通勤とは? 法律上の定義と出勤との違い、交通手段別の計算、不正受給対策、制度運用のポイントを解説

「どこまでを通勤とみなすのか」「リモートワークが増え、通勤手当の支給基準はどうするか」「通勤手当の課税基準が変わりつつある今、何をどう対処すればいいか」通勤に関して実務では細かな判断に迷う場面もあるでしょう。
以上のような疑問を抱える人事労務担当者に向けて、本記事では通勤の定義を法的・実務的な観点から整理していきます。手当の計算方法やルール設計も解説しますので、納得度の高い制度設計の見直しにお役立てください。
▼通勤手当の計算方法は以下の記事でも詳しくご確認いただけます。
通勤手当の計算方法|課税・非課税ルールや相場、交通費との違いも解説
目次[表示]
通勤とは? 出勤との違いと法律上の2つの定義
通勤とは、一般的に、仕事のために自宅と勤務先を往復することを意味します。
通勤というと、自宅から勤務先に向かう「往路」をイメージする人も多いでしょう。しかし、勤務先から自宅に帰る「復路」も通勤に該当します。
通勤と出勤との違いは、通勤は会社への往復を含むのに対し、出勤は往路のみを指すことです。
以下では、労働基準法と労働者災害補償保険法、それぞれの観点から通勤の定義をわかりやすく解説します。
労働基準法における通勤の定義
労働基準法における通勤時間は「労働者が自宅から勤務先へ移動する時間であり、原則として労働時間に含まれないもの」と解釈できます。
労働基準法では、労働者への賃金の支払い義務が生じる労働時間について厳格に定義されています。同法によると、労働時間は労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間です。使用者の指揮命令下にあれば、場所を問わず労働時間とみなされます。
たとえば、業務時間内における取引先への移動時間のように、連絡があれば対応しなければならない移動時間も、労働時間の一部です。
一方で、自宅から勤務先への通勤時間は、原則として労働時間に含まれません。いつ、どこから出発してどのような経路で勤務先に到着するかは、従業員に一任されているためです。
ただし、通勤途中で使用者の命令によって取引先や顧客先に立ち寄るなど、業務の性質を持つ部分は通勤ではなく、業務として扱われる可能性があります。
参照:『労働基準法』e-Gov法令検索
参照:『そもそも「労働時間」とは? 「通勤時間」とは?』厚生労働省
労働者災害補償保険法における通勤の定義
労働者災害補償保険法における通勤は、以下に該当する移動です。
- 住居と就業場所との間の往復
- 就業場所からほかの就業場所への移動
- 住居と就業場所との間の往復に先行、または後続する住居間の移動
加えて合理的な経路と方法で行われ、業務の性質を持たないものを通勤とみなします。
労働者災害補償保険法とは、従業員の労働災害や通勤災害について定めた法律です。通勤中の事故やケガは、通勤経路から外れたり中断したりしない限り補償されます。
トイレに立ち寄るといった日常生活を送るうえで必要な行為は、最小限の範囲なら逸脱や中断になりません。
通勤にかかる費用について
多くの企業では、従業員が勤務先まで通勤往復する際にかかる費用に対して、手当を支給しています。
この通勤手当は、法律で支給が義務づけられている制度ではありません。各企業が就業規則や給与規程などで支給基準を定めて運用します。規程で通勤手当の支給ルールを定めているにもかかわらず、適切に支払わなければ、労働基準法違反となります。
また、一定の条件を満たせば、通勤手当は非課税限度額の範囲内で、所得税がかかりません。通常の給与とは異なる性質を持っています。
なお2025年11月には、自動車・バイクなどの通勤手当について、ガソリン代の高騰などを受けて、非課税限度額が引き上げられました。適用は、2025年4月1日以後に支払われるべき通勤手当です。少し難しく感じられるかもしれませんが、2025年11月時点までに旧限度額ですでに支払われている通勤手当は、年末調整で精算される必要があります。
さらにさらに2026年4月からは、片道65km以上の長距離通勤者の非課税限度額が引き上げられ、一定の駐車場料金について月額5,000円を上限に加算できる改正も行われています。
参照:『労働基準法』e-Gov法令検索
参考:『通勤手当の非課税限度額の改正について』国税庁

通勤時の交通手段
通勤にかかる費用の補助については、法令で定められていないため、支払う義務はありません。企業が独自に定めた基準に基づいて支給を決定し、手当として支給されるのが一般的です。
主な通勤手段には、次のようなものが挙げられます。
- 電車やバスなどの公共交通機関
- 自家用車
- 自転車
- 徒歩
通勤時間は労働時間には含まれませんが、労災補償の対象となります。そのため企業が認める通勤手段をあらかじめ就業規則や給与規程に明示しなければなりません。
【通勤手段別】手当の計算方法
通勤に対する補助手当の一般的な計算方法を交通手段別に解説していきます。
電車・バスなどの公共交通機関を利用した場合
通勤で電車やバスなどの公共交通機関を利用する場合は、運賃や定期券の発行にかかる費用に応じて手当を支給するのが一般的です。
正社員や契約社員のように月20日程度出勤する従業員に対しては、定期代を支給する企業がほとんどです。
