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業務委託契約を解除する方法は? 契約別に想定されるリスク・スムーズな手続きのコツも紹介

業務委託契約を解除する際は、契約内容を詳細に確認する必要があります。

本記事では、業務委託契約を解除する方法や、業務委託契約を解除するリスクなどを解説します。リスクを回避するためのポイントも解説するので、業務委託解除を円滑に進めたいときの参考にしてください。

※本記事の内容は作成日現在のものであり、法令の改正等により、紹介内容が変更されている場合がございます。

業務委託契約を解除する方法は? 契約別に想定されるリスク・スムーズな手続きのコツも紹介
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    業務委託契約の解除とは約定解除のこと

    締結した契約を一方が解除できる権利を「解除権」といいます。民法上、解除権は法定解除権と約定解除権の2種類に分類され、それぞれ以下のような違いがあります。

    法定解除権民法上規定された発生原因によって与えられる権利
    約定解除権契約の当事者同士が、あらかじめ契約解除の発生原因を定めたことにより与えられる権利

    ただし、法定解除権は解除事由が限定的で、実際にはあまり機能していないのが現状です。

    そのため、業務委託契約を解除する際は、2つめの「約定解除権」を行使する場合が一般的です。委託者と受託者のいずれかが約定解除権を行使して解除を申し出て、双方が合意にいたることで契約が解除されます。話し合いがこじれると裁判に発展する恐れもあるため、契約解除の可能性を見越した準備が必要です。

    企業側から業務委託契約を解除する方法

    企業側(委託者)から業務委託契約を解除する場合は、以下の手順で手続きを進めます。

    1. 業務委託契約書の詳細を確認する
    2. 受託者と相談する
    3. 合意が得られなさそうな場合は弁護士に依頼する
    4. 契約解除通知書を送付する
    5. 契約解除合意書を作成する

    1.業務委託契約書の詳細を確認する

    まずは、契約締結の際に作成した「業務委託契約書」を確認しましょう。業務委託契約書には、約定解除権を行使できる条件が記載されているはずです。当該ケースが契約解除の条件に当てはまっていれば、企業側は約定解除権を行使できます。

    また、契約書には契約の有効期限も記載されています。有効期限が近づいている場合は、相手方と争うリスクを避けるため、契約満了まで待つのも手段の一つです。

    2.受託者と相談する

    契約解除条件に当てはまっている場合は、契約解除通知書を作成して相手方に送付します。ただし、いきなり契約解除通知書を送っても、受託者とトラブルになる可能性が高いでしょう。

    まずは契約を履行するよう相手方に促します。それでも契約が履行されない場合は、次のステップに進みましょう。もし、企業側の都合で契約を解除する場合も、きちんと理由を伝えて解除後の対応について話し合うことが大切です。

    3.合意が得られなさそうな場合は弁護士に依頼する

    契約解除の交渉に不備があると、受託者とトラブルに発展する恐れがあります。受託者が合意しそうにない場合は、業務委託契約に詳しい弁護士に依頼するのが得策です。

    4.契約解除通知書を送付する

    受託者の合意がとれたら、契約解除通知書を作成します。作成した書類は内容証明郵便で送付しましょう。内容証明郵便とは「どのような内容の文書を、誰が、誰に送付したのか」を証明するサービスです。契約解除を間違いなく通知したことと日付が公的に証明されるため、不要なトラブルを回避できます。

    5.契約解除合意書を作成する

    契約解除通知書の送付後、あらためて受託者の合意がとれたら「契約解除合意書」を作成します。契約内容や解除に合意した日付などを記載し、企業と受託者それぞれが保管しましょう。

    2種類の業務委託契約と損害賠償リスク

    業務委託契約は、大まかに請負契約と(準)委任契約の2種類に分類できます。円滑な契約解除に向けて、必要な手続きを進めていきましょう。

    請負契約の仕組みとリスク

    請負契約とは、民法第632条に基づく契約形態です。

    請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。

    引用:『民法』e-Gov法令検索

    請負契約とは、完成された成果物に対して報酬を支払う契約です。委託者は建築物やシステムなど、発注した業務の完成をもって受託者に報酬を支払います。

    また、民法第641条に基づき、成果物の納品前であれば、企業はいつでも請負契約を解除することが可能です。

    請負人が仕事を完成しない間は、注文者は、いつでも損害を賠償して契約の解除をすることができる。

    引用:『民法』e-Gov法令検索

    受託者が業務に着手していた場合については、成果物の作成に費やした分について、損害賠償を求められるリスクがあります。このリスクは、業務が開始されてから発生します。

    委任契約の仕組みと発生リスク

    委託契約は、民法第643条に基づく契約形態です。

    委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。

    引用:『民法』e-Gov法令検索

    成果物ではなく「作業そのもの」に対して報酬を支払う契約形態で、主に弁護士や税理士などに業務を委託する際に締結します。民法第651条に基づき、委任契約は各当事者がいつでも解除できます。

