えられるのです。
人員配置の質は、組織の収益力を左右する重要な要素の一つです。適切な配置と人員計画を行うことで、コストを抑えながら成長を続けられるでしょう。
まとめ|人員管理を行い事業目標の達成へ
人員管理とは、事業目標を達成するために人材を最適に配置・活用する戦略的な取り組みです。適材適所の人員配置は、生産性や収益の向上のほか、モチベーション維持や離職防止にもつながります。
人員管理を進めるには、目的の明確化から始め、現場の声を反映し、人事評価と連動させながら定期的に分析・改善を重ねることが重要です。
人員配置管理は、Excelで可視化する方法もありますが、組織規模が大きくなるほど、システムを活用したデータ管理・シミュレーションがおすすめです。
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