通勤定期券は1か月・3か月・6か月と3種類の期間を設定でき、最長期間である6か月分の定期代を支給する企業が多くあります。
1日の往復運賃を基準として通勤日数分のみ支給する場合は、次の計算式を用いて手当を算出します。
| 通勤手当=乗車賃(片道×2)×出勤日数 |
自動車で通勤する場合
自動車通勤ではひと月あたりの出勤日数や通勤距離、ガソリン単価、燃費を考慮したうえで手当を算出します。
「ガソリン単価基準」と「距離単価基準」で算出する方法は、次のとおりです。
| ガソリン単価基準で算出する手当 | 往復の通勤距離×出勤日数×ガソリン単価÷燃費 |
| 距離単価基準で算出する手当 | 往復の通勤距離×出勤日数×距離単価 |
定期代と同じように1か月の支給額を固定したい場合は、次の計算式で求めた平均出勤日数を用いるという方法もあります。
| 平均出勤日数=(365日-年間休日日数)÷12か月 |
自転車や徒歩で通勤する場合
自転車や徒歩で通勤する場合は、公共交通機関のような定期代が発生しないため、手当を支給しない企業が多いです。
しかし企業によっては、駐輪場代の負担など、就業規則や給与規程に独自の計算ルールを設けている場合もあります。
支給する際は一定の距離以上であることを条件に、自動車での通勤と同様、通勤距離に出勤日数と距離単価をかけて手当を算出するのが一般的です。
通勤に対する手当は一定額を超えると課税される
通勤に対する補助は、本来であれば収入の一部です。その他の給与所得と同様に、一定の金額を超えると所得税や復興特別所得税が課され、源泉徴収の対象となります。
ただし、ほかの手当と異なるのは、通勤手段や距離によって「非課税限度額」が定められていることです。一定の範囲内であれば課税されません。
2026年4月に片道65km以上の人の上限が引き上げられたため、最新の情報をチェックするようにしましょう。
参照:『通勤手当の非課税限度額の改正について』国税庁
▼通勤手当の課税・非課税の基準は以下よりご確認ください。
通勤の費用を不正に受け取った場合の対処法
企業が支給する通勤にかかる手当は、従業員の実際の移動費を補助する目的で支給されるものです。しかし、申請内容と実態が異なり、実際にかかる費用以上の手当を受け取る行為は、不正受給にあたります。
通勤費における不正受給とは、通勤経路や通勤手段を偽って、実際に支払った金額より多くの通勤手当を受け取る行為です。具体的には、次のケースが不正受給に該当します。
- 引っ越したことを申告せずに通勤手当をもらっている
- 転居後も住民票を移さずに前住所のまま定期代をもらい続ける
- 申告先より会社から近い場所から通勤している(例:実家、友人の家)
- 定期代をもらっているのにもかかわらず、自転車で通勤している
実際の交通費よりも高額な手当を受給した場合は、不正受給として返還請求や懲戒処分の対象となり得えます。悪質な場合は詐欺や横領等の法的問題に発展する可能性もあります。
不正受給が発覚した場合、企業は不正に受給した手当の返還を請求するのが一般的です。悪質性が高い場合は懲戒解雇を決定することも可能です。
通勤手当制度の設計・運用ポイント
最後に企業が通勤にかかる費用を補助する制度を導入し、適切に運用するためのポイントを解説します。
わかりやすくシンプルな制度にする
通勤制度の運用では、部署ごとに特別なルールを設けるのは避け、企業全体で一律の制度を採用するのがおすすめです。
ルールを簡潔にすることで、従業員からの問い合わせが減り、結果として担当者の負担も軽減されます。
明確な条件や計算方法を提示する
通勤補助の対象や計算方法を明確に定義し、労使間の認識のズレを防ぎましょう。明確に提示すれば、労務トラブルを回避しやすくなります。
次のような基準をあらかじめ定めておくと、スムーズな運用を実現できるでしょう。
- 通勤手当の支給対象となる距離の基準
- 最寄り駅までの距離の計算方法
- 最安経路よりも所要時間が短い経路があった場合の許容範囲
- 最寄り駅とみなす範囲
- 支給限度額
不正受給の抜け道をつくらないよう細かな定義が必要です。
就業規則に明文化する
通勤にかかる費用補助のルールは、就業規則に明確に記載することが重要です。とくに、以下の項目を明確に定める必要があります。
- 支給要件
- 支給金額の算出方法
- 通勤手段ごとの取り扱い方法
- 通勤手当の申請方法
企業によっては「通勤にかかる実費を支給する」といった表現を使っているケースもあります。
しかし、あいまいな表現では、従業員の誤解を招く可能性があるので、具体的に記載しましょう。
通勤の定義と企業の対応ポイントまとめ
「通勤」とは、自宅と勤務先を往復する移動です。労働基準法では労働時間に含まれないこと、労働者災害補償保険法では合理的な経路であることがポイントです。
企業は法的な定義を踏まえたうえで、通勤ルールを明確にし、労務管理を行うことが重要です。
通勤にかかる費用の補助制度は法的義務ではないものの、就業規則に定めた場合は適切に支給しなければなりません。
手当の支給基準や通勤経路の申請ルールを明文化することで、労災認定や労務トラブルの防止につながります。
不正受給を避けるためにも、公平で透明性のある運用を目指しましょう。
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