    委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができる。

    引用:『民法』e-Gov法令検索

    ただし、同条2項1号および2号では、以下の通り定められています。

    2 前項の規定により委任の解除をした者は、次に掲げる場合には、相手方の損害を賠償しなければならない。ただし、やむを得ない事由があったときは、この限りでない。

    一 相手方に不利な時期に委任を解除したとき。
    二 委任者が受任者の利益(専ら報酬を得ることによるものを除く。)をも目的とする委任を解除したとき。

    引用:『民法』e-Gov法令検索

    上記の通り、解除したい時期に相手の都合が悪い場合や、相手の利益をも目的とする委任契約を解除した場合は、損害賠償の発生リスクがあります。

    契約解除通知書に記載する内容

    契約解除通知書に、法的に定められたフォーマットはありません。ただし、最低限以下の項目を記載する必要があります。

    • 契約当事者
    • 契約内容
    • 契約締結日
    • 契約の解除理由
    • 催告の場合は催告期間を記載し、期間終了後ただちにに契約解除をする旨

    ポイントは、解除理由を簡潔に記載することです。というのも、内容証明郵便には1枚あたりの文字数制限(上限520文字)があり、枚数が増えるごとに費用がかさんでしまいます。どの契約義務に違反したのかを明確にしたうえで、簡潔な内容を記載しましょう。

    契約解除に備えて業務委託契約書に盛り込むべき項目

    業務委託契約書を作成する段階から、契約解除に備える必要があります。これは、約定解除権を行使するための準備です。契約解除を円滑に進めるために、以下のような項目を盛り込んでおきましょう。

    業務内容の詳細について

    受託者の業務や対応に問題がある場合でも、業務委託契約書に業務内容の詳細が書かれていなければ、契約履行を催促したり、契約を解除したりすることは困難です。「この取り決めが守られていないので、契約を解除します」と明示できる状態にしておきましょう。

    いざというとき円滑に契約解除をするために、業務委託契約書には業務内容を詳細に記載しましょう。具体的には、以下のような内容を盛り込むのがおすすめです。

    • 業務内容や進め方
    • 修正の回数
    • 再委託の可否
    • 報酬の支払方法・時期 など

    損害賠償金や違約金について

    業務委託契約書には、契約解除にいたった場合の損害賠償金や違約金も明確に記載しておきましょう。明確に「いくら」とするだけでなく「全額支払う」「日割りで報酬を支払う」「一切報酬を支払わない」など、相手の同意さえ得られれば自由に記載できます。一方的に有利な内容を記載すると、受託者は契約を拒否する可能性があります。

    円滑に業務委託契約を解除するコツ

    業務委託契約を円滑に解除するためには、以下の3つのコツを押さえることが重要です。

    • 契約解除までの期間を長めに取る
    • 円満な契約解除を目指す
    • 業務や交渉の記録を保管する

    それぞれのポイントを詳しく解説します。

    契約解除までの期間を長めに取る

    突然の契約解除は、受託者側からの信頼を損ねるだけでなく、相手方に大きな不利益を与えてしまう恐れもあるでしょう。

    たとえば、長期にわたる業務委託契約の場合、受託者側は注文に応じるために多額の設備投資を行ってきた可能性があります。そのような状況で突然契約を解除すると、交渉がスムーズにいかないだけでなく、受託者側から損害賠償を請求されるリスクが生じます。

    長期にわたる業務委託契約を解除する場合や、どちらか一方が大きな不利益を被る場合などは、契約解除の予告期間を長めに設定することが大切です。

    円満な契約解除を目指す

    業務委託契約を解除するためには、委託者・受託者双方が契約解除に合意する必要があります。

    一方的に契約解除を通知するなどして話し合いがこじれると、最悪の場合は裁判にまで発展しかねません。裁判となれば委託者・受託者ともに損害が発生するため、訴訟のリスクは極力低減したいところです。

    業務委託契約書に契約解除に関する詳細を書いておけば、受託者とのトラブルを防ぐことにつながります。円満に契約を解除するためにも、業務委託契約書には契約解除に関する内容を確実に盛り込んでおきましょう。

    業務や交渉の記録を保管する

    業務や交渉の記録を保管しておけば、もしも裁判にまで発展した場合に証拠として提出できます。内容証明郵便で提出した契約解除通知書も証拠としての効力があるため、控えを保管しておきましょう。一方、メールで送付した契約解除通知書は、裁判での証拠として扱われない恐れがあります。

    受託者側も打ち合わせ議事録や仕事の記録などを残している可能性があるため、こちらも万全の準備を整えておくことが大切です。

    さまざまなリスクに備え、業務委託契約は円滑に解除しましょう

    業務委託契約を一方的に解除すると、相手方との話し合いがこじれたり、損害賠償を請求されたりといったリスクが生じます。「業務委託契約書に契約解除の条件を盛り込む」「契約解除までの期間を長めに設定する」など、トラブルを回避するために万全の策を講じましょう。

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