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離職防止の成功事例とは【退職理由別】に取り組みと対策を紹介

昨今は優秀な人材の確保がますます難しくなっており、「優秀な人ほど辞めてしまう」とお悩みの企業は多いでしょう。社員の離職は企業とって大きな損失であり、離職防止は企業にとって喫緊の課題といえます。

本記事では社員の離職理由をご紹介するとともに、離職防止に成功した企業の取り組み事例やユニークな離職防止策、これから離職防止に取り組む企業に向けたポイントを具体的に解説します。

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    従業員の離職4大理由

    社員の離職が多さをはかる指標に離職率があります。離職率は、一定期間内(一般的には1年間)にその会社を辞めた社員の割合を表します。

    離職率が高いことは企業にとって必ずしも悪いことではありません。しかし、一般的にはデメリットと捉えられています。なぜなら社員の離職4大理由は、以下で説明するようにマイナスのものが多いからです。

    労働条件(待遇への不満)

    「労働量や成果に見合った給与ではない」「福利厚生が充実していない」など待遇への不満は離職の原因になりがちです。近年は働き方改革の影響もあって、ワーク・ライフ・バランスに対する労働者の意識も高まっています。

    他社と比較して自社の待遇面が劣っていると考えたり、高待遇の企業に転職できた知人の話を聞いたりして、離職を決意する社員も少なくありません。早期退職や希望退職を募ると、待遇への不満を多く抱える優秀な人材から辞めていく傾向があります。

    労働条件(業務や残業量の過多)

    離職率が高い企業では人手不足が慢性化しています。そのため、社員一人ひとりの業務が多くなり、時間内に終わらずに残業量も増えてしまいます。業務過多が続くと、ミスや不正が増えるなどパフォーマンスが低下します。結果として、社員が心身に不調をきたして離職する可能性が高まります。

    人間関係・職場環境(モラハラ・パワハラ)

    管理職の意識が低い企業ではモラハラやパワハラが横行しがちです。理不尽なハラスメントを受けた社員はモチベーションやエンゲージメントが低下します。部下が上司とのコミュニケーションを避けるようになり、両者の情報共有に支障をきたしたり、人間関係が悪化したりしかねません。違法な退職強要などが行われている場合もあります。

    キャリア形成(人事評価・教育制度への不満)

    人事評価では評価者の主観や感情によって評価の客観性や公平性が損なわれることがあります。評価基準が明確化されていないと、なおさらその傾向が強まります。自分がどのようにすれば評価されるのかがわからないと、従業員は今後何に力を入れた方がいいのか悩んでしまいます。

    同様に教育制度が整っていないと、今後の成長イメージが描けず、キャリアを積んでいきたい人材を定着させるのは難しくなります。

    評価の偏りを是正するため、現場の評価をもとに社内全体で甘辛調整する企業もあります。一方、このような調整を行わない企業では社員の間に不満が募り、離職率が高くなる原因になります。

    【退職理由別】離職防止の取り組み事例

    多くの企業では、自社の退職理由の傾向に基づいて離職防止の取り組みを行っています。その中からユニークな事例を4点ご紹介します。

    離職理由離職防止の取り組み事例
    労働条件No残業手当
    人間関係ピアボーナス/リバースメンタリング
    職場環境社外ジョブローテーション制度
    キャリア形成キャリアチェンジ制度

    詳しくご説明いたします。

    退職理由(1)労働条件…No残業手当

    近年はワーク・ライフ・バランスを重視する労働者が多く、残業の多い企業は敬遠される傾向にあります。国が働き方改革を推進していることもあり、「ノー残業デー」「プレミアムフライデー」などの制度を導入する企業も増えてきました。その中でもとくに注目されているのは、残業しなかった社員に手当を支給する企業の取り組みです。

    某紳士服販売店では、月間の残業時間がゼロだった社員に対して1万5000円を支給するNo残業手当制度を導入しました。同社は、残業削減に対する社員の意識を向上させるため、残業しない社員に有利な制度を発案して導入したといいます。

