育児休業給付金の申請とは|申請書の書き方や添付書類と期限、二回目以降の手続きまで解説

「育児休業給付金の申請はどうやるのか?」「会社が手続きをするらしいが、具体的な流れがわからない」といった疑問をお持ちではありませんか。
育児休業給付金の申請は、一定のルールにしたがって書類を提出することで進めます。基本的には企業が手続きを進め、必要書類の準備や提出の流れを適切に把握しておくことが重要です。
本記事では、育児休業給付金の申請方法を詳しく解説します。「いつ、どこで、何をすればいいのか?」がわかるよう、 申請書の書き方や申請時期、手続き方法を具体的に紹介しています。
企業の人事労務担当者も、育休を取得する方も、ぜひ参考になさってください。

育児休業給付金とは?
育児休業給付金とは、育児休業を取得する人が受け取れる給付金です。育児休業中は、基本的に就労はないため、従業員に給与を支払う企業は多くありません。
そこで育児休業中の経済的負担を軽減することを目的として、育児休業給付金制度が整備されています。雇用保険の適用を受けている従業員で、一定の条件を満たせば、給付金を受け取ることが可能です。
育児休業給付金について一からおさらいするには以下の記事もご確認ください。
育児休業給付金の対象者・条件
育児休業給付金を受け取るためには、以下の条件を満たす必要があります。
条件 | 詳細 |
---|---|
対象者 | 雇用保険の被保険者で、1歳未満の子どもを養育するために育児休業を取得する人 |
勤務歴 | 育児休業開始日前の2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上の月が12か月以上ある |
就労(給与の支給)状況 | 育児休業期間中の1か月ごとの賃金が、休業開始前の月の賃金の8割以上支払われていない |
就業日数(時間) | 育児休業中の就業日数が、支給単位期間(1か月ごと)で10日以下(10日を超える場合は就業時間が80時間以下) |
有期雇用契約の場合 | 子が1歳6か月になるまで労働契約が満了しない見込み |
育児休業には、収入がなくなる期間を補う救済制度としての側面があるため、就労や給与に制限があります。
また有期雇用契約は、同じ事業主のもとで1年以上継続して働いているという条件が、2022年から撤廃され、条件が緩和されました。
参照:『育児休業等給付の内容と支給申請手続』厚生労働省
参照:『令和4年4月より有期雇用労働者の育児・介護休業給付の要件を一部緩和します』厚生労働省
育児休業給付金の条件について詳しく知るには以下のページもご確認ください。
育児休業給付金の申請方法とは
育児休業給付金の申請手続きは、原則として企業が行います。企業の担当者は手続きの流れを大まかに理解し、迅速に対応することが重要です。
具体的な申請の流れは、以下の 7ステップです。
1.従業員が育児休業給付金の申請を申し出る
申請者(従業員)は、企業の人事担当者に育児休業給付金の申請意思を伝えます。企業は申請に必要な書類を案内し、準備を進めましょう。
2.必要書類を準備する
企業側と従業員側の両方が、必要事項を記入した書類をそろえます。
- 企業側が用意する書類(ハローワークに提出する申請書類や添付書類一式)
- 従業員が提出する情報(休業期間の申し出)
書類には、企業と従業員のそれぞれが記入すべき項目があるため、漏れや誤りがないよう注意が必要です。具体的な必要書類の種類や添付書類については、「育児休業給付金に必要な書類・添付書類」の段落で詳しく解説します。
3.企業が書類をハローワークに提出する
企業の担当者が、管轄のハローワークに必要書類を提出します。電子申請も可能です。電子申請を利用する場合は、e-GOVの利用登録を済ませておく必要があります。電子申請の利用方法について詳しく知るには以下の記事をご確認ください。
育児休業給付金以外にも「出生後休業支援給付金」や「出生時育児休業給付金」など、似たような言葉の制度が多くあるため、申請時の間違いが多くなっているようです。誤りがあるとやり直しが発生して時間がかかるため、注意しましょう。
参照:『2025年4月から 「出生後休業支援給付金 」を創設します』厚生労働省
4.ハローワークが休業状況などを審査する
ハローワークが、休業状況や賃金の支払い状況を確認し、給付の可否を審査します。
5.ハローワークが支給決定通知と次回の申請書を交付する
申請が承認されると、支給決定通知が発行され、育児休業給付金が支給されます。企業は、従業員に結果を共有しましょう。
