リカレント教育とは|学び直しの重要性や生涯学習との違い、補助金もご紹介
リカレント教育とは、学校を卒業した社会人が学び直しを行うことです。少子高齢化の影響により、人材不足が深刻化するなか、企業にとっては従業員それぞれの能力を高めることが重要な課題ともいえるでしょう。
しかし、「リカレント教育について詳しくわからない」「リカレント教育の効果が出ていない」という企業も少なくありません。
そこで本記事は、リカレント教育について総合的に解説しながら、リカレント教育の手段や方法についてもご紹介していきます。従業員一人ひとりの人材教育を強化したいと考えている経営者や人事担当者は、ぜひ参考にしてください。
リカレント教育とは
リカレント教育とは、必要なタイミングで社会人が仕事と学びを繰り返すこと(学び直し)を指す言葉です。リカレント(recurrent)は「循環」「反復」「回帰」などの意味を持ち、循環教育などと呼ばれることもあります。
リカレント教育は、一般的に仕事を休んで学ぶことを指しますが、仕事を休まずに学ぶことを含む場合もあります。
リカレント教育の定義
リカレント教育について、厚生労働省は以下のように定義しています。
学校教育からいったん離れたあとも、それぞれのタイミングで学び直し、仕事で求められる能力を磨き続けていくこと
引用:『リカレント教育』厚生労働省
また、文部科学省は働きながら学び直すこともリカレント教育に含まれるとし、リカレント教育を推進する取り組みを行っています。
参照:『文部科学省におけるリカレント教育の取組について』文部科学省
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- スキル管理の3つのメリット
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リカレント教育の目的
リカレント教育の目的は、社会人として個人のスキルアップやキャリア形成、企業の成長のためが挙げられます。
リカレント教育によって人材が成長すれば、企業における人材不足の解消や優秀な人材の確保が期待できます。また、リカレント教育を受けた人材が学んだ内容を活かすことで、事業やプロジェクトを成功へと導いてくれるかもしれません。
リカレントと生涯学習の違い
リカレント教育と似た意味を持つ言葉として「生涯学習」が挙げられます。
生涯学習は「生涯におけるあらゆる学習」を意味するため、学校教育やスポーツ、音楽、文化など、さまざまなシーンにおける学びを指しています。あらゆる機会において、人生を豊かにするための全ての学びが対象といえるでしょう。
一方のリカレント教育は「社会人が学ぶこと」を前提とし、仕事におけるスキルやキャリアアップのための学びを指しています。
リカレントとリスキリングの違い
リカレントと混同しがちな言葉には「リスキリング」があります。リスキリングも社会人を対象とした学びであるため、違いを正しく理解しましょう。
リスキリングとは
リスキリング(Reskilling)とは、ビジネスにおける変化や技術の進化に対応するために学ぶことで、新たな知識やスキルの習得を目的とします。たとえば、近年のIT化やデジタル化、DX化という変化に対応できる人材を育成するために行われる教育がリスキリングの一例として挙げられるでしょう。
リカレントとリスキリングの違い
リカレント教育は、本来仕事を離れたうえで学び直すことが一般的ですが、リスキリングは仕事と同時進行で学ぶという点が異なります。
リスキリングが注目される理由
リスキリングが注目される理由として
・DX化の促進 ・働き方改革 ・ダボス会議における注目 |
などが挙げられます。このような昨今の社会情勢の影響で、従業員にはリスキリングで変化や状況に対応できる力を身につけることが求められています。
リスキリングのメリット
リスキリングを企業が行うメリットとして
・人材不足 ・従業員のやる気向上 ・人材育成 ・社内状況を見据えて取り組める ・アイデアの創出 |
などが挙げられます。リスキリングに取り組むことで、組織力の強化や従業員のスキル向上が期待できるといえるでしょう。
リスキリングのデメリット
リスキリングのデメリットとしては
・制度が確立できない可能性もある ・教育担当者と従業員側の双方に負担がかかりやすい |
などが代表的なものとして挙げられます。リスキリングは、新たな変化に対しての教育(学び)であるため、体制の整備や計画はもちろん、学ぶ側としても仕事に活かせるほどになるためには、労力や時間がかかるといえそうです。
リカレント教育の重要性が高まる背景
リカレント教育の重要性が高まる背景には以下のような理由が挙げられます。
・少子高齢化 ・雇用や働き方に関する変化 ・DX化やIT化の推進 ・人材不足や人材獲得競争 ・市場競争の激化 |
さまざまな理由が挙げられますが、共通しているのは社会情勢の変化によるものです。少子高齢化において労働力人口が減少し、人材不足や人材確保の競争が激化しています。高齢になっても働くことが珍しくなくなってきました。そこで、企業にとっても従業員にとっても、一人ひとりのスキルアップが必要とされています。