    「過去連続で残業時間が20時間未満だった月数×5000円」を最大2万円まで支給することにした某システム会社もあります。残業時間の過少申告に対しては本人だけでなく管理者にも罰則を設けるため、チーム全体で残業削減に取り組む風土になったそうです。

    残業削減は離職防止になるだけでなく、業務効率化にもつながります。社員の意識改革が進むことで生産性も向上し、より魅力的な会社へと成長することでしょう。

    退職理由(2)人間関係…ピアボーナス/リバースメンタリング

    人間関係のトラブルは多くの場合、コミュニケーション不足から生じることが多いです。そのため、多くの企業では、社員同士のコミュニケーションを活性化させる取り組みを実施しています。

    会社から社員に支払われる報酬とは別に、社員同士で報酬を送り合う制度がピアボーナスです。「Peer(同僚)」と「Bonus(報酬)」を掛け合わせた造語で、近年は導入する企業が増加しています。心理的安全性を高めるのにも効果的な手法の一つとして注目されています。

    ピアボーナスでは、スマートフォンアプリや社内チャットツールなどで社員がほかの社員にポイントを送信し、ポイントは定期的に手当などに換算されます。社員同士がお互いに称賛し合うことで、良好なコミュニケーションを発生させるきっかけとなります。

    若手社員がメンターとなって、メンティーである上司や先輩社員に助言や指導を行う「リバースメンタリング」を実施している企業もあります。リバースメンタリングは、上司や先輩社員がメンターで若手社員がメンティーという伝統的なメンタリングとは発想が逆転(リバース)した人材育成方法です。若手社員と上司や先輩社員のコミュニケーションが活性化する機会となります。同時に、若手社員のエンゲージメントが向上したり、先輩社員が最新トレンドなど若手ならではの知識を学んだりできるといったメリットも期待されています。

    退職理由(3)職場環境…社外ジョブローテーション制度

    職場環境への不満の中でも、モラハラやパワハラのようなトラブルは人事異動などで解決できる場合もあります。しかし、モチベーションの欠如や業務自体への不満は社員自身の問題なので、会社側で支援して解決するのが難しい面があります。

    このような悩みを抱えた社員に効果的なのが社外ジョブローテーション制度です。某スマホアプリ開発会社が社外ジョブローテーション制度を実施しています。他社に出向した社員は自社の仕事の面白さや自身の強みなどを再認識するといいます。

    退職理由(4)キャリア形成…キャリアチェンジ制度

    モチベーションが高い社員でも、同じ仕事を長く続けていると、成長を感じられなくなって不満を抱くことがあります。成長意欲の強い優秀な社員ほど、仕事の幅や裁量を求めて転職を考えるものです。

    このような社員の離職を防止するのに役立つのがキャリアチャレンジ制度です。キャリアチャレンジ制度では、一定期間同じ部署で働いた社員が自分からほかの部署への異動希望を出せます

    某総合リース企業は、毎年10月に半期を振り返って翌年3月に異動先を決定する制度を導入しました。社員は異動希望の部門と直接面談を行い、会社側の都合ではなく自らの意思で異動できるのが特徴です。

    離職防止に成功した企業の事例

    実際に離職防止に成功している企業の取り組み事例を紹介します。社員の定着に貢献する制度や施策は、ほかの企業にとっても参考になるでしょう。

    選択型人事制度(サイボウズ株式会社)

    ソフトウェア開発のサイボウズ株式会社は、以前から社員自らが働き方を選べる選択型人事制度を導入していました。選択型人事制度は、入社2年目以降の社員がワーク重視型かライフ重視型かを考え、時間と場所で分類された9種類のワークスタイルから自分に合った働き方を選択するものです。

    現在は一人ひとりが自分の働き方を自由に記述する働き方宣言制度に移行しましたが、育児や介護だけでなく、さまざまな個人の事情が尊重される風土は継続されています。これによって離職率が28%から3.8%にまで低下しました。