6.育児休業給付金が支給される
初回の給付は通常、申請から約1~2か月後に振り込まれます。以降の給付は2か月ごとに支給されます。
7.企業は2回目以降の申請手続きを行う
企業の担当者は 2か月ごとに給付金の申請を行う必要があります。
企業側の手続きが遅延したり不備があったりすると、従業員が育児休業給付金を受け取れる時期にも遅れが発生します。企業の担当者は早めに対応するように注意しましょう。
▼育休手当が手取りの10割に? 2025年4月からの新制度については以下のページでご確認ください。
育児休業給付金に必要な書類・添付書類・提出時期
育児休業給付金の申請手続きでは、企業が以下の必要書類を提出します。
提出書類 |
---|
雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書 |
育児休業給付金支給申請書 (正式名称:育児休業給付受給資格確認票・(初回)育児休業給付金支給申請書) |
期限は受給資格の確認のみの場合は、初回の支給申請を行うまでです。支給申請と資格確認を同時に行う場合は、育児休業開始日から4か月以内に済ませましょう。
添付書類 | 例 |
---|---|
育児休業を開始・終了した日、賃金の額と支払状況を証明できるもの | 賃金台帳、労働者名簿、出勤簿、タイムカード、育児休業申出書、育児休業取扱通 知書など |
育児の事実、出産予定日及び出生日を確認することができるもの | 母子健康手帳、 住民票、医師の診断書など |
参照:『育児休業等給付の内容と 支給申請手続』厚生労働省
参照:『雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書の記入例』厚生労働省
育児の事実を証明できる書類は、従業員本人に用意してもらう必要があります。企業側は、従業員が準備すべき書類を伝えておくとよいでしょう。
育児休業給付金支給申請書とは
育児休業給付金支給申請書とは、育児休業給付金の申請で提出する書類です。初回の申請では、雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書と一緒に提出します。
申請書には、被保険者情報(従業員の情報)、育児休業の詳細、職場復帰予定などの情報を記載する必要があります。
記入ミスや不備があると申請が遅れる可能性があるため、企業の担当者は記載事項や書き方を理解し、内容を確認したうえで提出しましょう。
育児休業給付金支給申請書の書き方
育児休業給付金支給申請書の書き方として、項目や内容を解説します。申請書の書き方を理解しておくことで、不備のないスムーズな申請につながります。
項目 | 記入内容 |
---|---|
被保険者番号 | 従業員の雇用者保険被保険者番号を記入 |
資格取得年月日 | 雇用保険の資格取得日(一般的には従業員を雇用した日)、元号は該当する数字を記入 |
被保険者氏名 | 従業員の氏名を記入 |
事業所番号 | 企業の雇用保険における事業所番号を記入(雇用保険適用事業所設置届を確認) |
育児休業開始年月日 | 育児休業開始の年月日(出産日から58日目)を記入 |
出産年月日 | 子どもが生まれた日付を記入 |
個人番号 | 従業員のマイナンバーを記入 |
被保険者の情報 | 従業員の郵便番号や住所、電話番号を記入 |
支給単位期間(その1、その2) | 支給単位期間その1は、育児休業給付金の支給単位期間(1か月目の年月日)を記入 ※その2には、2か月目の情報を記入 |
就業日数 | 支給単位期間において就業した日数 |
就業時間 | 支給単位期間において就業した時間 |
支払われた賃金額 | 支給単位期間において企業が支給した賃金額を記入 |
最終支給単位期間 | 育児休業を終了する期間があれば記入 |
職場復帰年月日 | 復帰時期が決まっている場合に記入 |
支給対象となる期間の延長事由と期間 | 育児休業を延長する場合において、理由と期間を記入 |
配偶者育休取得・被保険者番号 | 配偶者も育児休業を取得する際に記入 |
事業所の証明欄 | 書類の内容が正しいことを証明するために、記入日や事業所名、事業主名を記入 ※従業員本人にも日付と署名 |
振込口座の情報欄 | 育児休業給付金の振込先として本人名義の銀行口座情報を記入(旧姓ではなく現在の氏名による名義) |
備考欄 | 賃金締切日と賃金支払い日を記入し、通勤手当は該当する箇所に丸印を記入 |