リカレント教育は、このような社会情勢におけるさまざまな変化に対応できる人材として活躍するためにも、重要な機会といえるのです。
企業におけるリカレント教育のメリット
リカレント教育のメリットには、どのような点があるのでしょうか。具体的なメリットについてご紹介します。
従業員の付加価値と生産性を高める
リカレント教育では、従業員の能力やキャリアアップのように、付加価値の向上が見込めます。従業員個人の能力が上がると、日々の業務における生産性向上も期待できるでしょう。
新たな人脈を得られる場合がある
リカレント教育を通して、これまでなかった人脈を得る場合もあるでしょう。その人脈を通して新たなネットワークが構築され、従業員個人の視野が広がれば、業務やビジネスに活かせることもあるかもしれません。
離職防止につながる
リカレント教育では、従業員のモチベーションが向上し、継続的なスキルアップへ取り組むことが期待できます。企業が学び直しの環境を整備することで、自分の専門分野や学びたい分野で成長の機会が得られるので、メリットに感じる従業員も多く、離職防止につながるでしょう。
従業員の主体性が向上する
リカレント教育は、従業員みずから学習方法や通学先などの学習環境を選定するため、自分のスキルアップに向けた主体的な行動を促せます。主体性が向上すれば、みずから考えて行動したり管理したりする癖がつき、業務にも活かせるでしょう。
人材確保や人材不足も改善できる
リカレント教育は、従業員が自身のスキルアップのために学べるため、成長意欲の高い人材にとって魅力的な制度ともいえます。環境が整備されていると優秀な人材が集まりやすくなり、人材不足の課題も解決につながるかもしれません。
リカレント教育の手段
リカレント教育を行うための手段には、どのような種類があるのでしょうか。一般的にリカレント教育で用いられる教育手段をご紹介します。
大学や専門学校の社会人コースの履修
リカレント教育を受ける手段として、教育機関等における社会人向けコースがあります。専門分野に特化したコースや夜間・土日受講が可能なコースがあり、業務に関する知見を広げたり、働きながら学べたりするので、効率的に学び直しができるでしょう。
履修に必要な費用は、入学金と授業料が一般的です。企業が費用を負担する場合、従業員に対してリカレント教育の後押しができるでしょう。
定時制・通信制大学
リカレント教育の手段として、大学で学び直すために定時制や通信制大学に入学するのも一つです。夜間対応学部やフレックス制、通信制を設置している大学も多くあります。時間や場所に囚われずに学べるため、仕事と学習を両立することもできるでしょう。
しかし、仕事とリカレント教育を両立するための自己管理は簡単なことではありません。会社として新たな休暇制度を制定したり、費用負担などで支援したりすると、従業員はより安心してリカレント教育を受けられるでしょう。
社内研修
リカレント教育を自社内で行うために、外部講師を招いた講習会や社内研修を実施する手段もあります。社内の研修をきっかけに従業員のモチベーションが向上すれば、本格的なリカレント教育を受けるきっかけになるかもしれません。
リカレント教育を強化する方法
リカレント教育を推進するための方法について、企業としてどのようなことができるのでしょうか。企業がリカレント教育を強化する方法をご紹介します。
自社の教育環境を整備する
リカレント教育を自社で提供する方法もおすすめです。たとえば自社に外部から講師を招くなどして研修を実施することで、効率的にリカレント教育を進められるでしょう。
受講料を支援する
リカレント教育を推進するために、企業側が費用負担を行うのも方法の一つです。学ぶ手段によって費用は異なりますが、すべて従業員が支払うのは大きな負担といえます。
従業員のスキルアップが期待できるリカレント教育には、企業にメリットがあるため、費用の一部もしくは全額負担による支援を検討してみましょう。
休職や復職制度を見直す
リカレント教育は、本来仕事から離れて学び直しを行うのが一般的です。そのため、リカレント教育のための休職・復職など、社内制度の見直すことで、よりリカレント教育を進めやすい環境が整うでしょう。
時短勤務制度を見直す
リカレント教育を広く推進するために、時短勤務の選択も効果的でしょう。働きながら学ぶ方法として時短勤務を取り入れることができれば、学ぶ時間を確保でき、より多くの従業員が効率的に学び直しを進められるでしょう。
柔軟な働き方を認める
リカレント教育を進めるために、柔軟な働き方を認めるのも方法の一つです。たとえば週休3日制や副業を導入すれば、時間が確保できるだけでなく、実務経験を通して学ぶことも可能になります。
リカレント教育の情報を共有する
リカレント教育に関する情報を社内で共有することも大切です。従業員のなかには、どのようにリカレント教育を受ければいいのかわからない方もいるかもしれません。まずは従業員の理解を深めるためにも、リカレント教育の概要や手段、国による支援や社内制度を周知するといいでしょう。
リカレント教育への国の支援と補助金