    参考:サイボウズ株式会社

    社員から社内制度を募集(株式会社ジオコード)

    Web広告会社の株式会社ジオコードは社員から社内制度を募集して積極的に採用しています。社員のリアルな声を反映させ、社員の満足度が高い福利厚生を実現してきました。

    たとえば、軽食を1日1回無料で配布する軽食無料化、6月から8月の間で連休を取れるエンドレスサマー制度、社員全員でサッカー観戦をするサッカー休暇などは、メディアでも取り上げられるユニークな制度です。

    参考:株式会社ジオコード

    健康経営(株式会社ソフトウェアプロダクツ)

    IT企業の株式会社ソフトウェアプロダクツは「健康方針」「健康理念」「健康目標」を掲げて健康経営を行っています。健康経営は、企業を支える人材である社員が健康的に働ける職場を整備することによって生産性を向上させるという考え方です。

    具体的な施策としては、健康診断の項目を増やすこと、スポーツクラブの会費を補助すること、メンタルヘルス研修を実施することなどがあります。

    参考:株式会社ソフトウェアプロダクツ

    男性社員の育休取得推進(株式会社TBエンジニアリング)

    自動車部品の製造を手掛ける株式会社TBエンジニアリングは、男性社員も育休を取得できる職場環境を整備しました。社員一人ひとりに声をかけて、積極的な育休取得を促しています。

    職場全体で育休取得者の業務をカバーするようにし、育休取得者の不安などを軽減するのが目的です。10か月の長期にわたって育休を取得した社員もいるといいます。

    参考:株式会社TBエンジニアリング

    離職防止を成功させるには

    離職防止を成功させるのに現状分析は欠かせません。たとえば、多くの社員が求めているのが給与アップなのか自由な働き方なのかを正しく把握しなければ、効果的な施策を行えません。そのため、社員の不満やニーズに耳を傾けるのが先決です。

    1on1ミーティングで上司と部下のコミュニケーションを促したり、社内アンケートや組織サーベイなどを実施して社員の率直な意見を聞き出したりする方法が考えられます。

    しかし発言内容や回答結果が人事評価に影響すると、社員は委縮して当たり障りのないことでごまかしがちです。そうならないように、アンケートを匿名にするなどの工夫が必要でしょう。

    また、過去に離職した社員の離職理由も分析すると対策を考えるのに役立ちます。しかし、社員が会社を辞める際に本音を伝えたとは限りません。離職した社員の日報・週報、1on1ミーティングの記録(ログ)、アンケートの回答結果などを踏まえて、本当の離職理由に掘り下げるとよいでしょう。

    現状分析するうえで、社員から得られたデータを可視化して一元管理することが大切です。このときに有効なのがシステムツールです。

    離職防止の成功事例を活かすには?

    離職防止に取り組む際は、まず成功事例から得られたヒントを、自社にどのように活かすかが重要です。

    社内コミュニケーションを重視することは、効果的な取り組みの一つといえます。 また、「キャリアチェンジ制度」や「選択型人事制度」のように、自律的なキャリア形成支援にも取り組む必要があります。

    離職防止の成功事例に共通しているのは、社員の声を反映し、柔軟で実効性のある取り組みを実施していることです。自社の状況を分析し、解決の優先順位を定め、ま​​ずは一つずつ具体的な検討に入りましょう。

    タレントマネジメントシステムの活用で離職防止につながった事例も

    離職防止対策の一環として、タレントマネジメントシステムの活用も検討してみてはいかがでしょうか。上手に活用することで、離職防止に成功した事例もあります。

    One人事[タレントマネジメント]は、社内の人材情報を一元管理し、一人ひとりに適した育成や配置をサポートするタレントマネジメントシステムです。社員のコンディションチェックや1on1の記録管理、アンケートやサーベイの実施などで離職対策にお役立ていただけます。

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