育児休業給付金支給申請書は、配偶者の情報や振り込み口座など、企業だけでなく従業員が記入する箇所もあります。
企業の担当者は、事前に従業員に説明しておくことや正しく記入することを心がけ、余裕をもって準備しましょう。
参照:『育児休業給付受給資格確認票・( 初回 )育児休業給付金支給申請書の記入例 』厚生労働省
育児休業給付金は2回目以降も申請が必要
育児休業給付金の支給は2か月ごとに都度、支給を申請する必要があります。2回目以降の申請も、企業がハローワークに申請をするのが基本です。
1回目と異なるのは書類の種類と申請書の入手方法です。
2回目以降は、初回申請時と比べて必要書類が少なくなります。また、ハローワークから送付される申請書を使用するため、企業が準備する必要はありません。
いずれにしても期限内の申請が重要となるため、必要書類や期限を確認しておきましょう。
2回目以降の申請に必要な書類
育児休業給付金の申請で2回目以降に必要な書類は以下のとおりです。
- 育児休業給付金支給申請書
- 賃金額や支払い状況を証明する書類(賃金台帳や労働者名簿、出勤簿・タイムカードなど)
出勤簿やタイムカードは、育児休業中の就業状況を確認するために必要です。
2回目以降の期限
2回目以降の支給申請は、ハローワークから送られてくる「育児休業給付次回支給申請日指定通知書」に記載された指定日までに届け出ます。
しかし、指定日に申請できなくても「支給対象期間の初日から4か月を経過する日の属する月の末日まで」なら申請が可能です。
たとえば、8月10日から10月9日までを支給期間とした場合、4か月を経過する日が12月9日になるため、期限は12月31日です。
従業員の生活にもかかわる給付金であるため、ハローワークから送られてくる通知を確認し企業側はできるだけ早めに対応しましょう。
2回目以降の申請を忘れた場合
育児休業給付金の申請を忘れても、雇用保険の給付金には2年間の時効があるため、2年以内であれば申請が認められます。
2025年8月10日から10月9日までに支給されるはずだった給付金は、2027年10月9日までに申請すれば、さかのぼって給付が受けられます。
初回よりも2回目以降のほうが申請漏れが起こりやすいため、スケジュール管理が重要です。
参照:『雇用保険の給付金は、2年の時効の期間内で あれば、支給申請が可能です』厚生労働省
育児休業給付金の申請に関する注意点
育児休業給付金の申請には、企業の担当者が注意したいポイントがあります。申請期限や給付金の延長手続きを理解し、不備のない書類をすみやかに準備することが大切です。
育児休業給付金の申請に関する注意点について解説します。
育児休業給付金の申請期限を守る
育児休業給付金は、申請期限が設けられているため、いつでも申請できるわけではありません。
育児休業給付金の申請期限は、原則として育児休業開始日から4か月を経過する日が属する月の末日までです。
2回目以降の申請は、ハローワークの「次回支給申請日指定通知書」に記載されている期限まで、通常は2か月ごとに期限が設けられています。
申請期限を過ぎてしまっても、時効として2年間は申請できます。
2年を過ぎてしまうと、本来受け取れるはずだった給付金が受けられなくなってしまうので、従業員と連携して申請手続きを進めましょう。
育児休業給付金は事情によって延長できる
育児休業は本来、子どもが1歳になるまでを対象とした休業制度です。
しかし、育児休業中の従業員に特別な事情がある場合、育児休業給付金の支給期間は最大で子どもが2歳になるまで延長が可能です。
延長できるケースには「子どもが保育園に入れない」や「養育する予定だった配偶者の疾病や死亡、離婚」などがあります。
育児休業の延長には、申請書と理由を証明するものが必要です。企業側は必要書類をハローワークに提出し、手続きを進めましょう。
育児休業給付金の延長方法を詳しく知るには以下の記事をご確認ください。
まとめ
育児休業給付金の申請は、企業が主体となって手続きを進めます。とくに注意したいポイントは、以下の3つです。
- 提出書類の準備(企業と従業員、それぞれが用意する書類を確認)
- 申請書の書き方(不備があると支給が遅れるため、事前チェックが重要)
- 申請期限の管理(初回と2回目以降で期限が異なるため、スケジュール管理を徹底)
本記事で解説した「申請の流れ」「必要書類」「期限」を確認し、スムーズに育児休業給付金の申請手続きを進められるよう、早めの準備を心がけましょう。
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