リカレント教育に関して、国で行われている支援をご紹介します。特に個人向け支援については、今回ご紹介するもの以外にもさまざまな種類があるため、状況や条件に合致するものをぜひチェックしてみてください。
※2023年2月時点の情報であり、支援の詳細は今後変更する可能性があるため、随時ホームページ等をご確認ください。
人材開発支援助成金【企業向け】
厚生労働省には、従業員の人材育成やスキルアップ推進のために『人材開発支援助成金』の制度があります。従業員に対して、職務に関連した専門的な職業訓練等を計画し、その計画に沿って実施した場合に賃金の一部等を助成する内容です。
以下の9つのコースが用意されています。
1.特定訓練コース 2.一般訓練コース 3.教育訓練休暇等付与コース 4.特別育成訓練コース 5.人への投資促進コース 6.事業展開等リスキリング支援コース 7.建設労働者認定訓練コース 8.建設労働者技能実習コース 9.障害者職業能力開発コース |
特に2022年12月に新設された『事業展開等リスキリング支援コース』や、助成率等が引き上げられた『人への投資促進コース』が注目されています。さまざまなコースが用意されているため、自社に合ったコースを確認したうえで、積極的に活用してみるとよいでしょう。
教育訓練給付制度【個人向け】
教育訓練給付制度とは、働く方の主体的なスキルアップやキャリア形成を支援する給付制度です。受給要件を満たす方が前提ですが、厚生労働省が指定する訓練を終了した際に、受講費用の一部が支給されます。
訓練の種類はレベル等によって
・専門実践教育訓練 ・特定一般教育訓練 ・一般教育訓練 |
に分類されています。
さらに講座は約14,000もの種類があり、夜間や土日に受講できる講座もあるため、柔軟にリカレント教育を受けることができるでしょう。
履修証明制度【個人向け】
履修証明制度は大学や大学院、専門学校などにおいて、学生以外を対象にしたプログラムを受講し修了した方に「履修証明書」が交付される制度です。学校教育法に規定されています。
この履修証明書はキャリアアップや就職の際に、アピール材料の一つにもなります。文部科学省はこの制度で、社会人に学習機会が提供されることを期待しています。
リカレント教育の注意点や課題
リカレント教育の課題や注意すべき点について、具体的な内容をご紹介します。
リカレント教育に関する周知
リカレント教育について、注目されているものの一般的に浸透しているとは言い切れません。そこでまずは会社全体としてリカレント教育について理解を深めることが大切です。リカレント教育とは何か、どのようなメリットがあり、支援体制があるのかを会社全体に周知しましょう。
社内制度の見直しや変更が必要
リカレント教育を積極的に進めていくためには、休職や復職、時短勤務や週休2日制について見直しをしましょう。場合によっては社内制度の変更が必要な場合もあります。
リカレント教育に対応できる制度がない場合、従業員に負担がかかり、結果的に学びの効果が薄まったり、途中で中断したりすることにもつながりかねません。会社としてどのような体制でリカレント教育を推進していくのか明確にしたうえで、改めて社内制度の整備を行いましょう。
運用のコストがかかる
従業員がリカレント教育に取り組むためには、企業側からのサポートが必要であり、多くのコストがかかります。しかし、従業員がリカレント教育によって得た知識やスキルアップは、業務にも役立つはずです。
経営層からの理解を得るために、コストだけでなくリカレント教育で得られるメリットを十分に伝えるようにしましょう。また、企業への支援制度や個人向け給付金などを活用することで、最終的なコストを抑えることもできます。情報収集と従業員への周知を徹底しましょう。
リカレント教育を活かせる場所を用意する
リカレント教育は、従業員が学び直すだけでなく、得た知識やスキルを活かすことが重要です。たとえば、学んだ内容を活かせるプロジェクトへの配置や責任者への抜擢、社内研修の実施などさまざまな方法があります。
企業としては、リカレント教育を受けたあとの計画も立てるなど、従業員が学んだ内容を活かせるような場を設けるようにしましょう。
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One人事[タレントマネジメント]は目的に応じて欲しい機能だけを選べる料金プランでご利用いただけますので、多機能過ぎて使いこなせないという無駄はありません。
リカレント教育を進めるために、現在の従業員データやスキルの可視化から始めてみてはいかがでしょうか。
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まとめ
リカレント教育は、社会人としてスキルアップやキャリア形成に役立つ学び直しを行うものです。
リカレント教育を推進することで、優秀な人材の確保や人材不足の課題にも効果が期待できるかもしれません。国としてさまざまな支援制度もあるため、ぜひ積極的に活用しながらリカレント教育を進めてみてはいかがでしょうか。
「One人事」とは? |
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